特集 2011年9月5日

エキスポ報告~ワラ人形作って墓場でビンゴ~

盛り上がっていますが手に持っているのはワラ人形です
盛り上がっていますが手に持っているのはワラ人形です
夏休みも終わりに近づいた8/27、デイリーポータルZの夏のリアルイベント、「恐怖!デイリーポータルZエキスポ」を開催しました。大勢のお客さんにご来場いただき、一緒にワラ人形を作り、アイドルの写真の首を高速回転させ、人の顔をマジックでなぞり、バニラエッセンスの苦みに涙する、そんなイベントでした。

…と言われても何がなにやらまったく意味がわからないと思うので、この記事ではあらためてちゃんとご報告しようとおもいます。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:ボンドでかっこいい標本ができるか

> 個人サイト nomoonwalk

史上最多の出しもの数

エキスポとは、各ライターが自分の記事にちなんだ出しものを持ち寄ってお客さんに体感してもらう、文化祭みたいなイベントだ。
今年は出展数が過去最多で、その数30個。僕の出身高校の文化祭と同じくらいの出展者数である。

急にいわれても「多い!」って思えない微妙な比較対象かもしれない。でも相手は広い高校の校舎全体を使ってやるイベントだ。それがエキスポではキャパ100人ちょっとのイベントハウスで展開されたのだ。その密度&熱気たるや想像に難くないだろう。まさに十代!青春!甲子園!という感じのイベントであった。(巧妙に高校の話にすり替えたがライターの平均年齢は30才を超えている)
まさに十代
まさに十代
まずは当日すごく盛り上がっていたこんなブースからご紹介しよう。

恐怖!わら人形作りワークショップ

「観光地の真ん中をわら人形を持った人たちが集団でゾロゾロ歩いていく」とお台場を震撼させたのがこのワークショップ。
北村さんの記事「楽しいわら人形」 を元に、みんなでオリジナルわら人形を作っちゃおう!という出しものである。
会場にはわら人形を作りたい人がこんなにいた(作ったワラ人形を実際に使った場合に身元がばれないようモザイクを入れております)
会場にはわら人形を作りたい人がこんなにいた(作ったワラ人形を実際に使った場合に身元がばれないようモザイクを入れております)
この日は2回のワークショップを開催したので、この倍の人数がワラ人形作りに励んだことになる。女性の参加者も多くて、最近はやりのなんとかガールの最先端は、呪いガールであることに間違いない。あと復讐系男子。
講師の北村さんによる構造説明。結び目は11ヵ所が正式だが、今回は略式で7ヵ所でよい。
講師の北村さんによる構造説明。結び目は11ヵ所が正式だが、今回は略式で7ヵ所でよい。
丑の刻参りの正式な衣装。儀式の現場につくまでは、一反木綿(11mある)が地面につかないように走らなければいけない。
丑の刻参りの正式な衣装。儀式の現場につくまでは、一反木綿(11mある)が地面につかないように走らなければいけない。
丑の刻参りには、忍者の修行か、と思うほどハードな作法があった。これができるようになるまで相当の修練が必要だし、それができるだけの体力があれば呪いの力など借りなくても腕力だけで復讐できるのでは。
説明が終わると同時にワラに殺到する参加者
説明が終わると同時にワラに殺到する参加者
ちなみに北村さんはこの日のためにワラを5キロ買ったそうだ。
一心不乱にワラ人形作り
一心不乱にワラ人形作り
腕2対のまがまがしいワラ人形も
腕2対のまがまがしいワラ人形も
これものすごく呪いっぽい
これものすごく呪いっぽい
普通サイズのワラ人形ならワラはほんのちょっぴりでいいのだが、場のテンションに飲まれて大量のワラを持っていくお客さんが続出、おかげで呪いグッズというより傘みたいな巨大なワラ人形が大量発生した。
何人呪う気だ、という巨大ワラ人形
何人呪う気だ、という巨大ワラ人形
最後はみんなで掲げて「できましたー!」。満面の笑みで言ってる場合か
最後はみんなで掲げて「できましたー!」。満面の笑みで言ってる場合か
このあとテーブルと床がワラだらけになり、イベントの進行に多大な影響を及ぼしたことは言うまでもない。
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試食も大充実~おいしいものからまずいものまで幅広く

