特集 2013年5月19日

サントス散歩 乗り物がいっぱい編

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誰にでもお気に入りの場所、とっておきの場所というものがある。それは好きな人が出来たら連れて行きたい場所であったり、逆に誰にも教えたくない自分だけの秘密の場所であったり。

今回のサントス散歩は、そんな「誰かのお気に入りの場所」を訪れてみることにした。「誰か」というのは、サントス散歩のコーディネイターであるミスター林だ。ミスター林のお気に入りの場所。それは、色々な乗り物が見られる絶景スポットらしい。
シンプル・イズ・ベストをモットーに日々精進中。旅先では早起きをして、その街のゴミ収集の様子を観察するのが好き。


前の記事:サントス散歩 第2回 ~高崎編~

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色々な乗り物が見られる場所

品川駅から海に向かって歩くこと約10分。ミスター林のお気に入りスポットに到着した。目の前には東京港へと続く運河が広がっている。この場所で、色々な乗り物が見られるという。

果たして何種類の乗り物を見ることが出来るのだろうか?
ミスター林のお気に入りスポットにて
ミスター林のお気に入りスポットにて
到着してすぐ、ミスター林が「ほら、新幹線」と大きな声をあげ、運河の向こうを指差した。
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.1 新幹線
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.1 新幹線
それは、車両基地へと続く引き込み線を走る新幹線だった。新幹線といえば、時速320kmで走る高速鉄道であるが、この引き込み線を走る新幹線のスピードは緩やかだった。仕事を終えた新幹線がゆっくりと車両基地へと向かっている。それはまるで大一番でのピッチングを終えた投手が、グラウンドの隅でキャッチボールをして肩をクールダウンさせている姿のようであった。

ありがとうダルビッシュ!

私が心の中で新幹線に声をかけていると、ミスター林が次の乗り物の登場を教えてくれた。
ほら、あそこ
ほら、あそこ
ミスター林が指差す方向を見てみるが良く分からない。どこですか? と尋ねると「ゆりかもめが、ほら」とミスター林。私の覆面は視界が狭いため、ゆりかもめを目視することが出来ない。

そんな私にしびれを切らせたミスター林が、デジタルカメラのズーム機能でゆりかもめを撮影して見せてくれた。
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.2 ゆりかもめ
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.2 ゆりかもめ
確かにゆりかもめである。新幹線の奥を走る新交通ゆりかもめの姿を確認出来た(デジカメのプレビューモードで)。

新幹線、ゆりかもめ、と立て続けに2つの乗り物を見ることが出来た。他にどんな乗り物がやって来るのだろう?

しばらく待ってみるが、特にこれといった動きがない。

「あとはどんな乗り物が?」

ミスター林に聞くと、目の前の運河を指差して「ほら、舟も」と答えた。
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.3 舟
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.3 舟
確かに舟はある。ここに来た時からそれは知っていた。しかし、どの舟も動かない。

「運が良いと、動いてる舟が見られるんですけどね」

とミスター林がうつむいた。 今日は運が悪かったのだろう。まったく動く気配がない。

「風の向きによっては、この辺りの上空を飛行機が飛ぶんですけど…」

今日は風向きが悪かったのだろう。上空には雲一つない青空が広がるばかりで、飛行機の姿は一切ない。

それでも、舟を見ることは出来た。水の上に浮いている舟を見られただけでも良かったと思う。

「あっち側に行ってみましょう」

ミスター林は運河に背を向けて歩き出した。あっち側に行くと、また別の乗り物が見られるのだろうか?
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.4 モノレール
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.4 モノレール
モノレールがやって来た! 先ほどのゆりかもめと似ているが、ゆりかもめは新交通システムだからモノレールとは別物だ。見事、4つ目の乗り物をゲット。ミスター林の絶景スポットが、徐々に本領を発揮し始めた。

通り過ぎるモノレールの後ろ姿から視線を落としていくと、橋桁の看板が目に入った。
あぶないから やめましょう!
あぶないから やめましょう!
モノレールに花火を向けたり、石やボールを投げるのはやめましょう、と書いてある。当たり前だ。そんな危険な行為は決して許されることではない。しかし、こうして看板を掲げているということは、そういうけしからん輩がいるということである。

橋桁の下の石を集めて、どこか違う場所に移動させなくては。近くに石が落ちているからいけないのだ!

