特集 2011年7月30日

トータルプライス表示で叶える夢の生活

トータルプライスを表示する札があるだろう。
服屋のショーウィンドウに置いてあるやつだ。

先日、池袋を歩いてたら、売っているのを見つけてしまった。そして気付いたら買ってしまっていた。
で、これがすごいのだ。
どんな写真にも高級感が出る、まさに魔法のアイテムなのだ。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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トータルプライスが売っている

てゆうかこれ、売ってるんだ!
てゆうかこれ、売ってるんだ!
と、誰もが思うだろう。
僕も初めて見たとき、「ふわぁぁっ!」と興奮してしまった。
こんな需要の細いものが、小売りで売ってるんだ、と。
さっそく、めちゃくちゃな組み合わせを作ってみる。
さっそく、めちゃくちゃな組み合わせを作ってみる。
楽しい。
缶ジュースと同じ値段のスーツ。
Yシャツが初任給と同額で、ネクタイが高級車と同額の人。
でも、モヤシと同じ値段の靴。

言葉で言ったり、紙に書いたりするより、「ああ、そんな人がいるかもしれない」という気にさせる説得力が、この札にはある。ちょっと試してみよう。

トータルプライスには説得力がある

たとえばこれ。
僕が普段着ているスーツ。上下で1万円ぐらいの安物。
僕が普段着ているスーツ。上下で1万円ぐらいの安物。
このスーツはセールで買った中国製の安物だが、これの横にトータルプライスの札を並べて置いてみよう。さて、どうなるだろう。
そう、こんな感じに置いてみると……
そう、こんな感じに置いてみると……
TOTALで22万6600円! 一気に高級ブランドに!
TOTALで22万6600円! 一気に高級ブランドに!
どうだろう。
なんかただのスーツがイタリアの高級ブランドなんじゃないかという気にさせられるではないか。
実勢価格の約10倍に見栄を張っているのに、正々堂々とした説得力が漂う。

これを別の服に応用することはできないか。
ちょっと試してみた。
この服で。
この服で。
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トータルプライス×農作業

最近、釣りに夢中になっていて、近所の公園や用水路で、エサになる生き物を漁ったりしている。
ミミズ、ザリガニなどを素手で捕ります。
ミミズ、ザリガニなどを素手で捕ります。
この時の僕のかっこうは、まさに農作業をするおじさんそのものなのだが、これにトータルプライスを適用することはできないか。
そう、こういうことだ。
完璧なコーディネートに思えるこの安定感。トータルプライス・パワー。
完璧なコーディネートに思えるこの安定感。トータルプライス・パワー。

説得力というよりは、高級感か

絶対トータルプライスで表示されたりしない服を試してみたら、感じられたのは高級感だった。
服はすべて、地元のホームセンターで買ったものなのに、何か、よそ行きのおしゃれをしたかのように思える。
これを応用すれば、安い食事でも高級そうなディナーに思えるんじゃないだろうか。
こんなふうに。
出張先のメシと言えば吉野家。
出張先のメシと言えば吉野家。
ごったがえす店内で食べる……
ごったがえす店内で食べる……
高級ランチ! TOTAL680円!
高級ランチ! TOTAL680円!
いける、いける!

ただの牛丼セットになのに、帝国ホテルの喫茶コーナーに入ったかのような雰囲気になる。(絶対牛丼は置いてないが)
もう一つやってみよう。
出張も終わって深夜、
出張も終わって深夜、
コンビニで買って一人飲む
コンビニで買って一人飲む
ラウンジバーでのひととき! TOTAL676円!
ラウンジバーでのひととき! TOTAL676円!

違和感あり。

上の写真はいまいち高級感に欠いたかもしれない。それは撮影環境が、あまりに貧弱すぎたせいだと思う。
段ボール箱とシャツでセットを作っています。
段ボール箱とシャツでセットを作っています。
これで高級感を出そうというのは、多少無謀な試みだった。勘弁願いたい。
続いて、説得力、高級感に続き、トータルプライスがかもし出す、3つめの魔法、「安心感」を紹介していきたい。
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トータルプライスには安心感がある

例えば店先で下のように書かれたウィンドウを見たとしよう。
22万円っ! この店は見ておくだけにしよう……
22万円っ! この店は見ておくだけにしよう……
と、たとえ値段が高価であっても、はっきりと金額が分かっていれば、それほど不安になることはない。買えないと分かっていれば、気が楽だ。
このようにトータルプライスには、値段が明瞭に分かる安心感がある。

