ロマンの木曜日 2011年7月14日
 

温かいお接待と冷たい橋の下〜遍路日記まとめ〜

ポンジュースだけじゃない、愛媛県
ポンジュースだけじゃない、愛媛県
2011年4月29日から始まった「木村岳人のお遍路日記」は、なんとかその全ての行程を歩き切り、2011年6月30日に無事完結した。丸々二ヶ月、よくもまぁ、飽きもせず毎日歩き続けられたものである。

先月、先々月には、その遍路の様子をまとめた記事も書かせていただいた。徳島編「歩き遍路はじめました」と、高知編「風吹き荒び、雨打ちつける、怒涛の高知県」だ。

遍路が終わった今、さすがにこれ以上引っ張るのもどうかと思い、残り全部を一気にまとめてしまおうと思ったのだが……はい、スミマセン、愛媛県内での出来事があまりに膨大すぎて、一つの記事にまとめられませんでした。

というワケで、今回は遍路日記まとめ愛媛編です。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

> 個人サイト 閑古鳥旅行社 Twitter

「菩提の道場」愛媛県

四国遍路はかつての国、現在の県ごとにステージが分かれている。徳島県は「発心の道場」、高知県が「修行の道場」、そして今回の愛媛県は「菩提の道場」だ。

菩提とは、すなわち悟りの事である。という事は、私はこの愛媛県で悟りを開かねばならないという事か。しかしそれとは裏腹に、高知県から愛媛県に入っても、疲れただとか、天気が心配とか、そんな煩悩ばかりが頭をよぎる。

う〜ん、幸先が不安だ。
今回は高知県と愛媛県の境、松尾峠から
今回は高知県と愛媛県の境、松尾峠から
よく整備された山道を下りる
よく整備された山道を下りる
一本松という集落で一休みしていたら――
一本松という集落で一休みしていたら――
おなじみ、フランス人二人組と遭遇
おなじみ、フランス人二人組と遭遇
愛媛県は、人との出会いが多い県であった。もはやおなじみとなったポングたち二人とも、この愛媛県に入った直後に再会している。

この二人は、徳島県で幾度となく顔を合わせたフランス人である。三ヶ月の休暇を利用して来日し、四国88箇所霊場を周っているという。

高知県に入ってからは長い間姿を見かけなかったものの、土佐久礼でまさかの再会を果たし、そして愛媛県ではこの二本松集落での再会を皮切りに、毎日のように会う事になる。
先に行った二人を追いかけるように歩き――
先に行った二人を追いかけるように歩き――
川沿いの道を行くと――
川沿いの道を行くと――
40番札所、観自在寺に到着
40番札所、観自在寺に到着
観自在寺でお参りを済ますと、時間はちょうど17時であった。私は基本的に宿を使わず、野宿で遍路をやっている。そろそろ寝床を探さねばならない時間であるが……。聞くところによると、この観自在寺には通夜堂があるらしい。

通夜堂とは、本来は夜を徹して行をする為のお堂であるが、現在は遍路が無料で宿泊できる仮眠所の事を指す。野宿遍路にとっては大変ありがたい、ご好意の施設である。
通夜堂は境内の隅に、ひっそりとある事が多い(こちらは33番札所、雪蹊寺の通夜堂)
通夜堂は境内の隅に、ひっそりとある事が多い(こちらは33番札所、雪蹊寺の通夜堂)
内部はこんな感じ(こちらは観自在寺の通夜堂)
内部はこんな感じ(こちらは観自在寺の通夜堂)
通夜堂は基本的には寝るスペースがあるだけなので、そこにマットや寝袋を敷いて雑魚寝する。お寺によっては、トイレ掃除などのお手伝いを条件としている所も少なくない(まぁ、泊まらせていただくのだから、当然ですな)。

この日は、私の他に二人の遍路が通夜堂のお世話になっていた。一人は、私よりもやや若いお兄ちゃんで、ストーブ(ガスバーナー)や食材をたんまり背負った完全自炊派。もう一人は、真言に関する知識が豊富で、読経も相当気合が入った本格派おじいちゃん。

