特集 2011年11月19日

11月11日は立ち呑みの日

今年の立ち呑みの日は、新橋で飲み歩いてみました。
今年の立ち呑みの日は、新橋で飲み歩いてみました。
11月11日は「立ち呑みの日」だそうで、4枚つづりのチケットを購入して、イベントに参加している立ち呑み屋をまわりましょうという大人のオリエンテーリングがおこなわれている。

初開催となった去年は、京成立石駅周辺のみというディープなエリア限定のイベントだったが(その記事はこちら)、今年は新橋、神田、北千住など、都内10地域を舞台におこなわれた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:ソーセージでバルーンアートに挑戦

> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

事前調査がすでに楽しい

昨年は京成立石界隈だけだったので、どの店に行くかだけをなんとなく考えればよかったが、今年はまず10地域(参照)から選ばなければならない。

立石は去年回ったし、北千住はこの前行ったし、中目黒は似合わないし、三軒茶屋は家から遠いしと、いろいろ悩んでしまうのだが、この悩んでいる時点ですでに楽しい。
駅に着いて、とりあえず胃に物を入れながら、どの店を攻めるか一人で作戦会議。すでに至福。
駅に着いて、とりあえず胃に物を入れながら、どの店を攻めるか一人で作戦会議。すでに至福。
結局、参加店が多い方が楽しいだろうと、31店もが参加するサラリーマンの聖地、新橋をセレクトしてみた。新橋で呑むという行為に、昔からちょっと憧れていたのだ。

もしかしたら、日本シリーズ勝敗予想の街頭テレビインタビューをされるかもしれない。それっぽいスーツを着てこようかと思ったが、寒いのでやめた。

イベントのルール説明

まずやってきたのは博多流というお店。明日から日本シリーズということで、ソフトバンクファンで溢れているかと思ったら、そうでもなかった。

一年振りのイベントなので、どんなルールだったかなと思いだしながら、参加店で売っている4枚綴りの2000円券を購入。
新しいっぽいけれど、なんだか雰囲気のあるお店。さすが新橋の博多。
新しいっぽいけれど、なんだか雰囲気のあるお店。さすが新橋の博多。
チケットは4枚綴りなので、一人酒なら4件回ることができる。
チケットは4枚綴りなので、一人酒なら4件回ることができる。
そうだそうだ、これを1枚出すと、お店によって違う、その日だけの限定セットがでてくるんだった。

このなにが出てくるかわからない福袋感覚が楽しいんだよね。

ちなみに去年は追加オーダー禁止だったが、「酔っぱらいにルールは適応できない」という反省から、細かいことはお店の判断に任せることになったらしい。
今シーズン初の焼酎お湯割りにしてみた。
今シーズン初の焼酎お湯割りにしてみた。
どれもうまいが、特にこのレバーがうまかった。
どれもうまいが、特にこのレバーがうまかった。
ここの店は、焼酎一杯に串焼き三本と生キャベツがでてきた。500円分のチケットなので、かなりお得なセットだと思う。

あまり飲み歩く習慣がないので、立ち呑み屋にくるのは去年のイベント以来だったりするのだが、ガヤガヤした空間で、立ったまま飲み食いをするという、日常からちょっと外れた感じがやっぱり楽しい。私の文章は「楽しい」という文字がやたらと多い。

事務局の人に話を聞いてみた

ここで先に呑んでいた、イベントの事務局をやっている南さんと合流。お互いが酔っぱらう前に、なんとなく趣旨などを立ち話で聞いてみた(立ち呑み屋だから)。
左が南さん。右が私。撮影は編集部の安藤さん。
左が南さん。右が私。撮影は編集部の安藤さん。
事前に置かれたこのパンフレットで、このイベントを知った人が多かったようです。
事前に置かれたこのパンフレットで、このイベントを知った人が多かったようです。
玉置:去年は立石だけでしたけれど、今年は規模が大きいですね。

南:(渋い声で)去年立石でやったイベントがやっぱり面白いなと思って、今年は100年に一度の1が6つ並ぶ年だから(2011.11.11)、事務局を作ってガッチリやってみようかなと。

玉置:どうやって130店も集めたんですか?

