ちしきの金曜日 2012年11月30日
 

呪いの絵を描く方法

ありのままの自分をキャンバスに描く
ありのままの自分をキャンバスに描く
少し前、『極嬢ヂカラ』という番組で「昨今の若い女性は自分が最も美しい時の姿を残すため記念ヌードを撮る」という趣旨の特集をやっていた。
僕は極嬢ではなく32歳のおっさんだが、似たような願望がないかといったら嘘になる。しかし、常識で考えておっさんが記念ヌードを撮るというのはあまりにも気持ち悪い。もしかしたら何らかの条例にひっかかる恐れもある。
そこで考えたのが、写真ではなく絵。ヌードデッサンなら男性モデルも一般的だし、気になる体型も都合よく修正できる。というわけで描いてみた。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

前の記事:「おっさんだってファッションスナップに撮られたい」
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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

油絵で描く

せっかくなら本格的に描きたい。立派な作品として先祖代々まで受け継がれるものにしたい。おじいちゃん、こんなにキレイだったんだぞと孫に自慢したい。

そこで油絵に挑戦してみることにした。
日本一画材が安い店こと「世界堂」へ
日本一画材が安い店こと「世界堂」へ

スニーカーでマッターホルンに登る

ちなみに僕は絵の心得がまったくなく、もちろん油絵も未経験。登山初心者がいきなりマッターホルンに登るようなものだが、せっかくの処女ヌードなのだ。お手頃な山で妥協したくない。

そんな決意のもと、購入した道具がコチラ。
12色の油絵具
12色の油絵具
用途に応じて使い分ける各種筆
用途に応じて使い分ける各種筆
油絵具を厚く塗る時に使うペインティングナイフ
油絵具を厚く塗る時に使うペインティングナイフ
油絵具を溶いてサラサラにする溶き油
油絵具を溶いてサラサラにする溶き油
汚れた筆を洗うブラッシクリーナー
汚れた筆を洗うブラッシクリーナー
なんとなく美術で使うイメージの食パン(使わなかった)
なんとなく美術で使うイメージの食パン(使わなかった)
ぼくの先生
ぼくの先生

まずは練習

ともあれまずは練習だ。レッスンDVDを見ながら静物を描いてみよう。
まずはキャンバスに地塗りを行う。これをやると油絵具の発色がよくなるらしい
まずはキャンバスに地塗りを行う。これをやると油絵具の発色がよくなるらしい
最初は黄色で大雑把にフォルムを描く
最初は黄色で大雑把にフォルムを描く
ちなみにラフランスです
ちなみにラフランスです
地塗りが乾いたら他の色を重ねていく。明るい色から塗っていくのが基本
地塗りが乾いたら他の色を重ねていく。明るい色から塗っていくのが基本
実に比べ葉が異様に大きくなってしまった。きっと、脳のバランスをつかさどる機能が崩壊しているのだろう。

だが、油絵は失敗しても上から塗りなおせば挽回できるのがいいところだとDVDの中の先生も言っていた。実のほうをでかくしてバランスをとろう。
油絵は何度でもやりなおせる。人生と同じだ
油絵は何度でもやりなおせる。人生と同じだ
しかし、キャンバスをはみ出してしまうと、もうどうにもなりません
しかし、キャンバスをはみ出してしまうと、もうどうにもなりません
ずいぶんと食べ応えのありそうなラフランスになった
ずいぶんと食べ応えのありそうなラフランスになった
まあけっして上手くはないが、描き方はなんとなく分かった。決心が鈍らないうちに本題に入ろう。

ポージングを決める

まずはポーズ決めだ。もっともセクシーかつ等身大の自分を表現できるポージングが望ましい。
ポージング案1
ポージング案1
ポージング案2
ポージング案2
ポージング案3
ポージング案3
熟考のすえ、ポーズは「3」に決めた。特に理由はないが、3の彼になんとなくパッションを感じた。

