特集 2012年6月7日

占いだらけの商店街で初めての手相占い

石切神社で毎年7月に行われる献牛祭で曳かれる巨大な牛の山車
石切神社で毎年7月に行われる献牛祭で曳かれる巨大な牛の山車
大阪に「石切さん」とよばれる神社がある。
でんぼ(できもの)の神様として奈良、大阪のひとびとから篤い信仰を集めるこの神社の門前にある「石切参道商店街」がちょっと変な感じで面白い。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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なかなか始まらない商店街

われわれ関西の外に住む人間にとっては「石切さん」と言われてもピンとこないけれど、大阪、奈良に住む人達にとって石切さんはかなりメジャーな神社らしい。
生駒山地中腹からの眺めはなかなか
生駒山地中腹からの眺めはなかなか
近鉄奈良線石切駅を下車し、眼下に大阪市内の風景を眺めながら、坂道を下って行くと歓迎の看板が現れる。
おおきな鳥居でお出迎え
おおきな鳥居でお出迎え
しかし、まだまだ商店街ではない。もうしばらく歩くと。
熨斗みたいな形の看板で歓迎
熨斗みたいな形の看板で歓迎
巨大な熨斗のような形の看板で歓迎。しかしまだ商店街ではない。さらに右を向くと……。
また歓迎!
また歓迎!
また歓迎!
歓迎のオンパレードである。しかし、歓迎はしてくれるものの、なかなか商店街が始まらない。
「このあと!ウワサのアノ人がスタジオ登場!」みたいに煽ってCMに入ってCM明けたら「次週! ウワサのアノ人がスタジオ登場!」って来週かよ! というバラエティ番組みたいで面白い。

やたら多い占いの店

たび重なる歓迎を乗り越え、商店街に入ると、目につくものは「占い」の文字だ。
「占」が5箇所も!
「占」が5箇所も!
占いの宝石箱やー
占いの宝石箱やー
これも占い
これも占い
めでたい石像大集合……だけど、別にめでたくはない二宮金次郎像(左上)も混入
めでたい石像大集合……だけど、別にめでたくはない二宮金次郎像(左上)も混入
なんか不気味な感じに写った大黒様
なんか不気味な感じに写った大黒様
……とにかく占いの店が多い。
普通の洋品店や土産物店もあるけれど、圧倒的に占いの店が多い。
さほど大きくない商店街のなかにこれだけの占いの店ががあると、そんなに占いの需要があるのか、他人ごとながらちょっと心配になってしまう。
お気軽にご遠慮なくというけれど
お気軽にご遠慮なくというけれど
お気軽には入りにくい雰囲気であることは否めない
お気軽には入りにくい雰囲気であることは否めない
こんなのあるし……
こんなのあるし……
石切参道商店街の占いの店は、鑑定料500円~数千円といったところで、そんなに高くはない。
せっかくなので、手相でも見てもらおうかしらと思うものの、今まで一度も占いをしてもらったことがないので、ちょっとしたためらいがある。
まあ、占いの店はまだまだたくさんあるので、もう少し見てまわってからもうちょっと考えることにした。

有名人がよく来る

石切参道商店街の占いの店にはやたら「テレビに出演」とか「芸能人がきた」というやつが多い。
蒸しアナゴでおなじみ千鳥
蒸しアナゴでおなじみ千鳥
陣内智則と藤井隆
陣内智則と藤井隆
吉本の芸人が関西ローカルの番組のロケでやってきた。というパターンが多いようだけど、中にはこんな大物もいた。
志村けん
志村けん
志村けんの運命の転機っていつだったんだろう? と思う。「だいじょうぶだぁ」がスタートした時だろうか?

言いたいことがいっぱいある大佛

ところで、この石切参道商店街の途中に「石切大佛」とよばれる大仏が鎮座ましましてる。
そんなに大きいわけではない石切大佛
そんなに大きいわけではない石切大佛
牛久大仏昭和大仏の大きさに慣れてしまった贅沢な目から見ると、そんなに大きな大仏というわけではない。
しかし、この大仏。周りがすごいことになっている。
日本で三番目!
日本で三番目!
「日本で三番目石切大佛」の文字が眩しい。
なぜ三番目なのか? 誰しもが思う疑問である。
おそらく建立当時、奈良の大仏、鎌倉の大仏、そして石切大佛。という気持ちで「三番目」と自称したのだと思う。しかし、今や巨大な大佛(?)は日本各地に乱立し、その地位は三番目どころではないはずだ。
さらに気になるのは「土地時価約壹億圓」のでかい文字。
よく読むと、阪本昌胤というひとが、交通事故防止のため、時価1億円の土地を東大阪市に寄付した。ということらしい。
日本で三番目!
いくら寄付したかということが事細かに書いてある。
同じ敷地にあった他の石碑をみてみると、この大佛を建立した阪本昌胤氏が、大阪府にどれぐらい寄付したかを事細かに書いてあった。
これほど堂々と、なんのてらいもなく寄付したぞって言ってくれると、おぉ!そうか!と、逆に清々しい気持ちになるから不思議だ。

