特集 2012年7月31日

川のムール貝?「カワヒバリガイ」を食べる

おいしそうでしょ?
おいしそうでしょ?
カワヒバリガイというムール貝によく似た中国原産の淡水産二枚貝がいる。
姿食用にするという話は聞かないが、姿が似ているならきっと味だってよく似ておいしいに違いない。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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激流探索行

というわけでカワヒバリガイを捕まえるためにやってきたのは京都を流れる宇治川。
駅を出てすぐに川が見える。
駅を出てすぐに川が見える。
想像よりはるかに風光明媚な場所だった。
想像よりはるかに風光明媚な場所だった。
周囲の緑が深くてとてもきれいな川だ
よし、さっそく川に入って貝を探そう!しかし…。
激流じゃん!
激流じゃん!
前日に雨が降ったおかげで流れが速い!うかつに入ったら確実に水難事故だ。
実際、あちらこちらに注意を促す看板が立っている。
確かにこの流れで泳いだら危ないわな。
確かにこの流れで泳いだら危ないわな。
この魚はきっと溺れる少年を心配しているのではなく、「エェーッ!この程度の流れで溺れちゃうのかいぃ!?」とマスオさんチックな声で人類を嘲っているに違いない。嫌味な奴だ。
この魚はきっと溺れる少年を心配しているのではなく、「エェーッ!この程度の流れで溺れちゃうのかいぃ!?」とマスオさんチックな声で人類を嘲っているに違いない。嫌味な奴だ。
今度は極限まで記号化された注意看板が。
今度は極限まで記号化された注意看板が。

ビワコオオナマズ、捕獲。

流れの緩やかな場所を探して、川沿いを歩きまわることに。
川沿いの町並みは京都らしく趣にあふれている。
川沿いの町並みは京都らしく趣にあふれている。
川沿いに大量に飛んでいたオオシマトビケラという昆虫。顔がかわいい。
川沿いに大量に飛んでいたオオシマトビケラという昆虫。顔がかわいい。
鶏小屋ならぬ鵜小屋があった。さすが鵜飼で有名な宇治川だ。
鶏小屋ならぬ鵜小屋があった。さすが鵜飼で有名な宇治川だ。
街並みはきれいだし川の水も澄んでいる。緑が多いからか空気もおいしい。とても雰囲気が良いところだ。
あまりに良い川なので貝探しの合間にちょっと釣竿を出してみると。
いきなり憧れの魚が。
いきなり憧れの魚が。
日本最大のナマズであるビワコオオナマズが釣れた。
子どもの頃から見てみたかった魚なのでとても嬉しい。それにしてもこんな激流の中にナマズがいるとは…。
間抜け面がかわいらしい。今回の目的はあくまで貝なので撮影後すみやかにリリース。
間抜け面がかわいらしい。今回の目的はあくまで貝なので撮影後すみやかにリリース。
ビワコオオナマズを観察できた喜びで本来の目的であるカワヒバリガイ探しを忘れかけていた。いかんいかん。改めて流れの穏やかな場所を探そう。

発見!が、小さい…。

おっ!
おっ!
いい感じに流れの緩い支流を発見。
ここなら貝も暮らしやすそうだし、見つけても捕まえることができる。
こういうでこぼこした水中の壁面が怪しい。
こういうでこぼこした水中の壁面が怪しい。
あっ、これだ!
あっ、これだ!
ふと足元を見るとムール貝に似た二枚貝の殻が転がっている。
これ!これこそ探し求めていたカワヒバリガイだ!やっぱりこの辺りにいるぞ!
おっ、いるいる!
おっ、いるいる!
防水デジカメを岸際に沈めると、岸壁の隙間に身を寄せるカワヒバリガイが確認できた!やったー、やっと見つけた!さっそく捕まえてみよう。
ね?ムール貝っぽいでしょ?
ね?ムール貝っぽいでしょ?
岸壁に固くくっついているため、逃げられることは無い。しかし引きはがすのが案外大変だった。
でも10分あまりでこれだけ集まった。
でも10分あまりでこれだけ集まった。
なんとか、およそ70個ほど採集できた。
「そんなに採って食べられるの?」という声が聞こえてきそうだがご安心を。
一円玉と比べてもこのサイズ。
一円玉と比べてもこのサイズ。
この貝、ものすごく小さいのだ。シジミにも及ばない。
上が本物のムール貝ことムラサキイガイ。下がカワヒバリガイ。
上が本物のムール貝ことムラサキイガイ。下がカワヒバリガイ。
本物のムール貝と並べてみると、形こそ似ているがその差は歴然。ボリューム感が全然違う。

ちなみにこの貝は外来生物法という法律が定める所の「特定外来生物」(日本の自然に影響を与える恐れのある外国からやってきた生物)に指定されており、生かした状態での運搬が禁止されている。
そのためその場でさっと加熱処理してから持ち帰った。

調理、試食。

さて、いよいよ試食だ。せっかくなので本物のムール貝と食べ比べをしてみよう。
ムール貝のパエリア。
ムール貝のパエリア。
ムール貝といえばやはりこれだろうということで、メニューはパエリアにした。初めて作ったのでちょっとみすぼらしい見た目になったが、ムール貝の深い味わいが効いて美味しかった。二枚貝ってなんでこんなに味が濃いんだろうなー。これはカワヒバリガイにも期待できそうだ。
カワヒバリガイのパエリア。
カワヒバリガイのパエリア。
…小さすぎてどれだけたくさん盛りつけても存在感が無い。
でも間近で見ると殻の割に身が大きくてうまそう。
でも間近で見ると殻の割に身が大きくてうまそう。
さあ、いよいよ口に運んでみよう。
いただきます!
いただきます!
さあ、お味の方は?
味わかんない。
味わかんない。
無味!
食感だけはシジミのようだが、肝心の味がしないのだ。なんだこれは。
…ひょっとするとパエリアにしたことで旨みのエキスが煮汁に溶けだし、他の具材の味にかき消されてしまったのか?
ならば!
カワヒバリガイのオリーブオイル炒め。
カワヒバリガイのオリーブオイル炒め。
ほんの軽く炒めただけ。これなら素材の味そのままであろう。
やっぱ味しねえ。
やっぱ味しねえ。
ほとんどオリーブオイルの香りしかしない。貝そのものはほぼ無味だ。ほんのり貝独特の味わいもあるのだが微々たるものだった。
二枚貝ならなんでも濃厚な味だという認識は改める必要がありそうだ。

結論:まずくはないが、別においしくもない。

残念ながら姿形は似ていても、味までムール貝そのものというわけではなかった。
しかしもっと大量にかき集めてみそ汁の具にするなどすれば、まだ明るい結果になったかもしれない。またの機会に再挑戦してみようと思う。
ちなみに中国からやってきたこの貝は水中の配管を詰まらせるなどの害があるために駆除が求められているそうだ。
おいしければ「食べて駆除」にもつながったかもしれないのだが…。
こうやって拡大した画像で見ると本当においしそうなんだけどねえ。
こうやって拡大した画像で見ると本当においしそうなんだけどねえ。
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