特集 2011年10月14日

胃に優しいコーヒーを作る

主に山に水を汲みに行く話です。
主に山に水を汲みに行く話です。
コーヒーが好きだ。

しかし春の健康診断で十二指腸潰瘍を指摘され、「刺激物、とくにコーヒーとか酒とかは控えるように」とクギをさされてしまった。どうしよう。

そうか、ならば胃にやさしいコーヒーを作ればいいんだ。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

胃に優しいコーヒーとは

胃に優しいコーヒー。そんな「顔も良くて性格もいい」みたいな話はあり得るのだろうか。

いろいろ調べてみるとコーヒーが直接胃に悪いというわけではない、と言っている人もいて、早速そっちの説によりかかりたくなったのだけれど、医者がダメと言っているものはダメなような気もする。
今は胃薬とコーヒーを併用している状態である。
今は胃薬とコーヒーを併用している状態である。
一度コーヒーに同じく愛飲しているガスター(胃薬)を溶いてみたことがあるのだが、やはりというか想像以上に不味かった。いくら体に良くても不味いのはいやだ。カフェインレスコーヒーというのも試してみたけれどやっぱりなにか物足りない(なにかってカフェインだけど)。

いろいろ悩んでいたところ、胃の病気に効く湧き水、というものの存在を知った。パズルの足りなかったピースがピッタリはまった思いだ。もはやこれしかないだろう。

ということで我々取材班は(僕一人ですが)バスに乗って湧き水の湧く神奈川県横須賀市へと向かったのである。
葉山方面行きのバス。海の近くを走るバス特有の注意書き。
葉山方面行きのバス。海の近くを走るバス特有の注意書き。
バスを降りるとのどかすぎる風景が広がっていた。
バスを降りるとのどかすぎる風景が広がっていた。
JR逗子駅からバスに揺られること30分。徐々に人里離れていく車窓を眺めていると、最寄りと思われるバス停がアナウンスされた。

ほんと?ここ?
スマートフォンを持つと道に迷わない、と聞いたことがあるが僕は迷う。
スマートフォンを持つと道に迷わない、と聞いたことがあるが僕は迷う。
まあ、何もないよね。
無人販売所の遺跡みたいなものが点在する。人はどこにもいない。
無人販売所の遺跡みたいなものが点在する。人はどこにもいない。
しかしもしかするとこういうところだからこそ、人知れず名水が湧いているのかもしれない。

地図によると湧き水まではバス停から歩いて3キロほど。3キロというと僕の自宅から駅までより遠い。僕は駅までバスで通っているのだが、その間にバス停が5つくらいある。

だからなんだという話でもないが、健康を手に入れるのはたやすいことではないのだ、と各所から責められている気がしたので。
途中でトンネルを抜けると。
途中でトンネルを抜けると。
徐々に森が近くなってくる。
徐々に森が近くなってくる。
僕がコーヒーを好きになったのはそれほど前の話ではない(今、コーヒーを好きになった話をしようか胃が痛くなりはじめた話をしようか迷った挙げ句、前者を選びました)。

僕は4年ほど前まで沖縄に住んでいて、そこでコーヒーショップらしきものをやっていた。その時いろいろと試しておいしいコーヒーの骨組みみたいなものをぼんやりとではあるが身につけたような気がするのだ。おいしいコーヒーは飲んだ瞬間、体にしみこむように入ってくる。

おいしいコーヒーを煎れるコツはこうだ

いやその前に僕がいま歩いている道が合っているのか不安なので少し見てほしい。
森に近づくと「入るな」という看板が沿道に増えてくる。あとものすごく気持ち悪い虫を見た。
森に近づくと「入るな」という看板が沿道に増えてくる。あとものすごく気持ち悪い虫を見た。
水の匂いがする、と思ったら道のずっと下に清流が流れていた。まさかあそこまで降りていくってことになるのだろうか。
水の匂いがする、と思ったら道のずっと下に清流が流れていた。まさかあそこまで降りていくってことになるのだろうか。
確かに胃の痛みも忘れられそうな空気のうまさではある。

