特集 2012年6月20日

新東名ベストビュースポットを探す

新東名「から」ではなく、新東名「を」眺める
新東名「から」ではなく、新東名「を」眺める
新東名高速道路の開通から早くも2ヶ月が経ち、走りやすい路面や、これまでのイメージを覆すサービスエリアなどが話題になっている。

もう少し引いた視点から見ると、これだけ大規模な土木構造物ができたという意味では、今世紀の記録に残るできごとだと思う。

東海道新幹線や東名高速道路のような存在がもう1つ増えたのだ。ことの重大さで言えばセ・リーグとパ・リーグのほかにもうひとつプロ野球リーグが発足したようなものだろう。

そんな大規模プロジェクトなら、走るだけじゃなく、まずじっくり眺めてみたいと思った。そこで、新東名が美しく見える、絶景ビュースポットを探すことにした。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:究極の夜行バス・コクーンに乗った

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走る前に眺める

ビュースポットは、事前に何ヶ所か地図でアタリをつけたものの、実際に行ってみないとどう見えるか分からない場所ばかりだ。モチベーション的には南極点を目指したアムンゼンと同じである。

とりあえず東名高速に乗り、新東名高速が分岐している御殿場ジャンクションを目指した。
ところでこの右ルート左ルートがある意味最初の第二東名だと思う
ところでこの右ルート左ルートがある意味最初の第二東名だと思う
御殿場ジャンクションに差しかかると、真新しい道路が左側に分岐してゆく。当面の間、ここが新東名の東京側の始点なのだ。
いままでになかったタイプの高速道路図
いままでになかったタイプの高速道路図
これもいままでなかったタイプの行先案内
これもいままでなかったタイプの行先案内
新東名に乗るか、と思いきや
新東名に乗るか、と思いきや
乗らずに東名方面へ
乗らずに東名方面へ
新東名を見に行くのに、なぜか新東名には乗らず東名へ。実は、このすぐ先に最初のビュー(じゃないかとアタリをつけた)スポットがあるのだ。
しばしのお別れ
しばしのお別れ

みはらし公園から眺める

というわけで御殿場ジャンクションのすぐ先、裾野インターで東名を降り、一般道を進む。

東名と並走する国道246号線から山側へ曲がり、富士山の裾野に作られたニュータウン的な街並みの中を抜けると、最初のスポットにたどり着いた。
風光明媚な住宅街(というのも変な表現だけど)を抜けると
風光明媚な住宅街(というのも変な表現だけど)を抜けると
こんな場所に出た
こんな場所に出た

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新東名のトンネルの上に公園がある
新東名がちょうどトンネルに入る真上に公園があり、しかもその名が「みはらし公園」である。ここを見つけた瞬間、これは新東名ビュースポットに違いないと思った。

しかし逆に言えば、たったこれだけの手がかりで早起きしてここまで来てしまったのだ。その緊張感も南極点を目前にしたアムンゼン並である(怒られるかな)。

果たして新東名は見えるか、と車を降りる。
見えた!それもバッチリ!
見えた!それもバッチリ!
目の前には真新しい2本の道路がゆるやかなカーブを描いていた。しかも手前は高い橋、奥は切り通しで、土木工事のダイナミズムあふれる光景である。ここはいい眺めだ。なんと幸先の良いスタート!

さらに、この場所にはもうひとつおまけがある。
なんと同じ方向に富士山も見えるのだ!
なんと同じ方向に富士山も見えるのだ!
いきなりこれ以上が望める場所あるのか、というほどの爽快な光景である。薄々気づいていたけど、この公園の「みはらし」は富士山が見える、ということなのだろう。

ただし、ひとつだけ難点があって、上の2枚の写真を撮るには手前の盛り土が少しだけ高いので、僕のように背が低いと工夫が必要になる。
車両基地を撮る</a>ために買った脚立、車に入れておいてよかった
車両基地を撮るために買った脚立、車に入れておいてよかった
この公園、新東名がトンネルでくぐっている小山の上にあって、山の反対側からも新東名を眺めることができる。こちらはまた違った景色で楽しい。
巨大な防音壁が目の前に!
巨大な防音壁が目の前に!
ふだんなかなか見ることのない防音壁のマテリアルが間近に見られて、1ヶ所で2度嬉しい場所である。
あの壁の裏側はこんなかっこいいことになっていたのか
あの壁の裏側はこんなかっこいいことになっていたのか
不完全な計画だったのにこれ以上ないスタートを切ってしまい、むしろ先行きが不安になってきた。ここ以上に新東名の眺めがいい場所なんてあるのだろうか。
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茶畑の中から眺める