南:僕が一軒ずつ飲んだ。300店くらい。一軒もチェーン店がないんですよ。全部個人店。

玉置:よく生きてましたね。

南:立石はほとんどのお店を知っているのでスムーズだったんですけれど、他のエリアは一店、二店知っていている位。こんにちはっていっても相手してくれませんから、とりあえず客として呑んでコミュニケーションとって、こういうのやるんだけれどっていって、もう一回行って。だから二回ずつくらい。

玉置:呑み代が半端なく掛かりそうですね。

南:目に見えないお金がスルスル出て行きました。立ち呑み屋ってキャッシュオンデリバリーが多いから、領収書くださいっていうの、なんかかっこ悪いじゃないですか。イキじゃないでしょ。

玉置:会社の金で呑みに来たのか、みたいな。

南:だから身銭で呑んでいたけれど、最後の方は「ごめんね、かっこ悪いけれど」ってもらってた。
なんだか南さんの肝臓とか懐を心配したくなるエピソードである。それにしても300軒って、立ち飲みとはいえすごいな。

そんな苦労話を聞いた上で、私はただのイベント参加者として、なにも考えずに楽しい酒を飲もうと思う。

話はもう少し続きます。
このイベントを楽しみにしていたという隣の人に、新橋最高峰の立ち呑み屋を教えていただいた。次はそこだ。
このイベントを楽しみにしていたという隣の人に、新橋最高峰の立ち呑み屋を教えていただいた。次はそこだ。
イベントのチケットを持っている人同士だと、同じ野球チームの帽子をかぶっている位の親近感があるよ。
イベントのチケットを持っている人同士だと、同じ野球チームの帽子をかぶっている位の親近感があるよ。
玉置:そこまでしてやるイベント、一番の趣旨はなんですか。

南:この立ち飲みのライブコミュニケーション。席があると固定されちゃうので、隣の人って決まっちゃいますよね。だけど立ち飲みであれば、次の店に行けばいい。一軒いって、もう一軒いって、いろいろな人に会える。スペインのバル文化みたいに、そういう飲み方のスタイルを広げたい。

玉置:店を変えることが、席替えタイムみたいな感覚なんですかね。

南:店を出なくても、席が決まっていないから、トイレ行ったあとなんかに、話したいところへグラスを持ってちょっと移動もできるでしょ。

玉置:確かに。前回も溶け込みすぎて、どこまでが知り合いなのか、自分でわからなくなる時がありました(主に酔っていたから)。

南:地元の立石だと、必ず一晩に三、四件いくけど、どこにいっても知っている顔が少しずついる。飲み屋でたまにあうくらいの知り合いが楽でいいんです。名前も知らないし、仕事も知らないし。聞かないですもん。

玉置:お店の人ともそんな感じですか?

南:みんな会社で密な関係があるのに、ここでも密だと非常につらいですね。だから軽い感じで、忙しければ話さない。「ちょっととってもらえます?」くらいの会話でいいんです。「久しぶりだね」っていわれて、それっきりだったりするけれど、それでいいんですよ。
南さん、すごい。なにがすごいって、話を聞いていたら、飲み歩くことに対する罪悪感がどんどんと薄れていったのがすごい。

撮影係兼話し相手としてきてもらった安藤さんと二人で、「こういう呑み方をしたいよね!」と誓いあい、二軒目へと向かった。
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二軒目、「meatwo」

二軒目は、安藤さんと意気投合していたプロの酒呑みっぽい方が「新橋では最高峰の立ち呑み屋だよ!」と絶賛していた店へといったのだが、やはり人気店らしく残念ながら満席。

