はっけんの水曜日 2012年11月7日
 

ヘヴィメタルでまちづくり?

市役所らしからぬ鋼鉄感!
市役所らしからぬ鋼鉄感!
地元の歴史を振り返ったり、B級グルメを盛り上げてみたりと、いわゆる「まちづくり・まちおこし」に力を入れている自治体は少なくない。変わったところでは、人気アニメの舞台になったことで「アニメでまちおこし」的な運動があちこちで起きている。しかし「ヘヴィメタルでまちづくり」って!そんな区がホントにあるのです。
1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。
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モトリークルーのデビューと共に生まれた区

たまたま地方ニュース系を調べてる中、「ヘビメタでまちづくり、宮前区が企画展/川崎市」という、目に飛び込まざるを得ない記事を発見した。ヘビメタで?まちづくり?クリックしてみると、そのさわりはこんな感じ。
音楽のヘビー・メタル(ヘビメタ)を活用したまちづくりを進める宮前区のプロジェクト「宮前重金属発掘計画」を知ってもらおうと、企画展「宮前区とヘヴィメタル30年の歴史」が同区役所2階ロビーで開かれている。同計画の主催で、11月1日まで。
「宮前区とヘヴィメタル」…なんか有名なアーティストが宮前区出身だったりするのだろうか?さっそく川崎市宮前区のHPを検索してみた。「宮前重金属発掘計画」のサイトを覗いてみると…。
いろんな意味でもう出来上がってる公式サイト。
いろんな意味でもう出来上がってる公式サイト。
「宮前メタリックフォーラム」「宮前鉄男(メタルマン)鉄女(メタルウーマン)」とか気になるワードが多すぎる!ということで期間ギリギリの1日に企画展「宮前区とヘヴィメタル30年の歴史」を見に行ってきました。

渋谷から田園都市線で30分弱、宮前平駅から10分程度歩いたところにある宮前区役所。いたって普通のカッチリした建物だ。へヴィメタルでまちおこし、といっても建物全体にメタルバンドのステッカーが貼ってあったり、悪そうなスプレーアートがあったりするわけではない。
いたって普通な区役所らしい入り口。
いたって普通な区役所らしい入り口。
いたって普通な2階ロビー。
いたって普通な2階ロビー。
でも展示してあるテーマはこれ。普通じゃない!
でも展示してあるテーマはこれ。普通じゃない!
川崎市、ならまだしもその一部である宮前区。それと世界的な音楽の一ジャンルであるヘヴィメタル。そこにどういうつながりがあるのだろうか?

その辺りはとりあえずおいといて、展示を見ていこう。区とヘヴィメタルの30年の歩みとは…?
庁舎の写真とAC/DCのシングルが並ぶ展示、って新鮮です。
庁舎の写真とAC/DCのシングルが並ぶ展示、って新鮮です。
宮前区とモトリークルー・ドッケンは同じ歳。
宮前区とモトリークルー・ドッケンは同じ歳。
タイトルのとおり、宮前区の30年の歴史と、ヘヴィメタルのこの30年の歴史が重ね合わせて展示されてある。しかも区の資料や写真があるのはわかるのだけど、ヘヴィメタル側もその年代に関わる貴重な資料やグッズも並べてある。同時に学べるのはありがたいけど、どこかシュールだ…。
Tシャツや様々なエピソードあるグッズも。
Tシャツや様々なエピソードあるグッズも。
さらに貴重なアイテムもあり。
さらに貴重なアイテムもあり。
あらためて書きますが、これがごく普通の区役所の一角にあるんですよ?アップ写真だけだと、楽器屋とかハードロックカフェみたいですが。さらにこんな貴重なものまで!
立てかけられたギター2本、それは…。
立てかけられたギター2本、それは…。
一本はBOWWOWの斉藤氏、もう一本はSTILL ALIVEの重盛氏のギター!
一本はBOWWOWの斉藤氏、もう一本はSTILL ALIVEの重盛氏のギター!
なんでしょう、このいろいろ本気っぷりは!宮前区では何が起きてるんでしょう。

ヘヴィメタルを通して地元再発見

この企画展をはじめとした「宮前重金属発掘計画」について宮前区役所のまちづくり推進部・地域振興課の大竹課長と、企画課の中村さんに話をうかがいました。
左が大竹課長、右が中村さん。
左が大竹課長、右が中村さん。
−−どういうきっかけでこういう企画を始められたんですか?

