特集 2012年2月6日

誰でも借りられる誰でも置けるまち角の図書館

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大阪の池田市に「まち角の図書館」という、誰でも自由に本を借りられて、読み終わった本を置いておけば誰かが借りいくという、共有本棚のようなものがあるらしい。

面白そうなシステムだ。一体どんな風になっているのか、どんな本が置かれているのか。気になったので見に行ってきた。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:マスクで凧揚げ

> 個人サイト owariyoshiaki.com

池田市・THE・パワフル

いざ行こうと調べると市のホームページにまち角の図書館の場所は書いてあるのだが、「赤い橋の西」とか「防災センター前」みたいなググッても出ないけど地元の人にはすぐわかる。みたいな書き方。
初めて来た、石橋駅。
初めて来た、石橋駅。
じゃあ、地元の人に聞きながら一駅くらい歩けば見つかるだろう。という魂胆で池田市駅の隣、石橋駅にやってきた。
おっさんのピース写真にウルトラマン、ゴジラの人形。おつりを天井からぶら下げた バケツに入れるスタイルの八百屋。
おっさんのピース写真にウルトラマン、ゴジラの人形。おつりを天井からぶら下げた バケツに入れるスタイルの八百屋。
なぜ洋服屋さんで信号が点滅しているのですか。
なぜ洋服屋さんで信号が点滅しているのですか。
まずは周りを見てみるか。と、駅前の商店街を歩くと店構えがパワフル。懐かしい、とか、変とかではなく何か圧倒されるような、パワフルさ。
イチゴの食べ方の中でイチゴ大福が一番好き。
イチゴの食べ方の中でイチゴ大福が一番好き。
あと、和菓子屋が多い。スーパー1店だったのに対して和菓子屋4件あった。甘党。

イチゴ大福が食べたかったので買うついでにまち角の図書館について聞いてみる。

僕「すみませーん、イチゴ大福ひとつください」

おばちゃん「はいよー、一個ね」

僕「はい。あ、あと、まち角の図書館について聞きたいんですが」

おばちゃん「え、知らん」

えっ、即答!?

おばちゃん「あ、兄ちゃん写真撮るんやろ(多分目立つカメラを首からかけていたから)、ほら、これ、綺麗な包みにせなな」
おばちゃんは撮影用にこれを飾りたてようとしていた
おばちゃんは撮影用にこれを飾りたてようとしていた
僕「いや、写真は・・・あの、まち角の…」すが」

おばちゃん「やから知らん!」

ええっ!?ごめん…。

おばちゃん「せやなー、写真撮るんやったら二個入れた方がエエんちゃうか~」

僕「あ、いや、写真は撮らないので…(撮るけど)」

おばちゃん「そうかー、じゃあ包み何でもエエな。ほな230円な。ありがと~。」
イチゴ大福は美味かった。
イチゴ大福は美味かった。
な、何も聞けなかった…。

池田市のパワフルレベルはかなり高い。これは聞き込みが大変なのでは…。見つからなかったらどうしようと思いつつイチゴ大福を食べながら歩いていると商店街を抜けた。すると。
あった!
あった!

発見

駅前すぐ近く、商店街を抜けたところにまち角の図書館があった。
予想より立派。
予想より立派。
おぉ、これがまち角の図書館。結構大きくて本もいっぱい入っている。
江国香織さんの小説。
江国香織さんの小説。
漫才師の中川家剛さんの本。
漫才師の中川家剛さんの本。
どんな本が入っているんだろうと見てみると、まったく知らない本もたくさんあるけれど、作者やタイトルを知っているような小説などもたくさんある。
華麗なる一族、上巻だけ無い。誰かが今読んでいるのか。
華麗なる一族、上巻だけ無い。誰かが今読んでいるのか。
屋根は付いていないけれど濡れたりしているものは無くて本は綺麗なものばかり。大切にされている感じがする。
返却、寄贈コーナー。
返却、寄贈コーナー。
折角なので何か借りていきたいものだが、家が遠いので返すことが難しい。なので、何か寄贈することで参加しようじゃないか。
この、オワリーポータルZで。
この、オワリーポータルZで。
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地主さん御出版おめでとうございます

