特集 2011年10月13日

天下一品の"あっさり"と、実はすごい看板以外メニュー達

僕は天下一品のあっさりラーメンを食べた事が無いのです。
僕は天下一品のあっさりラーメンを食べた事が無いのです。
当サイトでもたびたび登場する、京都発祥のラーメンチェーン「天下一品(以下天一)」。やんごとなき古都、京都発祥とは思えない濃厚さ、誤解を恐れずに言えば品のない濃厚スープが特徴だ。

今回は、その天一で「あっさり」ラーメンを食べるというお話です。まずは、「あっさり」を食べるのがどういう事なのか説明させてください。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:どんぶりを三倍楽しむレシピ、ひつまぶ式

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天一の看板メニュー「こってり」ラーメン700円。大体、天一に行くというのは「こってり」を食べに行くという意味だ。
天一の看板メニュー「こってり」ラーメン700円。大体、天一に行くというのは「こってり」を食べに行くという意味だ。

天一の「こってり」とは

上の写真で伝わるかどうか、え?これラーメン?みたいな、お粥的濃厚さを持った独特のスープが特徴だ。鶏ガラをベースにたっぷりの野菜で作るのだという。

ニカワの様な匂いから、鶏皮などコラーゲン素材が使われているという説があり、僕が以前個人的に似たものを作ったときは豚足を入れた(結構似たのが出来ました)。

濃厚過ぎて嫌いという人も確かにいるが、これの虜になった人は実際かなり多い。僕もその一人であり、時折猛烈に食べたくなっては、千代田区辺りに出かけて食べている。
麺とか具は結構普通だ。でもスープがすごいんだ。濃いんだ。
麺とか具は結構普通だ。でもスープがすごいんだ。濃いんだ。
注文するときに「ラーメン並」というと必ず「こってりですか?あっさりですか?」と聞かれる。が、答えは決まっている。

「こってり」だ。

天一に行って「あっさり」を頼むのはあり得ない。値段はどちらも同じ700円。「あっさり」を食べた事はないが、間違いなく「こってり」の満足感は得られないと判っている。「天一に行く=こってりを食べる」であるからして、あっさりを頼むのはあり得ない。

どれくらいあり得ないかって言うと、サーティーワンアイスに行ってアイスなしのコーンだけ買って普通にアイスが乗ってるのと同じ料金を払うとか、吉野家に行って「牛丼、肉も玉葱もなしで汁だけご飯!」って注文して普通に380円払うくらいあり得ない。

もっと言えば、油田を買ったけど原油は全部捨てて一緒に出てくる天然ガスだけちょっと集めて終わりにしちゃうくらいあり得ない。もうスケール違いすぎて自分でもなにがなんだか判らないが、それくらい「あっさり」はあり得ないと思っている。

天一に向かう途中、僕はなか卯の事を考えていた

話は変わるが、なか卯で美味いのは牛丼でも親子丼でもなくうどんであり、正確に言うとざるうどんこそが至高だ。目立たないかも知れないが、なか卯のざるうどんは美味い。
並で390円。なか卯では親子丼を食べがちだけど、是非うどんを食べて欲しい。
並で390円。なか卯では親子丼を食べがちだけど、是非うどんを食べて欲しい。
なか卯のうどん?ゼンショー系列でしょ?すき家の仲間でしょ?安いでしょ?安いなら味もそれなりでしょ?と思うかも知れない。

でも、これは間違いなく値段以上に美味しい。390円の並だと成人男性的には少ないので、大盛り490円を選ぶのも大いにアリ。一食の価値あります。
日本三大うどんの一つ、水沢うどんの様な透明感と滑らかさ。間違いなく逸品。水沢うどんと違って上げ底してないのもエライ。
日本三大うどんの一つ、水沢うどんの様な透明感と滑らかさ。間違いなく逸品。水沢うどんと違って上げ底してないのもエライ。
折角天一に来たのに、あっさりかぁ。
折角天一に来たのに、あっさりかぁ。

天下一品神田店にやってきた

「あっさり」を食べに神田にやってきた。僕が住んでる葛西周辺に天一は無い。僕が天一を食べるには地下鉄に乗って荒川を越え、東京駅辺りまで行かねばならない。または、新宿辺りに用事があって出かけたとき。江戸川区という東京の辺境に住んでる僕にとって天一の「こってり」はハレの食べ物なのだ。

