特集 2012年1月25日

三重で発見!ルーブル美術館(っぽい美術館)

まさかのスケールで迫ってくるルーブル美術館が三重にあった!?
まさかのスケールで迫ってくるルーブル美術館が三重にあった!?
世界最大級の美術館のひとつであるルーブル美術館。芸術に全く興味がなくても名前くらい聞いたことがあるだろうし、ちょっと行ってみたいと思わせる超A級スポットだ。

そうはいっても、なかなか本物のルーブル美術館まで行く機会はないのだが、なんと日本にいながらにしてルーブル気分が満喫できるスポットがあるらしい。
1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

前の記事:病気ライスでお腹いっぱい!

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日本でルーブル気分にひたれるスポット

ルーブル美術館。

学生時代、芸術系の大学に通ってはいたものの、周りにちょっとイケスカナイ感じのアーティスト気取り学生(とりあえずベレー帽をかぶっている系)が大量にいたため、逆に芸術的なものに対する興味がストップ安状態、むしろ嫌悪感すら抱くようになってしまったのだが、そんなボクでも名前を知っているくらい超メジャーかつ一流の美術館だ。
三重県の榊原温泉
それだけメジャー級の美術館ならば、芸術にまったく興味ナシな人間であってもちょっと行ってみたくなるもの。しかしルーブル美術館ってどこにあるの? ……ルーブル? ……あ、パリにあんのか。さすがにパリにまで行く情熱はわいてこないよ。

そんなアナタに耳寄りな情報! 日本にいながらにしてルーブル気分をおおむね味わってしまえる場所があるらしいのだ。

その名も「ルーブル彫刻美術館」。うーんなんというか……パチモン感がビンビンににじみ出ている名前。コレは気になりますゾ!

田舎町に突然巨大な芸術作品が!

三重県の榊原温泉
三重県の榊原温泉
さて、ルーブル彫刻美術館を目指してやって来たのは、最寄り駅の近鉄榊原温泉口駅。名前から分かるように温泉地だ。

温泉地の周辺には、温泉客を当て込んで作られたビミョーな規模の蝋人形館やトリックアート美術館、3Dシアターなんかがありがちだけど、問題のルーブル彫刻美術館もその手の施設なのかな? と思いながら歩いて行くと……。
のどかな田舎町に……
のどかな田舎町に……
なんかいるー!
なんかいるー!
周りの風景から浮きまくってる異空間
周りの風景から浮きまくってる異空間
ズドーンと、高さ10メートルはあろうかという巨大な像が建ち並んでいる、そう、ここが「ルーブル彫刻美術館」なのだ!

……それにしてもこの像たち、サイズ感があからさまに狂っているのはともかくとして、左手にある自由の女神はどー考えてもルーブル美術館とは関係ないでしょ!?
こちらも高さ3~4メートルはあると思う
こちらも高さ3~4メートルはあると思う
そして側面の壁には、ナポレオン・ボナパルトを描いた例の有名な絵と、さらに有名なモナ・リザの絵! ……をなぜか立体レリーフにしたものが。

もちろん、こちらも巨大ッ!
立体にしたせいで、あの美しい微笑がなんだか不気味に
立体にしたせいで、あの美しい微笑がなんだか不気味に
さらに正面入り口側に回ると、再びミロのビーナス、サモトラケのニケ(勝利の女神)、自由の女神の三体(当然巨大!)。
こんなに巨大な像をなんで何体も作ってしまったのか
こんなに巨大な像をなんで何体も作ってしまったのか
この「とにかくなんでもかんでもデッカくしとけばゴージャスやろ!? しかもいっぱい作ったれ!」というセンス……オイラ、脳がピリピリしてきちゃったよ。

誰もいないにもほどがある……

さて、とりあえず中に入ろうかとチケット売り場らしきところに向かったのだが、中をのぞきこんでも誰も……いない。
電気はついているのに無人です
電気はついているのに無人です
えーっ、ここまではるばるやって来たのにまさかのお休み!?

