特集 2012年10月29日

大手チェーンの別業態店めぐり2012

よく見ると店名の後ろに「+」がついてる
よく見ると店名の後ろに「+」がついてる
ファミレスやファストフードなど、普段から気軽に利用できる飲食店のチェーン店。その運営会社がメインの展開とは別の業態店を出すことがある。

以前そんな店を回り「大手チェーンの別業態店めぐり」という記事を書いた。2009年だから3年前だ。

別業態店には実験的な意味合いもあるようなので、新陳代謝も激しいようだ。今回は再び、2012年版として探してみよう。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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メニューを特化したなじみのファミレス

最初に紹介するのは、ファミリーレストランの中でも低価格帯のメニューで勝負する「ガスト」の別業態店。
「S」がついてるガスト
「S」がついてるガスト
こちらは「Sガスト」。普通のガストより小規模で、メニューを絞って出している店だ。

ただしこのSガスト、調べてみると現在、東京・神奈川・千葉のみの展開ではあるが、すでに25店舗以上存在する。もはや実験的な意味合いのある新業態店とは言えないだろう。今回は希少性もポイントとしてめぐりたい。
見慣れてるけど見慣れない
見慣れてるけど見慣れない
そういうわけでやってきたのは、山梨県甲府市。ここには「どんぶりガスト」という店がある。
丼メインで推しつつ定食やカレーも
丼メインで推しつつ定食やカレーも
高密度のドライブスルー用メニュー
高密度のドライブスルー用メニュー
その名の通り、どんぶりメニューをメインに据えた店。こちらは現在、ここ1店舗しか存在しない。

ドライブスルーもあるのが特徴の1つだろう。メニューを見るとかなりの種類のどんぶりがある。何気なく来たお客さんは面食らって、なかなか選べないのではないだろうか。
牛丼チェーンとは違った雰囲気の店内
牛丼チェーンとは違った雰囲気の店内
マークがかわいい
マークがかわいい
店内は一般的な丼物の店よりファミレスに寄せた造り。カウンターメインの牛丼店には足を運びづらい家族連れも利用しやすい雰囲気だ。

マークもどんぶりのコロコロした感じがかわいい。丼物専門店には殺伐と飯をかっ喰らうイメージの店もあるが、ここは誰でも訪れやすいムードだろう。
あんまり見たことない丼物
あんまり見たことない丼物
アレンジが豊富
アレンジが豊富
名前に違わないネギの量
名前に違わないネギの量
約束された組み合わせの妙
約束された組み合わせの妙
メニューでまず目についたのは若鶏竜田丼。「名物!」と銘打たれているので、まずはこれを注文しよう。

店頭で感じたメニューの多さは、メインの具とトッピングをクロスさせたシステムを採用しているからのようだ。「トマト&チーズ」「ポパイエッグ」といったトッピングも気になるが今回は「たっぷりネギたま」バージョンを選んでみた。

その実体は、ご飯に鶏の竜田揚げと半熟卵・ネギを乗せた物。荒々しいけど、これはうまいはずだと容易に想像がつく組み合わせだと思う。ミニサイズを選んだので230円と安い。
牛丼はともかくハンバーグ丼は盲点メニュー
牛丼はともかくハンバーグ丼は盲点メニュー
ご飯にハンバーグ2枚構成の並
ご飯にハンバーグ2枚構成の並
枚数が2倍・3倍になっていく特・メガ
枚数が2倍・3倍になっていく特・メガ
牛丼とのドッキング版も
牛丼とのドッキング版も
メニューには変わった丼物だけでなく、牛丼という定番品も。しかしやっぱり気になるのはオリジナリティのあるメニュー。ハンバーグ丼はありそうでない感じもしつつ、独身男の自宅一人めしという雰囲気もにじむ。

並だとハンバーグが2枚乗るが、メガ盛では具が3倍化。つまりハンバーグが6枚乗っていることになる。

バカげたビジュアルに挑戦したい気持ちにもなったが、ここは冷静にメニューを決めよう。牛丼と合体した「ハンバーグ牛丼」も、よくよく考えるといい意味で結構バカげているではないか。
ハンバーグ牛丼としか言えないビジュアル
ハンバーグ牛丼としか言えないビジュアル
…意外とうまい
…意外とうまい
並を注文したので280円。まず食べてみた牛丼部は、他の牛丼チェーン店とは異なる味わい。しかし、違っていておいしくないわけではなく、決して劣らない味。大手3つと合わせたランキングを個人的につけてみたが、しばらく考えて2位に落ち着いた。