次に向かったのは新東名で言うと長泉沼津インターの先、駿河湾沼津サービスエリア近くの、新東名の脇を走る道路である。

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新東名から100mくらい高い場所じゃないかと思った
なぜこんなよく分からない場所を選んでしまったかと言うと、高速道路をななめ上から見える場所を探した結果なのだ。

等高線で見ると南向きの斜面だし、目の前は茶畑。きっと開けていてその先を走る新東名がよく見えるだろうと思った。
というわけでこんな道を通って向かった
というわけでこんな道を通って向かった
東名のこんなかっこいい橋を眺めたりして
東名のこんなかっこいい橋を眺めたりして
ポイントにたどり着いてみると、あたり一面茶畑。そして肝心の新東名は…、わずかに見えた。
ほぼ見えない、と言っていい
ほぼ見えない、と言っていい
思ったより傾斜がきつくなくて、背の低いお茶の木にもほとんど隠れてしまう始末。この場所は失敗だ、と思ったけど、よく見てみると美しく刈られた茶畑の向こうに駿河湾と伊豆半島が見えて、なかなか静岡らしい景色。

新東名が見えないので本末転倒だけど、ここはここでいい場所だった。

そして、そこから少し進むと道が谷間に降りて、新東名と東名がその谷を跨いでいる橋を同時に眺められる場所を見つけた。
新旧東名が揃い踏み
新旧東名が揃い踏み
これだけでも少し感動したけど、そのときひらめいた。ひょっとしてこれ、海側から見たら東名と新東名、その奥に富士山が見える場所があるんじゃないか。

そう思って地図を眺め、その場でアタリをつけて行ってみた。
海側へ急げ
海側へ急げ
そうしてたどり着いた場所からは、もっとすごい光景が見えた。
シズオカオブシズオカな光景
シズオカオブシズオカな光景
目の前に茶畑、その奥に東海道新幹線、東名高速、新東名高速、そして背後にそびえる富士山。

数え役満、といった感じの景色である。

さらに後ろの海岸から見れば、いちばん手前に三保の松原を入れることもできるか、と思ったけどやめた。

次に向かったのは、新東名を跨ぐ橋の上。そこからなら確実に遠くまで眺めることができるだろう。
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橋の上から眺める

道に迷ったり、すごく細い道だったりして焦っていたため、気がついたら途中の写真を撮っていなかったけど、目的の橋の上に着いた。地図だとこのあたり。

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こんなに何本もの橋が必要なのだろうか
切り通しになっているせいか、このあたりだけ新東名を跨ぐ橋が何本も固まって架かっている。なぜこんなに何本も必要なのか、と思いながら実際行ってみたら理由が分かった。
かっこいいのだ
かっこいいのだ
いや、その理由は僕が無理矢理つけたけど、でも実際、高速道路の上に橋が連続して架かっている様子はかっこよかった。
もっと高い隣の橋にも行ってみた
もっと高い隣の橋にも行ってみた
やっぱりかっこいい
やっぱりかっこいい
しかし、周辺は一面に茶畑が広がるだけ。どうしてこれだけの橋を架けたのだろう。ひょっとして、新東名が通る前からここに道があって、その分は橋を造らなければならないという取り決めがあったのだろうか。

次のビュースポットは少し離れているので、この先から初めて新東名に乗ってみることにした。

勘助坂から眺める

僕の初めての新東名走行は、新富士インターチェンジから乗ることになった(と思ったら、先日乗った夜行バスで既に全線走行していたことを、あとからGPSのログで知った。寝ていたのでまったく気づかなかった)。
初めてなので優しくしてね…
初めてなので優しくしてね…
やや緊張しながら本線に合流。言われている通り、確かにいままでの高速道路に比べて段違いに路面がスムーズだ。カーブの半径も大きくて、とても走りやすい。

と思っていたら、前方にトンネルが見えてきた。
トンネルの上に茶畑がある
トンネルの上に茶畑がある
茶畑の中に道路が通っている!
茶畑の中に道路が通っている!
トンネルの上に茶畑が広がっていて、その中に道路が通っていた。あの道路からの眺めはそうとういいんじゃないか。

予定を変更してさっそく次のインターで降り(と言ってもだいぶ先だった)、あのトンネルの上の道に向かった。
ほとんど新東名に乗った距離を戻ってきた
ほとんど新東名に乗った距離を戻ってきた
目的地は近い!
目的地は近い!
行き過ぎた!けどここもいい眺め
行き過ぎた!けどここもいい眺め
あまりに細い道で、曲がる場所を何度か行き過ぎたあと、ようやくそれらしい道に入った。
いちげんさんにはかなり敷居の高い道
いちげんさんにはかなり敷居の高い道
すれ違いどころか、バックで戻るのにも一苦労しそうな細い道。向こうから地元の人の車が来たら嫌な顔されるだろうなあ、とびくびくしながら進んで行くと、眼前にすばらしい景色が広がった。
もうここが新東名ベストビュースポットに決定
もうここが新東名ベストビュースポットに決定
なにしろ富士山の全身も見えるのだ
なにしろ富士山の全身も見えるのだ
この景色には思わず声が出た。ここはすごい。これ以上新東名を美しく眺められるスポットはないと思う。

