はっけんの水曜日 2012年3月21日
 

「牛骨ラーメン」と倉吉の思い出

思い出の牛骨ラーメンは食べられるのか
思い出の牛骨ラーメンは食べられるのか
ぼくの故郷の鳥取県倉吉市周辺で、さいきん牛骨ラーメンというラーメンが盛り上がっているらしい。
ぼくは生まれてから21歳まで、倉吉市で暮らしたけれど、そんな食べ物があるなんて露ほども知らなかった。最近のご当地ラーメンブームにのっかって適当に捏造したなんちゃって名物なんじゃないか?
そんな疑念を抱きつつぼくは倉吉へ向かった。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。
> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

いつの間にかブームになっていた

ガイドブックでも斯くの如く、まるまる1ページでご紹介
ガイドブックでも斯くの如く、まるまる1ページでご紹介
調べてみたところ、倉吉周辺では昔から牛骨でスープをとったラーメンを出していたらしく、数年前のテレビ番組で取り上げられたのがきっかけとなり、ブームになっているのだという。

いちばん知っているはずの故郷の事が、知らないあいだに勝手にブレイクし、ブームになっている。なんだか気に食わない。

牛骨ラーメンなんてものは倉吉に住んでる頃に食べた記憶が無い。ほんとにそんなラーメンあったっけ?
実際に食べてみなければわからないので食べに行くことにした。

故郷はいつの間にか観光地になっていた

まず最初に向かったのは「レストラン三日月」。「レストラン三日月」は倉吉の観光地、白壁土蔵群にほど近い場所にある。
知らぬ間に観光地化された白壁土蔵群
知らぬ間に観光地化された白壁土蔵群
この白壁土蔵群、じつはぼくが住んでるころは観光地でもなんでもなく、ただの古い土蔵が残っているというだけの場所だった。

住んでた当時たしかに「古い土蔵が残ってるなー」とは思っていたけれど、まさかここが観光地になるなんて夢にも思わなかった。

国から重要伝統的建造物群保存地区に指定されたのは今から14年前の平成10年で、ぼくは当時すでに上京しており、観光地化されたのはそれ以降なので、この白壁土蔵群はぼくのあずかり知らぬ間に勝手に観光地になっていた。
閑話休題。

牛骨ラーメンの話に戻りたい。くだんの「レストラン三日月」はこちらだ。
ここかー
ここかー
このレストランは子供の頃、何回か来たことがある。あるけれど、その時はラーメンじゃなくてハンバーグかなにかを食べたような気がする。いずれにせよ、ここで出しているラーメンが牛骨ラーメンだったなんてことは知らなかった。
常連のおっちゃんたちが次々に入ってきてた
常連のおっちゃんたちが次々に入ってきてた
メニューにはただラーメンとしか書いてない
メニューにはただラーメンとしか書いてない
メニューには「ラーメン」としか書いてない。しかも「おすすめ」はチャンポンの方だ。
入り口に「牛骨ラーメン」の幟はあるものの、あまり牛骨ラーメン推しではないところが気になる。
店内にいた先客はいずれもラーメン以外を頼んでいる。牛骨ラーメン、本当に流行ってるんだろうか?

意外なうまさに驚く

かまぼこがナルトであれば一般的な「中華そば」と変わらないビジュアル
かまぼこがナルトであれば一般的な「中華そば」と変わらないビジュアル
待つこと数分、たのんだ「ラーメン」が出てきた。
見た目はいわゆる「中華そば」といわれるタイプのラーメンでしかない。違っているといえばカマボコがのっていることぐらいだろうか?
うまい! 
うまい! 
さっそくスープをいただく。確かにスープからは牛脂の香ばしい匂いがする。スープは透き通った醤油ベースで、コクがありつつも後に引かないあっさり味だ。
牛脂の風味と麺の小麦の甘さ、そしてメンマやチャーシューの塩味のバランスがちょうどよく、最後まで飽きずに食べられる。これはうまい。
あんまりうまかったのでアップでもう一枚
あんまりうまかったのでアップでもう一枚

60年前から牛骨だった

牛骨ラーメン目当てで来る人が増えた
牛骨ラーメン目当てで来る人が増えた
いったい、なぜ牛骨でダシをとるようになったのか? 店のおばちゃんに訊いてみた。
−−こちらのラーメンは牛骨でダシをとってるのはなぜですか?
「さぁ、うちは60年前から牛骨でダシを取っとるけぇなあ、んー、なんで牛骨でダシとるやーになったかはわからんなー」

−−60年も前からですか! 戦後間もないころですね
「ですなあ、なんにも変わった事しとるやーな気は無かったですけども」

−−牛骨ラーメンだってさわぎはじめたの最近ですよね
「そがなこと言うようになったんは最近ですけえ、ちかごろは東京や千葉みたいな遠方からわざわざ食べに来てごしなるひともおりますで」

牛骨でダシを取るようになった経緯はもうわからないらしいが、牛骨スープのラーメンは倉吉では60年も前から普通に食されていたらしい。

気になってることを訊いてみた

ところで、ラーメンとは関係ないのだけど、ぼくが気になっていることをちょっと聞いてみた。

−−こちらのレストランの隣の食料品店。閉まってましたがいつから閉まってたんですか?
「さぁ、10年ほど前に店辞めちゃいなったなぁ」

−−そうですか……
思い出の食料品店は閉まってた 
思い出の食料品店は閉まってた 
このレストランの隣の食料品店。じつは中学生の頃、友達の渋谷くんと初めてのエロ本を買った思い出の店だ。

ある日、急に渋谷くんが「あそこの店はばあちゃんが1人で店番しとるけぇ、エロ本が買いやすい」と天啓に導かれたように言い出したので放課後一緒に行き、雑誌のラックに置いてあったエロ本をよく吟味もせず、ばあちゃんに差し出した。

すると定価千円と言われ、想定外の金額にビビったものの、いまさら買わないのも逆に恥ずかしいので、ふたりでなけなしの小遣いを合わせて支払い、渋谷くんの部屋に逃げるように帰り、雑誌を開いてみた。
期待に胸躍らせ、開いたページには、赤いロウまみれになったおっさんや、大根がお尻から生えてるような写真がズラリ。

ここでやっと自分たちが「SM専門誌」を買ってしまったのだということに気がつき、ふたりとも絶句した。
その後、ひととおり中身を見てどんよりとした気持ちになったぼくたちは、桃太郎電鉄を無言で始めた。
まさに青春の蹉跌である。

このとき、専門性の高い雑誌は値段も高い。ということもしっかり学ばせて頂いた。
しかし、こんな恥ずかしい失敗談も、この店の閉店とともに懐かしい思い出となった。

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