かわいいあの子を勝手にスケッチ
というわけで今回は頼まれもしないのに勝手に似顔絵を描き、相手に喜んでもらえるかを検証しようと思うのだが、ひとつ問題がある。
ぼくは絵がヘタなのだ。それはもう洒落にならないくらいにヘタなのだ。
まずはその鬼才ぶりをご覧頂こう。
モデルを求めて街を徘徊
最初の犠牲者、もといモデルを探して街をぶらぶらしてみたところ、なかなか味わい深い顔をしたお母さんが屋外で弁当を売っていた。よし、あのおかあさんを描いてみよう。
働くおかあさんが最初のターゲット
特徴的な髪型をされているので描きやすい
気づかれないようチラ見
完成!
勝手に似顔絵を描いていることがバレたら変態だと思われてしまう可能性があるため、おかあさんに気づかれないようこっそり描いた。
でも、もしうまく描けたらプレゼントしよう。
と思ったけどゴメンナサイ。うまく描けませんでした
スケッチされたとは知る由もない働き者のおかあさん。きっとこのまま知らないほうが幸せだろう
実物は笑顔がとてもチャーミングで愛嬌のあるおかあさんなのだが、そのかわいさをあますところなくそぎ落としてしまった。モデルの魅力を1ミリたりとも表現できていない似顔絵だ。これはこれである意味すごい才能なのではないだろうか。
もっと特徴をデフォルメしてかわいいタッチにすればよかったのだが、やや写実的に描きすぎてしまったのも敗因だろう。
これはとても渡せないな…
頼まれもしないのに勝手に描いてるとはいえ、せっかくならかわいく描いてあげたい。そして、それをプレゼントして喜んでもらいたい。
モデルを探しに公園へ
そこで、似顔絵のトレーニングのため、たくさんの人が集まる昼休み時の公園にやってきた。
新緑が気持ちいいですね
ターゲット発見!
ターゲットに定めたのはベンチで熱心に本を読む女性。宮崎あおい似の森ガールである。我がスケッチブックにぜひおさめておきたい美女だ。
怪しまれないよう、やや距離をとり
(勝手に)スケッチ開始
ターゲットは本に夢中であるため、スケッチされているどころかじろじろ見られていることにすら気づいていない模様。まあこちらとしては思う存分観察ができて助かるが。…ん?気持ち悪いって? いやいや、彼女だってかわいく描いてもらったほうが嬉しいはずだ。女子とはそういうものであるはずだ。
というわけで遠慮なくジロジロ見ることにする
しかし横顔に苦戦
ぼ完成してしまったのだが、ここから巻き返せるだろうか
巻き返せませんでした
完成
森ガールというより邪馬台国に仕える人みたいになってしまったので、これもボツ。似顔絵って難しいですね。
これもちょっと渡せるレベルじゃない
勝手に似顔絵を描くのも失礼なのに、それがヘタだったらただの嫌がらせになってしまう。もしかしたら何らかの法にふれるかもしれない。
これはもう少し研鑽を積む必要がありそうだ。
ランチタイムの公園へ
ランチを楽しむOLさん、ベンチで昼寝するサラリーマン…。お昼時の公園はモデルに事欠かない。アーティストの創作意欲が掻き立てられる。
さあ次は誰を描いてやろうか。
こんにちは、アーティストです
次のエモノを品定め
ターゲット、ロックオン
今回のターゲットはベンチでタバコを吸うやさしそうなおじさんだ。
スケッチ開始
しかし、すぐに席を立つおじさん
…
不穏な空気を察したのか、ぼくがスケッチを始めるとおじさんは去ってしまった。なかなか鋭い人である。
似顔絵を描くには少なくとも3分はかかる。せめてその間だけでも怪しまれず、そこに留まっていてもらわねばならない。
そこで、ターゲットの目を欺くため風景を写生しているフリをするという作戦を思いついた。
小芝居中
見事な大木ですなあ
いかにも大木を写生しているかのように振る舞っているが、ターゲットは手前に座るOLさんだ。描写されているとはつゆ知らず、ランチを楽しむOLさん。どうやらバレていない様子だ。
バレてない、バレてない
ターゲットの目を盗んで特徴をとらえるチラ見の技術も向上
しかし、肝心の似顔絵の技術はまったく向上しない
ぼくの似顔絵はなぜか実物より10歳くらいフケ顔になってしまう。少女マンガを意識したクリクリの目にしてみたのにどうしてなんだろう?
続いて階段でランチを摂る女性をウォンテッド
恐竜みたいな顔になってしまった
花を描くフリをしてターゲットを狙う技も習得
しかし狙うはその奥にいるメガネ女子
う~ん…
なぜかブスになってしまう
どうもぼくは女性の似顔絵が苦手らしい。どんなにかわいい女の子でも100%ブスになってしまうのだ。
よし女性は諦めた。男性を描こう。
というわけで弁当屋のお兄さんを描いてみる
お兄さんは仕事中に夢中で気づいていない様子
なかなかハンサムに描けた
なのでプレゼントしてみることにする
喜んでくれた
うむ、今度はなかなかハンサムに描けたような気がする。ヘタなことに違いはないが、これまでの中では最も自信がある。さっそくプレゼントしてみよう。
あの、あなたの似顔絵を(勝手に)描いたんですけど
…これ、ぼくですか?
似てますよね
お兄さんにしてみれば勝手に似顔絵を描かれたこともさることながら、その絵がヘタであることも衝撃だったはず。にも関わらず似顔絵をプレゼントしたら快く受け取ってくれた。お兄さんいわく「なんかジロジロ見られてるな~と思ったけど。怖かったので気づかないフリしてました」とのこと。あ、気づいちゃってましたか。
…ありがとうございます
ついでにお弁当も買った
ペンネ+おかず2品+バターロールで500円。ペンネは作りたてのアツアツ
屋台に張ってくれた
しかし、もしかしたらいきなりこんなヘタな絵を押し付けられて本当は怒っているかもしれない。ヘタなりに、いちおう心を込めて描いた作品なので、破り捨てられたりしたらさすがにショックだ。
恐る恐る振り返ってみると…。
なんと! 屋台に似顔絵を張ってくれてる
しかもそんな大事な場所に!
思いもよらない厚遇である。便所紙にされたって文句はいえないレベルの絵なのに、いいんですか? それヘタうまとかじゃなくてガチのほうのヘタですよ。
どうやらお兄さんは純粋に喜んでくれたらしい。もう少しうまくなったらまた描きに来ます。
ところ変わって都内某カフェ
働く店員さんを(勝手に)スケッチ
描けました
トレーニングの成果か特徴をとらえるのがうまくなった気がする。今回はかなりの自信作である。
自信作
これなら飾っても違和感ないんじゃないの?
美木良介似の店員さんも喜んでくれました
店員さんに勝手に似顔絵を描いた旨を告げると、ちょっと照れながらもやはり笑顔だった。結論としては勝手に描いた似顔絵でも(さらに、それがヘタでも)喜んでくれる人はいるようだ。
似顔絵はコミュニケーションに使えるかも
頼まれてもいないのに勝手に似顔絵を描く。改めて考えるとかなりの変態行為だが、意外と受け入れてもらえることが分かった。コミュニケーションにおいて、似顔絵というのはひとつの有効なツールになるものなのかもしれない。