当サイト・デイリーポータルZは、日夜思いつきだけで奇妙な創作料理を作っては続々と紹介することで、レシピ情報源におけるインターネットの信頼性を下げ続けている(言い過ぎた。上げることもあるよ)。

エキスポではそんなアバンギャルド料理の数々をみなさんに実食していただくことも可能なのだ。
馬場さんのブースは、昭和初期の軍隊料理を再現</a>したもの。
馬場さんのブースは、昭和初期の軍隊料理を再現したもの。
その中から、葱味噌バターのクラッカーのせ。軍隊料理といっても材料が保存食なだけで、味は普通にうまいのだ。
その中から、葱味噌バターのクラッカーのせ。軍隊料理といっても材料が保存食なだけで、味は普通にうまいのだ。
隣のほそいさんのブースでは自作のポテトチップチョコ</a>くじ。ハズレとして辛いワサビ味のチョコが混じっている。
隣のほそいさんのブースでは自作のポテトチップチョコくじ。ハズレとして辛いワサビ味のチョコが混じっている。
先日の記事</a>にもなった、藤原さんの砂糖水バー。衣装まで調達したため、実はイベント中いちばんの金のかかってるコーナーである。(作っているものはいちばん貧乏くさい)
先日の記事にもなった、藤原さんの砂糖水バー。衣装まで調達したため、実はイベント中いちばんの金のかかってるコーナーである。(作っているものはいちばん貧乏くさい)
こんな、他ではなかなか食べられないチャレンジ料理があるかと思えば、不意を突いて普通のものを配っていたりもする。
つけもの。
つけもの。
ポップコーン。
ポップコーン。
芋けんぴ。
芋けんぴ。
これらはDVDの販促記事の撮影現場で採れた野菜だったり、5キロ買って困ってる記事を書いたあまりのコーンだったり、2ヵ月かけてお遍路に回ったお土産の芋けんぴだったりするのだが、お客さんにそういう事情がどこまで伝わったか不安である。仮に伝わってなかった場合、ただのおつまみ無料配布コーナーだ。相当オトクだ。

事実、デイリーを知らないおばちゃんが会場に迷い込んできてポップコーンを大量に確保、その後店を出て行ったと思ったら仲間のおばちゃん数人をつれてきてさらにポップコーンをガッサリ確保していく、といった光景も、複数のライターにより目撃されたらしい。
できたてのポップコーンは地味に美味しいんだこれが。
できたてのポップコーンは地味に美味しいんだこれが。

ネガティブ系食品も

さて、美味しいものを紹介してみなさんが油断したところで、この日もっともお料理偏差値の低かったこちらのブースも紹介しよう。
豆腐にバニラエッセンスをかけるコーナー
豆腐にバニラエッセンスをかけるコーナー
このブースは、地主さんの記事「バニラエッセンスで何でもバニラアイス」が会場に招いた禍(わざわい)である。

この奇妙な組み合わせでバニラアイスの味が再現できるというふれこみだった。ところが地主さんときたら、持ち前のサービス精神で、バニラエッセンスをなみなみとかけるのである。浸るほどに。
バニラエッセンスというのはとんでもなく苦いのだ(写真は筆者)
バニラエッセンスというのはとんでもなく苦いのだ(写真は筆者)
最初は調子に乗ってガンガン苦くしていた地主さんだったが、さすがに評判が悪すぎたのか、途中から提供方法を変更。「何滴かけますか?」と質問する形式に。しかしここにも罠があった。
以前、記事で自由研究を手伝った</a>兄妹が遊びに来てくれた。写真は妹のみどりちゃん
以前、記事で自由研究を手伝った兄妹が遊びに来てくれた。写真は妹のみどりちゃん
地主さんはこのみどりちゃんをサクラとしてガッチリ抱え込んだのだ。