ちなみに、右上の写真の右端にある黒光りした菅笠は、その本格派おじいちゃんのものだ。装備からして、かなり本気な感じ。このおじいちゃんとは、その後も度々寝床が一緒になる。
翌日からは、松山方面に向け国道56線沿いを北上していく
翌日からは、松山方面に向け国道56線沿いを北上していく
荒々しい黒潮の海に慣れていたので、瀬戸内の凪っぷりには驚かされた
荒々しい黒潮の海に慣れていたので、瀬戸内の凪っぷりには驚かされた
柏坂峠の遍路道。登山はキツイけど、国道のアスファルトを歩くより何倍も楽しい
柏坂峠の遍路道。登山はキツイけど、国道のアスファルトを歩くより何倍も楽しい
それはそうと、「へんろ道」のアルファベット表記が気になった。「HENRO MITI」って
それはそうと、「へんろ道」のアルファベット表記が気になった。「HENRO MITI」って
柏坂峠の先の岩松は、町並みが魅力的
柏坂峠の先の岩松は、町並みが魅力的
そしてまた、峠の遍路道
そしてまた、峠の遍路道
さらに歩いて、宇和島に到着。現存天守!
さらに歩いて、宇和島に到着。現存天守!
脅威の駐車技術に驚愕しつつ三間方面へ歩く
脅威の駐車技術に驚愕しつつ三間方面へ歩く
三間では、水田の景観に心癒された
三間では、水田の景観に心癒された
そして41番札所、龍光寺に到着(ここは元々神社が札所なので、参道入口に鳥居があります)
そして41番札所、龍光寺に到着(ここは元々神社が札所なので、参道入口に鳥居があります)

感涙モノ、読者さんからのお接待

龍光寺に到着したこの日、私は近くにあった道の駅に泊まる事にした。

とりあえず日が沈むまで時間を潰そうと、iPhoneでtwitterとかしながらぼんやり過ごしていたのだが、その時、ふと一人の男性が私の側に近寄ってきた。

そして一言、「木村さんですよね?」。
広々とした三間の道の駅
広々とした三間の道の駅
ここで黄昏れていたら、その方はいらっしゃった
ここで黄昏れていたら、その方はいらっしゃった
そう、なんと読者の方が来てくださったのだ。そして「お接待です」と、南予地方のお菓子や、特産品の河内晩柑(かわちばんかん)、それと湿布を差し入れいただいた。

これには驚き、そして感激した。これまで一ヶ月以上遍路を続けていたが、読者の方とお会いするのはこの時が初めてだったのだ。
本当に、ありがとうございました
本当に、ありがとうございました
頂いた品々も、津島町の善助餅や、宇和島の唐饅頭、薄クッキーのだんだん、それに大洲の志ぐれ餅と、まさに南予の銘菓が勢ぞろい。

どれもこれもおいしかったし(特に志ぐれ餅はもちもちの食感が気に入り、この後も見つけては購入していた)、何よりそのお心遣いが、物凄くありがたかった。

この出会いを皮切りに、愛媛県や香川県では度々読者の方がお越しくださり、お接待頂いた。いずれの方もその土地土地の銘菓など、地域への愛が感じられる、心のこもった差し入れで、大感激であった。
車で来てくださった松山市のご夫婦
車で来てくださった松山市のご夫婦
一六タルトや柑橘類、温泉のチケットまで!
一六タルトや柑橘類、温泉のチケットまで!
新居浜市の母娘さんからはハタダのタルトなど
新居浜市の母娘さんからはハタダのタルトなど
同じく新居浜市の男性から、パンとカイロ
同じく新居浜市の男性から、パンとカイロ
伊予三島の高橋さん夫妻からは――
伊予三島の高橋さん夫妻からは――
塩ラーメンをご馳走していただきました
塩ラーメンをご馳走していただきました
私なんぞにここまでしていただいて、本当に申し訳ないくらいである。遍路というのは、人の善意で成り立つものなのだなぁと実感した。

歩いて、寝て、人の助けに感謝して、また歩く。その繰り返しである。

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