絶望的な気持ちになりながら入口付近をウロウロしていると、ガガーッと自動ドアが開いた。休みということではないのだろうか、でも館内は妙に暗いし……。
こちらも人の気配ゼロ
こちらも人の気配ゼロ
とにかく、誰かいないものかと「すみませーん、すみませーん」と大声を上げるも無人の館内にむなしく響くばかり。
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しかしココ、明らかにお金を払ってからしか入っちゃいけなそうな場所なんだけど、こんな無防備に入れちゃっていいのかしらん。ボクが盗賊だったら色んなモノ取り放題だぞっ。

いっくら声を上げても反応ないし、かといって勝手に中に入って見学しちゃうゴーカイさもないので(犯罪だっ!)再び外に出てみると、駐車場のすみーっこの方で掃除してる人がいるのだ。
駐車場もガラッガラ
駐車場もガラッガラ
藁にもすがる思いで駆け寄って……。
アンタが受付の人だったのかいっ!
アンタが受付の人だったのかいっ!
駐車場をいつでもキレイに、という心がけは結構なことですが、せめて入口付近に注意は払っておいて下さいッ!
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本家ルーブル美術館との意外な関係

……ということで無事、チケットを購入することができたのだが、その際にこんなやりとりがあったのだ。

「美術館だけのチケットにしますか? お寺とセットのチケットにしますか? セットだとちょっと割引になりますけど」

割引してくれるのはいいけど、美術館とお寺がセットになったチケットってどういうことなの? ……その理由は後ほど明らかになるのだが、とりあえずお得なセット割引のチケットを購入して中に。
おばちゃんが照明をつけてくれたので、明るい中で鑑賞できます
おばちゃんが照明をつけてくれたので、明るい中で鑑賞できます
他にお客さんが誰もいないこともあり、おばちゃんにマンツーマンで解説してもらいながらの見学。

「ここに展示されている作品は、本物のルーブル美術館が所蔵している作品から直接型を取って作った複製品なんですよ」

えーっ、直接型って……そんなことしていいの!?
本物から型を取ったと思うと感動も増すというもの
本物から型を取ったと思うと感動も増すというもの
外観からしてザ・パチモン感がプンプンしていたこのルーブル彫刻美術館。

しかし、実は本家ルーブル美術館と世界で唯一姉妹館提携して本家の全面協力の下に作られており、さらに建物自体は建築家の黒川紀章さん(都知事選の時のイメージが強いですが)によって設計されたものなんだとか。

め……メチャクチャちゃんとしてる美術館なんじゃないの!
教科書でしか見たことのないような有名な作品の数々が
教科書でしか見たことのないような有名な作品の数々が
ありがたみがなくなるくらいズラズラーッと並べられています
ありがたみがなくなるくらいズラズラーッと並べられています
古代エジプト最大の発見ともいわれるロゼッタ・ストーンの複製品もありました。大迫力!
古代エジプト最大の発見ともいわれるロゼッタ・ストーンの複製品もありました。大迫力!
それにしても、どうして日本の三重県にある、しかも結構へんぴな立地のこの美術館が世界で唯一ルーブル美術館と姉妹館提携することができたのだろうか。
本家ルーブル美術館の館長と、竹川さん
本家ルーブル美術館の館長と、竹川さん
なんでも、ここの創設者である竹川勇次郎さんが本家ルーブル美術館を訪れた際に大感激し「この感動を日本にも持って帰りたい!」ということで熱心に交渉&私財を投入しまくったそうなのだ。
オープニングセレモニーの際には本家ルーブル美術館の会長さんも来場
オープニングセレモニーの際には本家ルーブル美術館の会長さんも来場
しかし、それだけ由緒正しい美術館となると、気軽に撮影するわけにはいかないのでは……。おそるおそる聞いてみると。
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ルーブル美術館の姉妹館なのにいいかげん!