並んでいる人はいないので、少し待っていれば入れるような感じではあったけれど、それも野暮かなと別の店へと向かう。
新橋は私にとって未知の街なので、移動している時間もお楽しみのひとつ。
新橋は私にとって未知の街なので、移動している時間もお楽しみのひとつ。
さすが最高峰の店、満員だった。悔しいから店の名前は書きません。
さすが最高峰の店、満員だった。悔しいから店の名前は書きません。
怪しげな呼び込みをかわして階段を上り、向こう側が見えない扉を開けて入店したのは、「meatwo」というロックなバー(ってパンフレットに書いてある)。
客引きのおねえちゃんをスルーして二階へ。男だけの飲み歩きは、スルーする力が大切だ。
客引きのおねえちゃんをスルーして二階へ。男だけの飲み歩きは、スルーする力が大切だ。
ここから編集部工藤さんも合流。一件目でいきなりここに連れてこられて、不安そうな表情だ。
ここから編集部工藤さんも合流。一件目でいきなりここに連れてこられて、不安そうな表情だ。
こんなところ、といっては失礼だが、こういう機会でもなければ、絶対に怖くて開けられない扉だが、ここが居心地のいい店だったのだ。
いわゆる立ち呑み屋ではなく、中央のママを囲むようにカウンターがある。通常は椅子があるのかな。
いわゆる立ち呑み屋ではなく、中央のママを囲むようにカウンターがある。通常は椅子があるのかな。
隣には、やしきたかじん風とU字工事の益子風の酔っぱらい(褒め言葉)。
隣には、やしきたかじん風とU字工事の益子風の酔っぱらい(褒め言葉)。
なんだ、この店。入店して30秒で馴染んで、すぐに居合わせたお客さんと乾杯をしてしまった。

ママの話だと(飲み屋でママっていう単語を口に出したの、人生で初かも)、今日は立ち飲みイベントのお客さんが想像以上に多いそうで、いつもとはもうちょっと違った雰囲気なんだとか。

とはいえ、私たちの周りは、あきらかにイベント関係なしの常連さんだ。
ここでのチケットメニューは、駄菓子+ワンドリンク。
ここでのチケットメニューは、駄菓子+ワンドリンク。
店に入って最初のオーダーから知らない人達と乾杯だ。
店に入って最初のオーダーから知らない人達と乾杯だ。
「まだまだ若いな」と言われて、「若いなんて言われるのが新鮮ですよ!」と喜ぶ安藤さん。
「まだまだ若いな」と言われて、「若いなんて言われるのが新鮮ですよ!」と喜ぶ安藤さん。
「エグザイル系の顔をしているね」「エグザイルだって」「あはははは、エグザイル」といわれた工藤さん。
「エグザイル系の顔をしているね」「エグザイルだって」「あはははは、エグザイル」といわれた工藤さん。
話が無限ループに入ったところで、奥から料理長が自作のイラストを持って登場。
話が無限ループに入ったところで、奥から料理長が自作のイラストを持って登場。
他の常連さんから顔に自分の似顔絵を張られるという仕打ち(愛情表現)。ロックバーってこういうところなのか。
他の常連さんから顔に自分の似顔絵を張られるという仕打ち(愛情表現)。ロックバーってこういうところなのか。
「俺も昼間は仕事しているんだよ」

というセリフが印象的だった。

また一緒に呑んで、連れに絡んでほしい(いい意味で)。
俺と指相撲やろうぜ!(とはいっていない)
俺と指相撲やろうぜ!(とはいっていない)
また来ます。すぐに来ます。
また来ます。すぐに来ます。
こういう店は、割高なイメージがあったけれど、メニューを見たら、普通の居酒屋とそんなに変わらない価格帯だった。新橋に無理矢理用事を作ってでも来たい店だ。

