特集 2012年5月31日

川をはしるタクシーに乗ってきた

!
「水陸両用タクシーという乗り物があるらしいんですが、乗りますか」
そんなお誘いをうけたのはようやく春めいてきたある日のことであった。
なにそれおもしろそう!
「ただし、100分貸切、最大4人で35,000円ですが」
ええっと割勘でいくらだっけ…。…。いや、どんとこいだ! その誘い、受けて立つ!
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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というわけで我々が水陸両用タクシーのある街、大阪の地に降り立ったのは、5月の13日のことである。
おもむろに停められた1台のジープ。「おお、あれですな」「あれですね」
おもむろに停められた1台のジープ。「おお、あれですな」「あれですね」
この貸切タクシー、乗車場所として指定されたのは、大川(旧淀川)沿いにある桜之宮公園。カヌーやカヤックの練習ができる浅瀬がもうけられた素敵な公園だ。だが、ちょっと駅から遠い。結局、川沿いを歩いた方が早いということで、中之島のあたりからえっちらおっちら30分ばかりかけてやってきたのだが、もし急いでいたらタクシーをつかうところである。これからタクシーに乗るのに。
一見ふつうの車…のようだが、よく見ると車体の下半分が船の形になっている。
一見ふつうの車…のようだが、よく見ると車体の下半分が船の形になっている。
なにわナンバーがまぶしい、ふつうの車だ。でもスクリューがついてる。
なにわナンバーがまぶしい、ふつうの車だ。でもスクリューがついてる。
このスクリュー、動いてじゃじゃーんとでてくる。帰ってきてから撮らせてもらった。(一瞬です)
前にも小さいスクリュー。これはぐるぐるまわして方向を制御するためのもの。
前にも小さいスクリュー。これはぐるぐるまわして方向を制御するためのもの。
車内はこんなかんじ。ちょっと懐かしい内装に、白いカバーが「タクシーですがなにか」と主張する。
車内はこんなかんじ。ちょっと懐かしい内装に、白いカバーが「タクシーですがなにか」と主張する。
車体をなめまわすように何周もして写真を撮りまくっているうちに、きょうのタクシーを運行してくれる大阪ダックツアーのスタッフの皆さんがいらっしゃった。たくさんいらっしゃった。乗る客の数より多い。
同行者は、あらゆる川の動画を撮り尽くす男、mechapandaさん(のすごすぎる動画チャンネルはこちら)と、去年めでたく船舶免許を取得されたO船長のふたり。チーム川の精鋭メンバーである。
撮影機材に興味津々なスタッフの皆さんに囲まれるmechapandaさん。
撮影機材に興味津々なスタッフの皆さんに囲まれるmechapandaさん。
バンパーに設置されたmechapanda’sカメラ。(計3台設置してた。ちなみにmechapandaさんはふつうの会社員である。)
バンパーに設置されたmechapanda’sカメラ。(計3台設置してた。ちなみにmechapandaさんはふつうの会社員である。)
ではもったいぶらずに早速出発といきましょうか。
この水陸両用車専用に作られたスロープを!
この水陸両用車専用に作られたスロープを!
ずずいと
ずずいと
駆け下りる!
駆け下りる!
ざっぱーん!
ざっぱーん!
mechapandaさん特製動画でもう一度!3アングルあるよ!!!
すいー
すいー
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ところで、チーム川のメンバーは、当然大阪の川は初めてではない(この記事この記事など )。かつ、今回ゆく道頓堀川コースは、水上バスも何便もはしる、大阪水辺の王道コース。水陸両用車とはいえ、川につっこむところがいちばんのポイントで、あとは要するにふつうの船では…とたかをくくっていたのであるが。
視界に入ってくる情報がずっとおかしい。
視界に入ってくる情報がずっとおかしい。
けっこうあっけなく、ざぶんといった川突入シーン後、視界に入るものがいちいちおかしい。満面の水をたたえた川。しかし車内は快適なタクシーそのもの。なんだこれ。なんなんだこれ。
車なのに、船のひき波で水しぶきを受けるという非日常
車なのに、船のひき波で水しぶきを受けるという非日常
そしてそれをワイパーでぬぐうという日常…
そしてそれをワイパーでぬぐうという日常…
ちなみに方向の転換は、先端についているスクリューを補助としつつ、基本はハンドルでタイヤの向きを変えることでやんわりと行う。よって、車内はハンドルをふつうに操作しつつ、ときにはワイパー動かしつつ、軽快に車を走らせるドライバーさんという日常そのものなのである。
橋をくぐる車。
橋をくぐる車。
閘門(水位の調整をする水門)の運転を待つ車。
閘門(水位の調整をする水門)の運転を待つ車。
ところで閘門が開くのを待っている間、「ここなら波がおだやかなので…」と助手席のスタッフさんがやおら車のドアを開けた!えええ!
「うしろも開けていいですよ」って、えええ!?
「うしろも開けていいですよ」って、えええ!?
わー水面ぎりぎりだ!
わー水面ぎりぎりだ!
ふつうの車より小さく、高い位置につけられたドアは、喫水(船の底から船が沈む最大のところまでの高さのこと)より上に作られているので波のないところなら開けても大丈夫。そして開けて驚くことに、わたしたちの座席、半分水没している。おおお。
閘門が開いてここから魅惑の高架橋脚ジャングルへ!
閘門が開いてここから魅惑の高架橋脚ジャングルへ!
座面がとても低いので
座面がとても低いので
水面がすごく近いことも、ふつうの船とはちがう楽しさである。
水面がすごく近いことも、ふつうの船とはちがう楽しさである。
次のページまでしばらく動画をおたのしみください。(音楽 by テクノポップユニット三鷹
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ところでこのタクシー、最大4人乗りのところを3人で乗ることになり、だれが助手席に乗るかでひともめしそうであったところ、後ろに3人乗ることをすすめられた。左右のバランス合わせのため、助手席にもスタッフさんを乗せてのあえての後部座席推しの理由はなにかと気になっていたのだが、こういうことだった。
後部座席のルーフの窓から外に出られるのである。
後部座席のルーフの窓から外に出られるのである。
にゃはははは!
にゃはははは!
座面が低いことに興奮し、つぎにはルーフの上の広い視界に興奮し、もう大忙しだ。
そんな、川をはしる上に屋根にひとが乗っている車、という派手好き大阪人でもなかなかやらない最大限浮かれたスタイルでやってきたのは、
大阪の象徴、道頓堀。
大阪の象徴、道頓堀。
この道頓堀川、近年、水辺との距離を縮めてもっと川に親しんでもらおうと水面近いところに素敵な遊歩道が整備されたのだが
この道頓堀川、近年、水辺との距離を縮めてもっと川に親しんでもらおうと水面近いところに素敵な遊歩道が整備されたのだが
マジで距離近いよ!
マジで距離近いよ!
最も交通量も歩行者の数も多い御堂筋をくぐるところ。ここぞとばかりに注目される。
最も交通量も歩行者の数も多い御堂筋をくぐるところ。ここぞとばかりに注目される。
「なんだか皇室の方にでもなったみたいですね」「それか、優勝パレードかなんかですね、結婚式とかにいいかもしれないですね」などと話しつつ、皆さん気さくに手を振ってくださるので手を振り返すのだが、我々はやんごとなき生まれの者でもないし、今日は単に乗りたいから乗っただけでなんの記念でもないのであった。申し訳ない。
すれちがう船にも
すれちがう船にも
並々ならぬ歓待を受ける。
並々ならぬ歓待を受ける。
自分たちには自らのおもしろおかしい姿は見えないのだが、反応でだいたいどういうことになっているかわかろうというものだ。