……と思ったら、ヨーロッパの美術館は日本とは違って写真撮影などに寛容なところが多いらしい。
コレにはさすがにビックリしたけど
コレにはさすがにビックリしたけど
「おさわり自由」というルールにも、目の不自由な人たちも芸術を楽しんで欲しい、という理由があるそうなのだが、この辺は複製品だらけの美術館ならではのサービスといえるでしょうな。
なめらかかつなまめかしい触感……普通の美術館では味わえない体験です
なめらかかつなまめかしい触感……普通の美術館では味わえない体験です
いくらタッチオッケーといわれても、ちょっと触るのに抵抗のある作品もありますが
いくらタッチオッケーといわれても、ちょっと触るのに抵抗のある作品もありますが
本物のルーブル美術館の作品から型取りしたんだから当たり前かもしれないけど、すごい名作揃いで観ててもさわってもなかなかの満足度。

外観を見た時にはかなりどーかと思いましたが、館内はフツーの美術館としても十分楽しめそう。

日本のルーブル・オリジナル作品も

しかし他のどんな作品よりも、さっきからずーっと気になっているのが、館内のど真ん中にズドドーン鎮座して異様な存在感を放ちまくっている超・巨大な仏像。
2階ぶち抜きじゃないと入りきらない大きさ!
2階ぶち抜きじゃないと入りきらない大きさ!
コレは「十一面千手千眼観音像」といって、その名の通り11個の顔と、1000本の手、さらに1000個の眼を持つ観音像なのだそうな。

「十一面千手千眼観音像」と名のつく像は日本各地にあるということだが、実際にその数の手や眼がついているものはおそらくコレだけとのこと。
こんだけ大量に手がついているのに、背中はかきづらそうな構造ですね
こんだけ大量に手がついているのに、背中はかきづらそうな構造ですね
確かに、身体の両脇から気持ち悪いくらいミッチミチに生えまくった手は1000本くらいありそうだし、メインの頭の周りからニョキニョキ生えてる顔も11個くらいはあるだろう。しかし1000個の眼ってどこにあるの?

おばちゃんに聞いたところ、1000本生えた手の平に各1個づつ眼がついているとのこと。
ちょっと分かりづらいけど、手のひらに眼のマークが描かれています
ちょっと分かりづらいけど、手のひらに眼のマークが描かれています
そ、そういわれてみれば確かに眼っぽい模様が手の平に刻まれているような……。

しかし、1000本の手に1個づつの眼=1000個、11個の顔に2個づつの眼=22個。計1022個の眼なのでは……?
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ところで……コレもルーブル美術館にあるものなんですか?

「いや、当館のオリジナルです」

姉妹館なのに独自の珍妙な仏像(しかも一番デカイ)を勝手に展示していいもんなんでしょか。
まあ、この阿修羅像も明らかにルーブル関係ないですが
まあ、この阿修羅像も明らかにルーブル関係ないですが
チャップリンやサッチモのフィギュア&アンティーク・ドール。これなんかも本家ルーブル美術館にはないだろうなぁ……
チャップリンやサッチモのフィギュア&アンティーク・ドール。これなんかも本家ルーブル美術館にはないだろうなぁ……
それにしても、レプリカとはいえこれだけの大量の彫刻たち、そして巨大な仏像を作るには莫大な資金が必要だったハズ。創設者である竹川勇次郎さん、そんなにお金持ちだったの?

「まあ……隣のお寺の住職なんで」

あ、だからお寺とのセット券!

しかし「坊主丸儲け」とはよく聞くけれど、こんな美術館をポーンと建ててしまえるくらい儲かるもんなんですかね?

オープンが1987年ってことで、日本もまだまだバブリーだったということもあるんだろうけど……。
ちなみに美術館に併設されたレストランの名前は「れすとらん味露」……ミロのビーナスから取ったんでしょうね、やっぱ
ちなみに美術館に併設されたレストランの名前は「れすとらん味露」……ミロのビーナスから取ったんでしょうね、やっぱ
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美術館もすごかったがお寺もまた……

明らかなパチモンかと思いきや、実は本家からオフィシャルの姉妹館提携をされていて、……それでもやっぱりちょっとパチモン感がただよってしまっていた「ルーブル彫刻美術館」。膨大な数の作品たちを見て回ったのでお腹いっぱい。もう帰ろうかと思っていると、

「お寺の方も面白いから見ていって下さいねー」

そ……そうだ、セット券を買ったんだった。

ということで向かったお隣の大観音寺。さっきのルーブル彫刻美術館もだいぶイカれてたけど、こちらも相当なものだった。
まず、駐車場の脇に立ち並ぶカエルの楽団
まず、駐車場の脇に立ち並ぶカエルの楽団
そして境内になぜかある、巨大なゲタと猫ちゃんの楽団!
そして境内になぜかある、巨大なゲタと猫ちゃんの楽団!
うーん……ここ、寺だよね!?

