ひらめきの月曜日 2011年7月25日
 

「うまい棒」から「うまい砲」へ

翔ぶ!
翔ぶ!
開けたとたんに飛び出してくるお菓子があったら楽しいと思う。愉快だし、人に開けさせてビックリさせるのも楽しそうだ。

そんなことをぼんやり考えていたのだが、それにうってつけのお菓子を発見した。おなじみ、うまい棒だ。あの棒状のかたちは発射するのにぴったりだと思わないか。何より名前がぴったりだ。
「うまい棒」ならぬ「うまい砲」の誕生である。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。

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実はもうあった

お菓子屋さんでうまい棒オニオンサラダ味を大量に買い込んだ。30本300円。
でかい。そして軽い
でかい。そして軽い
何の気なしにパッケージをながめていると、いきなり衝撃的な発見をしてしまった。この記事タイトルにある「うまい砲」、我ながらかなりいいネーミングだと思っていたのだが…
すでに本家によりイラスト化されていた
すでに本家によりイラスト化されていた
うまい砲びっくり味。こっちがびっくりである。われわれ庶民の発想など、メーカーであるやおきん様はすでに通った道なのだ。

とはいえイラストと実物はまた別だろう。今回は「うまい砲」の実現にむけて、試行錯誤してみようと思う。

どう撃ち出すか

イラストを見る限り本家うまい砲は火薬を使っているように見えるが、こういった材料は素人が扱うにはちょっと危険だ。こちらは材料としてバネを使うことにした。
真顔すぎてピンぼけ
真顔すぎてピンぼけ
パッケージを後ろから開けて
パッケージを後ろから開けて
バネを押し込み
バネを押し込み
また閉じる
また閉じる
反対側の先端は今にもはち切れそう
反対側の先端は今にもはち切れそう
内側からすごい圧力がかかっているのがわかる。
簡単だがひとまずこれで完成だ。
勢いよく飛び出したうまい棒で顔を強打しないように、おそるおそる開けてみた。
ああ。動画で、この微妙な飛び出し感が伝わっただろうか。

2回ためして2回とも、ちょうどパッケージの端にうまい棒が顔をのぞかせた位置で止まった。砲というか、スティックのりやリップクリームならちょうどいい飛びだし具合だ。何らかの事情で、紙や唇にうまい棒をまんべんなく塗りつけたい場合には大変便利なギミックだ。

ハァ…。

うまい砲からうまいボウへ

バネはちょっと無理っぽい。他に火薬を使わずに砲弾を飛ばすいい方法はないものだろうか。調べたところ、中世の兵器バリスタに行き着いた。
バリスタとは、簡単にいうと据え置き型の超デカイ弓矢である。
なんか立体感が変ですがこういうやつ
なんか立体感が変ですがこういうやつ
そうか、弓矢にすればいいのだ。うまい棒からうまい砲へ、そして次は「うまいボウ(bow=弓)」。ここへきてダジャレが一周した。
割り箸とゴム紐で弓(ボウ)を作る
割り箸とゴム紐で弓(ボウ)を作る
ここにうまいアローをセット
ここにうまいアローをセット
パッケージに詰め直してうまいボウの完成
パッケージに詰め直してうまいボウの完成
ちょっと機構が袋からはみ出てはいるが、おおむねコンパクトに収まった。問題は性能だが…。
すごい!一瞬で包装が剥けてマジ便利!
兵器であるところのバリスタから生まれた、お菓子が素早く剥けるパッケージ。軍事技術の平和転用である。

ただひとつ問題があるとすれば、この記事の趣旨とは全く異なることか。
マジ便利とか言ってる場合じゃねえぞ
マジ便利とか言ってる場合じゃねえぞ
打ち損じたうまい棒はその場で全て食べている。この時点で試作も含めてすでに10本ぐらい食べていて、そろそろ気持ち悪くなってきた。偶然にも明日は人間ドックなのだが、このまま何十本も食べ続ければ、血液検査の結果に影響が出そうな脂質量。

