フェティッシュの火曜日 2013年5月21日
 

今の子どもは秘密基地をどこに作るのか

秘密基地を作れるような場所は、今も残っているのだろうか
秘密基地を作れるような場所は、今も残っているのだろうか
子どもの頃、秘密基地を作った事がある。ダンボールを用いて粗末な小屋を林の中に設え、ジャンプなんざを持ち込んで日が暮れるまで過ごしたものだ。

それは大人から隔絶された子どもだけの理想郷であり、また親から独立する為の精神的な砦の役割を果たしていたように思う。

最近、家の周囲を散歩していてふと思った。今の子どもたちは、どのような場所に秘密基地を作るのだろう。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。

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かつて秘密基地を作った雑木林

私が子どもの頃に秘密基地を作った場所は、神社の周囲に広がる雑木林である。そこそこの規模がある鬱蒼とした林で、道路からは中の様子がうかがえないようになっていた。秘密基地を作るに最適な場所だったのだ。

その雑木林自体は今も残っているのだが、しかし、私が子どもであった頃とはいささか様子が変わったようだ。
どこにでもありそうな小さな神社である
どこにでもありそうな小さな神社である
その周囲は鬱蒼とした雑木林で囲まれている――のだが
その周囲は鬱蒼とした雑木林で囲まれている――のだが
あれ? なんか随分明るい雰囲気になっている
あれ? なんか随分明るい雰囲気になっている
間伐の手が入れられ、下草も刈られ、歩道まで整備されていた
間伐の手が入れられ、下草も刈られ、歩道まで整備されていた
当時は林全体が植物によって覆われており、足を踏み入れるのさえ一苦労。草いきれの中をかき分けながら進んだものだ。しかし現在は整備がなされ、誰もが散策できるようになっていた。
「キツツキの森」と、親しみやすい名前も付けられている
「キツツキの森」と、親しみやすい名前も付けられている
間伐材を利用したベンチのようなものも置かれているし
間伐材を利用したベンチのようなものも置かれているし
見通しが利くので道路からも林の様子がうかがえる
見通しが利くので道路からも林の様子がうかがえる
秘密基地を作る場所の最低条件として、兎にも角にも人の目に触れてはならない。大人の干渉を避ける為の秘密基地なのだから、大人に見つかってはダメなのだ。

植物が生い茂っていた昔ならともかく、現在はこの林に秘密基地を作るのはムリだろう。下草が刈られていて見通しが良く、またいつ誰が入ってくるか分からない状態では(実際、散歩中のお婆さんと出くわした)、基地を作ったとしてもすぐにバレてしまう。

まぁ、雑木林の管理としては、何もせずにほっぽっておくより、このように手を入れて利用できる形にする方が適切だろう。ただ、子どもの冒険の場としては死に体である。

公園の遊具に籠っていた小学校時代

秘密基地とは少し趣が異なるが、公園の遊具内にもよく籠っていた。とある公園にはアスレチックのような木製の遊具が設置されており、その内部に数人入れるくらいの空間が存在するのだ。

入口が狭く准密閉空間のようになっており、そこに友達と籠ってちょっとした秘密基地のように使っていた。あの公園は、今ではどうなっているのだろう。
気になったので、その公園に来てみたが――あれ?
気になったので、その公園に来てみたが――あれ?
この辺りにアスレチックがあったはずなのだが
この辺りにアスレチックがあったはずなのだが
なんと、私が籠っていた思い出の遊具は、綺麗さっぱりなくなってしまっていた。その跡地に残るのは、シンプルなブランコと滑り台だけである。

木造だったので痛んで撤去したのだろうか。あるいは最近よくある『危険だから』という事だろうか。理由は分からないが、まぁ、ともかく、無くなっていた。

他にもいくつか大小の公園を周ってみたのだが、やはりどこも籠る事ができるタイプの遊具は見られなくなっていた。アスレチックのような遊具であっても、必ず外側から中の様子が確認できる、シースルーなタイプのみである。