ルーブル彫刻美術館のインパクトが吹き飛ぶほど、いきなり変なオブジェが目白押しなのだ。
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しかも「作品には絶対に手をふれないで下さい」の注意書きが。ルーブルの芸術作品はおさわりオッケーだったのに、猫ちゃんはタッチ禁止とは……世の不条理を感じずにはいられないのだ。

他にも、にっこりお福、やるき達磨、ガン封じ・神獣白澤、さらにはカラオケ観音など、普通のお寺ではあまりお見かけしない珍妙な像たちが建ち並んだ境内。この寺、どーかしてるよっ!
にっこりお福
にっこりお福
やるき達磨
やるき達磨
ガン封じ・神獣白澤……な、なんだこの奇妙奇天烈な生物は!?
ガン封じ・神獣白澤……な、なんだこの奇妙奇天烈な生物は!?
こちらはカラオケ観音……なぜ作った!?
こちらはカラオケ観音……なぜ作った!?
なんか異常にイイ顔をした大黒様もいました
なんか異常にイイ顔をした大黒様もいました
そして、なによりも圧巻だったのが高さ33メートルの黄金大観音!
ズドーンとそびえ立つピッカピカの観音様!
ズドーンとそびえ立つピッカピカの観音様!
ホント、デカイんだコレが……
ホント、デカイんだコレが……
この観音様の正式名称は「純金開運寶珠大観世音菩薩」といい、なんと純金製らしいのだ(純金が貼り付けてある、ということだと思うけど……)。純金製の像としては世界最大のものなんだとか!?
観音様の足下には巨大な手が……観音様の手はこれくらい大きいですよ、というサンプルなのかな?
観音様の足下には巨大な手が……観音様の手はこれくらい大きいですよ、というサンプルなのかな?
さらに裏手にまわるとカッパの楽団が
さらに裏手にまわるとカッパの楽団が
こちらはかなり劇画調なタッチ
こちらはかなり劇画調なタッチ
そしてカッパの頭上を見上げると、山の斜面に金の天狗たちが!
そしてカッパの頭上を見上げると、山の斜面に金の天狗たちが!
こいつらも純金製だったりするのかな……?
こいつらも純金製だったりするのかな……?
お金と熱意で本家ルーブル美術館を説得して、姉妹館を日本に作ってしまった「ルーブル彫刻美術館」もかなりのインパクトだったけど、「純金&巨大でドーンや! あとは色んなオモロイもの作っておけ!」というパワーみなぎるこちらのお寺も相当スゴイ!

それにしても、ルーブルだけではなく巨大な純金観音まで……どれほど莫大な資金がかかっているのか想像もつかないよ。はたしてフツーにお寺をやっているだけでそんなに儲かるものなのか……!? ナゾは深まるばかりである。
こんなバカデカイ釜も置かれていました。全体的にToo Much……
こんなバカデカイ釜も置かれていました。全体的にToo Much……

熱意&資金力でA級の美術館に!

「日本にルーブル美術館を持ってくるんや!」という思いつき自体はかなりどーかしているし、B級スポットになってしまう可能性を多分にふくんでいる決意だったと思われるが、そんなB級思いつきを熱意&資金力で、A級な美術館にしてしまった創設者のおっちゃんのパワーには脱帽!

そして、本家ルーブル美術館から姉妹館提携まで取り付けたにも関わらず、余計な作品を展示して結局B級感をかもし出してしまっている「ルーブル彫刻美術館」ボクは好きですよ。……でも、どうして全然お客さんがいないのか。場所のせい……かな?
●ルーブル彫刻美術館・大観音寺
三重県津市白山町佐田
【電話番号】059-262-1111
【営業時間】午前9時~午後5時
【定休日】年中無休
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