特集 2012年6月27日

俺的特等席の旅

電車の旅は先頭車両一択。
電車の旅は先頭車両一択。
乗り物に乗るのが大好きだ。一生乗っていてもいい。
旅行に出て、東海道新幹線の窓側A席や、飛行機の羽のないところの窓側や、バスの左の1番前のひとり席など、俺的特等席である座席がとれてしまうと、心底うっとりとし、目的地に着いても降りたくなくて非常に惜しくなる。
そういう気持ちに折り合いをつけるべく、東京近郊で俺的特等席に乗るためだけの一日旅にでかけた。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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俺特1:東京モノレールは右側最前列派

はじめにやってきたのは、私がこの世で最も愛する乗り物かもしれない、東京モノレールの浜松町駅である。
夢の乗り物だが駅は渋い。
夢の乗り物だが駅は渋い。
時刻は日曜日のお昼前。羽田空港へ向かう路線なだけあって、大きな荷物を持った人々でごった返している。こんななか、特等席はとれるのか。とれる。なぜなら、始発駅だから。
後発の電車を待つ列もちゃんとあるので安心。
後発の電車を待つ列もちゃんとあるので安心。
とにかく列の先頭を大人げなく死守することがポイントである。モノレールは6分間隔くらいでやってくるので、いくらでも待つ覚悟で挑む(たいていの場合、同じ覚悟のひとがいさえしなければ、次の電車くらいで座れる)。
東京モノレールの先頭車両の座席配置はかなり特殊。
東京モノレールの先頭車両の座席配置はかなり特殊。
さてこの東京モノレールだが、特等席がどの席かについては、意見のわかれるところだろう。ふつう選びがちな真ん中ふたり席の最前列は、私はおすすめしない。座席が低いのと、運転手さん真後ろの席は、途中トンネルエリアに入るときなど、反射を防ぐためカーテンを閉められることがあるためだ(「閉めるぞ、閉めるぞ」という注意書きもある)。
運転手さん真後ろの窓は、カーテンの存在に注意!
運転手さん真後ろの窓は、カーテンの存在に注意!
よって、選ぶべき特等席は右側最前列にしぼられる。
また、東京モノレールで右側をおすすめする理由はもうひとつある。窓がすごく大きいのだ。
横の窓が大きくて真下まで丸見え!ヒュー!!
横の窓が大きくて真下まで丸見え!ヒュー!!
でもって、東京モノレールは運河の上を走るので、水面を高速で走り抜けるときなんかは、ものすごい浮遊感だ。ヒャー!
でもって、東京モノレールは運河の上を走るので、水面を高速で走り抜けるときなんかは、ものすごい浮遊感だ。ヒャー!
ほとんどの時間は右の窓に顔をくっつけて、前をのぞきこむスタイルをとる。これたのしい。
ほとんどの時間は右の窓に顔をくっつけて、前をのぞきこむスタイルをとる。これたのしい。
いまいちばんのみどころは、空港に入ってからぐいっと曲がって、新しくできた国際線ターミナルにつっこんでいくところかな、やっぱり。
いまいちばんのみどころは、空港に入ってからぐいっと曲がって、新しくできた国際線ターミナルにつっこんでいくところかな、やっぱり。
東京モノレールの俺的特等席:先頭車両の右側最前列(横の窓が大きいから)
特等席GET方法:始発駅で後発を待つ列の先頭を確保
景色のみどころ:真下の運河と、羽田空港国際線ターミナル
俺的特等レベル:★★★★★

