特集 2011年8月4日

分かりにくいレトロ(田村美葉総集編)

今回の田村さんの原稿は夏休みのためお休みです(ことしからデイリーポータルZはライターも夏休みと称して休むことができるようになったのだ)。

まるっきり休みではなく、これまでの田村さんの原稿を振り返ってみることにしたい。

聞き手・林雄司
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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レトロのくくりにはなってないレトロ

---JCB看板・コカコーラ看板・銘柄看板など昭和50年代っぽいものをとりあげてますよね。その年になにか心当たりはありますか?

田村:私うまれたのが昭和59年なので50年代に特に思い出はないのですが…。
「あんまり気にしてないけど、じつはその年代に特有のもの」とか、「これは東京にしかない風景」「みんなフツウのふりしてるけど日本だけだよな~」とかいうのを発見するのが好きで、意識して集めるようにしてます。
JCBの看板もコカコーラの看板も銘柄看板も、日本にしかない風習だとおもうので。たぶん。
田村:それと、「あと50年くらい経ったら貴重資料になるかも!」というのを意識しているかもしれません。旅行に行ったときも、その土地特有の風習を集めてしまいます。コネタ道場に投稿した「ニューヨークの非常階段」とか。
---この時代だけにあったものっておもしろいですね。知り合いの書店が店内のコンセントにキャップしてて、理由を聞いたら、ふたしてないとみんな携帯の充電しちゃうからって。いまだとそういうことですかね。
田村:未来のひとが見たらおかしいかだろうな~」は常に意識したいですね。自動券売機の音声さんの優しさとかもそうなるかも。
---JCBの看板もコカコーラの看板も銘柄看板考えてみたらすべて新橋っぽいですね

田村:新橋は前の職場が近かったからよく観察してたんですが、ああいう「新橋みたいな街」が成り立つのって日本中でだんだん東京みたいな大都市だけになってきてると思います。うちの地元もそうなんですけど、ごちゃごちゃした路地の繁華街って寂れちゃってて。住宅街のなかの隠れた名店みたいなのは人気があるんですけど。

--- 金沢(田村さんは金沢出身です)って寂れてますか? 10年ぐらい前に行ったらにぎやかだったイメージありますが。

田村:金沢は、駅前にイオンのでかいショッピングモールができてから一気に繁華街がやばくなったんですよ…いまこんなかんじです
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ニューは新しくないものについてる

---モノレール、チューブエレベーター、お掃除ロボなど昔の人が考えた未来みたいなものもよく登場します
田村:エスカレーターとかモノレールとかチューブエレベーターを撮り始めてから、「レトロフューチャー」て言葉を教えてもらったんです。あ、そう、それそれ!って思いました。「ニュータウン」とか「ニュートラム」とか「ニュー」のつく時代が好きです。
でもエスカレーターだと、「レトロフューチャー系」の銀色かっこいいエスカレーターはやや古くて(下列の写真左)、いま最新鋭の透明薄型タイプは「21世紀系」(下列の写真右)と呼んでます。 横浜のみなとみらい線がすごくこういう感じです
---そういえば「ニュー」がつくものって全然新しくないですね。ニュー新橋ビルとか。
ニュートリノの語感が面白いのはそのせいかもしれませんね。

田村:「ニュー」のつくものは、大阪の千里ニュータウンのあたりが世界遺産に申請してるらしいので、そろそろわかりにくいレトロを脱して王道レトロへと向かう瀬戸際なんじゃないかと踏んでます。
田村さんが最近興奮した大阪駅のエスカレーター
田村さんが最近興奮した大阪駅のエスカレーター
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建築は健康がきっかけ

---田村さんの建築記事ってつなぎ目やパッチワーク建築などデザインよりも機能や事情優先でうまれた、というものが多いですよね。
田村:建築ネタに関しては、私自身が建築にまったく詳しくないので、「有名な建築家が設計した超かっこいいビルです」とか、「由緒あるなんとか工法による神社です」とかにはあんまり手を出さないようにしています。
…詳しい人がものすごくいそうで、下手なことを言うと怒られそうじゃないですか。


---建築って怖いですよね。ジャズぐらいめんどくさそう。と書くのも怖いぐらい怖い。
(といってジャズファンもいま敵に回しました)」
田村:ふつうのビルとか住宅のふりしてるけど大使館!」とか「ふつうの雑居ビルだけどなんか変なことになってる(パッチワーク建築)!」とかそういう言い訳ができそうな建物のほうが好きですね。

街歩きとか写真が得意じゃなくて、一般的な「下町ウォーキング」とか「路地ウォッチ」とかができないんです。撮る人が撮ればすごく趣のある路地とか、ぜんぶ普通の道に見える。

いちばん最初に集め始めたのは「大使館」なんですが、理由は家から学校まで健康のために歩こうとしたときに、途中で飽きそうだったんで大使館をめぐって行こうと思ったから…だった気がします。
---大使館のきっかけが健康のためだったとは。学校までが遠い子どもがマラソン選手になりました、みたいな話ですな
田村:橋脚を好きになったのも「高架下や川を歩いていけば迷わない!」だった気がするし…。「形がかわいいなぁ」とか、「並べてみると、なんかみんな無理してておもしろいなぁ」とかは、集めたあとに気づいてるような…。」
---なんと後付け!
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冷蔵庫はピンク

---かと思うと酢やズッキーニといった料理ネタもありますね。料理ネタを増やそう、減らそうとかそういう野望はありますか?
田村:料理ネタは、ふつうにふだん料理をしてるときに発見して、おもしろかったので書いてみました。偏愛ネタがブログだとすると料理ネタはtwitterぐらいの軽い気持ちで。
あと本当に飽きっぽく、自炊ブームが到来したり去ったりするので(現在去ってます)、つぎに食べ物について書くときはたぶん料理ではなく「コンビニでいちばんコストパフォーマンスの高い夕食を考える」とかになりそうです。


---料理のネタにしても建築ものにしても田村さんのテンションはかわらないですよね。エスカレーターを扱うときはテンション違うと思いますが。
田村「エスカレーターはぜんぜん意識してないんですが、そうみたいですね。飲み会で「エスカレーターの話題になったら急にしゃべった…!」といわれた記憶があります。
--- ルンバに目をつけたり、そういう女子っぽいというかガーリーなところが田村さんの記事がキャッチーなところに踏みとどまっているのはそこかもしれませんね。
田村「ガーリー…!冷蔵庫はピンクです!」

--- 冷蔵庫以外にピンクなものありますか?


田村「我が家はわりとピンクですよ。 あ、テレビもピンクだ。」
ピンクの冷蔵庫
ピンクの冷蔵庫

次回は関西ネタです

---ちなみに次の原稿はなんでしょうか?

田村:つぎは、大阪と姫路に行ってきたので、どちrかの記事になります!ヤバい楽しかったです!姫路はかつて走っていたモノレールの車両展示を観に行ったんですが、これはまさしく「ニューのつく時代」で、オススメです!!
テレビもピンク
テレビもピンク
---次回もよろしくお願いします。またピンクの家電を買ったらおしえてください
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