特集 2012年10月3日

佐渡島でトキを見てきた

放鳥されたトキを発見!
放鳥されたトキを発見!
また佐渡島にいってきた(去年の記事参照)。佐渡大好き。

佐渡島のトレンドといえばトキなのだが、運が良ければ自然の中を生きるトキを見ることができるかなと思ってちょっと探してみたら、なんと本当に見ることができたのだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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放鳥されたトキは50羽くらいいるらしい

一年振り、二度目の佐渡島へとやってきた。特に理由はないのだが、去年とまったく同じ時期である。

さて佐渡島といえば、放鳥した野生下のトキが無事に孵化したというおめでたいニュースが春にあったばかり。

佐渡島に何羽のトキが放たれているのかは知らないが、数日滞在していれば、トキを見ることも可能なのではないだろうか。バードウォッチングの趣味はないけれど、見られるものなら見てみたい。
ヒナの誕生もあってか、トキ関係のお土産が充実していた。かもめの玉子ではなく、朱鷺の卵。
ヒナの誕生もあってか、トキ関係のお土産が充実していた。かもめの玉子ではなく、朱鷺の卵。
東京銘菓ひよこではなく、朱鷺の巣ごもり。こういうセンスは嫌いではない。
東京銘菓ひよこではなく、朱鷺の巣ごもり。こういうセンスは嫌いではない。
佐渡島にトキがいるとはいっても、びっくりするくらい佐渡島は広かったりする。その面積は面積は855平方キロメートル。東京都の半分くらいの広さがあるのだ。

ちょっと調べたら、放鳥されて生存しているトキの数は、だいたい50羽くらいらしい。これって探しようがある数なのだろうか。
トキを探しながら運転をすると、わき見運転ならぬトキ見運転で事故を起こしがち(佐渡あるある)。
トキを探しながら運転をすると、わき見運転ならぬトキ見運転で事故を起こしがち(佐渡あるある)。
早朝にフェリーで新潟港を出発した時点では雨が降っており、天気予報も悪かったのだが、佐渡島に着いてみたら晴れていた。だからどうにかなるような気はしている。

トキのエサ場へとやってきた

土地勘もないまま漠然と探しても出逢う確率はほぼゼロなので、何度もトキを見ているという佐渡島在住の方に、トキのエサ場であるというポイントへ連れてきてもらった。

その方とは、旅の同行者であるエアギタリストの宮城マリオさんのお父さんだ。
一番左がお父さん。トキどこー?
一番左がお父さん。トキどこー?
連れてきていただいたのは、佐渡島の幹線道路沿いにある、ごく普通の田んぼである。エサ場といっても餌付けをしている訳ではなく、トキがカエルやドジョウをよく食べにくる、お気に入りの場所という意味らしい。

こんなところにいるのはサギくらいじゃないかと思ったのだが、確かに白い鳥がいる!

肉眼では白い点にしか見えないが、トキだトキだと、トキを見たことのない一行は大興奮。
このカメラとレンズで撮影にチャレンジ。
このカメラとレンズで撮影にチャレンジ。
しかし、双眼鏡で覗いていた宮城さんのお父さんが、言いたくはないんだけどという感じでつぶやいた。

「…あれは、サギだな」

サギか。まあそうだよね。200ミリの望遠レンズで撮影して、液晶画面で確認してみると、それは間違いなくサギだった。
鳥には詳しくないが、トキではない気がする。
鳥には詳しくないが、トキではない気がする。
うん、サギだ。
うん、サギだ。
サギに騙された。まさに詐欺である。

これはこの日この場所にいた全員が頭の中に浮かんだ言葉だが、誰もそれを口から発することはなかった。

サギは別に悪くないのだ。

今度こそトキか!

