はっけんの水曜日 2012年7月25日
 

アマゾン気分で伝統漁 in 有明海

「棚じぶ」という、巨大な四手網を使った漁で遊んできました。
「棚じぶ」という、巨大な四手網を使った漁で遊んできました。
有明海の広大な干潟に面した、道の駅鹿島というところにいってきた。目的は二つあって、一つはムツゴロウ釣り(記事参照)で、もう一つが「棚じぶ」という、大きな四手網を使った江戸時代後期から続く伝統漁法の体験。

メインはあくまでムツゴロウ釣りと考えていたのだが、この棚じぶもまた、予想をはるかに上回る興奮をもたらしてくれる、素敵な体験漁だったのだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

集中豪雨に襲われました

宿を取った長崎から、佐賀県鹿島市にある道の駅鹿島へは車で2時間。長崎在住のライターであるT・斎藤さんと一緒にレンタカーで向かったのだが、最初はポツリポツリ程度だった雨が、目的地に近付くにつれて、どんどんと激しさを増していく。
前が見えない。
前が見えない。
それでも時より現れる晴れ間にきっぱりと諦めることができず、ダメ元で鹿島へと向かうのだが、高速道路を下りたあたりから、雨だけではなく雷がすごくなってきた。釣り竿とか持っちゃ絶対ダメな天気だ。

ここまで来たから一応行くだけいって、佐賀で斎藤さんが絶賛するシシリアンライスを食べて帰り、長崎に戻ってトルコライスを食べるという話にまとまったのだが、現地でスタッフに聞いてみたら、棚じぶは屋根があるから雨でも大丈夫らしい。

なんだ、胃袋がもうシシリアンライスの受け入れ態勢になっているのに。ちょっと逆肩すかしをくらった気分だ。
アウトドアが全面的に無理な天気。
アウトドアが全面的に無理な天気。
こんな天気でも棚じぶは可能だそうです。
こんな天気でも棚じぶは可能だそうです。
ムツゴロウ釣りは干潟が現れないとできないから潮が引いているときの漁で、棚じぶは水がないとできないので潮が満ちているときの漁。

この日は午前中が満ちていて、午後に引く潮だったので、棚じぶをやりながら天気の回復を待ち、雨が止むようなら午後にムツゴロウ釣りをさせていただくことにした。

想像以上に楽しそうな漁、それが棚じぶ

干潟インストラクターというかっこいい肩書きを持つ道の駅職員の池田さんに案内されて、棚じぶの現場へとやってきたのだが、これがイメージしていたものよりもスケールが大きく、冒険心を大きく揺さぶられるものだった。

いいじゃないか、棚じぶ。棚じぶという単語がどうにも覚えられず、「棚ぶじ」とか「藤棚」とか言っちゃうけど。
すごいでしょう。水が濁ってはいるけれど、増水で氾濫している訳ではないそうだ。
すごいでしょう。水が濁ってはいるけれど、増水で氾濫している訳ではないそうだ。
豪雨の影響で茶色く濁った海の上に立つ秘密基地のような小屋と、そこに構えられた巨大な四手網。

潮が満ちているので干潟がまったく見えないため、有明海から一気にアマゾンか東南アジアにでもやってきた気分だ。

その水の色から、このまま濁流に小屋ごと流されそうな不安に陥るが、さすがは遠浅の干潟だけあって、水の流れはほとんどない。
冒険心がときめく丸太の橋を渡って小屋へ。
冒険心がときめく丸太の橋を渡って小屋へ。
小屋は6畳くらいの広さがあり、ここで一泊くらいしたくなる。
小屋は6畳くらいの広さがあり、ここで一泊くらいしたくなる。
海の上に建てられたこの小屋は、キャンプ場のバンガローや、木の上に作られたツリーハウスよりも興奮する。これが宿泊施設ではないのが悔しい。寝袋を持参して泊まりたい。

丸太の橋だけでつながる海の上の小屋。陸から、そして現実から隔離されたような、少し不安になる感じが堪らない。ここは俺の離島だ。

これが500円という格安料金で借りられるのである。
ムツゴロウかと思ったら、トビハゼだそうです。人面魚っぽいね。
ムツゴロウかと思ったら、トビハゼだそうです。人面魚っぽいね。

棚じぶの遊び方

海の上に立つ小屋に興奮させられたが、巨大な四手網にも大興奮。私が子供の頃は、1メートル四方くらいの四手網を持っていることが川遊び仲間にとって一種のステータスで(2,500円くらいだったと思う)、当時持っていなかった私には、四手網は憧れの存在だった。

それがこんなにも巨大になって目の前に現れたのだ。しかも汚い川で捕っても食べられないフナやザリガニを相手にするのではなく、水が濁ってこそいるけれど、捕れば食べられる有明海の魚やエビが相手なのだ。