お客さん「ひとつください」 地主「バニラエッセンスは何滴にしますか?僕は1滴がおすすめです。みどりちゃんはどう思う?」
みどり「1滴はあんまりおいしくないから、25滴がいいと思う!」

もちろん仕込みである。が、小学生の女の子に勧められてむげに断るわけにもいかないお客さんは、全員バニラエッセンスの海に小舟のように浮かんだ豆腐を食べさせられ、その苦みに悶絶するのである。
関係ないけど派手なメガネが二人並んだ瞬間
関係ないけど派手なメガネが二人並んだ瞬間
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テーマは恐怖

言い忘れていた。今回のイベントにはテーマがあったのだ。「恐怖」である。

おかげですべてのだしもの名のアタマに「恐怖!」の接頭辞が入ることになった。しかし名前だけ無理やりあわせただけで内容は特に怖くないため、会場案内に並んだだしもの名は「恐怖!ふせん習字」「恐怖!誰もが『本人』に…」などなど。もともとわけがわからない企画なのに輪をかけて意味が不明瞭となった。
その「恐怖!ふせん習字」はこんなの。ふせんに筆ペンで書く、ミニチュア習字</a>のコーナーである。
その「恐怖!ふせん習字」はこんなの。ふせんに筆ペンで書く、ミニチュア習字のコーナーである。
「恐怖!誰もが『本人』に…」はこちら。キャベツ太郎(独自の解釈による)が「本人」のタスキを着けていて、お客さんは兜をかぶって「本人」ノボリを持ったりできる…。
「恐怖!誰もが『本人』に…」はこちら。キャベツ太郎(独自の解釈による)が「本人」のタスキを着けていて、お客さんは兜をかぶって「本人」ノボリを持ったりできる…。
本人コーナーは本当に混沌そのもののようなブースで、デイリーポータルZは毎日愛読してくれているというお客さんさえも、小野さんの説明をきいて「いや、ちょっと意味がよくわからないんですけど…」と応えているのを聴いた。ちなみにこの記事が元ネタである。

ただ中には本当に恐ろしいコーナーも

そう、あるのだ。本当の恐怖を感じられるブースも。
毒虫の生態展示。タガメやサソリなど、有毒生物を生きたまま公開。
毒虫の生態展示。タガメやサソリなど、有毒生物を生きたまま公開。
出展者の平坂さんは「本当に危ない生き物は連れて行きません」と言っていたが、なにぶん数々の毒虫に自分から好んで刺されに行くような人物の言うことである。実際、以前の記事に載ってた、タガメに指された手は赤ちゃんのかと思うほどふっくらと腫れ上がっていた。「刺されても致命傷ではない」というだけの話である。
そのうえ触ることもできた
そのうえ触ることもできた
さらにシンプルに「恐怖」なのがこちら、乾電池を使った感電体験コーナー。
手の下にあるでかいコイルが心臓部
手の下にあるでかいコイルが心臓部
ビリッ!ときて手を引っ込めた瞬間
ビリッ!ときて手を引っ込めた瞬間
怖いとか怖くないとかを通り越して実際に痛い思いをさせられるこのコーナー、しかし見事にお客さんの怖いもの見たさ欲を煽り、地味に人気だったことは付け加えておく。
かわいいキャラクター(こぎつね??)で客を引こうとしているのが卑劣である
かわいいキャラクター(こぎつね)で客を引こうとしているのが卑劣である