我々が探しているのは、佐渡島のどこを飛んでいるのかわからない野生下のトキ。東京でエグザイルやAKBの誰かに会う確率よりも、佐渡でトキに出会う確率の方が低いかもしれない。

だが道路の反対側で、宮城さんのお父さんの呼ぶ声がする。今度こそトキか!
「あれはそうだと思うんだよね~」
「あれはそうだと思うんだよね~」
遠くに見える白い点。今度こそトキだろうか。

東京ドームの外野席で見るプロレスの試合よりも遠い距離感。今度こそトキだろう、いややっぱりサギだろう、いっそビニール袋じゃないかなど、様々な意見が飛び交う。
肉眼で見るとこれくらいの距離感。どこ?
肉眼で見るとこれくらいの距離感。どこ?
デジカメでズームイン。確かに白い鳥がいる!
デジカメでズームイン。確かに白い鳥がいる!
これだけ遠いと、手持ちのデジカメではいくらズームしても正体がわからない。

やはりバズーカーみたいな望遠レンズがないと、トキの撮影なんて無理なのだろうか。
拡大してもわかんねー。
拡大してもわかんねー。
こういうときは、あれはトキだったんだと思い込んで、この場を去るのが正解なのだろう。きっとあの中の1羽くらいはトキがいるのだよ。

しかし、せっかくトキらしき鳥に出会えたのだからと、トキが驚かない程度の距離まで近づいて、トキだとはっきり分かる写真が撮りたいという欲が出た。

そっと稲刈りシーズンとなった田んぼの畦を歩み寄る。
この田んぼがトキのエサ場なのだそうです。
この田んぼがトキのエサ場なのだそうです。
畦を歩くと、イナゴやカエルがすごい数で逃げ出していく。生命が濃い!
畦を歩くと、イナゴやカエルがすごい数で逃げ出していく。生命が濃い!
十分な距離を保ちつつも、その正体がわかるところまで寄って、撮影したものを液晶画面で拡大表示。

しまった、あれ全部サギだ。
うーん、サギっぽいな。
うーん、サギっぽいな。
拡大! うん、サギだった。
拡大! うん、サギだった。
もしかしたら双眼鏡で覗いていた宮城さんのお父さんは、最初からサギだと気が付いていたけれど、いい思い出を持ち帰ってもらおうと、やさしい嘘をついていたのかもしれない。

どうやら知らないほうが幸せだった真実を追ってしまったようだ。
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話は大きく変わります

トキがいるであろう場所にいたサギを、我々はあれがトキだと勘違いしそうになったのだが、私はこのサギの立場に自らなったことがある。

さかなクンがいそうな場所で、さかなクンのコスプレをしてみたのだ

このページはトキと全く関係ないので、飛ばしていただいても一向に構わない。
5月におこなわれた島じまん2012というイベントで、さかなクンのステージがおこなわれるというので見に来た。
5月におこなわれた島じまん2012というイベントで、さかなクンのステージがおこなわれるというので見に来た。
さかなクン、ものすごい人気。そしてさかなクンが出す難問をスラスラと答える子供たちにビックリ。
さかなクン、ものすごい人気。そしてさかなクンが出す難問をスラスラと答える子供たちにビックリ。
さすがにさかなクンがイベントをやっているところでさかなクンの格好をする勇気はない。それは迷惑というもの。本物の視線に入る勇気はまだない。

ディズニーランドにミッキーは一人だけなのと同じように、さかなクンも一人でなくてはならない。いや、それとはちょっと話が違うか。とにかく、さかなクンもどきである私の出番は、イベントとイベントの合間の時間なのだ。
1回目のイベントが終わったことを確認し、さかなクンもどきに変身!
1回目のイベントが終わったことを確認し、さかなクンもどきに変身!
実物を見た後なので、自分の似ていなさに目が泳ぐ。
実物を見た後なので、自分の似ていなさに目が泳ぐ。

サカナくんもどき、登場

この日のために用意した白衣、ワイシャツ、ネクタイはいいとして、私の頭にはちょっと小さすぎる母が以前作った帽子(参照)の手作り感と、どうにもならない顔立ちの違い。鏡を見て、ここまで似ていなかったのかと愕然とした。

