特集 2012年8月31日

サンバやったことないのに浅草サンバカーニバルに出た

本当に出た!
本当に出た!
浅草サンバカーニバルに出場することになった。サンバはもちろん、ダンスなんて今までやったことがない。

というか、あの有名な浅草サンバカーニバル、である。出てしまって本当にいいのか。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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西川口の居酒屋にて

3か月前、近所の居酒屋で飲んでいた時のこと。酒が入って僕は「デイリーポータルZに書くネタがない!」と嘆いていた。すると、常連の一人ココミンさんがこんなことをいってきた。「だったら浅草サンバカーニバルに出場してみたら?それをレポートすればいいじゃない。私の所属しているチームから出してあげるよ」
デイリーでなんどか取り上げた異味香
デイリーでなんどか取り上げた異味香
右の女性がココミンさん
右の女性がココミンさん
浅草サンバカーニバル!最初は酒の席での冗談かと思ったらそうでもないらしい。「衣装代が買い取りになっちゃって1万円するけれどもそれでもいいのなら…」という条件も出た。

1万円。デイリーポータルのネタとしては予算オーバーなのだが、この夏どこにも行く予定がない。旅行やロックフェスにでも行ったつもりで思い切って出してみるのも良いかもしれない。そもそもあの浅草サンバカーニバルだ。ネタ以前に、これは名誉なことなのはずである。

じっくりと考えた末に出場することにした。
サンバダンサー、リチャードの誕生
サンバダンサー、リチャードの誕生
そのあと「サンバをやるのに『斎藤くん』なんて呼んじゃいけない。サンバネームが必要」ということになり、僕にはリチャードという名前が付けられた。

リチャードか…似合わないけれども悪くない。でもこの名前、この日以降に一度も呼ばれることはなかった。

大会1週間前

居酒屋でサンバ出場を決意してから3か月。特にサンバの話も出ずに時は過ぎる。練習も全くしていない。

そういやあれどうなったんだろうな、などと思いだしたころに衣装が届いた。
衣装の一部
衣装の一部
腰ミノだろうか?衣装はすごく本格的である。

ココミンさんに再び連絡を取ると「細かいことについては、そのうちにハンナさんから連絡がいくはず」とのことである。ハンナさんって誰だ、これもサンバネームか?
大会一週間前に急に不安になり、前日には眠れなくなり、当日を迎えた。たぶん僕の役はブラジルの熱帯に生えるサボテンの妖精の役で、全然動かなくても大丈夫なんだろうと思う。
本当にコレに出るわけ?
本当にコレに出るわけ?
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練習時間は当日30分間

当日指定されたところに向かうと、明らかに「サンバを踊れなさそうな人たち」と一緒になった。練習に入るときの一言が「それじゃあ、この中でサンバを聴いたことがある人~?」と超初心者設計である。
20人くらいの初心者が集められる
20人くらいの初心者が集められる
サンバミュージックがかかった途端、みんなポカンとした表情になった
サンバミュージックがかかった途端、みんなポカンとした表情になった
一見すると夏休みのラジオ体操のようだが、日本最大のサンバカーニバル出場者たちである
一見すると夏休みのラジオ体操のようだが、日本最大のサンバカーニバル出場者たちである
メガホンを持っているのが動きを教えてくれる半名(ハンナ)さん。サンバネームじゃなくて本名だった
メガホンを持っているのが動きを教えてくれる半名(ハンナ)さん。サンバネームじゃなくて本名だった

一般参加枠というのがある

だんだんと僕がやっていることが見えてきた。僕が今回所属したのは埼玉県戸田市を中心に活動している「アレグリア」というチーム。

アレグリアからは、200人くらいのダンサーが出場する。僕が参加するのはその中の「一般参加枠」という、映画でいうエキストラというか、刺身で言う大根の千切りみたいな部分だ。

一応動きの指導は教わったが、音楽に合わせて好きなように動いちゃって大丈夫。こんな風に素人を入れちゃうのは、サンバではよくあることらしい。
「みんな全然良く動けているよ!大丈夫!」とハンナさんがすごく褒めてくれる
「みんな全然良く動けているよ!大丈夫!」とハンナさんがすごく褒めてくれる
30分の指導の後「笑顔」「本気のダンサーのエリアにはみ出さないように」「パレードが審査員席にさしかかったら特に良く動け」「審査員席にはなぎら健一がいる」という注意点を確認して、本番までいったん解散となった。
浅草寺にサンバ用の山車がスタンバイしていた
浅草寺にサンバ用の山車がスタンバイしていた

撮影は大丈夫か?

