特集 2012年3月17日

本当のどじょうすくいに挑戦する

どじょうをすくいます!
どじょうをすくいます!
島根県の民謡「安来節」。それにあわせて踊るのが「どじょうすくい」である。頭に手拭をまき、手にはザルを持って舞う民俗舞踊だ。

どじょうすくいの格好を見てみると踊りといいながらも実用的。ということで、踊りとしての「どじょうすくい」の格好で、採取としての「どじょうすくい」に挑戦してみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

本当のどじょうすくいに挑戦

踊りの「どじょうすくい」は、どじょうを捕りに行くところから始まる。その後は、腰を落としてどじょうを捕まえたり、その捕まえたどじょうが逃げ出したりと踊りの中に物語があるのが特徴だ。
どじょうすくいの一場面
どじょうすくいの一場面
ゲームの登場人物は自分の背丈よりも大きい剣を持っていたりするけれど、どじょうすくいは違う。とても具体的で実用的なのだ。ということは、本当にどじょうすくいができるのではないだろうか。
本当のどじょうすくいに出かけます
本当のどじょうすくいに出かけます
どじょうすくいの格好は上の写真のような感じだ。鼻には五円玉が付いている。鼻と口に割り箸を渡すバージョンをテレビではよく見るが、正しくは五円玉だと以前どじょうすくいを習いに行った際に聞いた。なので、そちらを採用している。
カゴいっぱいのドジョウを捕まえる予定!
カゴいっぱいのドジョウを捕まえる予定!

2つ理由

どじょうを求めて水辺にやって来た。今まで僕はどじょうを捕まえたことがない。おそらく本日がどじょう捕獲記念日になるだろう。ハサミの日やハイサワーの日と同格で「どじょう捕獲記念日」を大切にしようと思っている。
探す!
探す!
お茶漬けのようにさら~と水の中に入りどじょうを探し出しているけれど、ここまでにはよく訓練された警察犬でも我慢できずに吠えだすくらいの時間がかかっている。その理由には寒かったこと、裸足でよく分からないところに入るのが恐怖だったこと、の2つが挙げられる。
2つの理由に自分の中で折り合いをつけている時の一枚
2つの理由に自分の中で折り合いをつけている時の一枚
水底は柔らかくふかふかの布団の上に立った時のように足が沈んでいった。恐怖。そんな恐怖に打ち勝ち、腰を落とし踊りのどじょうすくい同様にどじょうを探す。しかし、どじょうはもちろん生き物すら見つからない。僕の家の方がまだ生き物がいる気がする(いなくていい虫とかだけれど)。
知らないおじさん登場
知らないおじさん登場
探していたら「どじょうは見たことないぞ」と全く知らないおじさんに話しかけられた。「どじょうを探しているんです」と言ってもいないのに、いきなり「どじょうは見たことないぞ」。この格好の有名具合に感心した。
こんな感じですくいたいと説明
こんな感じですくいたいと説明
その後、身振り手振りで「どじょうをすくいたいんです」と青春漫画の一場面のように、その知らないおじさんに訴えたのだけれど「いや~いないだろう」と一点張りだった。取調べ中の刑事なら怒っていたと思う。事実だから仕方がないけれど。
ちなみにここはどじょう池でした(なのにいないとのこと)
ちなみにここはどじょう池でした(なのにいないとのこと)

どじょうすくいの人気

場所を変えてどじょうすくいを続けた。
どじょうすくいが踊られるようになったのは明治時代の後期くらいから。その当時はよかったのかもしれないけれど、現代でのこの格好はライト兄弟の初フライトの時間よりも浮くようだった。
目立つようで人がどこからともなく寄ってくる!
目立つようで人がどこからともなく寄ってくる!
こんなにカメラを向けられたことはなかった。ウォーキングをしている女性からも「どじょうすくい?」とスタバで「なんとかかんとかフラペーチーノ」と頼む時のような感じで話しかけられた。コミュニケーションを取りたくなる格好なのかもしれない。
問題は全然どじょうが捕れないこと
問題は全然どじょうが捕れないこと
踊りのどじょうすくいは、先にも書いたように捕りに出かけるところから始まり、見つけて捕まえ、さらに逃げ出しなど新幹線のようなスピードでお話が展開していく。しかし、この本当のどじょうすくいは全然展開しない。ずっと探しているだけなのだ。不人気な単館映画でももう少し展開があると思う。
やっと見つけた生き物(エビ)
やっと見つけた生き物(エビ)

広範囲でどじょう探し

この日は寒く、さらに水に入るので、どんどんと体温が奪われていった。どじょうは全くすくえず、これからどうすればいいのだろうと進路に迷う高校二年生のように悩んだ。思いついたのは「土壌すくい」というダジャレだった。
土壌をすくった
土壌をすくった
他にもどじょうは水が綺麗でないとダメらしいので、ゴミを拾ったりもした。「どじょう救い」である。もちろん引き続き本当のどじょうすくいもした。しかし、一向にどじょうはすくえなかった。手ごたえがまるでないのだ。幻の生き物なのではないだろうか。
変な姿勢なので腰も痛くなった
変な姿勢なので腰も痛くなった
その後は探す範囲を広げた。もう水辺でなくてもいいのではないかと思ったのだ。だって「どじょうすくい」である。場所は明言されていない。とにかくすくえればいいのだ。でも、どじょうは簡単には見つからなかった。
スーパーも探した
スーパーも探した
メニューも探した
メニューも探した
電車の中も探した
電車の中も探した
いつでもどじょうを探した。出先の店、メニューの隅、こんなところにいるはずもないのに。電車から向かいのホーム、路地裏の店など、しかしどじょうはいなかった。願いがもし叶うのならば、ぜひどじょうのもとへ行きたい、そう思った時だった。願いが叶ったのだ。
いた!
いた!
もう生きているどじょうをあきらめて、居酒屋のメニューを中心に探した。するといたのだ。ついにどじょうが。幻の生き物ではなかったのだ。食べログを見てはどじょう料理はあるかと電話したかいがあった。
そんな苦労の果てにやっと出会えたどじょう
そんな苦労の果てにやっと出会えたどじょう
時代は常に変わっていく。
ブラウン管だった分厚いテレビが薄型のテレビになったり、今までは手作業が当たり前だった作業が機械化されたり、時代はうつろう。

どじょうすくいも例外ではなく、格好がライト兄弟のように浮いたように、従来のどじょうすくいはもう時代遅れなのだ。

何が言いたいのかというと、ザルで生きたどじょうはすくえなかった、ということだ。時代は調理済みのどじょうと箸なのだ。
どじょうすくい(箸で)
どじょうすくい(箸で)
なぜか自信たっぷり!
なぜか自信たっぷり!

すくいたかった

最終的には言い訳をこねる感じで終わってしまった。悔しい。格好で人気になれたので、実力も伴いたいと思ったのだ。しかし、どじょうとはみんなの心の中にいる生き物なのではと思うほどいなかった。それが居酒屋に行ったら普通にいるのだ。しかも美味しい。いい時代になったと思う。
美味しかった
美味しかった
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