話を戻しておいしいコーヒーを煎れるコツである。

まずおいしい水で作ること。

コーヒーは豆に凝り出すときりがない。産地とか煎り方、ひき方、マニアックな人なら一日中話していられるくらいコーヒーは深い。だからそこをさけて水に凝るのだ。水道の水よりもお店で売られている水ならばたいていおいしいからそっちを使う。豆はそのへんで売っている豆を新鮮なうちに挽いてすぐに使う。それだけでずいぶん違う。

あとは煎れ方である。

カップはあらかじめ温めておいた方がいい。そして沸騰する直前のお湯でゆっくりとドリップする。ドリップは注いだお湯が最後まで落ちきらないうちに抽出をやめる。後の方はアクが残っているから捨てるのだ。

それだけである。概してのんびり作るとコーヒーはうまい。急いで作るとたいていおいしくない。そういうものだ。
そうこうしているうちに目的地に着いていました。
そうこうしているうちに目的地に着いていました。

妙薬の味やいかに

着いた。はるか頭上にトンビが飛んでいる以外、何者の気配もない。人里離れた場所にある、ここ「御瀧不動尊」は、昔から「妙薬の霊水」と言われているらしく、特に胃の病に効くというありがたい水なのだそうな。
上流にパンシロンの工場がある、とかそういう話じゃない。
上流にパンシロンの工場がある、とかそういう話じゃない。
こんこんとわき出している。
こんこんとわき出している。
「なるべく」湧かして飲むように、とのことなので。
「なるべく」湧かして飲むように、とのことなので。
そのままいただきます。
そのままいただきます。

「妙薬の霊水」はとても冷たくておいしい水でした

僕は正直水の味というものに疎く、「甘みのある」とか「カドのとれた」とかそういう水の味の違いを普段はさっぱり感じないのだけれど、ここの水は明らかに水道水と違って感じた。

なんというか、ごくごく飲んでも飲んだ分だけ素直に体が吸い込んでいく感じなのだ。それはおいしいコーヒーに通じるものがある。道に迷いながら2時間くらい歩き回った後だから、という話かもしれないが。
少しだけいただいて帰ります。
少しだけいただいて帰ります。
採取完了。アングルがおかしいのは三脚を持っていかなかったことと、周りに誰もいないので地面にカメラを置いて撮ったからです。
採取完了。アングルがおかしいのは三脚を持っていかなかったことと、周りに誰もいないので地面にカメラを置いて撮ったからです。
わーい。
わーい。
帰りがけに年配の方が一人、車で水を汲みにいらっしゃったので少しお話しを伺った。

--ここのお水をいつも汲みに来ていらっしゃるんですか

「いや、そんなことはない。本当にたまに」

--ご利益があるとか、おいしいとか

「そんなことはないと思いますよ」
絶対に写真撮らせてくれなさそうだったので景色の中に入れてみた。
絶対に写真撮らせてくれなさそうだったので景色の中に入れてみた。
こういう控えめな評判こそ名水の証拠であろう。心してコーヒーを煎れたいと思う。
この水で胃に優しいコーヒーを作ります。
この水で胃に優しいコーヒーを作ります。
家に帰ってさっそくコーヒーを煎れてみた。豆はいつも使っているやつだが、なにしろ今日は水がすごい。往復6時間くらいかけて汲んできた霊水である。胃に優しいのだ。これに勝るものはないだろう。

どうなのだ、霊水で煎れたコーヒーの味は。

ほほう。
ほほう。

おいしいコーヒーでした

「妙薬の霊水」と言われる御瀧不動尊のお水で煎れたコーヒーは神秘的な味がしました。というわけではもちろんなく、いつも通りのコーヒーの味でしたが、水の効果かそれとも気分か、飲んだ後も胃が痛くなることはありませんでした。このままずっと健康でいたいものです。
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