ハンバーグ部を口にすると、「焼きの香り」を感じ取れたのが意外。正直なところ牛丼とのハーモニーはないが、それぞれ独立して別々にうまい。

総じて「雑っぽいのになんだかいける」という印象だったハンバーグ牛丼。今のところ甲府限定だ。
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新業態店における消えゆく者と新参者

飲食店の新業態店はずっと続く店ばかりではないようだ。2009年の記事で訪れた店の中には、既になくなってしまったところもある。
こちらはおなじみモスバーガー
こちらはおなじみモスバーガー
今はなきモスバーガークラシック
今はなきモスバーガークラシック
例えば東京・神楽坂に日本で唯一存在した「モスバーガークラシック」は、2012年5月に閉店。公式サイトには移転先が決まり次第お知らせするとの表記があるので、復活の可能性はあるかもしれない。

消えた店がある反面、新しく生まれる店もある。同じくモスバーガーが運営する新業態店ができたのだ。
モスのコーヒーショップ
モスのコーヒーショップ
その名は「モスコ」
その名は「モスコ」
モスバーガーのコーヒーショップ「モスコ」がそれだ。文字がぐるっと囲む丸看板は、いかにもコーヒーショップ風。モスコという音の響きもかわいらしい。
1号店であることを示すステッカー
1号店であることを示すステッカー
ドトール的なポジションの店か
ドトール的なポジションの店か
現在2店舗あるうち、今回は東京都板橋区・成増にある店を訪れた。こちらがモスコの1号店らしい。

コーヒーなどの飲み物とホットドッグといった軽食を出すこのお店。ネットの情報では「白いトマトジュース」なるメニューがあると読んだのだが、現在は提供していないとのこと。ぜひ試してみようと思っていたので、やや残念。
おとなしくホットコーヒーを注文
おとなしくホットコーヒーを注文
このマークで気づく人もいるかも
このマークで気づく人もいるかも
この手の店ではドトールのコーヒーが好きな私だが、そういう自分にモスコのコーヒーは結構なヒット。Sサイズで190円だから気軽に飲める。

ここまで、モスコという名前にモスっぽさがあるとは言え、はっきりモスバーガーと同じ会社が運営しているとは読み取れなかったこの店。しかし砂糖とコーヒーフレッシュはモスバーガーと共通のものが出てきた。ここで初めて気がつく人もいそうな気がする。

もう1つ、2009年にはあったのに消えた店を確認しよう。新宿にあった「麺屋ここいち」だ。
おなじみCoCo壱番屋
おなじみCoCo壱番屋
そのラーメン版「麺屋ここいち」
そのラーメン版「麺屋ここいち」
カレーショップの会社が経営するだけあって、カレーラーメンがおいしかったのだが、2010年1月で閉店。今では普通のCoCo壱番屋になっている。

ちなみに、麺屋ここいちは完全になくなったわけではない。現在でもCoCo壱番屋の本拠地である愛知県には店舗がある(参照)。あのカレーラーメンが完全に食べられなくなったわけではないのだ。

そしてその本拠地である愛知には、また違った別業態店が生まれていた。
別ジャンルの「壱番」
別ジャンルの「壱番」
店の名は「うなぎや壱番」。現在、愛知県稲沢市に1店舗のみある。
カレーと同じ会社とは気づけないかも
カレーと同じ会社とは気づけないかも
名古屋に近いからか、ひつまぶし推し
名古屋に近いからか、ひつまぶし推し
しっとりした雰囲気の店内
しっとりした雰囲気の店内
簡略版ひつまぶし「まぶし丼」
簡略版ひつまぶし「まぶし丼」
麺屋ここいちの場合はカレーを使ったラーメンということでCoCo壱番屋らしさがあったが、こちらは真面目なうなぎのお店。カレーうな丼とかいうメニューがあるわけではない。

ココイチっぽい気楽さよりも、高級な食材であるうなぎに合わせてか落ち着いた感じの店内。ひつまぶしがイチオシのようだが、その簡略版らしき「まぶし丼」というメニューがあったので、今回はそれを注文してみよう。
ご飯が見えないみっちり感
ご飯が見えないみっちり感
まぶし丼は、ひつまぶしからダシと薬味が省かれたもの。それゆえひつまぶしより200円安い。それでもうなぎが高騰したからか、1900円という値段は結構なごちそうだ。個人的に久しぶりのうなぎはやっぱりうまい。
俺に力を貸してくれ
俺に力を貸してくれ
ウナギなき後もうまい
ウナギなき後もうまい
ペース配分を誤ったか、うなぎを全て食べ終わった後にご飯だけ残してしまった。本来はひつまぶしに使うのだと思うが、テーブルに装備されていた海苔とあられを投入。食感や風味がアクセントになって、これはこれでおいしい。
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カレー界にもニューウェーブ

