特集 2011年10月26日

いいちこがある風景は切なく見える、か?

こういう感じのポスターを色々作ってみようって話です。
こういう感じのポスターを色々作ってみようって話です。
「下町のナポレオン」というコピーで有名な麦焼酎、いいちこ。クセが無く飲みやすい焼酎だ。

そのいいちこだが、ポスターが格好良い。綺麗な風景だったりお洒落な室内だったりの写真に小さくいいちこが写っていて、小粋なコピーが添えられてる。

あの格好良さはなんなんだろうと思ったので、色々試して研究してみました。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:天下一品の"あっさり"と、実はすごい看板以外メニュー達

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

'84年からのポスターがWebで見られる

インターネットって超便利だ。いいちこのWebサイトを見ると'84年からのいいちこお洒落ポスターを全部見られる。

iichiko DESIGN Graphic Gallery
デスクトップの背景にしたい様なポスターだらけ。
デスクトップの背景にしたい様なポスターだらけ。
84年当初はいいちこが大きめに写っていたり、細かい文字でなにか書いてあったりするが、86年になると細かい文字は無くなり、風景、いいちこ、ロゴ、コピーの4つで構成される様になる。

86年の9月には早くもいいちこの瓶が目立たなくなり、ウォーリーを探せ状態だ。86年5月の様にキャップだけというアグレッシブなポスターもあった。

是非リンク先のポスターを見ていただきたい。

21世紀になると切なさが増しており、寂しい風景にポエムのようなコピーが付く、風の音が聞えてくるようなポスターが多くなる。全体的には自然の風景写真が多く、中でも海の写真が半分ほどを占める。大体そんな感じ。

全体的な傾向が判ったところで、自分でもそういった写真を撮ってコピーとか付けてみた。
いいちこを大きめに映してみた。
いいちこを大きめに映してみた。
韻を踏んでみました。
韻を踏んでみました。
コピーの意味はよくわからなくてもいい。
コピーの意味はよくわからなくてもいい。
雰囲気さえあればそれでいいんだと思う。多分。
雰囲気さえあればそれでいいんだと思う。多分。

結構それっぽいと思う

いいちこ、風景、よくわからないコピーが揃うと結構良い感じにいいちこポスターになるんじゃないかと思う。名付けて、いいちこメソッドである。上の4枚はわりといいちこしてるんじゃないだろうか。

ちなみに写真は僕の実家がある鴨川市の小湊で撮ってきた。こうして写真で見るとすごく良い所みたいだ。

もう少し色々試してみよう。
夕方とか薄暗い感じもいいちこっぽくなる。安房小湊駅の駅前です。ちょっと平塚らいてう入れてみた。
夕方とか薄暗い感じもいいちこっぽくなる。安房小湊駅の駅前です。ちょっと平塚らいてう入れてみた。
これは葛西臨海公園の並木道で撮った。ネガティブっぽい事をポジティブに捉えるとそれっぽくなる気がする。
これは葛西臨海公園の並木道で撮った。ネガティブっぽい事をポジティブに捉えるとそれっぽくなる気がする。
蓋にいるテントウムシがポイント。ロゴの色はテントウムシの赤をイメージしました。
蓋にいるテントウムシがポイント。ロゴの色はテントウムシの赤をイメージしました。
ついでだから蛇足を承知で上の写真の視線移動を解説すると、下の様になります。
視線は左上から入れて画面内を渦状に移動させると大体まんべんなく見て貰えるのです。
視線は左上から入れて画面内を渦状に移動させると大体まんべんなく見て貰えるのです。
大体わかった気になって、次のページではこのいいちこメソッドを応用したり崩したりしてみたいと思います。
いったん広告です

いいちこメソッド崩し

風景といいちこ、意味不明でもいいから切なげなコピーが揃えばいいちこのポスターっぽくなる事が前ページで判った(という事にしてください)。

では、そのメソッドでなにか遊べないだろうか。そこで、ちょっと良い感じの路地で写真を撮ってみた。
小湊の某所、井戸と花が良い感じの路地です。
小湊の某所、井戸と花が良い感じの路地です。
1枚は普通にいいちこっぽく。
まぁ大体いいちこポスターっぽいんじゃないかと。
まぁ大体いいちこポスターっぽいんじゃないかと。
では、余計な物をちょい足して様子を見よう。
さきいかと烏龍茶を足してみた。
さきいかと烏龍茶を足してみた。
?!