当サイトのライター地主さんが「昔のグルメガイドで東京おのぼり観光」という本を出版されるらしいので、それを寄贈しよう!と思ったけれども残念ながらまだ発行されていなかった。
きっと面白いから買ってあげてね(あからさマーケティング)!
きっと面白いから買ってあげてね(あからさマーケティング)!
しょうがない、じゃあ折角なので僕の本を寄贈することにしよう。と、いうことで作ることにした(自分自身で)

とはいえ、本にするネタも力も時間も無いので今までに当サイトで書かせていただいた記事を何本か選んでベストアルバムみたいなのを作ろうと思う。

ひとえに皆様のおかげでございます

本といえば縦書きだよね。って思ってwordでレイアウトしなおしたらもうめっちゃくちゃめんどくさかった。
本といえば縦書きだよね。って思ってwordでレイアウトしなおしたらもうめっちゃくちゃめんどくさかった。
どの記事を選ぼうかなと見返してみると、今までで100本ちょっとの記事を書かせていただいていたと知って少しびっくり。一本2分で読んだとしても3時間以上。ものすごい量の人の時間を奪っている。
表紙も今までの記事の写真を切り抜いて作ってみた。
表紙も今までの記事の写真を切り抜いて作ってみた。
そんな中から選んだ5本(中身は秘密)と、このために新しく書いた1本(こういうのあるよね。それっぽいよね)でできるのが、マイベスト、オワリーポータルZだ!

印刷なめてた

3年前くらいに「(俺が)ノーパンしゃぶしゃぶ」って記事どうですか?って聞いたら「そういうセクシャルなのはちょっと…」ということで没になったネタの変化形、「(俺が)ノーパンすき焼き」というのを書きました。、これwebに載らないから良いだろう…。いい、ですよね・・・!?
3年前くらいに「(俺が)ノーパンしゃぶしゃぶ」って記事どうですか?って聞いたら「そういうセクシャルなのはちょっと…」ということで没になったネタの変化形、「(俺が)ノーパンすき焼き」というのを書きました。、これwebに載らないから良いだろう…。いい、ですよね・・・!?
選んだ5本と書き下ろしの「(俺が)ノーパンすき焼き」のレイアウトが終わったので印刷に行く。印刷といっても印刷所とかじゃなく、セブンイレブンだ。
俺の印刷所
俺の印刷所
プリンタを持っていないので印刷はいつもセブンイレブン。今回も原稿をSDカードに入れて印刷に訪れた。ついに、俺も本を出版か。
なん…だと…原稿1本で1200円…だと…!?
なん…だと…原稿1本で1200円…だと…!?
そう思って感慨深げに印刷手順を進めていたが、印刷直前で手が止まった。

カラー印刷A3サイズで1枚80円、一本目の原稿が15枚で1200円、6本原稿があるが、それぞれ約10枚くらい。全部印刷しようとすると約5000円だと…!!

ええええええっ!!?
でも、ここまできたら、引くに、引けない…っ!
でも、ここまできたら、引くに、引けない…っ!
ビックリした。すっごいビックリした。まさかこんなにかかるとは思わなかった。これなら地主さんの本、5冊位買える。怖い、カラー印刷怖い。

だとしても印刷しなければどうにもならない。やるしかない…!

コピー機では硬貨しか使えなかったので、レジの人に5千円札を渡して、コピー機使いたいので両替してください。って言ったら千円札4枚と硬貨が返ってきたけど、全部硬貨にしてください。って言ったら凄く嫌な顔された。

その硬貨をつぎ込む、連コイン。ゲームセンターでも見られないくらいの硬貨の連続投入。

その犠牲の上で印刷が完了した。
!