カレー屋を展開するCoCo壱番屋がカレー以外の店を出したのとは逆に、カレー以外の店の会社がカレー屋を展開する例もある。
店名に足し算が混ざってる
店名に足し算が混ざってる
全国の都道府県に出店中の「はなまるうどん」が展開する「はなまるうどん+カレー」だ。現在のところ、東京に3店舗ある。
メニューの一番上にカレー
メニューの一番上にカレー
食べ方の提案がはなまる的
食べ方の提案がはなまる的
はなまるうどんでは普通の店舗でもカレーを出しているが、ここではカツカレーや野菜カレーといったメニューを充実させている。カツカレーには「はなまる醤油で食べる」と書いてあるのも意外な提案だ。

ではここでカレーを食べよう、と思ったのだが、カレーを出す別業態店と言えば他にも気になっている店がある。そっちに行ってみることにしよう。
本家ロイホもすぐそばにある新業態店
本家ロイホもすぐそばにある新業態店
店頭でもサンプルでカレーアピール
店頭でもサンプルでカレーアピール
ファミリーレストランのロイヤルホストが出店した「カレー家族」だ。現在、東京都渋谷区に1店舗のみある

ロイヤルホストが毎年テーマを変えて行っているカレーフェアは評判のようだが、そのカレーに特化した店を出したというわけだ。
ファミレスよりシンプルな店内
ファミレスよりシンプルな店内
壁の絵が世界中のカレーを彷彿とさせる
壁の絵が世界中のカレーを彷彿とさせる
歴代フェアメニューも見られます
歴代フェアメニューも見られます
注文して先払いするタイプ
注文して先払いするタイプ
店内の様子は一般的なロイヤルホストよりもカジュアルな雰囲気。壁にはこれまでロイヤルホストで実施してきたカレーフェアのメニューが並んでいて、懐かしく思う人もいるだろう。

普通のファミレスとは異なり、まず注文口でメニューを決めて先にお金を払う流れとなっている。そしてメニューには、さまざまなカレーの他に気になるものがある。
聞き慣れない「サブジ」(写真は旧情報)
聞き慣れない「サブジ」(写真は旧情報)
サラダバーとは少々違う
サラダバーとは少々違う
それは「サブジバー」なるもの。サブジとはインド料理の一種で、野菜とスパイを炒め煮したおかずとのこと。よくあるサラダバーに一捻り加えている感じだろうか。

カレーを注文した場合、お皿に1回自由に盛りつけできるサブジバーを120円で追加できる。…のだが、公式HPを見ると取材後にこのシステムに変更があった。

お店に電話して確認したところ、10月26日にメニューの変更があり、カレーいずれかを頼むと自動的にサブジバーがセットとして付くようになったとのこと。さらに、盛りつけ1回切りだったのが、おかわり自由になったそうだ。
レンズ豆を使うなどインドっぽいサブジ
レンズ豆を使うなどインドっぽいサブジ
もうこんなに気合い入れなくていい
もうこんなに気合い入れなくていい
カレーの値段は変更なしなので、この変更はかなりお得と言っていいと思う。新メニュー表をよく見るとご飯の量は来訪時より減っているが、サブジがおかわり自由なら量的な満足度は十分カバーできるだろう。

来訪当日は1回切りだったため、好物のブロッコリーで外堀を作って…などとたくさん盛るための工夫をしたが、もうそんな必要はなくなったわけだ。
ビーフジャワカレー
ビーフジャワカレー
マドラスシュリンプカレー
マドラスシュリンプカレー
来訪時は5種類のカレーの中から、ビーフジャワとマドラスシュリンプを選んでみた(現在は6種類に増加)。ご飯は白米と玄米入りとが選べる。
うまいなあ!
うまいなあ!
サブジバーのパイナップルにもスパイス
サブジバーのパイナップルにもスパイス
味はざっくり表現すると、ビーフジャワは洋食風、マドラスシュリンプはインド風という感じだろうか。スパイス感とコクとは共通してしっかり感じ取れて、普通のファミレスのカレーとは一線を画す味になっていると思う。

サブジは基本的に味がもともとついていて、おかず的に楽しめるのがうれしい。パイナップルにも粉末スパイスが和えられていて、こちらも一工夫ありだ。
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さらばいとしき別業態店

