特集 2012年5月21日

どこかが反対…「逆転フード」を試す

普段のとは逆になってる食べ物たち
普段のとは逆になってる食べ物たち
先日、妻が頂き物のパンを食べて「これ、中がカリカリで表面がモチモチなのよ!」と言い出した。へえー、と思いそうになりつつ、よく考えて違和感の原因がわかった。それ、逆だろう。

誰にもときどきある言い間違いだ。でも、そういうパンがあったら食べてみたい。

しかしそんなパン、売っているのを見たことない。だが食べたいなら作ってみればいいではないか。そういうわけで、やってみました。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

前の記事:炒飯でもチキンライスでもなく「ハムライス」巡礼

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中がカリカリで表面がモチモチのパン

言い間違いから誕生した「中がカリカリで表面がモチモチのパン」。よく聞くおいしそうなパンの表現とは逆になっている。

でもやっぱりよく探せば、そういうパンもあるのではないか。とりあえずはパン屋に行ってみよう。
まったくどいつもこいつも…
まったくどいつもこいつも…
表面カリカリしやがって
表面カリカリしやがって
しかし並んでいるのは程よく茶色に焼き色がついたパンばかり。カリッと香ばしそうな食感が、見た目からでもよくわかる。うまそうなのは認めるが、探しているのは君たちではない。
少数ながらモチモチ系発見
少数ながらモチモチ系発見
確かにやわらかい
確かにやわらかい
それでもよく探すと、モチモチ感を表に出してアピールしているパンを発見。買ってきて感触を確かめてみると、プニュプニュと気持ちのいい弾力がある。

もちろんこのパンの場合は、中までモチモチというのが売りだろう。今回はその部分を改造してみよう。
内部要員として登場するラスク
内部要員として登場するラスク
くり抜いて投入する
くり抜いて投入する
カリカリ部分として用意したのはラスク。どこまでもカリッとした食感は今回のためにちょうどよいだろう。モチモチパンの底をこじ開けて、中身を抜いて代わりに入れよう。
見た目は変わらないけど逆転パン
見た目は変わらないけど逆転パン
アメージングディスカバリー!
アメージングディスカバリー!
完成したのが「中がカリカリ、表面がモチモチ」のパン。外見は特に変哲もないが、静かに普通とは逆転しているパンである。

では食べてみよう。…ムニュッ……カリカリカリ!

思わず笑いがこぼれる食感。わかっていても衰えない「なんだこれ!」感。
断面はこういうことになる
断面はこういうことになる
面白いし、ちゃんとおいしい。そして、パンの問題点の1つの解決策になっていることにも気がついた。

表面に歯ごたえがあって中が柔らかいパンを食べると、表面の固さに押されて中身がつぶれることがよくある。せっかくのフワフワした中身が台無しになってしまうのだ。

しかしこのパンの場合そういうことはない。モチモチ感をそのまま味わった後に、中身のクリスピーがやってくる。それぞれの食感がちゃんと生かされているのだ。

意外な成果があった逆転フード。新たな発見を求めて他にも試してみよう。
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色における逆転フード

逆転フードを探してスーパーをうろうろしていると、気になる商品が目に止まった。
一回通り過ぎて、「ん?」となった
一回通り過ぎて、「ん?」となった
「ホワイトワンダ」なる飲み物。ワンダと言えばアサヒ飲料のコーヒー製品のシリーズ名だ。

商品名にホワイトとついているのに違わず、ボトルから透けて見える中身は確かにかなり白い。カフェオレとかミルクコーヒーとかのレベルじゃない白さ。
ボトルにもコーヒー豆の絵が
ボトルにもコーヒー豆の絵が
飲み物の種類別としてはあくまで清涼飲料水のようだが、原材料欄にはコーヒーエキスという文字がある。やはりワンダシリーズの一員としてのコーヒーテイスト飲料のようだ。

それでもボトルにコーヒー豆の絵が描いてあるのを見逃せば、コーヒー系ドリンクとは気づけなさそうな見た目。黒とは真逆の白いコーヒー。試してみよう。
普通のと並べてさらにコーヒーに見えない
普通のと並べてさらにコーヒーに見えない
まさに半信半疑
まさに半信半疑
鼻を近づけると、香りは甘いコーヒー。見た目の色との混乱が深まる。

