私は、羽田の第一旅客ターミナルにいた。
出発時間をチェックする。
ふう、もうすぐフライトの時間ね。
ご飯食べ損ねちゃったから、限定の空弁を買いましょ。
いっぱいあるわね。いいわ、この1100円のやつで。
おなかがすいたわ。機内食が付いてない国内便は、面倒ねえ。
ここね。飛行機と星のマークが目印ね。チェックインよ。
チェックインカウンターまで、長いわね、廊下が。
スタスタスタスタスタ。
あら、飛行機がないわ!?
………というわけで、小芝居してる場合じゃありません。
実は私、羽田に、飛行機に乗りに行ったわけじゃなくて、
羽田空港内に出来た、ファーストクラス風のホテル「ファーストキャビン」に、来てみたのです。
本当にこんな感じなのかな?
だってさ、普通に生きてたら、これからの人生で、ファーストクラスを、利用する機会があると思います?
大金持ちになる見通し、全然立ってないですよ。エコノミー人生まっしぐらですよ。
何かの懸賞に当たるとか、
航空会社の手違いで、ダブルブッキングで、謝られながら「いやーそれじゃあしょうがないなあ~」なんて言いながら利用するっていう可能性くらいしか、ありませんよ。
それが、このファーストクラスを模した空間は、デイユース(休憩2時間)で2000円!
2000円! 食べ物も飲み物も高くて、レストランでビール飲んだら1杯800円くらいしちゃう空港の中では、2000円で2時間なんて、超格安じゃないですか。
それに、飛行機テーマのホテル! っていうだけで、萌え萌えですよね。私はとくに飛行機ファンじゃないけど、やはりぐっとくるものがあります。
で、さっそく受付。
ロビーはとても立派でした。ちゃんとしたホテルマンばかりで、落ち着いた雰囲気。完全に、高級ホテルのノリなんですけども……。
そんな感じなのに、マンガ喫茶を利用するような、だらしない格好で行ってしまいました。すみません。
「あのーデイユースで利用したいんですけど~」と言うと、
「ただいま、キャンペーン期間中でして、1時間1000円からご利用出来ますが…」との返事。
え、せんえん!?
「じゃ、じゃあ、1時間1000円で……。」
せんえん? せんえんでいいの!?
興奮しながらチェックイン!
カードキーをかざすと、客室内に入れます。ピピっとね。
ぐおん、とドアが開くと、機内風の廊下の中へ。おお、うすぐらいぞ。ちなみに客室は、男女で分かれております。
細い廊下の両脇に、部屋が並んでいます。平日昼間なのですいていました(金曜日夜とかは、満室のようですよ)
ここか!
まず、感じたこと。
……ひろい? かな?
廊下もひろいし。いや、もちろんコンパクトなんだけど、
私の考えたファーストクラスよりは広い!
ちょっとした子供部屋(小~中学生)くらいの大きさ。
小6くらいの子供が「母さん、部屋せまいよ、広い部屋にしてくれよ。友だちも呼べないよ!」って文句言うくらいの大きさ。
机と本棚は置けないから、ノートパソコンかアイパッド買ってやるよ、仕方ないな、壊すなよ!? ああもう来年は、学習机の入る部屋に移動させなきゃいけないかなあ……くらいのスペース。
ううむ、この感覚は何だろう。
「ファーストクラス風、簡易宿泊施設」だから、広いわあ~と思ってしまうけれど、
たんに「簡易宿泊施設」だったら、狭いなあって思ってしまうかもしれない。
このホテルのコンセプトを考えた人、天才かもしれない。
しかしこう、本物のファーストクラスを利用したことがないから、
「ここと、ここが、違う! 絶対的に違う~!」
って感じられないのが、悲しいところだ。
でも音漏れ厳禁なので、ヘッドフォンでテレビをみます。
曲線がうつくしい。これが飛行機っぽさ?
入り口の仕切りはアコーディオンカーテンになっています。
コートを脱いで置いたら、一気に家っぽくなりました。
寝間着、ホテルのマークがかわいい。
でも私、Lサイズなんだよね…(言ったら替えてもらえると思うけども)。
大浴場のほうものぞいてみました。
あるんです、大浴場が。お風呂! お風呂!
宿泊じゃなくて休憩でも、タオルと歯ブラシが付いてくる。良心的。
おっ、コインランドリーもあるんだ。
化粧水、紙コップ、綿棒、ドライヤー、クレンジング、洗顔料、乳液、コットン、ヘアアイロン、なんでもあるなあ。
お風呂はのぞいただけで、入りませんでしたが……かなり大きめのお風呂でした。
っていうか、空港内に、一般の人が入れるお風呂がある、ってことだけでも貴重です。
「羽田の湯」っていうお風呂メインの施設があってもいいよなあ……なんて妄想しながら、
ひとしきりコーフンしたあと、お弁当を食べることに。
せっかくなので、いいお弁当、買っちゃいました。
空港内のファーストクラス風空間で、美味しいものを食べる。イイネ! とくに鰆がおいしかった。
お弁当を食べながら、「うどんですかい」を空港内のショップで買って、食べても良かったんじゃないか、そのほうが気分が出たかも? でもファーストクラスで「うどんですかい」を食べる人いるのかな? わからないな~と、少々悩んでみたり。
ああ……。
お金持ちたちは、こんな広さで、空中を移動しているのだろうか?
シャンパン飲みながら?
DVD観ながら? 談笑しながら?
まじかー。と思いながら、音の出ない画面を見ながら、ビールを飲む。
はー、なんか、こう、
狭くてキレイな部屋って、無駄にテンション上がるー!!
という気がしました。
わたくしの自宅、狭いですけど、別に楽しくありません。貴方の家も、きっとそうですよね……。
・生活感のない
・狭くて清潔な場所
・そこで飲食、休憩、宿泊、テレビ鑑賞
それがポイントなんだろうなあ、と思います。非日常感、ですね。
休憩ルームもあるので、友人と同行した人は、こっちで話せます。
ビールも売店と同じ値段で売ってる。
もちろん氷結も。シャルドネ飲めば、きっとシャンパン気分!
軽食もあるよ。
なかなかの安さ。
唯一、気になったのは、「2個入りホットドッグ」。なぜに2個?
本当にあっというまに1時間たってしまって、
どこかにフライトしたような気になって、空港の外に出ました。
私自身は職業上、出張はほとんどナイのですが、
出張の多い人は、使いでのある場所だと思いますよ。
だって格安でお風呂入って、乳液つけて、髪の毛乾かして、横になれるんですから。
ゴハンも食べられるし。飛行機の出発の、ギリまで休めるし。
そもそも羽田空港みたいなスペシャルな空間の一部を、千円とか二千円で借りれるのは、驚異だと思いますよ!
足りないのは、「ゴーーーー」という、空を飛んでいる音と、
気圧の感じと、
可愛いキャビンアテンダントさんくらいでしょうか。
「ゴーーーー」は、効果音として、館内に流して欲しいなあ……。駄目ですかねえ。駄目だろうな、やっぱり。
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