ファミレスの中でも、びっくりドンキーと言えばその個性的な外観が印象的なチェーン店だ。以前、特にすごい店を回った記事を書いたことがある(こちら)。
知らない人はお化け屋敷かと思うかも(鎌ヶ谷店)
知らない人はお化け屋敷かと思うかも(鎌ヶ谷店)
レストランと言うよりは、砦(美浜店)
レストランと言うよりは、砦(美浜店)
既にこれらがもう実験的な出店のようにも見えるびっくりドンキー。同じ会社が運営する別業態店がある。
ダイムは10セント硬貨のこと
ダイムは10セント硬貨のこと
あれ、あんまり派手じゃない…
あれ、あんまり派手じゃない…
そのレストランは「ハーフダイム」。びっくりドンキーはハンバーグの店だが、こちらはローストビーフをメインに据えたお店。記事公開現在は、埼玉県の川越に1店舗のみ存在する。

びっくりドンキー系列の店だと思って外観を期待すると、どうもそれほど目立つ風でもない。
一応演出する品はある
一応演出する品はある
逆にインパクトある入り口の扉
逆にインパクトある入り口の扉
楽しいごちゃごちゃ感が特徴のびっくりドンキーだが、このハーフダイムはそれほどでもない。2階が入り口になっているので階段を上がっていくと、そこにあったのは無骨な鉄の扉だった。

錆びた色にかすれた文字で「WELCOME!」。およそファミレスの入り口ではないが、入ってみよう。
中はびっくりドンキーよりすごい
中はびっくりドンキーよりすごい
全体的に暗くて楽しい
全体的に暗くて楽しい
棺桶の中から「ODEGUCHI」の案内
棺桶の中から「ODEGUCHI」の案内
レールが見えるODEGUCHI方面
レールが見えるODEGUCHI方面
内装はかなり凝っていて、薄暗く独特の雰囲気。どうやら金鉱をモチーフにしているようで、トロッコのレールのようなものもある。

子供だったら半分怖くて半分楽しいという感じだろうか。それでも店員さんは「ジャンボー!」と明るく迎えてくれるので、おっかないところではないことはわかるだろう。
小道具が凝ってます
小道具が凝ってます
中には囚人と同席できるテーブルも
中には囚人と同席できるテーブルも
別業態店は最近オープンした店が多い中、こちらの店はすでに開店から20年以上経っているとのこと。当時としてはかなり斬新なスタイルだったのではないか。テーマパークにあるわけでもないファミレスとして、今でも十分にインパクトがある。
羊もラインナップされるランチメニュー
羊もラインナップされるランチメニュー
看板メニューはローストビーフ
看板メニューはローストビーフ
今回訪れたのはお昼時。ランチメニューにカレーやドリアは普通だが、ラムまであるのは特徴的。それでもこの店のメインメニューはローストビーフなので、それを注文することとしよう。
店員さんの衣装がそれぞれ違う
店員さんの衣装がそれぞれ違う
注文をとる店員さんは、一人一人着ている服が違う。それぞれテーマがあるようで、今回注文を受けてくれた方は「踊り子です」と自己紹介してくれた。

他のテーブルには自分のことを「森の妖精」と言ってる店員さんもいた。この店、こういう感じの接客も特徴の1つなのだ。

これでもランチタイムなのでおとなしめ。以前、夜に来たときはモーツァルトや自由の女神もうろうろしていた。中にはどう見ても河童という男性店員もいて、金鉱のモチーフからはすっかり離れているテーマもあった。
さらばハーフダイム
さらばハーフダイム
肝心の料理も、ローストビーフと言うと中には肉がパサパサして今ひとつのものに出会うこともあるが、ここは手頃な値段にも関わらず、しっかりジューシーでおいしい。写真からも柔らかさが伝わると思う。

そんな楽しいお店なのだが、記事公開に当たって公式HPを確認すると、2012年10月31日をもって閉店するとのお知らせが。この記事の公開は10月29日なので、あと3日しかないことになる。

期せずして悲しい意味でのタイムリーな記事となった。そう言えば以前来たときにはピーターパンもいたけど、次の就職先は見つかるだろうか。

どんぶりガストのアレンジはテンション高い
どんぶりガストのアレンジはテンション高い

いくつか巡ってきた、飲食店の別業帯店。先進店としてシステムやメニューの変更があったり、そもそもいつまでやってるのか心配だったりするのも、こうした店を巡る楽しみだろう。

前回から3年経って再び巡った今回。また3年後にまわるとしたら、いくつの店が生き残っているだろうか。また、どんな店が新しく登場するだろうか。3年後を楽しみにしたい。
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