それでもだ。この場にさかなクンがいてもおかしくない状況なら、こんな私でもさかなクンに見えるのではないだろうか。
いざ、会場へ。この時点でもまあまあ視線を感じる。
いざ、会場へ。この時点でもまあまあ視線を感じる。
うん、見られているね。
うん、見られているね。
やはりさかなクンがステージに出ていたすぐ後だけあって、いろいろな声が聞こえてくる。

・「あ、さかなクンだー!」
・「やだ、さかなクンかと思った!」
・「ほら、さかなクンだよ!」(おばあちゃんが孫に)
・「さかなクンじゃないじゃん!」(子供がキレ気味で)
・指をさして、その指をだまって下げる

なんだか中国の遊園地のニセキャラクターになった気分である。

たまに話しかけられるが、本人だと思って声を掛けてくる人はゼロで、コスプレをしている陽気な人だと思われたようだ。まあまあ陰気なのだが。
キリキリと胃が痛くなってきた。
キリキリと胃が痛くなってきた。
焼きそばを買いに来たさかなクンもどき。「本物かと思った!」と笑ってもらえて満足。
焼きそばを買いに来たさかなクンもどき。「本物かと思った!」と笑ってもらえて満足。
記念写真をしてさっさと退散。本物とは歯と目の輝きが違うな。
記念写真をしてさっさと退散。本物とは歯と目の輝きが違うな。
メイク落としがなかったので、この眉毛のまま帰った。目が死んだ魚のようだ。
メイク落としがなかったので、この眉毛のまま帰った。目が死んだ魚のようだ。
…なんの話だったかな。

このように、トキでもさかなクンでも、本物がいるであろう場所では、偽物でも本物のように見える場合があるというのを言いたかったのだ。

もしかしたら、この日の私を遠くから見て、「さかなクンを見たよ!」と思っている人がいたかも知れない。ごめんなさい。

ただ佐渡島のサギは、わざとトキのマネをしている訳ではないので、まぎらわしくても責めてはいけないのである。

そして話は佐渡に戻る。
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トキの森公園へとやってきた

トキが見られなかったのが悔しかったので、そのまま確実にトキを見ることができる場所、佐渡市トキの森公園へとやってきた。ボウズだった釣り人が魚屋に寄るが如し。

実はそれほどトキという生き物に興味はなかったのだが、見られなかったと思うと、どうしても見てみたくなるものなのである。
20メートル!ぜんぜん近いっすよ!
20メートル!ぜんぜん近いっすよ!
日本産最後のトキ、キンの石碑に合掌。
日本産最後のトキ、キンの石碑に合掌。
さっき探しておいてなんなのだが、トキってどんな姿だったかな。テレビでなんとなく見たことはあるけれど、細かいところまで覚えていない。

写真を見てびっくり。トキってこんな顔をしていたのか。確かにサギとは全然違う姿をしている。うん、やっぱりさっき見たのはトキではないな。
カエルを丸飲みにするトキ。顔が怖いぞ。
カエルを丸飲みにするトキ。顔が怖いぞ。
これもまたトキ。
これもまたトキ。
剥製になったキン。
剥製になったキン。
骨格標本にもなったキン。そしてミドリ。
骨格標本にもなったキン。そしてミドリ。
はじめてちゃんと見たトキは、アヒルのような体に真っ赤な仮面、そして巨大なクチバシと、昔は日本でも普通に見られた鳥とは思えない、とても個性的な姿だった。