でも今回は「あっさり」を食べるのが目的なのだ。言ってみれば仕事なのだ。仕事に私情は禁物である。ここは店に入ったらメニューも見ずに「ラーメン、あっさりで」とスマートに注文したい。
メニューの写真はすべて「こってり」ラーメンだ。
メニューの写真はすべて「こってり」ラーメンだ。
席に着き、メニューを見た。店に入って10秒で最初の誓いを破った。「うわぁ、チャーハン定食美味しそうなりぃー、こってりスープと合うなりよ?」と、心の中のコロ助が「こってり」を所望する。この野郎、分解すんぞ。

ニクイ事に、メニューの写真は大体こってりラーメンが使われている。セットメニューはこってりラーメンと組み合わせる前提だ。当たり前だ。他の客は全員「こってり」を食べている。以前小耳に挟んだ情報では、店員的にも「あっさり」の存在意義が判らない、頼む人の気が知れないのだという。「だってあれ、普通のラーメンじゃん」と。

おお、神よ。
この美味そうな焼き鳥が294円。
この美味そうな焼き鳥が294円。

悩んでいる間、僕は鳥貴族の事を考えていた

格安焼き鳥チェーンの「鳥貴族」を知っているだろうか。ここ1,2年で急成長しており都内でも次々に支店がオープンしている。

ウリはなんと言っても、全品294円均一という安さ。ビールも焼き鳥も釜飯も全部294円だ。結構飲み食いしても3000円まで行かなくて驚いたりする。

看板メニューはもちろん焼き鳥だろうが、隠れた逸品が存在する。それが「とり白湯めん」だ。
これがやたらと美味い。寒い季節に嬉しい暖かさ。
これがやたらと美味い。寒い季節に嬉しい暖かさ。
鶏の旨味たっぷりの白湯スープが、お酒のあと実に美味い。五臓六腑に染み渡る滋味深さであり、これが294円てマジっすかと、食べるたびに思う。

焼き鳥もいいけど、鳥貴族に行ったらこの「とり白湯めん」を是非食べてほしい。というか、これだけ食べに行っても良いくらいだ。

オーケー、腹は決まった、「あっさり」だ

私情と仕事のせめぎ合い。勝ったのは仕事。だって締め切り明日だし。残念ながら、締め切りに勝てる私情を僕は持っていない(持ってたら多分クビだ)。

すみませーん!と店員さんを呼び「ラーメン、・・・・・・・・・・・・あっさりで」と注文した。「・・・」はためらい。

すると「背脂とニンニクはどうしますか?」ときた。は?背脂?そんなの聞いた事無い。なに?あっさりには背脂オプションがあるのか?そういうのもあるのか!

ここで「真のあっさり」を紹介するなら背脂もニンニクもない「ジャストあっさり」を注文すべきだ。しかしここで私情が頭をもたげた。『──こってり要素、欲しいよね。』

「ニンニクと背脂、両方お願いします。」

ダメだ、僕はダメだ。少しでもこってりに近づきたいというスケベ心が出てしまった。心の中のコロ助も苦笑いだ。

「中途半端なりね」

言い返す言葉もございません。なにが「オーケー、腹は決まった」か。

そして5分ほどで運ばれてきたそれは、まさに見た目からして「あっさり」だった。
これが生まれて初めて見る「あっさり」だ。なんというか、普通のラーメンですな。
これが生まれて初めて見る「あっさり」だ。なんというか、普通のラーメンですな。
アップでもう1枚、ドーン。
アップでもう1枚、ドーン。
地味だが美味しさで定評のあるモスバーガー。
地味だが美味しさで定評のあるモスバーガー。

写真を撮りながら僕はモスバーガーに思いを馳せた

モスバーガーといえばハンバーガーチェーンで、看板メニューは当然、美味しさと食べにくさで定評のある「モスバーガー」だ。僕は大体モスバーガーを食べるので、実は他のバーガーを食べた事が無い。

そこで、あえてチーズバーガーを食べてみた。
チーズバーガーは190円。
チーズバーガーは190円。
フランクフルトも190円。
フランクフルトも190円。
チーズバーガーは、モスバーガーの様な派手さはないが刻んだ生玉葱がたっぷり入っており、パンは柔らかく肉感も良い。なんといっても食べやすい。そしてマクドナルドのチーズバーガーより断然美味い。3倍は美味いので価格的には得だ。

フランクフルトは粗挽き肉が噛んだときの「ゴリゴリ感」を生み出し、ソーセージとは思えない肉っぽさだった。小腹が空いたときや、ハンバーガーだけだと足りなそうな時に良い。