超高級遠足のしおりが出来た

後からみると空白だらけ…もっと写真小さくして詰めれば良かったよね。
後からみると空白だらけ…もっと写真小さくして詰めれば良かったよね。
印刷が完了したので次は製本。折りたたんで綴じようとしていたのだけれど、真ん中を空けるレイアウトがめんどくさすぎて、全部適当にやってしまった。
谷折りにして裏をのりで張り合わせればどうだろう。
谷折りにして裏をのりで張り合わせればどうだろう。
他に方法はない…。
他に方法はない…。
そのつけが回ってきてどうやってまとめれば良いのかわからない。無理やりに力技でのりで張り合わせて出来たのがこれだ。
オワリーポータルZ!!!
オワリーポータルZ!!!
出来た。出来たがなんだろうかこの漂う遠足のしおり感(1部5000円)は。表紙もコピー紙だからだろうか、それとも名前書く欄を作ったからだろうか。
でも一応読める。
でも一応読める。
今思えば改善点はいくらでもある。しかし出来たぞ、俺の本が!その喜びはしおり感を補ってあまりある。さぁ、しおり挟む夢のページ!

と、言うことで印刷、製本、まで出来たんだから、後は出版(まち角の図書館に置いてくる)だ!
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出版していいのだろうか

場面は戻ってまち角の図書館。さっき作ったオワリーポータルZをおいてくることで出版完了。晴れて本の著者だ。
それでは、出版します!!
それでは、出版します!!
5000円もかかったものをポイッと置いてくるのはそれなりに勇気がいるが、これを見知らぬ誰かが手にとって読んでくれると思うとワクワクもする。よしっ、いくぞ!
あれっ、これは…
あれっ、これは…
いざっ!と意気込んで置こうとしたところで注意書きが目に飛び込んだ。

「週刊雑誌、全集、専門書、パンフレットは入れないでください」

えっ!?

そんな決まりごとあるの!?まったく自由に本を置いたり持って行ったり出来るものだと思っていたまち角図書館だが、置くほうには一定のルールがあるようだ。
なんてこったい(近くにあった石像)
なんてこったい(近くにあった石像)
書かれている項目には該当はしないが、だからといって大丈夫な保証も無い。認められなかった本がどうなるかもわからない。最悪捨てられるだろう。それは流石にちょっとへこむ(5000円もしたし)。

このまま無理に出版は出来かねる…。

出版審査会(図書館)へ

途中で見つけたアンテナがやたらに立ちまくってるアパート
途中で見つけたアンテナがやたらに立ちまくってるアパート
さて、どうしたものか、誰に聞けばいいものか。図書館の人に実際に見てもらって、置いて良いか聞けばいいだろうか。

人に直接見てもらうというのはこの遠足のしおり感からするとかなり恥ずかしいが背に腹は変えられない。行くか、図書館。
ここが図書館ですか?いいえ、これは図書館ではありません。
ここが図書館ですか?いいえ、これは図書館ではありません。
そう思って図書館へ歩いて向かう。すると途中で見えてきた病院の前、アレってもしかして。

まち角の図書館大人気

実際に使ってる!
実際に使ってる!
なんと、まち角の図書館を実際に使っているところにちょうど出くわした。これは話を聞いてみねば!

僕「すいません、この、本棚みたいなのって何なんですか?」

知らないフリで話を引き出す!

おじさん「あぁ、これはな、まち角図書館いうて、誰でも自由に使ってエエ図書館なんや。」

僕「へぇ!良くお使いになるんですか?」

おじさん「せやな、手続きも期間も利用時間もないからな。せやないと読めんわ」

あぁそうか、僕はシステムとしては面白いと思いつつも、誰が使うんだろう。と思っていたが、この一言で納得した。
確かに、侍ってこわそう。
確かに、侍ってこわそう。
お金払って、もしくは図書館で会員カード作って期限までに返す約束をして、読みたい本を読む。よりも、そんなに興味の無い本でもまったく自由に読めるのならばそっちの方が良い。

そういう需要がある。しかもその需要に応えるのは不要になった本。このシステムかなり上手く出来ている…!