うまいボウ改

筒で外殻を作ることでボウ本体の強度をアップ
筒で外殻を作ることでボウ本体の強度をアップ
こうやってゴムごと筒に押し込み、装填する
こうやってゴムごと筒に押し込み、装填する
筒の周りにパッケージを貼れば、通常のうまい棒と見分けがつかない
筒の周りにパッケージを貼れば、通常のうまい棒と見分けがつかない
筒状のパーツを使用したことで、「砲」感も一気に高まってきた。今度こそ、翔べ、棒!明日の人間ドックで無用な再検査を避けるためにも、翔んでくれ!
すごい!一瞬で包装が剥けてマジ(以下同文のため省略)。

…いや待ってほしい。消費者視点で見れば「パッケージが剥きやすい」という点で代わり映えのしない結果だが、開発者視点で見れば、棒が突き出てくるこの動きは僕がやりたかった「飛び出す」に近づいている。うまい砲まであと一歩ではないか。
ゴム紐を強力なものに代え、摩擦を少なくするため砲身の外に設置
ゴム紐を強力なものに代え、摩擦を少なくするため砲身の外に設置
砲身にスリットが入っており、ゴムが縮むとこの中の棒がうまい棒を押し出す
砲身にスリットが入っており、ゴムが縮むとこの中の棒がうまい棒を押し出す
うまい砲、完成
うまい砲、完成
砲身がでかくなり、うまい棒1本ぶんのパッケージでは収まらなくなってしまった。しかたがないので2本ぶん使ったらアイスの袋みたいに。

ビジュアル的にもうまい棒ではなくなり、ふりかえれば当初の「開けたら飛び出す」というコンセプトからもずいぶんかけ離れたところに来ていた。なんたって弓を引き絞るのだ。目的のディテールの部分は忘れ去られ、「うまい棒を撃ちたい」という原始的な欲求だけが残った。

細かいことにこだわらないことが、工作を楽しむ秘訣だと思う。

発射試験

4〜5秒あたりで、飛びます
えっ…。

あまりの飛びっぷりに、喜ぶのも忘れてうろたえてしまった。
小学生の頃、教室を走り回っていたら花瓶を落として割ってしまったときの「やべっ」っていう、あの瞬間と同じ精神状態だ。
すごい勢いで飛び出したうまい棒は、天井に「ガツン」とすごい音を立ててぶつかり、真下に落ちた。
あの火災報知器の脇を掠めた。あぶなかった
あの火災報知器の脇を掠めた。あぶなかった
自分が作ったとはいえ、「砲」の名にふさわしいパワーを目の当たりにし、ただただあっけにとられるばかりである。どうやら本気を出したうまい砲の実力を試すには6畳間では狭すぎるようだ。障害物のない野外にやってきた。
向こうの遊具の下まで
向こうの遊具の下まで
その飛距離、4m76cm!
その飛距離、4m76cm!
うまい砲の威力により、うまい棒はほぼ5m飛んだ。痛快だ。

近くで夏休みに入ったばかりの小学生たちが遊んでいたため「これは見つかったら大変なことになるぞ…」と思ったのだが、実際には一瞬だけチラッとこっちを見てすぐに目をそらされたのみであった。

ともあれ、やおきん様、ついにうまい砲が完成しました!!

余談:うまい砲とハト

そういうわけで完成版うまい砲はかなりの完成度を見せたが、さっき貼った動画はうまい棒を奥行き方向に飛ばしてしまったため、ちょっと迫力に欠けるのではないか。そう思い、翌日編集部の安藤さんにつきあってもらって、動画の撮り直しをしたのだ。

このときはうまい砲が壊れたり、もう砲身が油でベタベタになっておりうまくつかめなかったりして飛距離はふるわなかったのだが、面白い現象が観測できた。
着弾と同時にすごい勢いで寄ってくるハト
このうまい砲、兵器として使用するとすれば、「敵陣にうまい棒を撃ち込み、すごい量のハトを呼び寄せることによって相手の視界を奪う」、といった使い方が想定されるだろう。

可能性は無限大

うまい棒の軍事利用事例としては、以前ライターの小柳さんもうまい棒で吹き矢を飛ばすことに成功している。
ほかにも鈍器として、ストローとしてなど、いろいろな活用法が想定できるだろう。それらの可能性については面倒なのでいちいち検証はしないが、ともあれ、そうとうにポテンシャルの高いお菓子であることは間違いない。
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