特集 2013年5月7日

探してみよう、ご近所廃道

身近にも意外と廃道はあるものです
身近にも意外と廃道はあるものです
以前は道として使われていたけれど、現在は打ち捨てられ、自然のなすがまま朽ち行く廃道。そこには儚さとわびさびの心があり、また冒険心をくすぐるロマンがある。

廃道をお好きな方は数多く、ちょっと検索すれば様々な廃道の情報を得る事ができる。だがしかし、それらの多くは山の中など人里離れた場所にあり、興味はあれど気軽に訪れる事は難しい。

そのような中、意外と身近にも廃道が存在する事に気が付いた。小規模ではあるものの独特の味がある、そんな「ご近所廃道」を見てみよう。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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道路の付け替えで生まれるご近所廃道

山の中に残る大規模な廃道の場合、トンネルの開通によりそれまでの山道が廃道となったケースが多いようだ。

では、町中ではどうかというと、道路の再整備や区画整理などによって道路の付け替えが行われ、その結果廃道が生まれる事があるらしい。

特に郊外のベッドタウンでは開発の波が激しく(私が住んでいるのもそのような場所だ)、いつそんな廃道が誕生してもおかしくない状況だろう。
右の道路が通された事で、左の道が廃道となった場所
右の道路が通された事で、左の道が廃道となった場所
150m足らずの部分的な区間だが、廃道には違いない
150m足らずの部分的な区間だが、廃道には違いない
隣りに大きな道路が通された事で、廃道となったのであろうこの道路。たぶん、新道との合流地点がY字路なので事故が起こりやすく、封鎖されたのだろう。

廃道化した時期は定かではないが、ずっとこんな感じだったような気がするので、少なくとも10年以上は経っていると思う。
植物が道路へと侵食しており、月日の流れを感じさせる
植物が道路へと侵食しており、月日の流れを感じさせる
捨てられたものだろうか、木の枝が積まれていた
捨てられたものだろうか、木の枝が積まれていた
アスファルトの割れ目から植物が顔を出す
アスファルトの割れ目から植物が顔を出す
道路標識も薄汚れ、なんとも切ないたたずまいだ
道路標識も薄汚れ、なんとも切ないたたずまいだ
どうだろう、なかなかしっかり「廃道」しているのではないだろうか。メンテナンスが放棄され、植物に覆われつつあるアスファルト。交通量の多い隣の車道とは隔絶された、枯れた雰囲気が漂う空間である。

おそらくここが繁華街なら、すぐに別の用途として再利用された事だろう。山間でもない、繁華街でもない、郊外ならではの廃道の在り方なのではないかと思う。

探せば出てくる、小さな廃道

先程の廃道の存在を改めて認識して以来、私は他にもそのような場所は無いかと周囲を探索するようになった。その結果、先程まで古いのものとはいかないまでも、いくつかの小さな廃道を発見する事ができたので報告したい。

狙い目はやはり、道路の付け替えである。新しい道路が作られると共に、古い道路が廃道と化すのである。
左の新しい道路が敷かれ、右の路地が廃された
左の新しい道路が敷かれ、右の路地が廃された
真っ直ぐ通されていた路地は、新道で分断されている
真っ直ぐ通されていた路地は、新道で分断されている
路地には砂利が落ち、何とも哀れな風貌だ
路地には砂利が落ち、何とも哀れな風貌だ
路地の脇にあった何かの管。錆の堆積が歴史を感じさせる
路地の脇にあった何かの管。錆の堆積が歴史を感じさせる
路地の先は大通りだが、わざわざ通行止めにされていた
路地の先は大通りだが、わざわざ通行止めにされていた
この路地は完全な廃道というワケではなく、路地沿いに存在する家屋の生活道路として使われているようである。しかし、優先されているのはあくまで新道であり、その扱いはかなりぞんざいだ。

おそらくこの路地は、近いうちに区画整理され姿を消す事になるのだろう。路地の中央に通された排水溝や、その脇に設けられていた管などの構造物を眺めつつ、路地が担ってきた役目に思いを馳せる。

