フェティッシュの火曜日 2012年9月11日
 

高級ビニール傘8,400円!

縁結8,400円?ビニール傘で?
縁結8,400円?ビニール傘で?
浅草の近くを歩いていたら、8,400円の超高級ビニール傘を見つけた。高いぞ。100円傘80本分だ。

ウィンドウには宮内庁御用ビニール傘と書いてある。ありがたや〜!その他にも選挙でみんなが使う傘や、お寺用の12,600円のビニール傘まであった。

どうなってるんだ高級ビニール傘の世界。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます
> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

ビニール傘の歴史

おじゃましたのは田原町にあるホワイトローズ株式会社。社長の須藤さんで10代目という老舗中の老舗。

ちょっと長くなるけど、ビニール傘とこの会社の歴史が超絶ダイナミックなので、読んでいただこう。
享保六年から始まったお店の10代目、須藤さん
享保六年から始まったお店の10代目、須藤さん

暴れん坊将軍からシベリア抑留まで

「元々は江戸時代のまんなか、吉宗の時代にできた刻みたばこのお店です。そのうち、このたばこの保管箱の内側にしく油紙を使ってレインコートを作ったんですね。

今で言うポケットコートみたいなもので、参勤交代のお武家さまが使ったそうです。 それが雨具に入っていくきっかけですね。

明治維新が終わって、洋傘の時代になるんですが戦争で一度店はたたみます。

その後、うちの父の九代目が帰ってきたのが昭和24年、シベリア抑留のため4年間遅かったんですね。そのころには他の傘屋さんはみんな立ち上がっていて、材料とりっこ状態でマーケットもできあがっていた」

一体どうしたことだ。ビニール傘のことを聞いたつもりが、暴れん坊将軍が出てきた。吉宗、明治維新、シベリア抑留、なんというスケールのでかさ。そしてこのシベリアの出遅れスタートから傘に革命がもたらされる。

ビニールで肩の黒い点々が消える

「戦後当時の庶民の傘は綿だったんですね。綿というのは色が落ちて、雨も漏る。一般的だった黒い傘なんかは、しずくが黒くなって、たれた肩にみんな黒い点々を作ってた。でもみんなそれが当たり前だということで使ってたんです。

そんなとき、うちの父が進駐軍のビニール製のテーブルクロスを見つけたんです。これで傘のカバーを作れば漏らなくていいんじゃないかと作ったのがこれです。再現品なんですけど…」

傘のカバーって……なんですかそれは!?
これが傘カバー(再現品)。爆発的ヒットとなる。
これが傘カバー(再現品)。爆発的ヒットとなる。
「傘を濡らさないためのカバーなんですよね。これだったら綿の傘でも漏れない。

これが大ヒットしまして、当時は傘売り場でこれがないとクレームがくるほどに広まりました」

一発逆転大ヒット。しかし当時はこんなにまわりくどいものをさしていたのか。さしてる人はうすうす(……これもうカバーだけでいいんじゃない?)と思ってたのではないか。

そもそもビニール傘を作ったのがここ

「でも今度は、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維の傘ができたんですね。色落ちもなく防水性も高い。となると、このカバーが要らなくなっちゃったんですよ。

これはどうしようかとなったところ、今度はあのカバーで傘を作っちゃえば絶対漏らない傘ができるんじゃないかと動き出したんです。

当時アメリカの会社と日本の三菱がさあ日本でどんどんビニール作りましょうよといってた時代。でも何に使うかはまだ開発されてなかった。それを傘を作るために加工して、昭和30年代に今とそんなに変わらないようなビニール傘が誕生したんです」

ビニール傘が生まれたものの、あれだけ大ヒットの傘カバーが全部なし。新しい素材や技術が出てくるたびに、ご破算になって一から何か作らないといけなくなる。ものづくりって、た、大変だなあ。

「そこから普及にも七転八倒するんですが、結局それはそのままみなさん中国に持っていってコピー商品を作りました。今から25年30年くらい前に台湾中国に生産地が移行していって、100円のビニール傘が誕生するんです。

うちは海外生産しなかったものですから、同業他社が廃業していくなか、うちだけ残っています。ものづくりっていうのは一回やめちゃうと元に戻すというのはなかなかできないので、シャワーカーテンだとか細々と作っておりました」

なんてダイナミックな話。大ヒットしては全部なしになってまた大ヒットしては全部なしに……ビニール傘ひとつとってもこれだ。製造業、おそろしや〜。

は〜い、全日本人ここ注目〜!

「そして、ここにきて値段としては10倍以上のビニール傘が生産ロットになってきたものです。生産ロットっていったって何十本とか何百本なので、中国のビニール傘なんて一説には年間八千万本くらい輸入してるっていう話ですからケタちがいなんですけどね。

それでも普通の傘でも5,000円以上の傘売るっていうのは大変なことなので、ビニール傘で5,000円はかなり高価だと思います」

海外の安い労働力に負けないためには独自の価値を生み出せ、なんて話をよく聞く。でもそんな簡単にうまくいかないよな〜と思ってたが、うまくいってしまってる。悩めるグローバル化時代の答えがこの高級ビニール傘なのだ。

さあ、見せてください、グローバル化時代に生み落とされた8,400円の超高級傘を。
(高そう!)と(でもビニール……)という思いが拮抗する「縁結」
(高そう!)と(でもビニール……)という思いが拮抗する「縁結」

園遊会で使われた「縁結」

ウインドウに出てた8,400円の傘とは「縁結」という女性用のビニール傘。デパートの輸入傘よりも高い。文句なく高級品だ。

はたして100均の傘80本分の価値はあるのだろうか。この縁結の特徴をみていこう。
骨はグラスファイバー、中についてる中とじで丈夫に。フィルムは貼りつかずパラっとなる多層化フィルムを使用。
骨はグラスファイバー、中についてる中とじで丈夫に。フィルムは貼りつかずパラっとなる多層化フィルムを使用。
逆止弁、ペンがささるが逆から水は漏らない
逆止弁、ペンがささるが逆から水は漏らない
ビニール傘なのに先はアルミの棒だ
ビニール傘なのに先はアルミの棒だ
APOとか書いてなくて、こんな玉がついている。
APOとか書いてなくて、こんな玉がついている。

風速30mにも耐えられるビニール傘

縁結の特徴はまず丈夫であること。骨がグラスファイバーを使っているし、普通のビニール傘にはない”中とじ”という留め具もある。これでおちょこになっても(裏返っても)すぐ元通り。風速30mくらいまで耐えられるそうだ。

ビニールも貼り付いたかないフィルムを使っている。フィルムは普通、傷ついて透明でなくなってくるが、三枚の多層フィルムのに一番外を取り替えられる。丈夫だから100円傘のように使い捨てじゃないのだ。

次に高級感。傘の先はアルミ棒、ビニールの縁と傘カバーは布素材で、手元にも装飾が。

そして軽い。女性ものの傘では一般的なサイズだが、傘の内側に逆止弁がついていて風が抜ける。これはビニール傘だけできる技術らしい。

丈夫、高級、軽い。なぜこの仕様か。じつはこの傘はあの美智子さまがお使いになるからだ。
「美智子さまはこの角度で持つんですよ」美智子さま!?
「美智子さまはこの角度で持つんですよ」美智子さま!?

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