特集 2013年5月2日

大阪にあるヘブライ雑貨の店がおもしろい

「エフロノット」とはヘブライ語で「鉛筆」の意味
「エフロノット」とはヘブライ語で「鉛筆」の意味
「大阪の中津にヘブライ雑貨のお店があるから行ってみませんか」

漫画家の香山哲さんからそんなお誘いを受けた。

北欧とか東欧の雑貨っておしゃれに使われているイメージがあるけれども「ヘブライ雑貨」って聞いたことがない。

どれどれ、くらいのテンションで行ってみたんですが、すごくおもしろかったです。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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エフロノット

今回行ってみたのはヘブライ雑貨の店「エフロノット」。

香山さんは「かわいいおもちゃに何の説明もなく六芒星がついていたりして、おもしろいです。日本人だったらちょっと引いちゃう感じのデザイン」といっている。

「ヘブライ」とは「ユダヤの」という意味。「ちょっと引いちゃう感じ」というのは六芒星が都市伝説のユダヤ陰謀論によく出てくるからだろう。

もっともこの時はそんなことも知らずにあとで調べた。ちょっと引いちゃうデザインって聞いて面白そうと思ってついていったのだ。
エフロノット店内。細かい雑貨がものすごい大量に置かれている
エフロノット店内。細かい雑貨がものすごい大量に置かれている
「ユダヤ」と聞くと、「つらい歴史を持った民族」というイメージが先行してしまう。しかし、店内はすっかり異国系カワイイ空間である。香山さんはここの雑貨を使ってラブレターを作ろう、という記事を書くそうだ。ちょっと趣味良過ぎる。

(取材は1月で、この記事はすでに公開されてます「バレンタインデーに、ヘブライ文具と世界中のハンコで作るラブレターを」)

やはり異国

しかしよく見てみると、単純に「カワイイ!」ってだけではない。異国のかぎなれないスパイスが効いている。
六芒星のプレート
六芒星のプレート
「マグネットの付いたウォールポケット。マチがついていて便利。」って書いてあるけれども、目を引くのはやっぱりこの一つ目デザイン
「マグネットの付いたウォールポケット。マチがついていて便利。」って書いてあるけれども、目を引くのはやっぱりこの一つ目デザイン
ケータイで乳児が「ミルクくれない?」って注文している。かわいいヘブライジョーク
ケータイで乳児が「ミルクくれない?」って注文している。かわいいヘブライジョーク
ヘブライ文字のスタンプ。右下の三つ、全部バールの様な物にしか見えないけど違う文字なんだろう
ヘブライ文字のスタンプ。右下の三つ、全部バールの様な物にしか見えないけど違う文字なんだろう
ヘブライ語と英語の対応表…なんだけれども背景の鉛筆が無残に割れているのはなぜだ
ヘブライ語と英語の対応表…なんだけれども背景の鉛筆が無残に割れているのはなぜだ
全くふつうのシャープペンだが、イスラエル製だった(値付けもすごくふつう!)
全くふつうのシャープペンだが、イスラエル製だった(値付けもすごくふつう!)
この手のお店にしては安すぎるのではないか。雑貨全部買ってワンルームの自宅をイスラエルにすることも可能である
この手のお店にしては安すぎるのではないか。雑貨全部買ってワンルームの自宅をイスラエルにすることも可能である
香山さんと「腕が細すぎる!」「靴がでかすぎる!」とざわめいた品。よく見ると背景の道路や建物がイスラエルっぽい
香山さんと「腕が細すぎる!」「靴がでかすぎる!」とざわめいた品。よく見ると背景の道路や建物がイスラエルっぽい

ふつうの文房具もある

エフロノットは「ヘブライ雑貨と文房具の店」ということで売っている。しかし全然関係ない雑貨も一緒くたに並べられていて、国境のない理想の世界である。
使い勝手のいいペンケース
使い勝手のいいペンケース
ゼンマイ式パックマンの敵
ゼンマイ式パックマンの敵
実際このペンケースはすごく便利そうで、買うのを長い時間迷った。