さて、いよいよ機は熟した。
僕はバスローブを脱ぎ捨てた。
僕はバスローブを脱ぎ捨てた。

「幸せの時間」も真っ青

妙に生々しい記事で申し訳ない。本稿は昼の11時公開を予定しているが、編集部にお願いして夜中にこっそりとアップしてもらったほうがいいだろうか。おっさん発のねっとりしたエロスはランチ時には似つかわしくない。昨今の過激な昼ドラなんて目じゃないくらいヤバい。
ここで記事を閉じてもらっても構いません
ここで記事を閉じてもらっても構いません
さて…
さて…

何を言ったところで全裸

まずは先ほどと同様に黄色の油絵具で全体の大まかなフォルムを描く。この段階ではあまり細かい線の太さなどは気にせずに、バランスにだけ気を付けて下書きすればOKだ。

などともっともらしいことを書いているが、いま全裸である。
キャンバスに描く、ありのままの“いま”
キャンバスに描く、ありのままの“いま”
枠をとったら中もバーっと塗る
枠をとったら中もバーっと塗る
とりあえず下塗りが完成
とりあえず下塗りが完成
この状態でしばらく置く。薄暗い部屋だとまるで何かの呪いだ
この状態でしばらく置く。薄暗い部屋だとまるで何かの呪いだ

パッションを灯し続けよ

本来ならここで、地塗りを定着させるために1週間ほど置くらしいのだが、冷静になるスキを自分に与えないため翌日から続きの作業に取り掛かった。鉄は熱い打ちに打て、ヌードは熱いうちに描け、である。
そして私はふたたび裸になった
そして私はふたたび裸になった

セルフヌードデッサンに大切な五カ条

セルフ撮りヌード写真の特集がテレビで組まれる時代だ。セルフヌードデッサンだって、高感度な女子に刺さってブレイクする可能性を秘めている。

いつでもananで特集が組めるように、セルフヌードデッサンで大切な5つのノウハウを公開しておこう。

(1)時間をかけない
(2)携帯の電源を切る
(3)女優になりきる
(4)ヒーターを入れる
(5)カーテンを閉める

「己が裸体を自ら描く」という行為には、葛藤、疑問、親・親族への申し訳なさなど、とにかく様々な感情がつきまとう。芸術と変態の間で揺れる心を、何とか芸術寄りに保ち続けることが大事だ。

そのためにはなるべく時間をかけてはいけない。また、途中で取引先から着信があったりすると、とたんに我に返ってしまうので携帯の電源は切っておこう(じっさいに2件の電話対応を全裸で行ったことを告白しておく)。

ちなみに、5カ条といいつつそんなにノウハウがなかったので最後のふたつは当たり前のことを書いた。
地塗りが乾いたら色を塗り重ねていく
地塗りが乾いたら色を塗り重ねていく
背景を青にしたらサーモグラフィみたいになった
背景を青にしたらサーモグラフィみたいになった
いよいよ生々しくなってきた
いよいよ生々しくなってきた

引き返すなら今だ

肌を描き終え、体毛のステップに移行すると生々しさが倍化した。リアル化してくるにつれ、絵とはいえ自らの裸体をインターネットに載せて世界中にさらす行為にいささかの不安を覚え始めている。しかし同時に、筆がのって楽しくなってくるのもこの頃だ。
そして完成
そして完成

漂う狂気

けっして上手くはないが、妖気と狂気を兼ね備えた作品が完成した。自分的には快作といえよう。玄関に飾れば少々の邪気くらいは退治してくれるかもしれない。
妙に目ヂカラがある
妙に目ヂカラがある
サインも入れた
サインも入れた
妙に力作に仕上がってしまったため、捨てるとたたりがありそうだ。誰か欲しい人がいればプレゼントしますので魔よけにどうですか?

結果、処分に困る

若かりし日の姿を素敵な思い出として残そうと思ったら、息を呑むほどに呪い感ただよう絵を生みだしてしまった。どんなお洒落インテリアも呪いの館に変えてしまう一枚の処遇に、いま、わりと本気で悩んでいる。
恐ろしい忌み子を生んでしまった
恐ろしい忌み子を生んでしまった
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