さっそくインストラクターの池田さんに、棚じぶ漁の実演していただいたのだが、遊び方は網を降ろして数分後に上げるだけ。これで捕れてしまうのだ。

子供の頃の自分を連れて来てあげたい。
子供の頃の自分を連れて来てあげたい。
8畳くらいはありそうな網をそっと沈める。
8畳くらいはありそうな網をそっと沈める。
これが憧れていた四手網。私が巨人になった訳ではない。側面をコの字に囲うように網が張ってあるが、棚じぶにはそれがない。
これが憧れていた四手網。私が巨人になった訳ではない。側面をコの字に囲うように網が張ってあるが、棚じぶにはそれがない。
網を入れてほんの2分くらいで、「もう上げてみましょうか」といわれてびっくり。いや、さすがにまだ早いでしょう。
網を入れてほんの2分くらいで、「もう上げてみましょうか」といわれてびっくり。いや、さすがにまだ早いでしょう。
網を上げると、すでに魚が入っていた。有明海、どれだけ魚影が濃いんだ。
網を上げると、すでに魚が入っていた。有明海、どれだけ魚影が濃いんだ。
四手網に入った魚を、長いタモで網をポンと叩くようにして掬う。
四手網に入った魚を、長いタモで網をポンと叩くようにして掬う。
捕れたのは、エツという日本では有明海にしかいない魚。見たことのない魚が捕れて、異国情緒がさらにアップ。
捕れたのは、エツという日本では有明海にしかいない魚。見たことのない魚が捕れて、異国情緒がさらにアップ。
すごいぞ、棚じぶ。四手網は流れのある場所で通せんぼするように使ってこそ魚が捕れるものと思っていたが、この有明海では、流れのない浅瀬にちょこっと沈めておくだけで、魚が捕れてしまうのか。

深さ50センチ程度の場所なのに、どれだけ魚影が濃いんだ。とかいっている間に雨もやんだようだ。

南の島には部屋から魚を釣れる海上コテージがあるそうだが、それに負けない魅力が棚じぶにはある。素晴らしいレジャーだ。
斎藤さん作成の動画をお楽しみください。

棚じぶ、本当に素晴らしい

この棚じぶは海が濁っているときの方がよく、その面では雨が降ったこの日は絶好のチャンスと言えよう。

ただ時間帯で言えば、満ち潮と一緒に魚が沖からやってくるので、満潮に向けて潮が満ちてくる時間がベスト。今はもう満潮時刻を過ぎているので、これからは潮が引いていく一方。開始が2時間遅かったか。

網を上げるたびになんらかの獲物が捕れるのだけれど、だんだんと引いていく潮の動きに合わせるかのように、獲物は寂しくなっていった。
この網はコの字に囲う側面がないので、待っていれば多く捕れるというものでもないようだ。
この網はコの字に囲う側面がないので、待っていれば多く捕れるというものでもないようだ。
コツは獲物に逃げられないよう一気に引き上げることなのだが、見た目通りにそこそこの重労働。
コツは獲物に逃げられないよう一気に引き上げることなのだが、見た目通りにそこそこの重労働。
コノシロという魚にハゼ、そしてシラタエビなどが捕れた。もう何が捕れても楽しい。でもムツゴロウ捕れないかなー。
コノシロという魚にハゼ、そしてシラタエビなどが捕れた。もう何が捕れても楽しい。でもムツゴロウ捕れないかなー。
エビを見た斎藤さんが、「高級料亭では生きたまま食べるんですよ!」というので試してみた。エビがぬるい。
エビを見た斎藤さんが、「高級料亭では生きたまま食べるんですよ!」というので試してみた。エビがぬるい。
巨大な(当社比)黄色いエビが掛かって大興奮する大人2人。これはレアじゃないかと騒いだが、シバエビだそうな。
巨大な(当社比)黄色いエビが掛かって大興奮する大人2人。これはレアじゃないかと騒いだが、シバエビだそうな。
海を見ながらあぐらをかいて、売店で買ってきた弁当や総菜をいただく幸せ。
海を見ながらあぐらをかいて、売店で買ってきた弁当や総菜をいただく幸せ。
これが地引網なら、網が上がってくるときの興奮は1回だけだが、棚じぶなら自分の体力次第で、規模こそ小さいが何回でも水揚げの喜びを味わうことができる。

福引のガラガラを好きなだけ回していいよと言われた気分。出るのは白い玉に相当する小魚や小エビばかりだけど、大きなスズキやボラ、アカエイなどが捕れる日もあるそうだ。この網にそんな大物が入ったら、さぞかし気持ちのいいことだろう。

