特集 2012年1月1日

カンニング紙切りにたどり着くまでとその結果

右がカンニングなし、左がカンニングあり
右がカンニングなし、左がカンニングあり

ぼくは昨年、紙切り芸人さんに話を聞いたり、自分でも紙切りをしてみたりと何かと紙切りに縁のある一年だった。と言ってもその2回きりだけど。

で、その2回の紙切り体験の中で、ぼくなりのコツを掴んだので、それをかくし芸として披露してみることにしてみた。

※これは年末のイベント「ドリームジャンボかくし芸大会」のふりかえり記事です。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

Appleの力を頼ってかくし芸

実は、デイリーポータルZ年末イベントのテーマが「かくし芸」と決まったさい、まっさきに思いついたのが「落語」だった。落語を最新のIT機器・iPodの力を借りながらやれば簡単にできるのではないか? と思ったのだ。

お手本の落語をiPodに入れておき、それを聞きながら落語をする。そうすれば落語を覚えなくても落語ができる! おぉ、これはすごい思いつき!

もしこれが成功すれば、あの志ん生や文楽といった昭和の大名人の名演をリアルに再現することだってできるのではないか!? 年末イベントの余興としては十分すぎるほどのかくし芸だ。
ということで実際やってみた。
権太楼の十八番「仙気の虫」
権太楼の十八番「仙気の虫」
む、難しい……。

試しに柳家権太楼の「仙気の虫」という話でやってみたのだけど、しゃべるペースが急に早くなったりすると、言葉が聞き取れなかったりして、口ごもってしまう。ペースをあわせてしゃべるには何回も聞いてセリフを覚えないと無理だ。

さらにしゃべるとき、落語特有の登場人物を演じ分けるため演者が左右をむく上下(かみしも)をきる所作やその他の動きもセリフごとに覚えなければいけない。
えー……セリフが間に合わない
えー……セリフが間に合わない
結局、「落語をカンニングしながらやるのに、セリフや所作を全部覚えなきゃいけない」とうことが判明した。
なんだか「健康のためなら死んでもいい」みたいなロジックになってしまって意味がわからなくなってきたので、とりあえず落語は諦めることにした。
諦めた!
諦めた!
これが「人間が挫折するところをスナック感覚で楽しめるサイト」の真骨頂である。

紙切りならたぶんちょっと練習しただけでいける

このレベルはできる
このレベルはできる
落語をスッパリ諦めたぼくにはもう紙切りしか残っていない。紙切りは落語がダメだった場合の保険で考えていたものだ。

以前、記事で紙切りをしたときに気づいたのだけど、iPadで参考画像をカンニングしながら切るとけっこう上手く切れるのだ。

そうだ、紙切りでいこう。この時点ですでに27日。イベントが29日なのでもう明日しか残ってない。そうなるとハサミが必要だ、ハサミを買おう。この期に及んで悠長にハサミである。
まず形から入る
まず形から入る
銀座の伊東屋でかなりいいハサミを購入した。2000円だ。紙切り芸人さんをインタビューしたときに見せてもらったハサミの形にけっこう近いものが買えた。

適当な練習でごまかす

まず、工事現場でよく見る工事の道路標識を切ってみた。
!
左が画像を見ながら切ったもの、右が何も見ずに切ったものだ。

これはけっこういいセン行ってるのではないだろうか? 見ずに切った方もひどいなりになんとか形にはなっている。

自信を深めたぼくは息子にリクエストを聞いてみた。息子のリクエストは「ダイオウグソクムシ」。
一瞬絶句したものの、ああいう足や触覚のある生き物の方が切ったあとに何かがわかりやすくなって良いのだ。で、できたのがこれだ。
足の数が左右で違う……
足の数が左右で違う……
……まあ、体調の良し悪しとかあるし。それよりなによりもちょっと下手なぐらいが面白くていいんじゃないのか? といういやらしい計算もあり、練習はこのへんで打ち切った。

デモンストレーションは上手く行った

さて、当日。まずはデモンストレーションということで、得意のイカを切った。
イカは舞台上で破れてしまった
イカは舞台上で破れてしまった
「イカを切った」と書くと、なんだか舞台で生のイカをさばいたように聞こえるけれど、そっちじゃなくて、紙のほうだ。

安藤さんに「見なくてもうまいですねー」などと褒められてちょっと得意げになってしまう。
さて、次はいよいよリクエストでのカンニング紙切り。

来場者の方にリクエストをとると……「観覧車」ときた。観覧車、細い鉄骨が幾筋も入った、思い浮かべるだけでもその難しさで吐きそうになるお題だ……。さすがデイリーポータルZの読者、容赦がない。

しかも、一番最初にライターの北村さんが言ってくれた「スーパーマリオ」という切りやすそうなリクエストは「それ、昨日で終わっちゃったんですよねー」という定番ギャグをやるために無駄にしてしまったので、どうしても観覧車を切らざるをえない……。

ふるえる指で画像検索を行う。

すると、中抜きをしなくてすみそうな簡単な観覧車のイラストが見つかった。
中抜きしなくてよさそうな観覧車を発見
中抜きしなくてよさそうな観覧車を発見
「これでいいですね」と強引にこれに決めてしまい、さっさと切り始める。で、できたのがこれだ。
言い訳しません
言い訳しません
分子構造ではない。観覧車である。

容赦のないリクエストは更に続く

なんとか取り繕って観覧車を切り終わった。

次は「竜」とか「うさぎ」みたいなもうちょっとわかりやすくて切りがいのあるリクエストを……と思っていると「さっきの検索したイラストのページにあったブランコ」というリクエストが来た。

簡単なのは嬉しいのだけど、ブランコって切って面白いかな……。しかし、リクエストなので切らなければならない。頑張って切る。
いまさらだけど、これブランコじゃないような気がする
いまさらだけど、これブランコじゃないような気がする
切っている間、司会の安藤さんと小野さんがなんとかトークで繋いでくれたっぽいけど、話した内容はまったく憶えていない。で、完成したブランコがこれだ。
何だろうこれ?
何だろうこれ?
もう、何も言うまい。

人工物は難しい

修行して出なおしてきます
修行して出なおしてきます

そういえば、紙切り芸人さんにスカイツリーを切ってもらうようにお願いしたら「人工物は難しいんですよ、形がかっちり決まってるから、ごまかしが効かないんです」といいながら切ってくれたことを思い出した。

今、ひとりその言葉の重みをかみしめている。
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