気がついたら私は橋桁の下の石を拾っていた。私の中の正義感がそうさせたのだ。
石があるからいけないんだ!
石があるからいけないんだ!
無心で石を集めているうち、グニョっとした感触の石にあたった。よく見るとそれは、石ではなく犬の糞だった。

オッケー。

石を集めるのをやめて、本題に戻ろう。

色々な乗り物って、他にはどんな?

乗れる乗り物もある

ミスター林がモノレールのすぐ横にある公園に入っていく。
公園の中からだと見られる乗り物があるのだろうか?
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.5 すべり台
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.5 すべり台
5つ目の乗り物、それは滑り台だった。
新幹線、ゆりかもめ、舟、モノレールと続いて、すべり台。これは何かの冗談だろうか?

「すべり台だって立派な乗り物ですからね」

と、真剣な表情でミスター林。どうやら冗談ではないらしい。

オッケー。

そうと決まれば乗ってみようじゃないか。考えてみれば、今までは見ることしか出来なかったのだ。乗ることが出来るなんて幸せではないか。

普通に滑るのでは面白くない。腹這いになって頭から滑り落ちてみよう。そう、まるで空を飛ぶヒーローのような姿で。
滑り終えた私
滑り終えた私
両手を前に突き出してウルトラマンのように滑走したのだが、ミスター林のカメラは滑り終えて私が身を起こしている姿をとらえていた。どうやら私のウルトラマン姿は幻に終わったようだ。

続いてミスター林から紹介された乗り物がこれだ。
へいきん台
へいきん台
へいきん台。

その乗り方には、初級、中級、上級と3段階のレベルがあるらしい。もちろん私は上級レベルの「後ろ歩き」でへいきん台に挑む。
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.6 へいきん台
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.6 へいきん台
へいきん台の幅は10センチもない
へいきん台の幅は10センチもない
慎重に進むがバランスが崩れる
慎重に進むがバランスが崩れる
残念、ゲームオーバー
残念、ゲームオーバー
クランク状に設置されたへいきん台の、3分の1しか進めなかった。いきなり上級レベルに挑戦したのが間違いだったようだ。ココ壱のカレーだって、辛さレベル6以上を注文するには、それまでに辛さレベル5を完食していないといけないのだ。

参考までに、ココ壱の辛さの表をここに抜粋しておこう。
お好みの辛さをお選びください
お好みの辛さをお選びください
すべり台にへいきん台。どちらも楽しくライドさせてもらったが、お遊びはここまでにしよう。ミスター林が言う「色々な乗り物」は、これで終わりなのか? 私はもっと他の乗り物を見たい。できればエンジンのついたやつを。

そんな私の不満を感じ取ったのだろう。ミスター林から「場所を移動しましょう」と提案があった。
次の場所へ移動を始めたミスター林
次の場所へ移動を始めたミスター林
立ち止まるミスター林
立ち止まるミスター林
手をあげるミスター林
手をあげるミスター林
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.7 タクシー
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.7 タクシー
次の場所への移動手段として、ミスター林はタクシーを選択した。歩くには少し遠いという。

ミスター林に続いて、私もタクシーに乗り込んだ。ミスター林が運転手さんに行き先を告げている間、私は考えていた。

この企画のタイトルは「サントス散歩」である。散歩と言っておきながらタクシーで移動。これは正義なのか悪なのか。私には良く分からない。ただそれよりも、運転手さんが自分のスマホを会計皿の上で充電していたのが気にかかった。
会計皿の上で自分のスマホを充電していた
会計皿の上で自分のスマホを充電していた
あそこにスマホがあったのでは料金の支払い時に困ってしまうだろう。目的地に着くまでずっとそのことを気にしていたが、会計時のお金のやり取りは手渡しだった。運転手さんにとって、あれは会計皿ではなくスマホ置場だったのだ。

そして我々は、ミスター林の絶景スポットその2に降り立った。
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ドクターイエロー登場

ミスター林の絶景スポットその2は、新幹線の車両基地であった。さきほど運河越しに見た新幹線はここに来ていたのだ。
車両基地に到着
車両基地に到着
なんてロマンチックな演出なんだろう。