超高速(ずる)似顔絵コーナー

怖い話が続いたので、楽しげな話もしよう。おまつりイベントにつきものの似顔絵コーナー。例に漏れず我らがエキスポにも似顔絵ブースがあった。
仕上がりはこんな
仕上がりはこんな
小堺さんによるこの似顔絵ブースは、よその似顔絵と違うところが3つある。1、超高速で描いていること。2、小堺さんが似顔絵についてずぶの素人であること。そして3、
なぞるだけであること
なぞるだけであること
このやり方、モデルはクリアファイルを持たなきゃいけないので地味に腕が疲れる。このモデルの体力を犠牲にして高速で似顔絵を仕上げる手法は、小堺画伯が独自に考案したものである。
同じメソッドで描かれた作品たち
同じメソッドで描かれた作品たち
二人でやってきたお客さんがお互い描きあう光景も
二人でやってきたお客さんがお互い描きあう光景も
お客さんをステージに上げての実演
お客さんをステージに上げての実演
描いている間はお互いクリアファイルごしにかなりじっくり見つめ合うことになるため、描いてる方も描かれる方もみな一様に照れていた。そして描き終える頃にはすこし親密になっていたように思う。

おしゃべり以上スキンシップ未満のふれあい方として、カップルや親子はもちろんのこと、新しい取引先との最初の打ち合わせなどにもこの似顔絵を取り入れてみてはいかがだろうか。
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最後はとびきりの恐怖で締める

そんな具合でたくさんの出しものがあった(ここで紹介したのはごく一部だ)エキスポ。毎回最後にはメインイベントのフィナーレが待っている。

今回のフィナーレは、「恐怖」のテーマにふさわしい、これだ。
墓場ビンゴ
墓場ビンゴ
「恐怖」を極める企画としては、たとえば店内に猛獣を放したりして会場全体を恐怖のどん底に突き落とすという手もあるのだが、それだとお客さんに申しわけないので、今回は代表として身内をひとりだけ恐怖のどん底に突き落とすことにした。

以前、自分が企画したきもだめしラジオで誰よりも怖がっていた、編集部の安藤さんである。

ルールはこうだ。安藤さんを墓場に派遣し、恐怖でガクガク震えながらビンゴマシンで数字を決めてもらう。会場ではそれを中継でみながら、みんなで楽しくビンゴゲームをするのだ。
本気で怖がる安藤さん、本気で楽しそうな筆者・石川
本気で怖がる安藤さん、本気で楽しそうな筆者・石川
上の写真、さすがに人の不幸を喜びすぎではという気もしないでもないが、そういう企画だから、しょうがないよね…。(ごめん、安藤さん)
途中でオリジナルの魔除けの呪文「僕はなにもしてあげられませんよ…」を唱え始める安藤さん
途中でオリジナルの魔除けの呪文「僕はなにもしてあげられませんよ…」を唱え始める安藤さん
その頃会場では続々と「ビンゴ!」のこえ
その頃会場では続々と「ビンゴ!」のこえ
前日のリハーサルでは、中継の電波を確かめるために現場に行くも、墓の前の道路についた時点で「ここで大丈夫!」と断固動かなかった安藤さん。
しかし本番ではしっかりと墓場に足を踏み入れ、独自の呪文を唱えながらもしっかり任務を遂行した。
やっと終わった時のこの笑顔。こわい
やっと終わった時のこの笑顔。こわい
そういう意味ではこの墓場ビンゴ、エキスポの締めくくりにふさわしい楽しいアトラクションであったと同時に、一回りたくましくなった、安藤青年の成長物語とも言えるのではないだろうか。(他人事だと思っていいかげんなこと言った)

次回は来年の春?です

というわけで大盛況だった夏のエキスポ。エキスポはなぜか例年、5月と8月という偏った時期に行われることになっている。次回はおそらく来年の5月。この混沌にさらに輪をかけていきたいと思いますので、ぜひみなさまご来場ください!
余談。エキスポでは毎回ふせんにイラストを描いてるヨシダプロに
余談。エキスポでは毎回ふせんにイラストを描いてるヨシダプロに
弟子ができてました
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