口にしてみる。…確かにコーヒーっぽい味がする。ただ、グラスの中身を見ると、また不思議な気持ちになる。何かこう、騙されているような気がするのだ。

ただそれは、決して不快な騙され方ではない。飲むたびに「あれー?」を繰り返すという、楽しい騙され方だ。

食べ物において色とは、純粋な味以外にも重要な要素になるようだ。身近な料理で色を逆転させたものを作ってみよう。
これは「黄身返し卵」(こちらの記事より)
これは「黄身返し卵」(こちらの記事より)
一度分けてから逆転させよう
一度分けてから逆転させよう
用意したのは鶏卵。身近でありながら、改めて考えると白と黄色のコントラストが美しい食材だと思う。

デイリーポータルZのバックナンバーにも、ライター北村さんの「黄身が白身で白身が黄身なゆで玉子」という記事がある。黄身と白身が逆転したゆで卵作りに挑戦したものだ。

かなり苦労してなんとか成功していたが、別の卵料理なら割と簡単にできるだろう。
黄身と白身の立場が逆転
黄身と白身の立場が逆転
「逆目玉焼き」である。普段から「黄身のやつ、いつも真ん中にお高く止まりやがってよ」とやっかんでいた白身も、これで満足だろう。
ソーセージ兄弟「なんか変じゃない?」
ソーセージ兄弟「なんか変じゃない?」
白身の立場に立つ黄身
白身の立場に立つ黄身
妙なインパクトのある見た目。添えられたソーセージも、普段と違う様子にコソコソ話だ。

逆転させているゆえ、卵黄は3つ分使用。いつも目玉焼きを食べるときは、いつ黄身に手を付けるかという展開にドラマがあるわけだが、今回はまず黄身から。食べてみると、なんだか有り難みが薄くなった気がする。

逆に少量の白身は、黄身と組み合わせて食べるととてもおいしい。いつもは黄身を食べるための引き立て役くらいにしか思っていなかった白身が、貴重に思えるのだ。簡単に価値観がゆらぐのが意外に思える料理だった。
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実は見たことあった逆転フード

逆転フードのヒントを探してスーパーを探索。総菜コーナーに、ヒントではなくもうできあがっている逆転フードを見つけた。
そう言えばこれって逆転してる
そう言えばこれって逆転してる
アメリカン寿司では続々(こちらの記事より)
アメリカン寿司では続々(こちらの記事より)
海苔が内側に巻いてあるタイプの巻き寿司だ。言われてみればこれも逆転フードではないか。



以前の記事
でアメリカンスタイルの寿司屋に行ったときも、巻き寿司は軒並みこのタイプ。どうやら外国では黒い食べ物に抵抗があるらしく、黒が目立たないようにして作る発想が生まれたらしい。

他にも特殊系だが、過去にはこんな記事もあった。
ぶどうとパンの量が逆転(こちらの記事より)
ぶどうとパンの量が逆転(こちらの記事より)
ちょっとやり過ぎ感あるのがすごい
ちょっとやり過ぎ感あるのがすごい
ライター小堺さんの「どうしても数えたいぶどうパンがあるのです」という記事に登場するぶどうパン。ぶどうとパンの、材料における割合が逆転している。

小堺さんも記事中で、ぶどうパンではなく「パンぶどう」と呼んでいるこのパン。やはり逆転フードには、妙なインパクトが発生する。

これに倣って、自分でもバランス逆転フードを作ってみよう。作ったときに材料のバランスがうまく行かないことの多いあの料理で試してみたい。
いつも最後で悩むこの料理
いつも最後で悩むこの料理
ならば量のバランスを逆転させよう
ならば量のバランスを逆転させよう
それは餃子である。皮と餡とを用意するのはいいのだが、その量が上手にマッチしないこともよくある。

作っていてだんだん湧いてくる「今日はこの餡、全部包みきれないぞ…」という予感。そこで逆転の発想だ、たっぷりの餡で皮の方を包んでしまえばいいんじゃないか。
逆転&普通餃子
逆転&普通餃子
そういうわけでできあがったのが「逆転餃子」。クルクルと巻いた皮を餡で包み、餃子型に整形して焼いたものだ。普通餃子と交互に並べてみたら、見た目的にも面白いものになった。
はじからのぞく皮
はじからのぞく皮
断面はこういうことになる
断面はこういうことになる
食べてみる。中の皮がぎゅうひのような食感で、普通に皮として使ったときよりも食感の存在感が強まる。コシが強めのうどんが一本通った餃子、という風でもある。