どちらも美味い。モスバーガーばかり食べていたが、今後は他のメニューも食べてみようと思う。値段も、最近マクドナルドが妙に高くなっているのでイメージほどの割高感は無い。

意識を天一に戻そう

幾度もの現実逃避を繰り返しつつたどり着いた。これが「あっさり」だ。スープは茶色く、やや濁っているが「こってり」と比べたら水と形容しても差し支えないサラサラ感だ。
浮かんでる白いのが、僕の中途半端な欲求から入る事となった背脂。
浮かんでる白いのが、僕の中途半端な欲求から入る事となった背脂。
食べてみると、大体これが普通のラーメン。味的には日高屋(安めのラーメンチェーン)のラーメン的普通さだ。背脂とニンニクと、あとなんか油が浮いててスープの塩気もあり、なかなか濃厚系のスープだと思う。

一般的には「あっさり」と言うには無理がある味だと思うが、やはり「こってり」と比べてしまうとこれは「あっさり」なのだ。

以上を簡単に要約すると、普通の味濃いめラーメンでした。やっぱり天一であっさりラーメンはあり得ない。
不味くはないが、これ食べに電車乗って行くほどの魅力はない。
不味くはないが、これ食べに電車乗って行くほどの魅力はない。
納得いかないので水道橋まで歩いた。
納得いかないので水道橋まで歩いた。

納得がいかない僕は水道橋に向かった

あっさりラーメンを完食。普通にラーメンとして美味しかったが、700円払ってどうも釈然としない。なぜ僕は天一に行って700円払って普通のラーメンを食べているのか。普通のラーメンで700円は、僕の感覚だと高い。

僕が求めた天一ってのはそういうんだったか。いや、違う。やっぱ「こってり」を食べたい。でも神田店でそのまま「すみませーん、ラーメンこってりで」って立て続けに食べるのはどうもアレだ。恥ずかしい。ラーメンを一度に二杯とか変な人みたいじゃないか(こういうとこは気にします。人の子として)。

そこで、「こってりの濃さ」で定評のある水道橋店に向かった。
水道橋店はちょっと狭めです。
水道橋店はちょっと狭めです。
席に着く、メニューも見ずに「ラーメン並、こってりでお願いします」と注文。ウム、これだ。

しばらくして運ばれてきたそれは、およそ期待した通りのスープで僕を魅了した。おほっ、濃い!
「あっさり」を食べて愛想なしになってた僕も笑うくらい濃い。肝心なのはやっぱ「こってり」スープだ。
「あっさり」を食べて愛想なしになってた僕も笑うくらい濃い。肝心なのはやっぱ「こってり」スープだ。
と、載せるラーメン写真は実は冒頭の写真と同じ物だ。順番としては、神田で「あっさり」を食べて水道橋でこの「こってり」を食べたが、説明のために冒頭に同じ写真を使った。
「あっさり」を食べた1時間後に食べた「こってり」。
「あっさり」を食べた1時間後に食べた「こってり」。
やっぱり天一は「こってり」に限る。が、続けてラーメン二杯は体に負担が大きいのか、食べて家に帰ってきたらドッと疲れてしまいました。

食べ終わったどんぶりには、
明日は、無理。
明日は、無理。
「明日もお待ちしています」って書かれてたけど、もうしばらくはいいかな。次は11月末くらいに行こうと思います。11月30日までの100円割引券をもらったでね。

最後に、あっさりとこってりの違いを動画にまとめてみました。音が出るので職場で見る場合はご注意を。
BGMが勝手にどんどん盛り上がっていく辺りが見所です。

看板以外メニューの当たり外れ

天下一品の「あっさり」は結構普通のラーメンで、別に天一で食べなくてもいいかなって思った。今後は多分、一生食べないだろう。

なか卯のざるうどん、鳥貴族の鶏白湯めん、モスバーガーのフランクフルトとチーズバーガーの様に看板以外メニューで光る物もあるが、天一の「あっさり」はやっぱりナシだ。「こってり」好きの僕的にアレはない。

思うに、天一の「あっさり」は「こってり」を嫌いな人の為にあるのに違いない。みんながみんな「こってり」を好きな訳じゃない。でも付き合いで天一に連れて行かれる人もいるだろう。そういう人が困らないように「あっさり」という普通のラーメンがあるんじゃないだろうか。

自信の看板メニューを嫌いという人にも配慮する天一の優しさ、それこそが「あっさり」の正体なのだ。と、僕は勝手に思う事にしました。
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