これを、値段が分かりにくいものにも応用できないか。
僕から一つ提案してみたい。

何を作っているでしょうか

スーパーで買ってきた果物
スーパーで買ってきた果物
パイン、298円。
パイン、298円。
僕は昔、バーテンダーのアルバイトをしていた。
バーと言ってもおかしな店で、カクテルや料理以外に、客引きからカラオケの盛り上げまで何でもやらされた。
その頃のことは僕のブログに書いてあるので、読んでほしい。
くりぬいて詰める。
くりぬいて詰める。
オレンジは皮に切れ込みを。
オレンジは皮に切れ込みを。
もちろん店は全然流行らず、途中から女の子が入って、クラブみたいになり、僕はフルーツ盛り合わせを作らされることが多々あった。
そう、あの悪名高い「フル盛」である。
キウイは皮をむいてくし切り。
キウイは皮をむいてくし切り。
くりぬいたグレープフルーツに詰める。
くりぬいたグレープフルーツに詰める。
冷蔵庫の中の果物を適当に出し、ちょちょいと切り盛るだけで8000円もする、フルーツ盛り合わせ。
実際にはほとんど食べられないことも多い、あのフルーツ盛り合わせ。
最後にパインの葉を飾りましょう。
最後にパインの葉を飾りましょう。
確実にぼったくりと言えるメニューである。
僕はバイトの頃から今に至るまで、誰もが安心してフル盛りを注文できる世の中になってほしいと、そう願っていた。
そう、ここでトータルプライスの出番である。
原価657円で、TOTAL 8000円になってしまう、フル盛りマジック!
原価657円で、TOTAL 8000円になってしまう、フル盛りマジック!
こうしてトータルプライスで店に置けば、誰でも安心して注文できるだろう。
もちろんフルーツの原価の表示は必須である。
何かがおかしい価格設定に気が付くか。
何かがおかしい価格設定に気が付くか。
地味に足し算が合ってない上に、10倍くらい答えが違ったりしてるわけだが、そこに目をつむれば金額がはっきり分かる画期的なアイデアだと思う。
ぜひおすすめしたい。
同じように、結婚式でこうやって表示しておくのどうでしょう。安心しませんか。
同じように、結婚式でこうやって表示しておくのどうでしょう。安心しませんか。
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てゆうか、お金なら何でも使えるんじゃないか。

トータルプライスの活用はまだまだある。
支払総額に限った話ではない。
例えば僕がお金をもらうときだって、この札は活用できないだろうか。
例えばこういうことである。
お、今月の給与明細大きいなあ。
お、今月の給与明細大きいなあ。
え、中に何か入ってる!?
え、中に何か入ってる!?
給与明細、トータルプライス! 手取り(TOTAL)24万8466円!
給与明細、トータルプライス! 手取り(TOTAL)24万8466円!
最近、電子化されてしまって、すっかり味気無くなった給与明細だが、あえてのアナログ化&立体化を提案したい。
3D給与明細として人気が出るように思える。
味気なく見える数字の羅列でも、このようにトータルプライス表示をすることで温かみが出るのではないか。
すいません、簿記のこと全然知らないんですが、これで合ってますか。
すいません、簿記のこと全然知らないんですが、これで合ってますか。

てゆうか数字なら何でもいいんじゃないか

そろそろ限界を突破していきたい。
てゆうか、お金に限らず、もっと自由にこのトータルプライスの札を使っていけるんじゃないか。
ドラゴンボールにおける戦闘力のトータル表示。
ドラゴンボールにおける戦闘力のトータル表示。
もうちょっと現実的な線では、こういうのもありうる。
『レッド・クリフ』で有名な「赤壁の戦い」。 曹操は劉表の軍勢を組み入れ、全軍100万と称して攻め入った。
『レッド・クリフ』で有名な「赤壁の戦い」。 曹操は劉表の軍勢を組み入れ、全軍100万と称して攻め入った。

便利だね、トータルプライス

以上、トータルプライスの札が持つ「説得力・高級感・安心感」の3つの魔法について実験してみた。
自分のプレゼン資料にこの3つが欠けている人は、ぜひこの札を活用してみるといいんじゃないだろうか。訴求力UP間違いなしである。
なお参考までに、当製品を購入した価格を下に示しておきます。
高級そうに見えますが、納得の総額表示です。安心して お買い求めください。
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