大竹「宮前区が30周年記念ということで様々な取り組みを行ってまして、30に絡めてアラサーの人間を集めてプロジェクトを作らせていただいてまして。その世代はまだ企画から運営まで予算をとって行う経験も少ないので、人材育成という意味もあるんですけども」

−−若手育成企画なんですね。

大竹「その中でスタンプラリーをやったり、地元店に宮前の野菜を使ったレシピを提供していただいたりといった企画もあるんですが、もともと川崎は『おんがくのまち』という事に取り組んでいるので、音楽方面の内容も考えてたんです。それで最初は軽音楽的な方向で考えてたんですが…」

−−それが重音楽の方に(笑)。

大竹「そうなんです!たまたま宮前区に映画監督の井上秀憲さんがいらして、1月にリリースされたSEX MACHINEGUNSの『雨の川崎』という曲の映像を撮られたんですよ。その中に宮前区在住のBMXの選手も出てたりと、そういうのも含めて区役所にPRに来られた時に対応した中村がSEX MACHINEGUNS大好きで(笑)」

−−おお、若手の中村さんがメタルとこの企画を動かすことになったんですね。ちなみにどんなバンドが好きなんですか

中村「海外だとArch Enemy、日本だとGalneryusですね。勤務中にお恥ずかしい話で…」

−−いやいや、それが企画に繋がったわけですから最高じゃないですか!

中村「それでヘヴィメタルで何か出来ないか?と井上さんに相談させていただいて、そこからダメ元で提案しましたらこういう形になりまして(笑)」

大竹「井上さんからもANCHANGに話していただいて、SEX MACHINEGUNSリーダーのANCHANGもヘヴィメタルをもっと知って欲しいということで全面協力いただくことになって。それからいろんな人を紹介していただくことになって。あと区民からも『何か出来ることはないか』とメールが送られてきたり(笑)」
音楽やファッションだけでないプロジェクトなのです。
音楽やファッションだけでないプロジェクトなのです。
展示コーナーにはアドバイザーの皆さんの紹介も。
展示コーナーにはアドバイザーの皆さんの紹介も。
展示品はヘヴィメタル評論家の和田誠さんの協力によるもの。
展示品はヘヴィメタル評論家の和田誠さんの協力によるもの。
70年代から世界的に広まったヘヴィメタル。それだけに実はけっこう広い世代に聴かれてる音楽でもある。この展示も幅広い世代の区民に見ていただいているだけでなく、公式サイトもこれまでの区の取り組みではありえなかったほどの来場者数なのだとか。

この展示の前に行われた同企画の活動としては、脱法ドラッグのポスターやyoutubeCMがある。普通行政のポスターだと「××やめましょう」といった全世代に受けるイメージしか出来ないけれど、ANCHANGに出ていただくことで若い世代向けの、強めの表現を用いたポスターを作ることが出来たのだとか。今、宮前区内の中高全クラスに貼られているそう。
たしかにこれは目を惹く!
たしかにこれは目を惹く!
30周年記念キャラの宮前兄妹もメタルキャラに。
30周年記念キャラの宮前兄妹もメタルキャラに。
またヘヴィメタル、といってもファッションや音楽の話だけではない。「宮前重金属発掘計画」の「発掘」のところにも関係してくるのだ。
大竹「『発掘』とつけさせていただいてるのは、街の人材やいろんなものを発掘したいというのがあるんですね。それでへヴィメタルの精神に『限界感』というのがあるわけですけど、宮前区でもひとつ何かに打ち込んでる方にスポットをあてて、アピールしようと。そういう企画が『宮前鉄男(メタルマン)鉄女(メタルウーマン)』なんです」

−−そこにはヘヴィメタルの精神的な部分で通じるところがあると。

大竹「食品サンプル界のすごい人とか、鉛筆削りのカッターを作ってるシェア100%の会社とか、この企画やるまで我々も知らなかったようなすごい人がいるんですよ。そういう人同士の交流などを通して新しい産業などが出来ればいいですよね」
宮前区の第一期メタルマンたち。地元の匠を再発見!
宮前区の第一期メタルマンたち。地元の匠を再発見!
でもメタルを聴いてるわけではない。その辺はこれから!
でもメタルを聴いてるわけではない。その辺はこれから!
そして近々行われるのがシンポジウム、タイトルはそのままズバリ「メタリックフォーラム・果たしてヘヴィメタルでまちづくりはできるのか?」。第一部がヘヴィメタルのドキュメンタリー映画上映、第二部がミュージシャンやまちづくり専門家、さらに区長を交えてのシンポジウムとすごい構成。
ANCHANGや難波弘之さんらも参加します。
ANCHANGや難波弘之さんらも参加します。
大竹「まだまだ宮前区民でヘヴィメタルに対してよくないイメージを持ってる方もいるので、映画を観ていただいてどういうものか知ってもらおうと。音楽の一ジャンルであって、やってる人が全部悪い人ということではないですから」