特等レベルという言い方もあれだが、だいたいこんな感じで採点していこう。

俺特2:京急線快特2100形最前列をめぐる攻防

さて次は、これもかなりの人気席である、京急線快特の2100形の先頭車両最前列をねらう。この座席、たしか日本橋から新橋までちょびっと移動する間に偶然座ったことがあったのだが、その日の用事を全部キャンセルしてこのまま終点まで行こうかと思うほどの夢の体験だった。
というわけで今回、東京モノレールと同じ始発駅作戦で、羽田空港からのエアポート快特を待とうとしたのだが。
来ないのだ。俺の2100形が。(心理的不安によりぶれた)
来ないのだ。俺の2100形が。(心理的不安によりぶれた)
電車自体にぜんぜん詳しくないので、こういうときどうしていいのかわからない。なんだか待てど暮らせど京成線の車両ばっかり来るよ!なんで!!
仕方がないのでいったん急行のふつうの車両(2100形以外に興味がなくてごめんなさい電車ファンのひと…)に乗って、本当の始発駅、三崎口のあたりまで向かってしまうことにした。
とはいえ、それも十分楽しいのだが。
とはいえ、それも十分楽しいのだが。
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京急の見どころは、最近高架化した蒲田駅周辺の橋脚群である。上を走っても下を走ってもたのしい。
京急の見どころは、最近高架化した蒲田駅周辺の橋脚群である。上を走っても下を走ってもたのしい。
ああ、これを2100形の席でみたかったなぁ…
ああ、これを2100形の席でみたかったなぁ…
写真に撮ってしまえば同じなのだが、この座席は進行方向に対して横向きについているので、いまいち最前列感や没入感に欠ける。一等ではあるが特等ではない。とかぶつぶつ考えていたら、羽田発の三崎口行きは蒲田で進行方向が変わって、最後尾になってしまった。がーん(このあたりの予測が当たり前にできないところがライトな電車ファンのつらいところ)。
仕方ない、乗り換えるかと思っていたら、次の駅で快特三崎口行きに接続とのアナウンスが流れた。快特…もしや…
きたよ俺の2100形!!!
きたよ俺の2100形!!!
ウワーもうこの没入感だよ!!!
ウワーもうこの没入感だよ!!!
京急のなかでも特別な車両の、しかも先頭車両に、4席しかないプレミアムな席。まぎれもない特等席である。右の席に座った男の子も終始興奮状態であった。だよねーだよねー。私が座ったのは左側。ふたり席に既にひとり年配の女性が座ってらっしゃったが、声をかけて座らせてもらった。しかしその方が降りたら電車ファンと思われる男性が狙いすまして即座にそこに座ったので、この席はもう、そういうもんだということで、いいんだろう。だよねーだよねー。
右の席の男の子が景色に合わせてずっと歌っている。
京急の俺的特等席:2100形先頭車両の最前列(右とか左とか考えている余裕はない)
特等席GET方法:運次第!
景色のみどころ:すべて。でも特にカーブとトンネル!!
俺的特等レベル:★★★★★★


いきなり★5つ基準を超えてしまった。

俺特3:金沢シーサイドラインの平和な特等席

快特を堪能して名残惜しくもつぎの電車に乗るため金沢八景で降り、いわゆる新交通システムの電車、シーサイドラインの駅に向かう。新交通システムは、じつをいうとモノレールや京急ほどの好みではないのだが、初めて乗る電車なのでわくわくしている。
あら、かっこいい駅じゃない!
あら、かっこいい駅じゃない!
ちょっともう、素敵じゃない!
ちょっともう、素敵じゃない!
京急とうってかわっての平和さだ
京急とうってかわっての平和さだ
日曜日だし、場所柄、多くの方が行楽目的だと思うのだが、それでも先頭車両にいちはやく乗り込もうという気配がゼロである。モノレールと京急での「どんなに短距離でもビジネス用途でもとにかく電車に乗るからには俺は特等席をとる!」という、あの俺たちの無言の熾烈な争いはなんだったのか。
難なくゲットした特等席は、なんと1席しかない。
難なくゲットした特等席は、なんと1席しかない。
ひきの写真を(平和すぎて)うっかり撮り忘れてしまったのだが、この電車、新交通システムならではの先頭車両の展望席が、左側ひとり分しか設けられてないのだ。そんな席なのに、背中からの羨望の熱視線(モノレールや京急のときはガンガン感じた…)を特に感じることもなく、終点までのんびりと景色を堪能できてしまった。
しかも海沿いなのでめちゃくちゃ景色がいいよ!(あいにくのお天気ではあったが)
しかも海沿いなのでめちゃくちゃ景色がいいよ!(あいにくのお天気ではあったが)
シーサイドラインの特等席:先頭車両の左側(1席しかない)
特等席GET方法:なし(ふつうに座れる)
景色のみどころ:海!
俺的特等レベル:★★★