石切大天狗も阪本昌胤

石切大天狗
石切大天狗
商店街をさらに進むと、石切大天狗というものを発見。大きく「阪本昌胤」と書いてあるので、先程の石切大佛を作った人が作ったのだろう。

なぜ天狗?
なぜ天狗?
中はなぜか天狗のでかい絵が飾ってあり、建物横の小さい庭に出てみると書道作品が飾ってある。
も、もうちょっと丁寧に保存したらいいんじゃないかな……?
も、もうちょっと丁寧に保存したらいいんじゃないかな……?
よくみると、安倍晋太郎、金丸信、三木武夫など、昭和の名だたる政治家の書が飾ってあるのだけど、どれもこれもボロボロで手がつけられない状態になってしまっている。
まさに驕れる者久しからずといた雰囲気が漂う。

この阪本昌胤氏は、赤まむしドリンクなどの精力剤で有名な製薬会社の社長だった人で、会社の創業地である石切に大佛や大天狗など、さまざまな観光地を作った人物らしい。
この人が阪本昌胤氏
この人が阪本昌胤氏
個人の生命は短く 民族の歴史は永い
個人の生命は短く 民族の歴史は永い
大佛の横に阪本昌胤氏の銅像が立っており、その足元に「個人の生命は短く 民族の歴史は永い」という格言が書いてある。
金属プレートにわざわざ彫り込んで書いてあるので、一瞬ほぉーという感じになるけれど、しばらく見ていると「よく考えると当たり前だろ!」という気持ちにもなる。
「夢は寝てても起きてても見ることができる」みたいな、なにかうまいこと言ってそうだけど、実は何も言ってない感じが見事で素晴らしい。

ついに手相を見てもらう

いろいろと見所いっぱいの石切参道商店街ではあるのだけど、やはり占いをしてもらわなければ来た意味がないというもの。
覚悟を決めて500円の手相占いをしてもらうことにした。
たい焼き屋以外は占いの店
たい焼き屋以外は占いの店
--初めて見てもらうんですけど、よろしくお願いします
「はい、じゃあ、両手だして、うん、さみしがりやの甘えたがりやさんのような感じするな」
--さ、さみしがりやの甘えたがりや?
「うん、神経質な面もある、でもよう働く手してはるよ」
グサリ、とくる。概ねよく働いてないからだ。ひー、すみません!今後はよく働きたいと思います……。
「この頭脳線、ひとより変わったアイデアが浮かぶ面があるかもわからん、この感情線はお人好しでバカ見るときもある、これ見たら、人にもの教える力持ってはるよ。」
--ものを教える力?
「学校の先生とか保育士さんとか……」
なるほど、しかし、今言われても……という気もしないでもないが、悪い気はしない。占いのおばちゃん、なかなか褒め上手だ。
「35歳前後で人生の大きな転換期があるかもしれん」
35前後で人生の大きな転換期。これは一昨年、会社を辞めてライターになったということだろうか? そうだとすれば確かにそのとおりではある。
と、こんな感じでパッパと手相診断は終わった。
最終的に「えぇ手相してはるよ」と褒められて終わった。褒められたものがたとえ手相だったとしても褒められるとやっぱり嬉しいし楽しい。
あたっててもあたってなくてもどうでもいいので、とにかく褒められるためにまた手相鑑定に行きたくなってくる。
手相鑑定500円から
手相鑑定500円から
ところで、もう1件、姓名診断もしてもらった。診断してもらったのは、自分の名前ではなく、息子の名前についてだ。ぼくは息子の名づけのさい、画数などを全く考慮せずに名付けた。
ので、じっさい画数的にはどうなっているのか。確かめておきたいと思ったのだ。
--名前は西村太郎っていうんですが……
「西村太郎くん、簡単でえぇな。誰にでも呼んでもらえる名前が一番えぇ、画数は今調べるからな……」
「うーん……ちょっと神経質かな? 呼吸器系、血液の流れがちょっと悪い……これは、大凶やで」

--え、大凶って悪いってことですよね
「ん、悪いよー、一個づつ画数見て行ったら悪くない。けど、20画が厄難大凶 ゆうて病弱短命、障害が多いと出とるな」
--えー、どうすればいいんですか?
「うーん、つけてもうたもんはしゃあないな。女の子ならお嫁さん行って名前変わったりするけれど」
--婿養子に出せばいいですかね?
「長男を婿養子に出したらアカンよ!」
どうやら打つ手なしらしい。ただ、ニックネームなどで普段使う名前を変えればいいらしいのだけど、子供にわざわざそんなことをさせるのもなんか変だ。
つけるときに考慮しなかったぐらいだから、別に気にしなければいいんだけど、やっぱりちょっと引っかかりはある……。
別れ際、おばちゃんが
「まあ、他の四柱推命なんかでええのが出たらそっちの方信じればええんよ」
と言ってくれた。

あ、それでいいんですか。

気楽に観て貰いたい

石切参道商店街のマスコットキャラ「いしきりん」
石切参道商店街のマスコットキャラ「いしきりん」
この後、もう一箇所で別の占い師に手相を見てもらったのだけど、やはり「人にモノを教えるのが向いている」と言われた。
もう手遅れではあるけれど、やっぱり言われて悪い気は……しない。

いままで、占いを信じたことはあまりないけれど、自分を省みるきっかけにはなった。

また褒めてもらいに行こうっと。
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