材料が同じなので、当然味わいは基本的に同じだけれど、ちょっとした別料理にも思える食感。皮と餡のバランスが合わなくなったときのアレンジとして、あり得る方法だとは思う。
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完成してる逆転フードに倣って逆転



いろいろな展開のさせ方がある逆転フードだが、そういえば以前、中華街でまさに逆転フードと呼ぶべき料理を食べたことがある。
ショッピングモールのフードコート
ショッピングモールのフードコート
中華における逆転フード
中華における逆転フード
それは梅蘭というお店が出す「梅蘭焼きそば」というもの。有名な店であるようで、現在は中華街以外にもいくつか支店を展開している。

再びあの逆転フードを味わうために、今回は茨城県のつくば市にある支店を訪れてみた。
知らないとショッキングな見た目
知らないとショッキングな見た目
これがその梅蘭焼きそば。普通の焼きそばをイメージしていると、ものすごく寂しい気持ちになるビジュアルの料理だと思う。
中をほじると具が登場
中をほじると具が登場
そういうことか!
そういうことか!
もちろん中にはとろみが絡んだ具が入っているので、具なしの麺だけ焼きそばというわけではない。カリッと程よく焦げた麺をほじくって、中身と一緒に食べるとおいしい。

カリッとした食感の麺に、餡がかかった焼きそばは他の店にもあるだろう。しかし、時間が経つに連れて柔らかくなり、せっかくの食感が失われてしまうのが難点だ。

その点、上下が逆転しているこの焼きそばはそういうことがない。いつまでも表面のカリッと感を味わえるのだ。しっかりと意味のある逆転だろう。

上下が逆転した焼きそば。他にもそういうものを試してみるべく、別の店を訪れてみよう。
いつもと違う気分で訪れる
いつもと違う気分で訪れる
ターゲットは当然これ
ターゲットは当然これ
やってきたのは牛丼チェーン店のすき家。ごはんの上に牛肉の煮込みが乗っているのが牛丼であるわけだが、それを逆転させてみたい。逆転焼きそばのような意味が見出せるかどうかを、実際に食べて考えてみよう。

注文は並を2つ。うち1つを「先にお肉を入れてから、ごはんを乗せてほしいんです」と注文。

店員さんは「えっ、先にお肉…ですか?」と怪訝そうだったが、オーダーは受けてくれた。厨房から「えっ?…えっ?」という声が聞こえたあと、やってきたのがこれだ。
これが「逆牛丼」
これが「逆牛丼」
想像通りのビジュアル。正直言って、寂しい。
普通牛丼と比べて悲しい見た目
普通牛丼と比べて悲しい見た目
隠しきれない肉にときめく
隠しきれない肉にときめく
お肉がばっちり乗った普通の牛丼と比べると、白いごはんしか見えない逆牛丼はせつなさが漂う。

しかしよく見ると、ごはんのはじから小さくお肉がのぞいているではないか。お肉におけるチラリズムがそこにある。これからお楽しみが待ってるぞ、と自分に言い聞かせて食べてみよう。
ほじほじタイム開始
ほじほじタイム開始
意味を考えながら食べる
意味を考えながら食べる
ごはんの下からザクザク出てくる肉。埋蔵金を掘り出すような楽しみがある。

そして食べながら気がついたのは、ごはんの食感の違い。普通牛丼だと汁が絡んでいるごはんが、逆牛丼ではほぼ全てが白いまま。それゆえ、ごはんの味が先立つ感じで味わえるのだ。
「牛皿+ごはん」にはない価値
「牛皿+ごはん」にはない価値
中にはごはんが汁に浸るのが好みでない方もいるだろう。そんな方のために牛丼屋には、牛皿とごはんをそれぞれ注文するという選択肢もある。しかし、別注文だとすき家の場合は牛丼よりも50円高く付く。

逆牛丼は完全にセパレートではないが、まずまずそれに近い効果をもたらしながらも価格は抑えめ。ごはん先行型で食べたいときには、あり得る方法かもしれない。

(※今回は注文できましたが、どの店でも対応してくれるかどうかはわかりませんのでご注意を)

「逆食べ」もやってみたが苦戦
「逆食べ」もやってみたが苦戦
逆転の発想を身近な食べ物に対して行ってみた今回の試み。どれにも新しい発見があった。

写真は通常上から食べるソフトクリームを下から食べてみた「逆食べ」。下から吸い出せるかと思ったのだがうまくいかず、ただ抜き差しならない状況になっただけでした。
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