ちしきの金曜日 2013年4月5日
 

らくがき寺に、願いを込めて

どっからどうみても立派なお寺だけれども…
どっからどうみても立派なお寺だけれども…
京都に壁に落書きできるお寺があるという。

僕は落書きが大好きだ。仕事から帰ってきてヒマな時に、よくコピー用紙を取り出して落書きをしている。

しかし今回の話はコピー用紙みたいなシケた話じゃない。広大な壁に!そして京都の寺で!すごいことだ。

勇んで京都まで向かいました。
1982年、栃木県生まれの指圧師です。自分で企画した「下北沢ふしぎ指圧」で施術しています。何をしているときでも「みんなが自分の治療院に来てくれるといいな〜」って思っているのですが、ノイローゼでしょうか。
> 個人サイト 下北沢ふしぎ指圧

らくがき寺「単伝庵」

寺の門まで来るとちゃんと「らくがき寺」と書いてある。ちゃんと公式に認められて落書きができる雰囲気である。
真っ白な壁にそそられるが、まだ落書きはみあたらない
真っ白な壁にそそられるが、まだ落書きはみあたらない
よく刈り込まれた庭の植木、立派なお堂
よく刈り込まれた庭の植木、立派なお堂
とてもきれいで行き届いている。さっき門に「らくがき寺」と彫り込まれていたのを忘れそうだ。
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壁全体が絵馬になっている

お堂の中もふつう、と思いきや
大黒様が祭られている
大黒様が祭られている
ちゃんとあった。おお、落書きだ。
写真じゃわかりにくいんだが、けっこうな迫力ある
写真じゃわかりにくいんだが、けっこうな迫力である
壁が全部落書きスペースになっている。でもよく見ると書いてあるのは全部「お願いごと」である。壁一面が神社の絵馬になっていると思えばわかりやすい。
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でも願い事に添えるちょっとした絵ならOKみたいだ
でも願い事に添えるちょっとした絵ならOKみたいだ
セーラー服を着たキティちゃん。ORTを調べたら「視能訓練士」のことらしい
セーラー服を着たキティちゃん。ORTを調べたら「視能訓練士」のことらしい
黒の水性ペンのみ。スプレー塗料とかあればおもしろいのに
黒の水性ペンのみ。スプレー塗料とかあればおもしろいのに

僕も落書きします

雰囲気はつかんだので、さっそく僕も書いてみよう。サインペンがちゃんと用意されている。

さらに落書きをする際の「注意」が大きく貼ってあった。
「一 いちばん大事なお願い事を書いてください」
「一 いちばん大事なお願い事を書いてください」
書くのは「いちばん大事なお願い事」なんだそうである。

お願い事はいろいろ思いつくんだが「いちばん」といわれると、もうこれしかない、というのがある。ペンのキャップを外して、ノータイムで壁に書き始めた。
いつになく力強いタッチが出た
いつになく力強いタッチが出た
「開業うまくいきますように!!」ここで公開してしまうには余りにも生々しい、本気のど真ん中直球の願い
「開業うまくいきますように!!」ここで公開してしまうには余りにも生々しい、本気のど真ん中直球の願い

私の願い

僕の本業は指圧師だ。実はお寺に取材した当時(2月初旬)、知り合いの治療院の定休日を借りて、週一回だけのプチ開業する、という話が決まっていた。(*3月から始まっていています)

「開業うまくいきますように!!マジでおねがいします よろしくおねがいします」 とはそのことである。

週に一回だけ、しかも人の治療院を借りて自分の施術を行う、なんて話聞いたことない。
小さくても自分で治療院がやりたくて、貸してくださいと無理やり頼み込んだのだ。相当無茶な形である。
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はたしてちゃんとお客さんが来てくれるのか。赤字になるんじゃないのか。

いや、本当の問題は金じゃない。僕は脱サラしてまでこの業界に来たクチだ(前職での様子はこちらの記事に詳しい→『仕事の反省文を女子中学生っぽくデコる』)。これが失敗したら僕の人生いったいなんなの?という話になる。
高いところにも書けるように踏み台が用意されています
高いところにも書けるように踏み台が用意されています
強い願望はあるけれども、ダメだったら自分が否定されることになって怖い…というのは、まるで思春期の恋愛感情のようである。

告知のためのホームページを作っていたのだが、それは真夜中に書いたラブレターそのものだった(さらにこの後、開業直前には悪い夢を見て自分の寝言で目が覚めるということが何度もあった)。
人が落書きしている姿。真剣な願い事書いているんだろうがどうしても「いたずらしている」雰囲気が出てしまう
人が落書きしている姿。真剣な願い事書いているんだろうがどうしても「いたずらしている」雰囲気が出てしまう
そういう経緯があっての「開業うまくいきますように!!」「マジでおねがいします」「よろしくおねがいします」である。

ペンのキャップを外してからF1のようなスピードで一気に書いて、その後には何かちょっと魂が抜けたような脱力感があった。
さて、書くもの書いたし帰ろうか
さて、書くもの書いたし帰ろうか

ダメ押し

帰ろうとした後で急に気になってきたことがあった。
この表情
この表情
僕が落書きに使ったこの顔の表情が「生意気で偉そうなんじゃないか」ということである。
まるで人に何か言いつけているかのような様子だ。

願いをかなえてもらう仏様(大黒様?)に対して、ちょっと失礼なんじゃないか。

仏様そんな細かいこと気にしないだろう、とも思うが、自分で一瞬でも気にしちゃったら負けである。仏とは自分の中にあるものなのだ。…せっぱつまると思考のオカルト化が止まらない!

急いで戻って、もう一つ書き加える。
しおらしい表情で合掌、というのを付け加えた
しおらしい表情で合掌、というのを付け加えた
これでよし。

神仏の前で人間飾れない

途中で開業のことを考え出したら、石油に火をつけたようなテンションになってしまった。神仏の前で人間飾れない、ということがよくわかる。

ちなみに現在、この訪問から2か月くらい経っているのだが、とくにトラブルはないし、人はそこそこ来てくれている。らくがき寺に書いた願いはかなったのである。

やはり最後の最後に「しおらしい表情で合掌」を付け加えておいて正解だったんだろう。危ないところだった。
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