土曜ワイド工場 2012年2月25日
 

巨大深海魚を釣って食べたら尻から油が!!

こんな見た目だけどおいしいのよ!おいしいんだけどたくさん食べちゃいけないのよ!
こんな見た目だけどおいしいのよ!おいしいんだけどたくさん食べちゃいけないのよ!
数年前、魚類を専門に扱う研究室に所属していた頃に不思議な刺身を食べた。
刺身の状態でも、はっきりと「普通の魚じゃないな」とわかってしまう肉の色、そして何より過去に食べたどんな魚も敵わないほどのおいしさに衝撃を受けた。
しかし、「一人五切れまでな。それ以上食べると大変なことになるらしいから…。」 と先輩から意味深に制止され、こころゆくまでは味わうことができなかった。ああ、もう一度あの魚を食べたい。それもたっぷりと(自己責任で)!
平坂 寛 平坂 寛(ひらさか ひろし)
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。
> 個人サイト いきものいきもの エイリアンのつかまえかた

深海に一番近い町、静岡

その魚は「バラムツ」というある種の深海魚で、魚好きの間では結構有名な存在である。
僕は北風吹く中、日本でも有数のバラムツの生息地である駿河湾を目指し、静岡県へと飛んだ。
静岡、深海魚といえば昨年末にオープンした沼津深海魚水族館。
静岡、深海魚といえば昨年末にオープンした沼津深海魚水族館。
そのそばの市場ではアオメエソ(メヒカリ)をはじめ
そのそばの市場ではアオメエソ(メヒカリ)をはじめ
深海魚が平然と売られている。これはエゾイソアイナメ(ドンコ)かな?
深海魚が平然と売られている。これはエゾイソアイナメ(ドンコ)かな?
深海魚定食なるものまで。
深海魚定食なるものまで。
…深海魚が食材として定着している。すごいな静岡。
しかし目当てのバラムツはこの市場でも手に入らない。
先輩の「一人五切れまで」 という言葉からお察しの通り、バラムツは食べすぎると健康にとある害を及ぼす恐れがある。そのため、食品衛生法により市場での取引が禁じられているのだ。どうしても食いたいってんなら…。
てめえで釣るしかないんだぜ!!
てめえで釣るしかないんだぜ!!
幸いなことに駿河湾にはバラムツを釣らせてくれる釣り船があるのだ。
バラムツはとても大きな魚なので、大物を狙う釣り人に人気があるのだそうだ。
そのうえビギナーでも簡単に釣れてしまうらしい。よっしゃ、俺も一発デカいの釣っちゃうよー!
ちなみに釣りの仕掛けは巨大なルアーにサバやサンマの切り身をつけるという一風変わったもの。ルアーのみでも釣れるようだが初心者にはこちらがオススメらしい。
ちなみに釣りの仕掛けは巨大なルアーにサバやサンマの切り身をつけるという一風変わったもの。ルアーのみでも釣れるようだが初心者にはこちらがオススメらしい。

地震、高波…そしてミス。

しかし、この取材を行った日の駿河湾は釣り船の船長も認めるほど最低のコンディションだった。風が強くて波が高く、船上で立っているのもつらいほど。そしてなにより潮が悪くて魚の元気がまったくない。極めつけは当日にやや大きな地震が発生したこと。地震の直後は魚がおびえてエサを食べようとしないらしい…。
しかも夜釣りなので寒い!夜になるとバラムツがエサの小魚やイカを求めて浅場(とは言っても水深200メートル近く)まで浮上してくるので釣りやすいのだ。
しかも夜釣りなので寒い!夜になるとバラムツがエサの小魚やイカを求めて浅場(とは言っても水深200メートル近く)まで浮上してくるので釣りやすいのだ。
それでも船長はやはりプロ。どんなに厳しい状況でもなんとか釣り客に魚を釣らせようと知略を巡らせてガイドしてくれる。
そのおかげでついに同行の伊藤さんにバラムツが掛かった!
そのおかげでついに同行の伊藤さんにバラムツが掛かった!
相当力が強いらしく、伊藤さんは必死の形相でリールを巻いている。
そういえば事前に「釣りの経験はありますか?」と聞いたところ、「ワカサギ釣りとかなら…」との答えが返ってきたな…。
大きい!1メートルはゆうに超えている。
大きい!1メートルはゆうに超えている。
やった!ついにバラムツとご対面だ!!と思ったその時。
水面で暴れまくるバラムツの口から釣り鈎が外れてしまった。
水面で暴れまくるバラムツの口から釣り鈎が外れてしまった。
「あ、あ、あ、あああ。」深海へと帰っていくバラムツに追いすがるような声を出してしまった。
伊藤さんは疲れ切って座り込んでしまった。あんな巨体を水深200メートルから引き上げたのだ。無理もない。

その後も伊藤さんがもう一尾掛けて水面まで引き上げるも、また惜しいところで逃げられた。これは僕のサポートミスによるところが大きかったので、ものすごい自己嫌悪に陥った。

あり得ないトラブル。そして…

同行者に目の前まで魚を連れてきてもらっておきながらキャッチできなかった後悔と申し訳なさ、そして迫る撤収時間への焦り。このときの僕はなかなか追いつめられていた。釣りをしていて、魚が掛かっていないのにあんなに心臓がバクバク鳴っていたのは初めての体験だった。

その時だ。

「あ。」
釣竿、落っことした…。
釣竿、落っことした…。
焦りからか手が滑り、数万円分の釣り具一式を竿ごと駿河湾に放り投げてしまったのだ。馬鹿だ。
船長は「よくあることだから気にすんなよ!ガハハ!」と豪快に笑って励ましてくれた。気持ちは嬉しいが、たとえよくあることでもショックなものはショックだ。

今となっては笑い話だが、この辺りで僕の心は駿河湾よりも深い場所へ沈んでいってしまった。


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