はっけんの水曜日 2013年1月30日
 

書き出し小説大賞・第9回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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書き出し小説秀作発表、九回目である。

梶井基次郎の有名な短編に「檸檬」がある。その小説で主人公は、本の上に置いた檸檬が爆発するという妄想を抱く。今朝テレビで爆発しない春巻の作り方を紹介していた。春巻は油で揚げる際よく爆発するそうである。梶井基次郎に、教えたかった。

今回も厳選された16本。この書き出しに続く、爆発的なストーリーを想像してお楽しみいただきたい。
ポールを駆け上がる国旗のスピードに、会場が少しざわついた。 哲ひと
頂上ふきんでスローダウン。
からっぽの電車きた!と思ったら、下の方に園児がびっしり詰まっていた。
xissa
黄色い帽子の群れがパッと浮かぶ。かわいい。
豊田さんの体型が、リュックを拘束具に見せる。そう、ここは秋葉原。
megahiro
豊田さんの風貌がありありと浮かぶ。
卒業の日、長く連なった白線の最後にしがみつき、田中くんはゆっくりと川下に流れていった。
夏猫
もうひとつの白線流し。ドラマ化したい。
三角の影が音もなく通り過ぎる。隣の猫の耳だ。
xissa
語り手の視線から昼下がりの静寂が見事に伝わる。
エサをねだるポチの仕草が、朝の番組で話題になった。姉はポチのイラストを数パターン仕上げ、母に渡す。母は企画書をまとめ、兄がパソコンで清書すると、僕が受け取り、父の勤める和菓子屋へ走った。
TOKUNAGA
流れるような連携プレイ。これもひとつの家族の絆。
マジックテープに引っ付いた毛糸の手袋を力強く引き剥がすと、手袋に出来た毛玉が謎の暗号を表していた。
おしえて委員長
毛玉コードでフリーメーソンの謎が?!
指向性を持つ波や粒子の流れをビームと呼ぶ。つまり暴れ牛の群れに指向性を保たせれば、それは牛ビームだ。牛に跳ね飛ばされて宙を舞いながら、私はそんなことを考えている。
バルクマン
牛ビームでがっちり掴まれた。物理学的見地に立った稀有な例え。
彼女の白い人差し指が、僕の指の間の水掻きをなぞった。
夏猫
読み手によってさまざまな状況が浮かぶ。個人的には青春のエロスを感じた。
熟しきった柿にナイフを入れるとき蘇る記憶がある。耳鳴りがひどくなった。
いちの日
五感に訴えながらも不穏な余韻を残す。
下駄箱を開けるとラブレターらしきものが入っていた。厳密に言えば自分で入れたものだが、この際、それは関係無い。
伊東和彦
ここまで自己完結されると逆に清々しい。「厳密に」が効いている。
しっかり寸法を合わせたはずなのに、ちょっと首元が苦しそう。そんなワタシの、鎖帷子。 prefab
後半椅子からズリ落ちた。まさかのアンニュイ 。笑いました。
「お前がヘラヘラしてるからだぞ!」先生は田中君を見つめながら自分の腕を殴る。時代が体罰の形を変えた。
megahiro
後半の一文で上手く締めた。社会派作品。
彼女の胸につーっと流れた汗がおへそを濡らした。ぼくはまじまじとそれを見つめる。「暑いのよね」園長先生がタオルでそれを拭った。
114180F
「ぼく」の年齢によっては発禁モノの問題作。
その魔球は一球投げるごとに親戚が一人いなくなる。
概念覆す
次の親戚は誰だ?!

以上である。

今回は意外な変化球に唸らせられる作品が多かった。バルクマン氏の牛ビーム。こんな造語がすんなり頭に入ってくる文章はちょっと読んだことがない。伊藤和彦氏の完結ぶり。世の非モテ諸君にとっては力強いエールだったのではないだろうか。prefab氏の作品から漂う読後感。これほど脱力と共に悔しさを感じる文末は滅多にない。 ここに来て書き出し小説は、当初のコンセプトを越え、新たな地平へ踏み出しているもかもしれない。

さて、書き出し小説も次回10回目ということで、こちらも新しい展開を起こしたい。 今回の募集からはこれまでの形に加え、新たにモチーフ部門を設立する。モチーフとは作品のテーマ、主題、ひらたく言えばお題である。 今後はこの二通りの募集で、書き出し小説の可能性をさらに深めていきたい。 それでは一回目のモチーフを以下に発表する。
昨今ちまたに溢れる妹系ライトノベル。その潮流に我々も乗ってみたい。もちろんラノベ風であってもいいし、まったく違う作風でもかまわない。また文中に「妹」という語句が出なくてもかまわない。妹というモチーフから連想できるあらゆる物語を、あらゆる手法で表現して欲しい。無論、書き出しのみで結構だ。

次回の締め切りは2月7日正午。発表は2月10日を予定している。 これまで通りのフリー部門はハンドルネームの後ろに(自由)、モチーフ部門は同じくハンドルネームの後ろに(規定)と記入して欲しい。それでは諸君からの力作を待っている。以下の投稿フォームで応募されたし!
最終選考通過者

g-udon/だんぶる☆うぃ〜ど!/不眠/水ボトル/すり身/Risyo/kossetsu/イマ/Lee./がらがら/靖丸/じゅんじゅん/アイアイ/おかめちゃん/Kanata/松っこ/貧乏プログラマ/大伴/くらひろの順番/はヴ名人/植本浩治/豆腐鉄工所/徳川バットゥータ/植本浩治/反現代死イ/dekuno/天網恢々疎にして上沼恵美子
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