運河越しに車両基地へと向かう新幹線を見せておいて、すべり台などで遊ばせてすっかり新幹線のことを忘れさせた後、タクシーで移動するとそこには先ほどの新幹線が停まっている。

これは私の想像であるが、ミスター林はこのデートコースでいくつもの恋愛を成就させてきたに違いない。そうえいば、タクシーを止める姿がいつもより男らしかった。

すると突然、ミスター林が遠くを指差して叫んだ。

「ドクターイエロー!」
基地から少し顔を出すドクターイエロー
基地から少し顔を出すドクターイエロー
なんと、あのドクターイエローが車庫から少し顔を出しているではないか。見た人は幸せになれる、という伝説を持つあのドクターイエローである。ミスター林の心憎い演出は、ドクターイエローというサプライズまで用意していた。

「恋のない一生は夏のない一年」

サンパウロの友人が良くこう言っていた。確か、スウェーデンのことわざだったと記憶している。ここのところ恋に億病になっていた私に、ミスター林のデートコースが勇気をくれた。

近々、私はこのデートコースに意中の女性を連れて来ることを決めた。

車両基地をもっと探索

ドクターイエローを正面から見るために私たちは高架を渡る。
フェンス越しの
フェンス越しの
ドクターイエロー
ドクターイエロー
フェンスの穴越しではあるが、今度はドクターイエローを正面から拝むことができた。穴越しに幸せのオーラを感じ取れる。

「高架の反対側も見てみましょう」

ミスター林が先を急ぐ。
このサプライズコースは、ドクターイエローだけでは終わらないのか?
反対側へ移動
反対側へ移動
高架の反対側へと渡る間、私たちは更に色々な乗り物を目撃することとなる。
冷凍の
冷凍の
おっぱい
おっぱい
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.9 レーシングカー
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.9 レーシングカー
レーシングカーに乗っているふり
レーシングカーに乗っているふり
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.10 釜寅
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.10 釜寅
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.11 飛行機
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.11 飛行機
念願の飛行機ゲット
念願の飛行機ゲット
交差点を渡る間だけで一気に乗り物の種類が増えた。先ほどのスポットでは風向きの関係で目撃出来なかった飛行機もしっかりゲットした。ここまでで、11種類の乗り物を見ることに成功している。

高架の反対側から見る車両基地では何が待っているのだろう?
フェンスの隙間越しに
フェンスの隙間越しに
フェンスの隙間越しに車両基地を覗くと、なんとそこには…
再びのドクターイエロー
再びのドクターイエロー
再びドクターイエローの登場である。この車両基地に2台ものドクターイエローがいたのだ。これで私の幸せは2倍に増えることが確定した。

先ほどの1台目は顔の部分しか見えなかったが、2台目は車両全体が見えている。チラッと見せておいてから全体を見せる。男心をもて遊ぶかのようなドクターイエローに、私は完全に翻弄されてしまった。

隙間越しにしばらくドクターイエローを眺めていたら、ドクターイエローめがけて近づいてくる新幹線の姿が見えた。
ドクターイエローに危機が近づく
ドクターイエローに危機が近づく
なんてことだ。

せっかく目撃したドクターイエローが正面衝突の危機を迎えている。このままでは私は幸せになれない。
ドクターイエローは
ドクターイエローは
オラが守る
オラが守る
突進する新幹線がバックするように、念を送ってみた。

すると、
奇跡的に危機を回避
奇跡的に危機を回避
私の念が通じたのか、新幹線はドクターイエローの直前で左に折れた。

私が守った2台目のドクターイエローの他に、機関車の姿も確認出来た。
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.12 機関車 EF 65 2074
乗り物いっぱい選手権:エントリーNo.12 機関車 EF 65 2074
機関車
機関車
これで12種類。ミスター林の絶景スポットは、色々な乗り物を見ることができるロマンティックな場所であった。

誰かのお気に入りの場所に案内してもらう。それは、その人の秘密に触れる旅のようでもある。今回、ミスター林のお気に入りスポットに行き、ミスター林のロマンティックな一面を垣間見ることができた。

また次回、誰かのお気に入りスポットを訪れてみるつもりだ。お気に入りスポットをお持ちの方は、是非ご一報を。
ドクターイエローに幸福祈願
ドクターイエローに幸福祈願
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