パックマンの敵のおもちゃは速攻で買ってしまった。こんな外国の珍しいものがあふれるところで、買うのがこれなのだから、もうどうしようもない。僕らの世代におけるファミコン文化の呪縛は、ヘブライより強いのだ。(そういえば最終的にヘブライ雑貨を一つも購入しなかった)

ヘブライの吉良上野介

話をもどそう。ヘブライ雑貨で定番のモチーフがいくつかある。

まずは「ハマン」。これは旧約聖書に出てくる悪大臣だ。ユダヤ人の皆殺しを企てたが、逆にユダヤ人の機転によって処刑されてしまう。

日本でいったら吉良上野介の立ち位置に近いだろうか(悪役としての雰囲気が)。これが雑貨として大人気でいろんなところに出てくる。
目が光ったりパンチしたりする
目が光ったりパンチしたりする
ユダヤ人皆殺しを企てていても、ボールペンになっちゃえば穏やかなもんである。
ちゃんと「Haman」って胴体に書いてあるハマン
ちゃんと「Haman」って胴体に書いてあるハマン
このビニールバッグに出てくるハマンは、もはやカワイイ存在になっている。

三角形のクッキーはヘブライ伝統菓子で、「ハマンの耳」という名前が付けられている。悪いやつの耳を食ってやれ!ということか。

そういえば、耳にお仕置きを加えるのは、日本でもサザエさんがカツオの耳を引っ張るのでおなじみだ。

奇跡のロウソクがかわいい

ロウソクとコマも人気が高い。
ロウソクの数は9本って決まっている
ロウソクの数は9本って決まっている
これは昔の独立戦争(紀元前のマカバイ戦争)に由緒がある。

戦争に勝った時に、エルサレム神殿のロウソクがちょっとの油で何日間も燃え続けた、という奇跡があって、それを祝しているのだそうだ。
奇跡を起こしたロウソクの擬人化、かわいすぎるだろ
奇跡を起こしたロウソクの擬人化、かわいすぎるだろ

奇跡をたたえて回るコマがかわいい

コマは四角い
コマは四角い
すごく回りにくそうに見える
すごく回りにくそうに見える
ヘブライのコマは四面で構成されていて、それぞれの面に「ここで」「偉大な」「奇跡が」「起きた」とヘブライ語で書いてある。奇跡というのはさっきのロウソクが燃え続けた、という話である。

コマにすると偉大な奇跡がぐるんぐるん周るわけで、大変景気がいい。縁起の良さが直感的にわかるな~と思った。
マネしたくなる感じのありがたさ
マネしたくなる感じのありがたさ
コマも擬人化してかわいくしちゃう
コマも擬人化してかわいくしちゃう
しかしコマを擬人化して足をつけちゃったら、もう全然コマじゃないのでは?
しかしコマを擬人化して足をつけちゃったら、もう全然コマじゃないのでは?

店主の山台さんは「こういうものばっかり集めていて、近所から気持ち悪がられていないか不安」といっていた。好きで集めて売っているのに人目を気にしているのだ。

もっと自信を持って下さいよ…と思ったのだが、そういえば最初僕も「引いちゃうかもしれないデザイン」って聞いて来てみたのだった。ごめんなさい!全然見たことのない文化に触れられて、純粋に面白かったです。

取材協力

エフロノット
大阪府大阪市中津1-17-23梅田サービスビル3F
営業時間:14:00~19:00
定休日:木・日曜日

告知

今回エフロノットに連れて行ってくれた香山さんの個展「赤青3Dおばけ展」が5月17日から19日まで東京に出張開催することになりました。
概要はこちらから赤青3Dおばけ展
前に僕が書いた記事はこちら
手作りの赤青3Dイラスト展
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