叙情から一気に下世話になった。いや、確かにいいちこを飲む時は烏龍茶とかさきいかが必要だ。でもここで一緒に出すのはいかがなものか。イカだけに。

もう1枚いってみよう。
これにも余計な物を足してみたい。
これにも余計な物を足してみたい。
hoteiの焼き鳥缶詰(たれ)と烏龍茶をちょい足ししてみる。
hoteiの焼き鳥缶詰(たれ)と烏龍茶をちょい足ししてみる。
ザ、叙情ゼロ。
ザ、叙情ゼロ。
もう、コピーも下世話で飲む気満々だ。つまみと一緒に写しちゃダメだ。水と油、犬と猿、塩素系と酸性系、桜井和寿とギリギリガールズくらい一緒にしちゃダメだ。

でもまたやっちゃう。
アグレッシブに生きろ、バカになれ、的な思いを込めたコピー。
アグレッシブに生きろ、バカになれ、的な思いを込めたコピー。
そしてかっぱえびせんをちょい足し。
ロゴまで変わっちゃった。
ロゴまで変わっちゃった。
切なさとか叙情を表すのに食べ物はダメらしい。そりゃまぁそうだ。かっぱえびせんをボリボリ食べてる姿に情緒や哀愁はない。

どうせだからもっとダメにしてみよう。
人が入ると決定的にダメ。っていうかコピーっていうか感想だ。
人が入ると決定的にダメ。っていうかコピーっていうか感想だ。
!!!!

単なる酔っぱらいだ。さきいか片手に昼間からいいちこストレートである。酔っぱらいでも上級者の酔っぱらいだ。子供が近づいたらお母さんが慌てるレベル。
吹き出し入れちゃった。
吹き出し入れちゃった。
さきいかに飽きたらず柿乃種要求である。しかもホワホワした吹き出しまで出すともう、切なさは存在しないどころかマイナスだ。

あ!撮ってるの見つかった!
逃げて-!
逃げて-!
昼間からいいちこの瓶を片手にさきいか食べてる人には、正面から近づいたり写真撮ったりしちゃダメだ。

じゃあこういうのはどうだろう。
あれ、これはこれでありか?
あれ、これはこれでありか?
いや、ないな。さきいか写ってるし。
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いいちこメソッドで他の商品広告を

いいちこメソッドも大分使いこなせるようになった気がする。そこで、対象をいいちこ以外のものにしてみようと思った。
とりあえずいいちこで1枚作った。
とりあえずいいちこで1枚作った。
これを、例えばそう、クリープにしてみるとどうなるか。
無い事もないかなって思う。
無い事もないかなって思う。
これもまぁまぁいいちこメソッドが成立してる気がする。
これもまぁまぁいいちこメソッドが成立してる気がする。
コピーとか色々はともかく雰囲気的には成立していると思う(思わせてくれ)。
コピーとか色々はともかく雰囲気的には成立していると思う(思わせてくれ)。
あれ、いいちこメソッドってクリープでも成立するんじゃないのこれ。でもクリープの場合は小さく写すより、ドカーンと大きく写してコピーも直接的な方が良いように思う。

例えばこんなの。
なんかこういうの前にみた事あるような気がする。
なんかこういうの前にみた事あるような気がする。
ここで飽きたらず、更に色んな商品に手を広げたい。かっぱえびせんならどうなるだろう?
海老が海で「ただいま」はある意味切ない。
海老が海で「ただいま」はある意味切ない。
なんか海老の生い立ちについて色々考えさせられるポスターになってしまった。これではかっぱえびせんを無邪気に「やめられないブー!とまらないブー!」なんて言って食べられない。切なさという点では、まさにいいちこメソッドが目指す物が出来た。

で、海からのアンサーも作った。
「オカエリナサイ」だ。これはまた切ない。
「オカエリナサイ」だ。これはまた切ない。
海で生まれた海老が捕まえられて加工されてスナック菓子にされちゃって、それがまた海に帰ってくる。なんだこの切なさ。戦死した兵士の遺骨が故郷に帰されるみたいな切なさだ。

でも人間の僕が海老に対して感傷的になってもしょうがない。だって僕らは捕食者だから。

でもせめてと、こんな写真を撮った。
本来、イカは海老を食べるでゲソ。でもここでは便宜上イカと海老のマリアージュとしたでゲソ。これを年賀状にするでゲソ。
本来、イカは海老を食べるでゲソ。でもここでは便宜上イカと海老のマリアージュとしたでゲソ。これを年賀状にするでゲソ。
しかしここにいいちこを持ってくると雰囲気は弱肉強食の世界になるのだった。食とは切ないものなのだなぁ。
イカと海老の幸せな家庭を破壊する支配者いいちこの図。
イカと海老の幸せな家庭を破壊する支配者いいちこの図。
次のページでは、切なくなさそうな商品をいいちこメソッドで切ない感じに出来るかチャレンジしてみようと思います。
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Qooで切なさに挑む