おじさん「いらん本あっていっぱいなってもここ入れときゃエエしな。ここパンパンになるくらい入ってる時もあるで」

おぉ、そんなに人気があるのか。って、このおじさん、出版、いや寄贈経験者だ!
ツイッターびっちゃびちゃ
ツイッターびっちゃびちゃ
僕「本を寄贈も出来るんですね。でも、この、週刊誌とかダメって書いてるもの寄贈したりしたらどうなるんですかね?」

おじさん「さぁー、どうやろな。そんなん入ってんの見たことないからな」

そうか…それは誰も入れないのか、それとも誰かが処分しているのか、借りていっているのか。やはり独断での出版は危険だ。ちゃんとみてもらおう。
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図書館は図書館じゃない

ついにやってきた図書館。本の専門家にあの遠足のしおりを見てもらうのか。表紙に自分の写真なんか入れなきゃ良かった。そんなことを思いながら図書館に入る。
図書館かなり大きい。
図書館かなり大きい。
中に入るとかなり人が多くて職員の方も忙しそう。池田市の読書力はかなり高い。どうしようかと二階に上がってみるとお話を聞けそうな職員の方がいらっしゃった。

この人にアレを読んでもらうのか…目の前で見られるのはかなり恥ずかしいだろうな。勇気を出して聞くんだ!

僕「すみません、まち角の図書館についてお聞きしたいんですが…」

職員さん「えっ…まち角…の、図書館…」

えっ、何そのリアクション。
図書館来てgoogle検索。図書に勝る情報。
図書館来てgoogle検索。図書に勝る情報。
話を聞くと、同じ市の運営ではあるけれどまち角の図書館と図書館はまったくの部門らしい。図書館の人にググッて貰うと、市役所の7階に行けば良いということがわかった。

残念な気持ち半分、図書館でしおりを出さなくて助かったという気持ち半分だ。

ラスボス市役所

最終決戦
最終決戦
紆余曲折経たけれども、最終的な相手はわかった。後はもう、まっすぐ聞くだけだ。オワリーポータルZは出版することが出来るのだろうか。

行くぞ、市役所!
閉まってた
閉まってた
と、気合を入れて入ろうとしたら、閉まってた。そういえばこの日、土曜日だった。何か暗いからおかしいな~。って思ったけど、そりゃ閉まってたら暗いわ。

あっ、閉まってる。って思ってどうしようか立ちすくんでたら、中から警備員みたいなおっちゃんが出てきて「入る?」って言ってきたから、「やってるんですか!?」って聞いたら「いや、やってないけど」って返されたんだけど、じゃあ何で入れようとしたんだ。罠か。

あれ、これ、どうしたもんか。

強硬突破か

さぁもうどうしたもんか、路頭に迷う。そんな所に見つかったまち角の図書館第1号。
ゴクリ…誰も見てねぇか…?
ゴクリ…誰も見てねぇか…?
これは、しれっと置いて帰ってしまうしかないか…?
これは、意外となじんでいるのでは。
これは、意外となじんでいるのでは。
ためしに返却の棚のところに置いてみたら意外と違和感は無い。厚さがあるからだろうか、遠めだと本っぽい。

と、それだけに表紙をコピー紙にしたのが悔やまれる。何か厚紙的なもので処理すればよかった。なんでそこコピー用紙なんだよ。
デカい。
デカい。
ほかの本と並んでもそう違和感は無い。ただ、デカい。並べたり置いたりしているうちに、大丈夫なんじゃないだろうかという気持ちが生まれてくる。

これは、強硬突破か。

最終審査

と、そんなことを言いながらもへたれな僕はしおりを抱えてまち角の図書館の周りをうろうろしていた。
人だっ!
人だっ!
少し離れているうちにまち角の図書館に人が来ている。しかもあの慣れた手つき。あの人は、まち角の図書館のプロだ(認定)!もうこうなったらあの人に聞くしかない。

そう思って縋るような気持ちで声をかけた。

僕「すみません、まち角の図書館ってよく利用されますか?」

おばちゃん「あぁ、そやね、結構使うよ」

僕「そうなんですか!じゃあ、この本って置いて良いですかね」

そう言ってかばんの中からオワリーポータルZを出…

おばちゃん「えっ、それは本ちゃうからアカンのちゃうか」

本って大変。

今回、自分で選んだ記事を秘密にしたり、この為に新しく記事を書いて、気になる人は池田市のまち角の図書館まで!みたいな事を書こうとしていたのに、まさかの全お蔵入り。

遠足のしおりっぽい何かは未だにウチにあります。まさか出版がこんなに大変な事だとは思っていなかった。本を出す人は凄い。

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