土曜ワイド工場 2012年3月3日
 

藁の服を着て水を掛けられる奇習カセ鳥

寒空の下、藁を着て、びしょぬれで写真を撮られているのが私です。
寒空の下、藁を着て、びしょぬれで写真を撮られているのが私です。
斎藤茂吉記念館で有名な山形県上山市に、「カセ鳥」という約350年の歴史を誇る民俗行事がある。

ざっくり説明すると、二月の寒空の下、巨大な藁納豆みたいな格好をしたカセ鳥という神様が、歌って、踊って、水掛けられて、上山市内を練り歩くという催しである。

奇習カセ鳥。どう考えても寒そうなこの祭りに、水を掛けられる側として参加してみた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

奇習カセ鳥と私

カセ鳥の存在を知ったのは、確か上山市に住んでいる友人のブログだったと思う。私は上山市に隣接した山形市に住んでいたこともあるのだが、カセ鳥の存在はまるで知らなかった。

なんでも小正月に遠い土地からやってくる、五穀豊穣・家運隆盛をもたらす年神様(カセ鳥)の来訪行事だそうで、カセ鳥となった若衆に祝い水を掛けることで、火伏せや商売繁盛を祈願するのだという。
山形は31年振りの大雪だそうです。
山形は31年振りの大雪だそうです。
このような祭りは日本全国で行われていたのだろうけれど、今はほとんど廃れてしまっている。ここ上山のカセ鳥も、明治29年に一度は途絶えてしまったのだが、昭和34年に有志の手によって復活したそうだ。実際に体験してみると、よく復活できたなといろいろな角度から思う奇習だ。

こういう地域密着の祭りは、地元に縁とゆかりのある人がやるべきなのだろうけれど、 この祭りを知ったのもなにかの縁、山形に住んでいたというゆかりもある。ここは一発自分に気合を入れるためにも、藁の服を着て、冷たい水を掛けられてみることにした。
集合場所は旅館の一室。結婚式の余興の待合室といった空気で、すでに酒を飲んでいる人多数。
集合場所は旅館の一室。結婚式の余興の待合室といった空気で、すでに酒を飲んでいる人多数。
一応カセ鳥の存在を教えてくれた友人も誘ったのだが、「今年は本当に酷い寒さだよ。 かせ鳥するなんて自殺行為。」という返事が来たので、単身での参戦である。

酷い寒さ。その非日常な言葉に、ちょっとワクワクしている自分がいた。

全国各地からカセ鳥が集合

数年前は十数人まで減ってしまったカセ鳥の参加者だが、今年は28名と、私を含めて物好きが多い年のようだ。

上山の中学校で英語の先生をしている外国の方も、どういう誘われ方をされたのか知らないが、4名参加していた。女性も外国人と日本人の計2名が参加している。

カセ鳥の苛酷さを知る上山の人はほとんど参加していないそうで、山形県各地や、遠くは北海道や長野から集まってきているらしい。東京の人は東京タワーに登らないみたいな話だろうか。

「遠い土地からやってくる神」という意味では、地元の人より観光客の方が、カセ鳥に向いているのかもしれない。
参加者の約半数はカセ鳥初体験ということで、まずは旅館の廊下で簡単な練習をおこなう。
参加者の約半数はカセ鳥初体験ということで、まずは旅館の廊下で簡単な練習をおこなう。
カセ鳥は独特な歌と踊りがあるのだが、その練習時間は10分程度。全体的にあやふやなままだけど、藁を着てしまうと誰が誰だかわからないからまあいいか。なんて考えているとバチがあたりますね。

結婚式の余興でヤングマン(YMCA)でもやるくらいの練習量だが、きっと本番で繰り返しやっているうちに、何かが降りてくるのだろう。

神様への道のり

参加者に一人も知っている人がいない中、保存会が用意してくれた白い下着と軍足を履き、地元のお姉さんにさらしを巻いてもらい、藁から身を守るため、全身にたっぷりとアロエクリームを塗ってもらう。
さらしって初めて巻いたけれど、気合いが入りますね。やっぱり格好って大事だ。
さらしって初めて巻いたけれど、気合いが入りますね。やっぱり格好って大事だ。
さらにおねえさんから、「乳首を守らないとだめよ!」と強い口調でいわれ、絆創膏(山形だとカットバンといいますね)をニップレス代わりに装着する。

去年、藁で擦れた乳首から血を流したという人は、テーピング用のテープでこれでもかとガードしていた。そこに不参加という選択肢はなかったのだろうか。
外国人参加者の「なにか騙されている感」がすごい。
外国人参加者の「なにか騙されている感」がすごい。
ベンチコートを羽織ってわらじを装着。気持ちが高揚しているためか、それほど寒いという感じではない。
ベンチコートを羽織ってわらじを装着。気持ちが高揚しているためか、それほど寒いという感じではない。
雪用のしっかりとしたワラジを着用。かっこいい。
雪用のしっかりとしたワラジを着用。かっこいい。
この祭りは5時間に及ぶ長丁場。現在の気温はマイナス3℃。ハムサンドだったらよかったのにと、つまらないダジャレが頭をよぎる。ここ数日は、気温がプラスになっていないらしい。

何度も参加している人が遠い目をしながら、今までで今年が一番寒いと言い切っている。祭りを仕切る加勢鳥保存会の方から、辛くなったらすぐにギブアップしてくださいという声を掛けていただく。

カセ鳥という神になるのは簡単なのだが、神でいることが大変のようである。

これからどうなっちゃうんだろうという不安でいっぱいなのだが、それ以上にワクワクしている自分が意外だ。

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