切なさでポップな商品に挑戦してみようというのが4ページ目の試みだ。用意したのは果汁20%のオレンジジュース、Qoo。バヤリースみたいな味で美味いと思う。

では最初にいいちこで1枚。
まずはいいちこでいいちこメソッドを例示。コピー考えるの疲れて適当にも程がある。
まずはいいちこでいいちこメソッドを例示。コピー考えるの疲れて適当にも程がある。
このいいちこをQooに変えてみるとこうなる。
切ないのか切なくないのかもうよくわからない。
切ないのか切なくないのかもうよくわからない。
あれ、なんか切ないような、いやでもQooの顔とかよく見ると切なさの欠片も無いし、飲んだら「くー!」って言っちゃってるし。

もいっちょ。
でもなんか切ない様な気がしてきた。いいちこメソッド働いてるよね?
でもなんか切ない様な気がしてきた。いいちこメソッド働いてるよね?
うん、切ないよ、切ない。クーでもいいちこメソッドを使えば切ない感じになるよ。
うん、切ないよ、切ない。クーでもいいちこメソッドを使えば切ない感じになるよ。
Qooみたいな可愛らしい商品でも、いいちこメソッドに掛れば切ない雰囲気が出る。すごいぞ、いいちこメソッド。

クリープメソッドの発見

ところで、Qooの撮影と平行してクリープの写真も撮っていたのだが、クリープの場合は人を一緒に撮ると、なんか良い感じになる事を発見した。いいちこは人が入るとダメだったが、クリープは人の写り込みを許容する。商品イメージによって広告のイメージが変わるのは当然か。
クリープの場合は、なぜかわからないが人が入った方が良い感じになる気がする。
クリープの場合は、なぜかわからないが人が入った方が良い感じになる気がする。
あらいいですね。知らないカップルの後ろで勝手に撮影したんだけど、なんか良い感じのポスターになった。ありがとう、知らないカップル。

こういうパターンもアリだな。
気付いてる人はとっくにお気づきと思いますが、僕は「めしばな刑事タチバナ」の愛読者です。
気付いてる人はとっくにお気づきと思いますが、僕は「めしばな刑事タチバナ」の愛読者です。
クリープにほほえみかける様な雰囲気が良い。クリープに対する賞賛、愛情を感じられる。

でもまじまじ見たらダメだ。疑ってる感じになっちゃう。
疑いの眼差し。
疑いの眼差し。

クリープメソッドといいちこメソッドのコラボ

さて、集大成だ。ここまでで体得したいいちこメソッドとクリープメソッドをQooにぶつけてみようと思う。Qooはいいちこよりもクリープに近いので、クリープメソッドも有効だろう。
これはいいちこメソッドのQoo。意味がよくわからないコピーが妙な切なさを醸す。
これはいいちこメソッドのQoo。意味がよくわからないコピーが妙な切なさを醸す。
このいいちこメソッドのクーにクリープメソッドを被せると、こうなる。っていうか、こうなっちゃった。
おい、アイツをどっかに連れて行ってくれ。一つも切なくないぞ、この写真。
おい、アイツをどっかに連れて行ってくれ。一つも切なくないぞ、この写真。

撮影という名の、妻との戦い

僕の写真撮影は、大体こうやってフレームに入ってこようとする妻との戦いなのです。
海撮ってたら入ってきた。
海撮ってたら入ってきた。
油断すると写りこんでいる。
油断すると写りこんでいる。
いいちこメソッドで「切なく見えるか」っていうか、「見切れる」人に妨害されて困っている、というオチでした。はい、おしまい。

亡くなった父がよく飲んでいた、いいちこ

もう父が亡くなって3年経った。父は、僕が子供の頃はビールばかり飲んでいたが50代を過ぎるとプリン体を気にしてたのかいいちこばかり飲んでいた。

だから、今でもいいちこを見ると父の事を思い出す。いい表情でいいちこを飲んでいた父を。
実際にここでいいちこ飲んだわけじゃないよ。
実際にここでいいちこ飲んだわけじゃないよ。
僕も最近はいいちこを飲む。父のように毎日は飲まないし、酩酊する程は飲まないが、たまに軽く飲む。飲みやすくて良い焼酎だと思う。

さて、記事も書けたしいいちこで一杯やるか。撮影に使ったのがまだ残ってるんだ。
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