自然界ではよく猛禽類などに襲われるそうだが、あまり動きは素早くなさそうだ。でも骨格標本は恐竜っぽいなと思った。

生きたトキを見る

資料館を抜けたところにあるのが、佐渡トキ保護センター。20メートル離れた金網越しではあるが、ここで生きたトキが見られる。

金網の中には、はるばる中国からやってきたトキ、そしてこの場所で生まれたトキ達が、想像以上にたくさんいた。ちょっと狭そうかな。

ここから段階を経て、籠の外へと放たれていくのか。
飛ぶ鳥をゲージで飼うのって難しそうですね。
飛ぶ鳥をゲージで飼うのって難しそうですね。
放鳥されたら自分でエサを捕れるようになるものなのだろうか。
放鳥されたら自分でエサを捕れるようになるものなのだろうか。
「なんでトキを保護しなくちゃだめなの?」という友人からの質問に、まるで答えられなかった。
なんとなく日本最後のトキ、キンを思わせた一輪のひまわり。
なんとなく日本最後のトキ、キンを思わせた一輪のひまわり。
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佐渡最終日に再チャレンジ

さて3泊4日で楽しんだ佐渡島最終日、夜中に降った雨も朝方には上がり、乗馬も楽しんだし、あとは昼飯でも食べて帰ろうかというときに、宮城さんのお父さんから、トキがいたぞという電話が掛かってきた。

正直すっかりトキのことなど忘れて佐渡を満喫していたのだが、これでトキが見られたらこの旅はまさにパーフェクト。

教えてもらったポイントへと車を走らせる。
今まで見た中で一番大きな虹が出ていた。
今まで見た中で一番大きな虹が出ていた。
なんとなくトキが見られそうな気がする空。
なんとなくトキが見られそうな気がする空。
そこにいたのは、やはりサギだった。惜しい、首が長過ぎる。

そしてトキならぬトビ。惜しい、一文字違い。
生きたトキを見た後なので、一目でわかるぜ。あれはトキじゃない!
生きたトキを見た後なので、一目でわかるぜ。あれはトキじゃない!
サギだけではなく、トンビやカラスが結構いる。生きるって大変。
サギだけではなく、トンビやカラスが結構いる。生きるって大変。
トキはどこだと探していたら、宮城さんが「たぶんあれがそうですよ!」と指を刺したその先に、サギよりもずんぐりとした白い鳥がいた。
肉眼だとこれくらいの距離。遠いなー。
肉眼だとこれくらいの距離。遠いなー。
肉眼ではあれがトキなのかサギなのかウサギなのかまるで分らないので、例によってデジカメで撮影した画像を拡大して確認する。
一匹だけ、サギじゃないっぽいのが混ざっているらしい。
一匹だけ、サギじゃないっぽいのが混ざっているらしい。
宮城さんの話では、今頭を下げている右から二番目の鳥が、トキっぽい色をしているそうだ。よく肉眼で見えるな。さすが佐渡生まれ。

しばらくすると、その鳥が頭を上げた。
あ、頭が赤い!
あ、頭が赤い!
ズームイン!携帯のカメラだと遠すぎてまったく写らないので、みんなこの液晶を撮ってツイッターにアップしていた。
ズームイン!携帯のカメラだと遠すぎてまったく写らないので、みんなこの液晶を撮ってツイッターにアップしていた。
そのずんぐりとした体形、怖いほどに赤い顔、太すぎるクチバシ(別にけなしている訳ではない)、間違いなくトキである。
家に帰ってパソコンで拡大。うん、トキだ。
家に帰ってパソコンで拡大。うん、トキだ。
すごい、本当に野生下に放たれているトキに出会ってしまった。

肉眼では「トキと言われればトキ」くらいの遠距離だが、それでもやっぱり、トキが見られてうれしかった。

旅行から帰ってきた今も、埼玉の空の下で、ついついトキを探してしまっている。
トキとツーショット撮影。
トキとツーショット撮影。
点だ。
点だ。

条件が揃えば見られるかもしれません

「せっかく佐渡にいくのだから、トキが見られたらいいな」くらいの軽い気持ちだったのだが、幸運にも本当に見られてしまった。

どうやらちょうど稲刈りが終わったところだったので、田んぼにいるトキが見やすかったことが勝因だったらしい。

佐渡在住の人でもなかなか見る機会はないという話なので、これは相当運がよかったということなのだろう。もしやと思って確認したが、サマージャンボ宝くじはハズレだった。

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トキは捕まえても食べてもいません。
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