特集 2013年1月19日

中国で人魚に会う

ここまで徹底して突き抜けてると見たくなるよね。
ここまで徹底して突き抜けてると見たくなるよね。
中国に行くと日本では見かけないショーを見ることがある。

雑伎団でも十分すごいけど、そのベクトルとは別のベクトルの怪しさ満点のショーを見ることがある。上海や北京ではきれいになってしまったけれど、特に内陸の街とか、上海や北京でも郊外のそのまた先とかにひょんに存在を知ることになる。

上の写真のイベント告知も結局地元の歌手っぽい人が歌っただけで、言ってしまえばまんまとひっかかってしまった。でも観客は慣れたもので、こんなの嘘だとわかってる上で、街での数少ない夜のエンターテイメントを楽しんでいた。
変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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水族館に人魚

動物園の中の水族館の中に人魚がいるらしい!
動物園の中の水族館の中に人魚がいるらしい!
とある場所の動物園の中には水族館もあり、その水族館には人魚が描かれていた。描かれているだけでなく、なんと本当に人魚のスペクタクルショーがあるらしい。

広い中国で、近代化する中国で、本当に人魚はいるのではないか。たまたま発見されたのではないか。万に一つの淡い期待を持ちつつ中に入ってみた。

ちなみに動物園のチケットは10元(130円)、さらにその中で水族館のチケットを払うこと10元(130円)。初乗り運賃の往復で人魚が見られるかもしれない(という夢を買える)なんてお得である。
その入場料の安さゆえか、動物園で動物を見ず楽器を奏でるおじいさんとおばあさん。
その入場料の安さゆえか、動物園で動物を見ず楽器を奏でるおじいさんとおばあさん。
水族館に入るといきなりアシカショーだ。観客は10数人だが、海から千キロ以上離れた内陸でアシカは、あちこち動き拍手をして客を暖める。プロの鏡だ。
くたびれた建物がいい。プロレス界の後楽園ホールである。
くたびれた建物がいい。プロレス界の後楽園ホールである。
遠くの客席からズームして、アシカが突き上げるボールを見てみればNIVEAの字。お肌に優しいのである。
遠くの客席からズームして、アシカが突き上げるボールを見てみればNIVEAの字。お肌に優しいのである。
内陸だろうと小さい街だろうと、人々はケータイやスマホやデジカメで写真を気軽に撮るようだ。
内陸だろうと小さい街だろうと、人々はケータイやスマホやデジカメで写真を気軽に撮るようだ。
アシカが拍手しつつ客席が暖まったところで、司会は「握手と写真とれます。20元!」というとクールな客はさーっとひいていく。飼育員が止めるまで拍手をし続けるアシカがシュールであった。

頭を冷やして人魚を捜しに前に進もう。
人生で一度も海に行ったことがない人が普通にいるところだからこその、絵本やテレビで見たペンギンにあえる喜び。
人生で一度も海に行ったことがない人が普通にいるところだからこその、絵本やテレビで見たペンギンにあえる喜び。
金魚も亀も総動員される。少しでも寄贈したら喜ばれそうだ。
金魚も亀も総動員される。少しでも寄贈したら喜ばれそうだ。
アシカプールにはじまり、ペンギンや熱帯魚から金魚や亀まで広くはない空間にちりばめられた水槽の先には、黒いカーテンで遮られた巨大な人魚プールがある。さらにその先はもう出口でクライマックス。アシカプール以上に多くの人が座っている。



ここから貴重な人魚のパフォーマンスをすべてを動画で紹介しようと思う。”世界初の完全録画”とかいうと、ダイオウイカっぽいですよね。
手作り感があって暖かみあるステージで、簡単に始まりの挨拶。
これが完全ノーカット版人魚ショー!
さらに淡々と続く人魚ショー(ノーカット)。

中国社会の歯車を見た

僕は日本である有名な映画の招待券をもらったことがある。平日昼間の映画館には、招待券をもらってやってきた人たちが見ては、終わった後に「これはつまらなかったねぇ…」と愚痴りながら映画館を出て行った。映画館の外で撮影された「感動しました!」「涙が出ました!」とCM撮影に答えた観客はなんだったのか。


人魚ショーを見終わった中国の皆さんは愚痴ることなく、淡々と水族館を後にし、動物園の中に消えていった。心の中に秘めた気持ちとはなんだろう。中国の社会に浸っていれば「余裕で予想の範囲内」だと悟りを開けるのだろうか。

企画した人も、人魚さんも、観客の皆さんも、中国社会の歯車の中で生きているのである。良くも悪くも感動しているうちは歯車ではないのである。
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