パレードの時間は50分間。今回、パレード中の撮影は当サイトライターの小堺丸子さんにお願いしている。「近所だし一度サンバカーニバル行ってみたかった」ということで依頼したのだが、よく考えたら撮影はかなり難しそうである。
パレードまで2時間以上あるのにすでに沿道の人がすごい
パレードまで2時間以上あるのにすでに沿道の人がすごい
一度撮影場所を決めたらもうそこから動けなくなってしまいそうだ。サンバのパレードは一方方向にずっと進んでいくので、撮影チャンスは一度しかない。ちゃんと気づいて撮ってもらえるだろうか。

僕としても踊りながら小堺さんをきちんと見つけたい。カメラ目線を撮ってもらおう。
やがてパレードが始まる
やがてパレードが始まる
熱中症対策にと思ってスポーツドリンクをガブガブ飲んでいたら、お腹がだんだん痛くなってきた。そんなタイミングで僕たちアレグリアの出場時間になる。

あれ、メガネってかけたままで出場していいんだっけ。サンバとメガネ合わないけれど、外したら余計に小堺さん見つけられなさそうだし…。しれっとメガネのまま出てしまおう。
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撮影者・小堺視点

パレードが始まってしまったので、このページは後から聞いた小堺さんの話である。
「会場に着いたけれども人が多くてなかなか動けなかったですね。」
頭しか写ってない
頭しか写ってない
こういう踏み台が欲しかった
こういう踏み台が欲しかった
スタバから見ている人たちがうらやましかった
スタバから見ている人たちがうらやましかった
「パレードも団体ごとの切れ目がなくて、アレグリアがどこかわかりにくかったですね。」
でも山車にでっかく名前が書いてあった
でも山車にでっかく名前が書いてあった
「たくさん出演者がいるなか衣装の一部が緑色という情報を頼りに必死になって探しました。」
一瞬これかな、とおもったけれど違う
一瞬これかな、とおもったけれど違う
あ、
あ、
いた!
いた!
「念力が通じたか、斎藤さんが気づいてくれた時は凄く嬉しかったです。」
!
!
「あまり見た事ないくらいの笑顔で斎藤さんが近づいてきてくれた時はディズニーのパレードでキャラクターが寄って来てくれた時の感じに近いでしょうか、興奮 しました。 」
!
「サンバのリズムと暑さでテンションが上がっていたのだと思います。うまく撮れた、という満足感もありましたね。」
!
「斎藤さんを見つけたら動画で撮ろうと思ったんですよ。このカメラ動いているの撮るとブレちゃうんで。その動画が、あれ、撮れてない…」
パレード後の打合せで凍りつく小堺さん
パレード後の打合せで凍りつく小堺さん
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雲一つない晴天でした
雲一つない晴天でした

パレードきつい

僕の方としては、パレードの序盤で小堺さんと会えたことで一気に緊張が緩まる。そしてここからがキツかった。炎天下の中踊りながらの50分は想像以上に過酷だった。
残り40分の時点で心配されてた
残り40分の時点で心配されてた
残り30分のところで水を手渡される
残り30分のところで水を手渡される
練習の時にハンナさんは「50分なんて踊っていればすぐだから!すぐ終わっちゃうから!」と言っていたが、あれは真っ赤な嘘だった。50分は踊っていても50分である。
後半ではリタイアを勧められていた
後半ではリタイアを勧められていた
小堺さんとは別に、後半たまたま来ていた友人も見つけることができた。
うつろなカメラ目線
うつろなカメラ目線
イエーイ!とカラ元気
イエーイ!とカラ元気
「目に見えて弱っていたよ」と友人は言っていた。

僕のイメージの中では、後半は完全に溶けきって実体を失いながら動いていた。こうしてカメラの中に、自分の人間としての姿が写っているのが意外なくらいである。
塩っぽい汗が一気に目に入ってパニックになっているところを撮られている
塩っぽい汗が一気に目に入ってパニックになっているところを撮られている

おれは夏の一部だ

この日はサンバカーニバルに50万人の観客が集まったそうだ。とにかく沿道にものすごい人数の人がいた。

最初僕は夏を味わうつもりでサンバに出場を決めたのだが、実際は逆だった。僕が夏の一部になって、観客に味あわせている。太陽とか海とかセミとか自由研究とかそういうものになったのだ。

完全にゆだって溶けきった頭の中でそんな考えがわいきたころに、パレードはフィニッシュした。
ゆだっているけれどもうれしい
ゆだっているけれどもうれしい
パレード終了時に小堺さんと合流。最後の力で笑顔を作った
パレード終了時に小堺さんと合流。最後の力で笑顔を作った

踊る方も大変なら撮る方も大変

50万人の観光客である。そんな大勢の人の前でパフォーマンスをするなんてこと、ないだろう。とにかく最後まで完走できてよかった。なお、僕が参加したアレグリアは堂々の3位。最後まで全貌がよくわかっていなかったのだが、すごいチームだったのだ。

そしてこれだけの人をかき分けての撮影も、やっぱり大変だったようだ。今回撮影に失敗した小堺さんが、カメラを買い替えようかな…と弱々しくつぶやいていたのが印象的だった。
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