断片化された道路の痕跡をたどる

さらに探索を続けていると、新しく敷かれた幅の広い道路の脇に、かつての道路の跡らしきアスファルトが部分的に残っていた。

相当な破壊を受けており少々痛々しいが、これもまた、廃道といえば廃道だろう。
新しく通された幅の広い車道の横にそれはあった
新しく通された幅の広い車道の横にそれはあった
かつての道路は現在より少し高い位置にあったようだ
かつての道路は現在より少し高い位置にあったようだ
かろうじてアスファルトが残っている
かろうじてアスファルトが残っている
道路下の黒土の断面から、植物が芽吹いていた
道路下の黒土の断面から、植物が芽吹いていた
廃道というよりは、もはやアスファルトの断片と言うべきなのかもしれないが、しかしまぁ、その痕跡を追って行くのもなかなか楽しいものである。

場所によっては道路がスパンと切られていてその断面が見られ、黒土に砂利を敷き、その上にアスファルトで舗装するという、道路の構造が良く分かる。

しかも良く見ると、黒土の部分から植物が芽吹いているではないか。まさか道路が舗装された当時からずっと種の状態で眠っており、道路が破壊された今になってようやく日の目を見たという事だろうか。いやはや、泣ける話である。
お、あの奥に見えるのも道路跡じゃないか?
お、あの奥に見えるのも道路跡じゃないか?
うん、やっぱり、そうだ。アスファルトが残っていた
うん、やっぱり、そうだ。アスファルトが残っていた
断面が崩壊しつつあり、アスファルトもたわんでいる
断面が崩壊しつつあり、アスファルトもたわんでいる
亀裂からは植物がにょきにょきもさもさ
亀裂からは植物がにょきにょきもさもさ
アスファルトを破って生えている木もあった。凄い力だ
アスファルトを破って生えている木もあった。凄い力だ
これらの周囲は次々と更地に変えられており、この道路片というべきアスファルトも近いうちに撤去される事だろう。

道路を作っては壊し、作っては壊し、その狭間にご近所廃道は生まれるのである。

期間限定の暫定道路が廃道化していた

最後に見つけたのは、これまでの道路とはやや事情を異にする特殊な廃道である。

以前からその土地に存在していた道路が廃道となったのではなく、道路を改修する際の迂回路として敷かれた暫定道路が、その役目を終えて廃道となったものだ。
道路が改修され新しくなったかと思えば――
道路が改修され新しくなったかと思えば――
その裏に迂回用の暫定道路がまだ残っていた
その裏に迂回用の暫定道路がまだ残っていた
すっぱり切られたアスファルトが切ない
すっぱり切られたアスファルトが切ない
道の先には橋が架けられていたはずだが――
道の先には橋が架けられていたはずだが――
既に取り払われ、土止めがされていた
既に取り払われ、土止めがされていた
この辺り一帯は遊水地として整備が進められており、その為の排水施設を道路の下に築く必要があったらしく、最近、道路ごと作り直す工事が行われたようだ。

この廃道はその工事期間中のみに使われた暫定道路というワケだ。確かに、廃道に描かれた白線はテキトウな感じだし、寿命の身近い道路だったという事が良く分かる。

これもまぁ、遊水地の整備に伴い近いうちに取り払われる事だろう。ご近所廃道の運命とは、実に儚いものである。

生まれては消えるご近所廃道

今回ご紹介したご近所廃道は、割と近い範囲内で見つけたものである。ちょっと探しただけでもこれほどのご近所廃道を見つける事ができたという事は、それだけ私の周りで整備事業や道路の付け替えが盛んという事なのだろう。

ご近所廃道は数あれど、しかしそのほとんどが近いうちに撤去されると思われるものばかりだ。見られる期間こそ短いが、だからこそ探すのが楽しいともいえる。ご近所廃道の出現や消滅に一喜一憂しながら、近所を散歩してみるのはいかがだろう。
そうしている間にも、また新たなご近所廃道が生まれていた
そうしている間にも、また新たなご近所廃道が生まれていた
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