立ち呑み屋とはちょっと違うけれど、こういう自分の知らない店、そして異文化のお客さんと出会えるのがこのイベントのいいところ。

ちなみにママはレッドツェッペリンのコピーバンドでボーカルをやっているそうです。

三軒目、「一口餃子 姑娘(くーにゃん)」

なんだか気分が高揚したまま、今度こそはと新橋最高峰の立ち呑み屋へと向かったが、やっぱり満席。

この日が金曜日ということもあり、他のイベント参加店も満席で入れないところがけっこう多かったので、新橋にはまた別の日に来ようと思う。飲み歩き、楽しい。

これ、南さんの思う壺ってやつですかね。
この店にはまた入れず。なかなか最高峰への道のりは険しいね。
この店にはまた入れず。なかなか最高峰への道のりは険しいね。
その後、続けて三軒入れなかった。来年の11月11日は金曜じゃないといいな。
その後、続けて三軒入れなかった。来年の11月11日は金曜じゃないといいな。
ギリギリ入れたのは、「一口餃子 姑娘(くーにゃん)」というお店。ぜんぜん立ち呑み屋ではない。
ギリギリ入れたのは、「一口餃子 姑娘(くーにゃん)」というお店。ぜんぜん立ち呑み屋ではない。
チケットを出したら、問答無用でハイボールが出てきた。
チケットを出したら、問答無用でハイボールが出てきた。
ここのチケットメニューはハイボールとモヤシナムル。椅子もあるし、一件目だったら迷わず餃子を追加オーダーだな。
ここのチケットメニューはハイボールとモヤシナムル。椅子もあるし、一件目だったら迷わず餃子を追加オーダーだな。
同じくチケットで来ていた二人組と乾杯。パンフを見ながら、どこがオススメかを情報交換するのが楽しい。
同じくチケットで来ていた二人組と乾杯。パンフを見ながら、どこがオススメかを情報交換するのが楽しい。
この店は、立ち呑み屋ではなく椅子のある餃子屋さん。できることならしっかりと腰を据えて呑みたい感じの店だ。

ここで餃子を頼みだしたら、間違いなく終電まで根が生えてしまうので、最後のチケットを使いきるためにハイボール一杯で後にする。
安藤さんのカメラに撮られていた餃子がうまそう。やっぱり一皿くらい注文すればよかった。
安藤さんのカメラに撮られていた餃子がうまそう。やっぱり一皿くらい注文すればよかった。
店を出たところで、去年の記事を読んで来たという方に声を掛けていただいた。ありがとうございます!
店を出たところで、去年の記事を読んで来たという方に声を掛けていただいた。ありがとうございます!

四軒目、「新橋 駿」

残り一枚となったチケット。やはり最後は立ち呑み屋らしいところがいいかなということで、「新橋 駿」という店にしてみた。牛ホルモンがウリらしい。

ここもどうにかギリギリ入れたという感じだったが、この混み合った感じ、立ち呑み屋だと苦にならない。入れないのは困るけど。
隅っこの狭い席ならということで、どうにか入れた。
隅っこの狭い席ならということで、どうにか入れた。
なかなかの人口密度だが、これくらいが賑やかでいいような気もする。
なかなかの人口密度だが、これくらいが賑やかでいいような気もする。
ここのセットはハイボールとハチノス酢味噌和え。隣に張られた料理教室が気になる。
ここのセットはハイボールとハチノス酢味噌和え。隣に張られた料理教室が気になる。
ここも予想以上のイベント参加者がきたそうで、ハチノスは売り切れ。代わりに出てきたのがアンコウの酒蒸し。素晴らしい。
ここも予想以上のイベント参加者がきたそうで、ハチノスは売り切れ。代わりに出てきたのがアンコウの酒蒸し。素晴らしい。
二軒目から参加だった工藤さんが、余ったチケットで二杯目を頼むという反則技に挑戦。
二軒目から参加だった工藤さんが、余ったチケットで二杯目を頼むという反則技に挑戦。
すると今度は春菊と山芋のお浸しがでてきた。この店、いい店だ。
すると今度は春菊と山芋のお浸しがでてきた。この店、いい店だ。
壁に寄り掛かって呑むと、ゴルゴ13気分が味わえていいですよ。転ばないし。
壁に寄り掛かって呑むと、ゴルゴ13気分が味わえていいですよ。転ばないし。
チケットを持っているグループに話しかけたら、ここにもデイリー読者が。一年前に書いた記事の反応を生で見られて感動。
チケットを持っているグループに話しかけたら、ここにもデイリー読者が。一年前に書いた記事の反応を生で見られて感動。
この店もやっぱりいい店だった。メニューには魅力的な牛ホルモン料理の数々。混みあっているところにきたけれど、店員さんの対応がとてもよかった。

立ち飲みだからか、全部で四杯呑んでも、それほど酔っているという感じでもない良い加減。

新橋のサラリーマン、うらやましい。電車に乗って、また来よう。

いいイベントでした

工藤さんがどの店に入っても、「この店、絶対おいしいですよ!」と繰り返していたが、確かに今日の店はどこも再来店したくなるアタリだった。

新橋のレベルが高いというのもあるのだろうけれど、この日のために300店飲み歩いた南さんが紹介している店だから、というのも大きい気がする。

イベントの日じゃなくても、新橋以外も、パンフレットに載っている店を回ってみたい。
これはイベントとは関係ない五軒目で食べた牛肉の味噌焼き。
これはイベントとは関係ない五軒目で食べた牛肉の味噌焼き。
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