場所はこのあたり。

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道がものすごく狭いので行こうと思う人は気をつけて
ちなみに、上の写真を撮った場所の背後には、こんな碑が建っていた。
武田信玄の伝説的軍師、山本勘助ゆかりの地だった
武田信玄の伝説的軍師、山本勘助ゆかりの地だった
どうやらこの場所は山本勘助が幼少時を過ごし、この山の斜面を竹馬で駆け上ったり下りたりしていた、という言い伝えが残っているらしい。これを目当てにどのくらいの人が来るか分からないけど、いちおう観光スポットなようで安心した。

でも、その先にあった勘助坂は恐ろしいほど細くて急な下り坂だった。
もうダメだと何度か思った
もうダメだと何度か思った
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ジャンクションを眺める

最後にやってきたのは新清水ジャンクション。ここを上から眺められる場所がないかと探していた。

まず目をつけたのは、ジャンクション手前にある橋の上からの眺め。そこで、近くの清水いはらインターで降り、目印をつけた場所に向かった。

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デイリーの取材以外では絶対行くことがないだろう場所
途中、ジャンクションを下から見上げられる場所を通りがかった。思わず車を停めて写真を撮ってしまう。でも大きさがまったく伝わらない。
大山さんジャンクションの撮り方教えてください
大山さんジャンクションの撮り方教えてください
だんだん細くなる道をやや不安になりながら登って行くと、新東名を跨ぐ橋の上に出た。
フェンスの形が独特
フェンスの形が独特
この橋、地元の人以外ほとんど誰も通らなそうな場所だけど、飛び降り対策なのか、フェンスの目が細かく、さらにフェンスの上には何やらセンサーのようなものがついていた。
電気が流れるのかサイレンが鳴るのか、とにかく怖い
電気が流れるのかサイレンが鳴るのか、とにかく怖い
この橋からジャンクションは見えることは見えるけど、眺めはそれほどでもなかった。とにかくフェンスが邪魔で、どう写真を撮っても入り込んでしまうのだ。
夢に見た景色、みたいになってしまう
夢に見た景色、みたいになってしまう
そこで、さっきジャンクションを通過しているときに見つけた場所に行ってみることにした。
山の斜面を這うように通る道が見えるだろうか
山の斜面を這うように通る道が見えるだろうか
ジャンクションを囲む山の斜面に茶畑があって、そこにつづら折れの道が通っていることに気づいたのだ。この記事の結論としては、新東名を眺めたかったら茶畑に行け、と言えそうだ。

地図で見るとどうやら行き止まりで、まわりには茶畑と、恐らくその畑の持ち主の民家しかない。私道かも知れないけど、とりあえず行けるところまで行ってみることにした。

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こんなとこ一般人が紛れ込むこと滅多にないだろう
このあたりの急斜面はどこも茶畑で、そのため縦横無尽に農業用モノレールが敷かれていた。走っていると道路沿いに次々に乗り場(乗れないけど)が出てくるので興奮する。
ふつうの道沿いに唐突にある
ふつうの道沿いに唐突にある
ものすごい急坂に心臓が高鳴る
ものすごい急坂に心臓が高鳴る
線路だけでも興奮する
線路だけでも興奮する
このクネっとしたところなんかたまらない
このクネっとしたところなんかたまらない
さて、関係者以外立入禁止の看板もなく、道は高速道路脇のつづら折れ区間に入った。茶畑と農家の間の細い道を静かに走って行く。
誰にも会いませんように
誰にも会いませんように
少し登ると、ジャンクションが一望できる高さになった。上から見下ろす、というほど高くはないけど、ここからなら全景が見渡せる。
やっぱりジャンクションはいい
やっぱりジャンクションはいい
この立体感と奥行き感!
この立体感と奥行き感!
いまはT字型のジャンクションだけど、将来的には十字型のジャンクションになるらしい。そのときはまたこの茶畑の中に見に来たいと思う。

まず眺めよう

開通して間もない新東名高速。グルメや取り締まりの情報だけでなく、巨大な土木建築物だけに「美しく見える場所」を探したいと思った。この先も新東名は続いているし、まだ開通していない区間もある。きっとほかにもビュースポットはたくさんあると思うので、皆さんも探してみてください。
あのてっぺんからなら全線見えるんじゃないか
あのてっぺんからなら全線見えるんじゃないか
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