特集 2011年10月22日

脱皮したての柔らかいカニ、ソフトシェルクラブが食べたい

バリバリと丸ごと食べられるのがソフトシェルクラブ。
バリバリと丸ごと食べられるのがソフトシェルクラブ。
脱皮したての甲羅が柔らかいカニはソフトシェルクラブと呼ばれており(直訳だ)、から揚げなどにすると、丸ごとバリバリ食べられる。

これを前に一度だけ海外で食べたのだが、不器用な私にとって、カニの殻を剥くストレスなく食べられるというのが衝撃的だった。

この幸せを日本でも手に入れることはできないかと、ソフトシェルクラブを海まで捕りに行ってみた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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ベトナムで食べたソフトシェルクラブを再現したい

私がソフトシェルクラブを食べたのは、だいぶ前に観光でいったベトナムが最初で最後。

その日の昼食は、観光客らしくコースを頼んでいたので、なにがでてくるかわからない状態。

そこに登場したのが、前から憧れていたソフトシェルクラブだったのだ。
ヒラツメガニくらいの大きさで(例えがわかりづらいですね)、薄衣をつけたから揚げになって出てきた。
ヒラツメガニくらいの大きさで(例えがわかりづらいですね)、薄衣をつけたから揚げになって出てきた。
甲羅は甘エビの殻よりも柔らかく、問題なく噛みきれる。隠し持った味噌との相性が最高。
甲羅は甘エビの殻よりも柔らかく、問題なく噛みきれる。隠し持った味噌との相性が最高。
これがうまかったのだ。

カニを甲羅からほじくり出すという行為は、面倒臭いが楽しい作業だと思っていたのだが、このソフトシェルクラブを食べて、あのカニを丸ごと食べられることの素晴らしさに、ついつい口角が上がってしまった。甲殻類だけにだ。

そんなソフトシェルクラブ、日本でも食べられる店はあるようだが、たぶん冷凍物だろう。なんとか活きたソフトシェルクラブを料理して食べられないだろうか。

カニ捕りいこう~(パフィー風に)

ソフトシェルクラブというのはカニの名前ではなく、脱皮したての甲羅が柔らかいカニの総称(あるいは料理名)。

漁師が捕まえてきたカニを生簀で活かしておき、それを見張っておいて、脱皮したところをすぐ出荷するという方法を、なにかのクイズ番組で見たことがある。

しかし、自宅にカニを活かしておく設備はない。そこで、海にいってカニをたくさん捕まえれば、一匹くらい脱皮したての柔らかいカニが混ざっているだろうという、飛び込み営業スタイルの方法でソフトシェルクラブを探すことにする。
その道のベテランに、カニ捕りに連れてきてもらった。
その道のベテランに、カニ捕りに連れてきてもらった。
やってきたのは夜の海。カニ捕りに詳しい友人によると、この浜にワタリガニが接岸しているらしい。子供の頃、捕まえたザリガニがたまに柔らかかったので、ワタリガニでもいけるはずだ。

新鮮なワタリガニのソフトシェルクラブ、考えただけでよだれと鼻水がでた(雨が降っていて寒い)。

ワタリガニがたくさん捕れた

カニの捕まえ方は、海にザブザブと入っていき、海底にいるカニを探して、網ですくうというシンプルなもの。

先行してずんずんと進む友人が、バシバシと捕まえていく。なんとも心強い二人である。
私には全然わからないのだが、彼らには海底のカニが見えるらしい。
私には全然わからないのだが、彼らには海底のカニが見えるらしい。
これは普通のワタリガニ。トゲトゲがすごく、普通甲羅は食べられない。
これは普通のワタリガニ。トゲトゲがすごく、普通甲羅は食べられない。
ライトで照らすとカニが見えるらしいのだが、これかな?
ライトで照らすとカニが見えるらしいのだが、これかな?
あら、死ンデレラ…(この業界でよく使われる言い回しです)
あら、死ンデレラ…(この業界でよく使われる言い回しです)
キノコ狩りに行くと、素人には見つけられないキノコを、ベテランがバンバン見つけていく。目が「キノコ目」になるというらしい。

