特集 2011年10月25日

分冊百科を一号だけ買って組み立てる

逃げも隠れもせんぞ
逃げも隠れもせんぞ
ディアゴスティーニに代表される定期刊行のワンテーマの雑誌は魅力的だ(分冊百科というらしい)。毎週ちょっとずつ組み立てれば最後には城やロボットができる。

欲しい、と思って書店で手に取るがそのとき頭をよぎるのは「でもどうせおれは最後まで続けられないだろうな」ということ。
いや、こんどこそ大丈夫と思う根拠もなく、放り出したことばかり思い出す。

でもどうだろう。これだけの種類があるんだったら全部ひとつずつ買って組み立てても面白いんじゃないか。それなら何年も待たなくていい。横断的に楽しもうではないか。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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まだなにがあるか分からないぞ

冒頭で書いた企画趣旨と1枚目の写真で結果が分かってしまった気がする。
でも結果が分かっているからといって投げ出してはならないということは今年の横浜ベイスターズが教えてくれた。ベイスターズもゴールデンウイークまではなにがあるかもと思っていただろう。本稿もまたしかりである。
買ってきた分冊百科は8種
買ってきた分冊百科は8種
リアル書店とネットで分冊百科を買い集めた。フェラーリ、甲冑、ロボット、パッチワークと趣味のつぼを突いたラインナップである。決して横浜ホエールズ中継ぎ投手列伝とかそういうのはない(あったら買う)。

バイクを除いて創刊号である。創刊号は安いのだ。通常価格より500円ぐらい安く設定されている。パイレーツオブカリビアンは2号以降は1190円だが創刊号は190円だった。これだけで得した気分である。

組み立てます

とりあえずはひとつひとつ組み立てたい。それからすべてを組み合わせる。そうして出てくるものが分冊百科のいまを切り取ったものになるはずだ。
ちまちました作業大好き
ちまちました作業大好き
作ってみるとどれも親切なのだ。パッチワークコレクションには針と糸がついているし、和時計には墨と筆までついている。もちろん接着剤もついている。
和時計の文字盤は磨いたあとに墨を垂らしてまた磨く
和時計の文字盤は磨いたあとに墨を垂らしてまた磨く
すると文字盤のところに墨が残る
すると文字盤のところに墨が残る
磨くというすぐに結果が出る作業を選んでいるあたり、人を動かす術を知っている感がある。

なんで急に僕がほめはじめたか。それはこのあと全部をフリーダムにくっつけてしまうという後ろめたさからである。完成したロボットの無邪気なポーズが胸に刺さる。
ロボットのポーズがかわいい
ロボットのポーズがかわいい
甲冑はできあがりの実物大ポスター付き
甲冑はできあがりの実物大ポスター付き

隠し扉ではない

今回買ったなかでパッチワークコレクションと赤毛のアンの家がたぶん女性向けである。過去にドールハウスというシリーズもあったのでそういう趣味が一定数あるのかもしれない。
「赤毛のアンの家」、創刊号はベッドとドアだ。
「赤毛のアンの家」、創刊号はベッドとドアだ。
本棚に見せかけた扉が入っているのを期待したのだが、それはアンネの日記だった。作品が違う。アンネフランクの家を組み立てたところで表からは気づかないというトリックアートのような家ができあがるだろう。

ちょっと組み合わせるだけでもかっこいい

徐々に部品ができあがってゆく。ちょっと組み合わせてみるだけでもかっこいいものができるのだ(ついさっきまで感じていた後ろめたさはもう忘れている)。
ロボフェラーリ。きっとレディガガならかっこいいと言ってくれるはずだ
ロボフェラーリ。きっとレディガガならかっこいいと言ってくれるはずだ
パッチワークはひとつで断念。布として使うことに
パッチワークはひとつで断念。布として使うことに
大井川の川渡りみたいでかっこいい!
大井川の川渡りみたいでかっこいい!
大井川の川渡り。(歌川広重・「東海道五十三次・金谷」より)
大井川の川渡り。(歌川広重・「東海道五十三次・金谷」より)
いい企画じゃないか。不安になったりやっぱいけるかもと自信が満ち引きするさまはまさに人生そのものである。
なんだって人生にたとえてしまえばなんとかなるものだ。混乱した打ち合わせを「結局、最後は人ですよ」で終わらせてしまうのに似ている(ライフハック)。