あっさり座れるとそれはそれで特等感がないのはなぜだろうか。でも楽しかった。
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俺特4:JRの特等席は立ち見(特等なのに)

シーサイドラインの終点、新杉田に着いて、ふたたび京急の快特をねらおうかと考えていたのだが、次の目的地、町田に向かうもっと効率的な方法に気づき、予定を変更する。というより今日は、そもそも綿密な予定を特にたてていないのだ。いろんな電車に乗りたいぞ。
というわけでJRの駅にやってきたのだが。
なんだよー京浜東北線かよー。
なんだよー京浜東北線かよー。
関東以外の方にご説明すると、京浜東北線は、山手線と並走しているものすごく見慣れたいつもの電車である。そして東京近郊のJRはたいていそうだと思うのだが、先頭車両に特等席がない。特等席がないというか、席がない。運転席うしろの窓にかぶりつきたいなら立ち見しかないのだ。特等ポジションなのに。
そしてカーテンも閉まってるよねーそうだよねー。
そしてカーテンも閉まってるよねーそうだよねー。
しかし京浜東北線の運転席はしゅっとしていて無駄なものがなく、座面が高くてすごくかっこよかった。
しかし京浜東北線の運転席はしゅっとしていて無駄なものがなく、座面が高くてすごくかっこよかった。
運転席かっこよくするくらいなら特等席作ってくれよー。カウンタースツールみたいなのでいいよー。などと悪態をつきながら東神奈川で横浜線に乗換え。
この電車はなんかイイ!
この電車はなんかイイ!
繰り返すようだが電車に詳しくなくて申し訳ない。何形か知らないがちょっとレトロないいかんじの車両がきた。
窓の形もなんだかかわいいし
窓の形もなんだかかわいいし
運転席も素朴で素敵だ!
運転席も素朴で素敵だ!
だけど窓の位置が高いので子どもには絶不評。お父さんにおねだりしてだっこしてもらってかぶりつく(あと一組同じ体勢の親子がいた)。
だけど窓の位置が高いので子どもには絶不評。お父さんにおねだりしてだっこしてもらってかぶりつく(あと一組同じ体勢の親子がいた)。
JRの特等席:先頭車両で立ち見
特等席GET方法:立ち見だがわりと混んでいるのと、子どもたちに混ざる気合いが必要
景色のみどころ:JRってまわりの建物との距離が遠くて独特ですよね、郊外の路線だと特に感じます。
俺的特等レベル:★(椅子がほしいです)

町田にやってきた。
町田にやってきた。

俺特5:町田から北千住まで、ロマンスカー俺的展望車の旅

町田になにしにやってきたか。ロマンスカーに乗るためだ。
憧れのロマンスカーの展望席…!
憧れのロマンスカーの展望席…!
ロマンスカーの展望席とは、これも関東以外の方にご説明すると、運転席が2階にあって、1階から前面ガラスの景色が見放題、しかも広いという、贅沢きわまりない真の特等席である。そして、ロマンスカーの一部の電車は、千代田線直通で北千住まで走っている。毎日、通勤で乗り換える大手町駅でそれを眺めていて、ロマンスカーの展望席で地下鉄のトンネルの中をぐんぐん走り抜けたら、ものすごく素敵だろうなと思ったのだ。
だが、残念ながらこの展望席つきの車両はメトロ直通していない。
これが今日乗るやつ。
これが今日乗るやつ。
この青いロマンスカー、大手町駅で毎日見ているうちに私は気づいた。展望席じゃないけど、いちばん右の席の前だけ、窓、あるんじゃない…?
確証は持てないまま特急券をゲット、もう後戻りは出来ない。
確証は持てないまま特急券をゲット、もう後戻りは出来ない。
自動券売機では座席指定ができず、窓口で「先頭車両の、いちばん右」とお願いして席をとってもらった。メトロの窓口ではおそらく指定できないので注意が必要である(空いていれば乗ってから変えてもらえると思う)。町田から北千住までの特急料金は600円なので、それほど手に汗にぎる値段でもない。ないが、「この値段ではたして本当に特等席なのだろうか…?」という、期待と不安が入り混じる。