今回と関係ない、ネットにあがっていた動画で失礼するが、だいたいこんな感じである。>>動画はこちら
スタッフの方によれば、「車が川に流されてる!」と通報されたこともあるとのことだが、通報したくなる気持ちもわかる。
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道頓堀川ではあまりにも注目されまくるのでややおとなしくしていたが、帰路では逆に開き直って、どのくらい注目されるものなのかカウントしてみることにした。
橋を歩くひとが立ち止まって手を振ってくれるのは、ふつうの船でもよくあることなのだが
橋を歩くひとが立ち止まって手を振ってくれるのは、ふつうの船でもよくあることなのだが
水陸両用タクシーの場合は自転車のひとも止まる
水陸両用タクシーの場合は自転車のひとも止まる
老若男女、自転車をとめる
老若男女、自転車をとめる
自転車をとめてさらにケータイを出して撮る
自転車をとめてさらにケータイを出して撮る
水上バスからもめちゃめちゃ写真を撮られる
水上バスからもめちゃめちゃ写真を撮られる
乗ってるだけでひとを笑顔にできる車、それが水陸両用タクシー(めちゃくちゃぶれたけど)
乗ってるだけでひとを笑顔にできる車、それが水陸両用タクシー(めちゃくちゃぶれたけど)
綺麗なお姉さんを撮るひとたちも笑顔。(ただ彼らだけはこちらにカメラを向けることはなかった…!)
綺麗なお姉さんを撮るひとたちも笑顔。(ただ彼らだけはこちらにカメラを向けることはなかった…!)
観光風の彼も写真を撮る
観光風の彼も写真を撮る
カフェの彼は腰を浮かせて見る
カフェの彼は腰を浮かせて見る
やぁ、たのしいなぁ
やぁ、たのしいなぁ
おや、あれは
おや、あれは
同じダックツアーの水陸両用バス!そちらも盛況ですね
同じダックツアーの水陸両用バス!そちらも盛況ですね
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たのしかった!
たのしかった!

目撃情報を探しています!

これだけたくさんのひとに写真に撮られたので、きっとTwitterあたりにアップされているだろうと、いろんな検索ワードで検索してみたのだが見つけられなかった。
というわけで、5月12日の14時ごろ、道頓堀川で川をはしってる変な車を見かけて写真を撮ったという方は、私までぜひ送っていただけると幸いである。
「あそこのビルのガラスに映るのでシャッターチャンスですよ」といわれて辛うじて撮った1枚がこれ。
「あそこのビルのガラスに映るのでシャッターチャンスですよ」といわれて辛うじて撮った1枚がこれ。
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