パーツ完成

8種の分冊百科のパーツを組み立てた。なめていたが半日かかってしまった。
パイレーツオブカリビアン、戦国甲冑、赤毛のアンの家、フェラーリ、ロボット、CB750、和時計、パッチワーク
パイレーツオブカリビアン、戦国甲冑、赤毛のアンの家、フェラーリ、ロボット、CB750、和時計、パッチワーク
このなかでいちばん時間がかかったのはこれである。
ここ。赤毛のアンの家のベッドの布団のフチ
ここ。赤毛のアンの家のベッドの布団のフチ
ほそい布を4分の1に折って貼り付けるのだ。ここが細かくていちばんたいへんだった。週末、facebookを見ると知人はみなバーベキューなどをやっていたが、僕はドールハウスの布団のフチを折っていた(楽しかったんだけど)。

さあこれを組みたてよう。
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結果からご覧ください

これが分冊百科ミックスだ。分冊百科を横断的に使うとこうなるのだ。
機械伯爵を彷彿とさせる頭部
機械伯爵を彷彿とさせる頭部
甲冑のなかにバイクのヘッドライトをあしらった。銀河鉄道999に登場する機械伯爵のようでクール。右のドクロの旗はパイレーツオブカリビアンのものだが期せずして松本零士先生っぽさを増している。頭部にはふたつの反射鏡もつけて安全性を確保した。

頭部にはさらにロボットの頭を配置し、仏像でいう螺髪、渋谷の丸井の向かいの映画館の謎の屋上部屋を意識した(もしくはマジンガーZ)。
渋谷の映画館の上の小部屋
渋谷の映画館の上の小部屋
時間を意識した胴体
時間を意識した胴体
胴体部分には時計の文字盤とドアを配置してダリの絵画をオマージュ。
ベッドの上のフェラーリはカフカで言う毒虫である。カフカは「腹の上には横に幾本かの筋がついていて、筋の部分はくぼんでいる。」と書いているが、F1マシンのエンジンを表していると思えなくもない。思えなくもないだろう(思えなくない人だけ次に進む)。

登校拒否レベル

僕は話が分かってない打ち合わせほど人の目を見るようにしているのだが(わかってないのがばれないように)、本稿に臨む姿勢も同様である。
小学生の僕がこれを持って9月1日に学校に行かなければならないとしたら登校拒否になるレベルである。ただ小学生と違うのは適当なことを並べて言い訳する能力だろうか。
なりたくない大人になりました
なりたくない大人になりました
家にあった棒にパーツをくっつけて作っているので全体に熊手っぽい。独自の進化を遂げた熊手、ガラパゴス熊手である。
今うまいことを書いたつもりだが、浅草芸人のような響きは否めない。ガラパゴス熊手。浅草の演芸場 東洋館に出てそうである(東洋館の出演者はここで見られます)。

そしてこの記事はまだ続くのだ。
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奇跡は起きない

改ページしたということはあのまま終わらずになにか展開があるのかと思ったかたもいるだろう。
とくになにもないのだ。
ダメなものはダメなままである
ダメなものはダメなままである
工作でも手芸でもプログラムでも、うまくいかなかったものを作って一晩寝る。翌日、もしかしたらそんなに悪くないかもと思って見るとやっぱりダメだった。
そんな思い出したくないリアリズムを共有してもらえれば幸いである。
そして棒を支えてもらっているのも変わりない
そして棒を支えてもらっているのも変わりない
心なしかしゅんとしているようにも見える(僕はもうそこまで来た)
心なしかしゅんとしているようにも見える(僕はもうそこまで来た)

終わりが見えない

棒ではなく人の形にするのもいいかもしれない。
こんにちは!
こんにちは!
組み合わせは無限である。試行錯誤していると終わりが見えない。もとから役に立つを目標にして作ってないので終わりがないのだ。ゴールは内なる自分にしかない。まさに死に至る病! (つじつま合ってないが勢いで書いた)

今後さらに分冊百科のパーツを加えて形を変えてゆくのも面白そうだ。長く続けるのが大変そうだからといって始めたこの企画が長期戦の様相を呈しているのはたいへん興味深い。

箱も捨てにくい

手元には謎の熊手と空き箱が残った。これだけの空き箱を捨てると同じマンションの人からずいぶん飽きっぽいやつがいると思われるだろう。
1号ばっかり買う飽きっぽい人
1号ばっかり買う飽きっぽい人
しかし今回の工作はどきどきした。作っている最中に手に汗にぎる経験は久しぶりだ。汗もしたたり落ちた。
説明書のない人生のスリリングさを経験したい人はぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか ♡
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