この二人は、「カニ目」だ。電器屋で買った一番明るい懐中電灯で照らしても、ゆらゆらと波打つ海の底なんてほとんど見えない。

ちょっと離れたところから見守ってもらい、私の目の前にいるよと教えてもらって、ようやくそこにカニがいるとわかった。
中央にカニがいるの、わかりますかね。私はわかりませんでした。
中央にカニがいるの、わかりますかね。私はわかりませんでした。
途中から素手で捕まえ出す二人。挟まれると痛いのはみんな一緒。でも素手。
途中から素手で捕まえ出す二人。挟まれると痛いのはみんな一緒。でも素手。
「このカニはけしからんね!」「うん、けしからん!」 なにやらプリプリする二人。
「このカニはけしからんね!」「うん、けしからん!」 なにやらプリプリする二人。
「これは、け、けしからん!」(なんとなくリリースしました)
「これは、け、けしからん!」(なんとなくリリースしました)
これは、なんだ?魚なのに足があるぞ。
これは、なんだ?魚なのに足があるぞ。
三人でこれだけ捕れた。私は二匹だけだ。
三人でこれだけ捕れた。私は二匹だけだ。

ソフトシェルクラブを生でいただく

この三人で捕ったワタリガニの中に、お目当ての脱皮したての柔らかいカニ、ソフトシェルクラブが一匹混ざっていのだが、腕が自切(カニは身に危険を感じると自ら手足を切る)によって一本とれてしまっていた。

「それ、そのまま食べなよ!おいしいよ!」

カニ捕りのベテラン達が、私を未知の世界へと誘ってくる。なんでも柔らかいカニの足は、そのまま身をチューチューと吸えるらしいのだ。
一応ペットボトルの水で洗ってみるか。
一応ペットボトルの水で洗ってみるか。
カニの柔らかい甲羅を押しながら吸っていく。タガメにでもなった気分だ。
カニの柔らかい甲羅を押しながら吸っていく。タガメにでもなった気分だ。
すごい。新鮮なカニの甘みとほどよい海の塩分が、トロトロの身に溶け込んでいる。脱皮直後は、甲羅だけでなく身も柔らかいのか。たぶん生涯で一度きりの味。

カニの刺身というよりも、ウェイダーインゼリーをすすって食べている感じが近いかな。この味のあったら箱買いする。

※お腹を壊す恐れがあるので、マネしないでください。

ワタリガニのソフトシェルクラブをから揚げにする

二人から譲り受けたカニ、すぐに家へと持ち帰って料理開始。

貴重なソフトシェルクラブは、当然丸ごとから揚げだ。プニョプニョのカニに下味を強めにつけ、片栗粉をまぶして油の中へ。
ベトナムで食べたあの味を再現。カニがでかい!
ベトナムで食べたあの味を再現。カニがでかい!
この日のソフトシェルクラブは、ベトナムで食べたものより二周りは大きいワタリガニ。大きければいいっていうものではないだろうけれど、やっぱりうれしい。

このサイズのカニが、丸ごと食べられるという幸せ。しかも捕れたてのワタリガニ。素晴らしい。
ジャジャーン。甲羅がフニャフニャだ。
ジャジャーン。甲羅がフニャフニャだ。
熱いうちに齧りつくと、一粒ずつ入った錠剤をパッケージからプチっと押しだしたような感じの抵抗感。

決して固くはなく、よくできたフライドチキンのように、噛み切ることが気持ちいい歯ごたえなのである。
脱皮したばかりなので、身はちょっとスカスカだけれど、残さず食べられるのがうれしい。
脱皮したばかりなので、身はちょっとスカスカだけれど、残さず食べられるのがうれしい。
胴体はエラだけむしり取ってバリバリと。足の付け根のところに身がたっぷり。
胴体はエラだけむしり取ってバリバリと。足の付け根のところに身がたっぷり。
ワタリガニのソフトシェルクラブ、想像以上のおいしさでした。

また捕りたい。

他のカニでも試したい

普通、いいカニの選び方は、甲羅の硬くて重いものとされているので、ソフトシェルクラブのようなカニは、日本の市場には出回っていない。たぶん。

だが、ズワイガニやタラバガニのソフトシェルクラブ、絶対うまいんじゃないかなと思うんだ。ケガニだって、脱皮したてなら毛も柔らかいはず。

自分で捕まえられるカニじゃないので、食べる機会はなさそうだけど、いつか食べてみたいです。はー。
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