−−見た目は悪かったりしますけどね(笑)。

大竹「でも実際はANCHANGにしろみなさんとても礼儀正しい方ですし、快く協力していただいてます。あと企画展を見に来た方も見た目普通ですけど『実は好きなんです』って方ばかりですからね。変な偏見を持たず、皆さんに参加していただきたいです。」

−−知らない人にも映画でヘヴィメタルを理解してもらって、第二部でまちづくりについて語ろうと。

大竹「アーティストに音楽評論家、まちづくり専門家、行政的な立場ということで区長も入りますし、区民の方の意見も取り入れつつ、いろんな立場の方を通して『ヘヴィメタルという音楽を通してまちおこしができるか』というテーマでディスカッションをしたいと思ってます。どうやれば宮前区をPR出来るのか、まじめに議論をしていきます」
今後、Tシャツのデザイン募集といった企画も進めていきたい。「普通に『宮前』って書いたTシャツは着れないけど、かっこいいデザインにして誇れるようなものになれば地元との絆を感じれますよね」という大竹さん。確かに!

特に観光資源があるわけでもないという川崎市宮前区。ヘヴィメタルを通して区民なら今までなかった地元への関心を高め、区外の人にはその名を知ってもらえるのなら、まちおこしのキーワードとしてとても魅力的ですよね。
企画展のメッセージコーナー。区への思いを叫べ!
企画展のメッセージコーナー。区への思いを叫べ!
大竹「30周年の企画ということで、一応来年3月31日までなんですよ。ですが区民の方の反応もありますし、来年についても継続的に出来ないか考えているところです。音楽に関する助成制度みたいなのもありますし、商品販売などで収益を得ながら面白い企画が出来ればと思ってます」

−−では将来的にどんな企画が出来れば、という夢はありますか?

大竹「これだけのメンバーが集まっていただけてるんで、スーパーバンドというのはやりたいですね。武道館でやったような方々が宮前区のために特別に演奏してくれる、という事が出来たら最高ですね」

中村「海外だとドイツやフィンランドに『ヘヴィメタルの街』みたいなところがあるんです。そこに負けないような『日本のメタルの聖地』みたいな所まで上げていければな、と思ってます!」
渋谷まで出やすいのもあり「宮前区の家と都心の会社の往復で、家は寝るだけ」という人も少なくないそう。しかしこんな事やり始めたら地元意識が間違いなく高まりますよ!話聞いてると「地元でこういうのやってたらなあ…」と羨ましくなってきます。全国の役所のみなさん、宮前区に負けない企画作ってくださいよー!

「宮前重金属発掘計画メタリックフォーラム」

開催日時:2012年11月18日(日) 15:00開場
16:00 第一部開始(映画上映会)
18:00 第二部開始(討論会他)
19:30 終了予定
開催場所:宮前市民館大会議室(1F)
川崎市宮前区宮前平2-20-4 (区役所の隣)

■第一部:映画上映会
上映作品:『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』

■第二部:メタルフォーラム
「メタルでまちづくりはできるのか?」

パネラー
ANCHANG(ミュージシャン SEX MACHINEGUNS)
難波弘之(ミュージシャン/東京音楽大学教授)
平山雄一(音楽評論家)
千葉晋也(まちづくり専門家/石塚計画デザイン事務所)
村瀬成人(宮前区まちづくり協議会委員)
石澤桂司(宮前区長)

*詳しくは宮前重金属発掘計画公式サイトをご覧ください。

ガンズと図書館のデビューは同じなんだー。
ガンズと図書館のデビューは同じなんだー。

かっこいいMIYAMAEが見たい

とりあえずデザイン公募Tシャツが発売されたらふたたび宮前区に買いに来ると思います。たぶん「MIYAMAE」があのバンドとかあのバンド風ロゴになっちゃうんだろうなあ。楽しみだなあ。それが区役所で売ってる、てのも相当面白い光景になりそうですね!

取材協力:宮前区役所
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