いざ乗り込む。
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やったー!!やっぱりだー!!!
やったー!!やっぱりだー!!!
ばっちりだー!!!
ばっちりだー!!!
町田まで来て、よかったよね!!!(夢中)
町田まで来て、よかったよね!!!(夢中)
このロマンスカーのメトロはこね号、きょうは日曜日だし、夕方のこの時間に町田からわざわざ乗る人は少ないんじゃないかということを狙ってだったのだが、わりと同じ車両に乗り込むひとは多かった。が、この俺的展望席、発売日の完売必至の普通の展望席とちがって、わりと知られていないとみえる。他の人よりいい席を、正規の方法をつかって入手したぞという勝手な優越にひたる。子どもに席を譲る気遣いをする必要もなく、車内販売の缶ビールを開けることだってできちゃうのだよ。
そしてロマンスカーは魅惑の地下鉄ゾーンに突入!
そしてロマンスカーは魅惑の地下鉄ゾーンに突入!
しずかにしっとりと地下鉄駅を通過する俺のロマンスカー…!
ロマンスカーの特等席:MSE形の場合、先頭車両の右側いちばん前
特等席GET方法:窓口で席を指定して購入
景色のみどころ:地下鉄線内!!!
俺的特等レベル:★★★★★★

俺特6:初めてのつくばエクスプレス

北千住に着いて乗換案内を検索していたら、「つくばエクスプレス」の表示が。恥ずかしながらつくばエクスプレスも初体験だ。
真新しい運賃表にテンションあがる。
真新しい運賃表にテンションあがる。
これもまたすごく見慣れた感じの車両で、特等席は例によって立ち見だが
これもまたすごく見慣れた感じの車両で、特等席は例によって立ち見だが
なんだか景色がものすごく美しい。左にうっすら見えているのはスカイツリー。
なんだか景色がものすごく美しい。左にうっすら見えているのはスカイツリー。
トンネルもなんだか新しくて広くてきれい!
つくばエクスプレスの特等席:先頭車両右側で立ち見
特等席GET方法:なし(先頭車両にほかに乗客なし)
景色のみどころ:真新しい線路とトンネル!
俺的特等レベル:★★


うむ、新しい電車は無条件によいものだ。
秋葉原から山手線に乗って(当然先頭車両、かぶりつき)
秋葉原から山手線に乗って(当然先頭車両、かぶりつき)
ゆりかもめに乗って帰るよ
ゆりかもめに乗って帰るよ

俺特7:夜のゆりかもめは癒しである

お台場から帰ってきたひとたちを吐き出し、すぐがらんとする日曜夜の新橋駅ホーム。
お台場から帰ってきたひとたちを吐き出し、すぐがらんとする日曜夜の新橋駅ホーム。
先頭車両にもほとんど人影はナシ。
先頭車両にもほとんど人影はナシ。
遠慮せず、特等席を堪能できる。
遠慮せず、特等席を堪能できる。
そして休日の新橋、汐留はとっても静か。
そして休日の新橋、汐留はとっても静か。
人工的で禍々しい汐留~お台場の夜景だが、日曜の夜は空気が違う。人がいない静かな車両から、ゆっくり眺めていると、「俺、東京に生きてるぜ」とだんだんパワーがたまってくる。悲しいことがあったときは汐留のエスカレーターを見てゆりかもめで帰るようにしている。

ゆりかもめの特等席:先頭車両の左側(ひとり席が好きだから)
特等席GET方法:始発駅で待つ。特に夜の新橋→豊洲行き。
景色のみどころ:人工的なお台場の街並み
俺的特等レベル:★★★★★

本日の全行程を動画でどうぞ。

煩悩の数が増えた気がする

豊洲からはバスの特等席=左の1番前で。
豊洲からはバスの特等席=左の1番前で。
思う存分、乗り物に乗りまくってやろうという企画だったが、乗り物欲に思う存分もなにもないことがわかった。もっと乗りたいし、常に先頭車両に乗りたい。煩悩の数が逆に増えてしまったような気がする。
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