ひらめきの月曜日 2012年11月26日
 

3Dプリンタでゴミを作る

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3Dプリンタという機械がある。普通のプリンタが絵や文字を自在に印刷できるように、立体物を自由自在に造形できてしまう機械である。

そんなすごい機械を、当サイトの企画で借りられることになった。
なんでも作れる夢のような機械。可能性は無限大。このまたとないチャンスに、いったい何を作るべきだろうか。

…なにぶんあまのじゃくな性格である。こういうすごい機械にこそ全然すごくないものを作らせたい。
たとえば、丸めたティッシュとかどうだ。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
> 個人サイト nomoonwalk

俺は丸めたティッシュには一家言ある男

僕はアレルギー性鼻炎なのでティッシュをよく使う。
このサイトではよく工作記事を書いているが、ああやって作ろうと思って作るものは、人生の創造行為の中のごく一部に過ぎない。
たぶん僕が人生で一番量産している物体は、丸めたティッシュなのではないかと思う。

もっと言わせてもらえば、僕は丸めたティッシュに対しては一家言ある男である。巨匠とは言わないまでも、匠くらいの肩書きは名乗ってもいいはずだ。
そんな僕が、すごい機械とタッグを組むのだ。技術と技術のぶつかり合いである。
そうとあっては、万全の体制で挑まねば3Dプリンタに対しても失礼というもの。
できるだけかっこいい丸めたティッシュを作るべく、まずはティッシュの丸め方の研究から始める。
取り出したティッシュを
取り出したティッシュを
ただ丸める
ただ丸める
なんてだらしのない形か!
なんてだらしのない形か!
ただ丸めたティッシュ。実にだらしない形である。丸まり方に芯がない。いかにも片手間で適当に作ったという感じ。技量以前にやる気が感じられない。
もう少しギュッと固めたもの
もう少しギュッと固めたもの
今度はしっかり固まってはいるが、面白みがない。なんというか、「ただ固めました」という感じで、物語が感じられないのだ。やる気はあるが技量の伴わない、新人の仕事のようだ。肩に無駄な力が入ってしまっている。
ではこれでどうか。醤油を拭いたもの
ではこれでどうか。醤油を拭いたもの
良い。ティッシュに醤油の色がつくことで確実にゴミっぽさが増した。しかし、この色合いに囚われているようでは所詮素人だ。
このティッシュの真価は、別の角度から見た次の写真に現れている。
同じティッシュを手前に倒したもの
同じティッシュを手前に倒したもの
上面すこし左寄りに、突起があるのがわかるだろうか。指で掴んだ跡である。

いい老け方をした男の顔は、皺のひとつひとつに人生経験が刻まれているという。
丸めたティッシュも同じで、形を構成する要素のひとつひとつにバックグラウンドを感じる、そんなティッシュが美しいと思う。

鼻かんだティッシュが至高

ごめん、わざと、ちょっと遠回りをしてしまった。
本当は最初から結論は出ていたのだ。一番美しいのは、鼻をかんだティッシュ。
モデルの作成のため、鼻水の代わりに今回はノリを使用
モデルの作成のため、鼻水の代わりに今回はノリを使用
たたんで鼻をかんだ状態を再現
たたんで鼻をかんだ状態を再現
捨てる前にくしゃっと丸める
捨てる前にくしゃっと丸める
この完璧なフォルム
この完璧なフォルム
どうだろう。上半分のまだ皺になっていない部分からは、丁寧にティッシュを畳みながら鼻をかむ、作者の几帳面な性格がよくあらわれている。
下半分は圧縮されてシワシワになっており、かなり力強く握りつぶされたことがわかる。

あれだけ几帳面にティッシュを畳んでいた作者が、今度は思い切り力をこめて丸めた。ここから読み取れるのは、鼻をかみ終わった瞬間に、ティッシュが几帳面さの対象ではなくなったということだ。つまり、ティッシュが「鼻をかむ道具」から、「ゴミ」になったのだ。

鼻かんだあとのティッシュは、その形状に、道具としての過去、そしてゴミへの没落を一緒に保存している。物語が一目で見て取れる、そんな奥深い形状なのである。
このような探求が一晩続いた
このような探求が一晩続いた

最高の形

寝食も忘れての探求(所要時間10分)の末、ついにたどり着いた最高の形、それがこれである。
肝心の写真がピンぼけした
肝心の写真がピンぼけした
帆を張るような堂々とした上半分に、一切の角が消えるほどに強く圧縮された下半分。まさに、栄華と没落。

ただ、こんなにも見事に完成された形ではあっても、残念ながらしかしティッシュははかない。水に濡れれば溶けてしまうし、濡れなくても踏めば変形してしまう。部屋のデスクの上に飾って置いたとしても、そのうち妻やお母さんに捨てられてしまうであろう。ゴミだし。

しかしこれを3Dプリンタで印刷することができれば。樹脂で作られたティッシュはちょっとやそっとでは失われることはない。
丸めたティッシュを、後世にまで遺すことができるのだ。

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