斎藤さんも、「これがあれば無人島でも自給自足していけますね!」と、相当気にいってくれたようだ。それはぜひ試していただきたい。
たくさん捕れたシラタエビが、道の駅の売店で売られていた。買った方が安いとか言っちゃダメ。
たくさん捕れたシラタエビが、道の駅の売店で売られていた。買った方が安いとか言っちゃダメ。
我々を狂喜させたシバエビでも1匹20円もしないのか。漁師って大変!
我々を狂喜させたシバエビでも1匹20円もしないのか。漁師って大変!
たまに網に入る深海生物みたいなこれが、バケツに入れると他の魚と一緒に泳いでいるように動く。
たまに網に入る深海生物みたいなこれが、バケツに入れると他の魚と一緒に泳いでいるように動く。
左写真の正体は、ちぎれたクラゲの触手だそうです。これは道の駅で売っていたクラゲ。
左写真の正体は、ちぎれたクラゲの触手だそうです。これは道の駅で売っていたクラゲ。
干潟を散策したら、確かにあの触手を持つクラゲが落ちていた。
干潟を散策したら、確かにあの触手を持つクラゲが落ちていた。
頭をつまんで持ち上げようとしたら、触手が全部ちぎれて「ギャー!」と悲鳴を上げてしまった。
頭をつまんで持ち上げようとしたら、触手が全部ちぎれて「ギャー!」と悲鳴を上げてしまった。

寿司屋で料理をしてもらった

ダラダラと二時間ほど遊んで、魚が数匹とエビがたくさん捕れた。だんだんと腕が疲れてしまって、網を上げる頻度が減ってしまったのだが、それがなければもうちょっと捕れたと思う。

水揚げ高は150円くらいだろうか。それでもこの漁自体が楽しいし、食べられるものが捕れたので、満足度はとても高い。

私が小学生だったら、「このエビ飼う!」って絶対言っている。
私が小学生だったら、「このエビ飼う!」って絶対言っている。
さてこの捕った獲物、持ち帰って料理して食べるのが筋だとは思うが、あいにく宿がビジネスホテルなので、料理ができない。

そこで事前に池田さんと相談して、近くの「久ちゃん」というお店に持っていくことにしたのだが、行ってみたら壁に書かれたネタに値段が書いてない系の本格的なお寿司屋さんで焦った。
この店であの小魚を料理してもらうのか。
この店であの小魚を料理してもらうのか。
子供が遊びで捕まえたような小魚や小エビ(実際は大人2人で捕まえた)でなんだか申し訳なかったが、店主に快く了解していただいた。佐賀大好き。

もちろんこれだけでは腹の足しにならないので、おまかせで有明海のおすすめ料理も出していただく。
エツの刺身を和えたものを出してくれた。上に乗っているのは骨せんべい。身がねっとりとしていてうまい。自分で料理しなくてよかった!
エツの刺身を和えたものを出してくれた。上に乗っているのは骨せんべい。身がねっとりとしていてうまい。自分で料理しなくてよかった!
エビはカラっとから揚げに。身がパンパンに詰まっていて、最高にうまい。こんなにうまいのなら、もっと頑張ってたくさん捕ればよかった。
エビはカラっとから揚げに。身がパンパンに詰まっていて、最高にうまい。こんなにうまいのなら、もっと頑張ってたくさん捕ればよかった。
有明海のお任せ料理。ムツゴロウは唐揚げが好みでした。
有明海のお任せ料理。ムツゴロウは唐揚げが好みでした。
やはり捕った獲物を料理してくれるお店を予約しておいてよかった。棚じぶの満足度がさらにアップ。

はじめて食べるエツという魚は、まさかあのサイズをわざわざ刺身にしてくれるとは思わなかったが、身がねっとりしていて、とっても上品な味だった。

シラタエビも鮮度が抜群なので、一切の臭みがない。できることなら、近くに宿をとっておいて、夜にゆっくりと来たかったなと、お茶をすすりながら思った。
道の駅に戻ると、すっかりと潮が引いていた。もうたっぷり一日遊んだ気分だが、これからムツゴロウ釣りに挑戦するのだ。
道の駅に戻ると、すっかりと潮が引いていた。もうたっぷり一日遊んだ気分だが、これからムツゴロウ釣りに挑戦するのだ。

もう一度言おう。棚じぶは本当に素敵だ。もちろん自然相手の遊びなので、ほとんど捕れない日もあるようだが、あの小屋でのんびりと海を見ながら弁当を食べるだけでも、十分癒されると思う。

潮が満ちている間は棚じぶで遊び、潮が引いたら干潟で遊ぶ。最高の一日だ。

ところで、この棚じぶに似た四手網の体験漁が、岡山の児島湾というところでもできるらしい。そこは小屋に調理場などもあり、泊まりがけで楽しむことができるそうなので、そっちにもぜひ行ってみたいと思う。10年以内に。
取材協力:道の駅鹿島
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