子どもが大人の目から逃れて籠城できる場所は、もはや公園には存在しないようだ。

閑話休題、防空壕を探そう

秘密基地を作れそうな場所を探しつつうろうろしていると、そういえば子どもの頃、防空壕を見に行ったなぁと思い出した。

私の家の近所には二つの防空壕があり、子どもの冒険心を惹きつけたものだ。私はビビリだったので入口付近をうろうろするだけだったが、勇気のある友達は懐中電灯を手に内部へと進み、やれ意外と奥行きが狭かっただの、ゲジゲジがいて気持ち悪かっただのと感想を述べていた。

その後、安全の為に入口が封鎖されたと聞いてはいたが、さすがに無くなっている事はないだろう。ちょっと見に行ってみようじゃないか。
この坂沿いの斜面に防空壕は存在した
この坂沿いの斜面に防空壕は存在した
あれ? 確かここにあったはずなのだが……
あれ? 確かここにあったはずなのだが……
そこには僅かな窪みがあるだけで、防空壕は消滅していた
そこには僅かな窪みがあるだけで、防空壕は消滅していた
うーむ、既に防空壕まで無くなっているとは。最近になってこの斜面の上部に宅地が整備された事もあり、おそらくはそれに先立ち埋められたのだろう。

気を取り直して、もう一つの防空壕に行ってみよう。今度は川沿いの目立たない位置なので、今もなお残っている可能性が高い。
この川沿いの斜面にも防空壕があったはずだ
この川沿いの斜面にも防空壕があったはずだ
対岸からではちょっと確認できないので、下りてみた
対岸からではちょっと確認できないので、下りてみた
踏み分けられた後がうっすら残る
踏み分けられた後がうっすら残る
これ……防空壕の跡だろうか
これ……防空壕の跡だろうか
いやはや、こちらも残っていなかった。正確な位置を覚えていたワケではないが、多分この人工的に崩されたような場所が防空壕の跡なのだろう。川の拡張工事の際に重機か何かで防空壕ごとえぐり取ったのだと思う。

ただ、この周囲には草が踏み分けられた跡が残っており、今もなお子どもたちがこの辺りを探検しているのだろうなという感じはした。防空壕こそ無くなったものの、この斜面が持つダンジョンとしての機能は健在のようで、少しほっとする。

小学校裏の森は魔窟だった

さて、秘密基地に話を戻そう。正直言うと、私の身の回りでは、秘密基地が作れそうな場所はだいぶ限られてくる。先の神社の社叢がダメとなると、残すところはもはや小学校裏の森しかない。

ただ、この森はあまりに広大すぎるので(キジが飛んでいるのを見た事もある)、私が小学生だった頃はむしろ避けていた。生徒たちの間では、森の中には怖いおじさんが住む家があり、森に足を踏み入れると追いかけ回されるという、都市伝説めいた噂までまことしやかに語られていた程だ。
小学校の裏に広がる広大な森
小学校の裏に広がる広大な森
とまぁ、そんなある種のいわく付きな森だっただけに、秘密基地を作ろうとは思いもしなかった。しかし、今では他に場所が無いのだからしょうがない。この森の中に秘密基地の適地は無いか、探してみようじゃないか。

この森の中央には細い路地が東西に通っており、確かそこからなら森の中に入る事ができたと思う。というワケで向かってみたのだが――
あれ? なんか様子がおかしい
あれ? なんか様子がおかしい
路地の左右にフェンスが張られ、森に入れなくなっていた
路地の左右にフェンスが張られ、森に入れなくなっていた
なんと、この路地からは森の中にアクセスできないようになっていた。どうやら不法投棄が多いらしく、フェンスを張らざるを得なかったようである。

仕方ないので別の場所から森へと入る道を探そうと森の北側をうろうろしてみたのだが、やはりこの森も昔とはだいぶ変わったようだ。
森の環境を活かした霊園が作られていた
森の環境を活かした霊園が作られていた
北側の森は拓かれ、企業の建物が並ぶ
北側の森は拓かれ、企業の建物が並ぶ
その企業の横には、森の木々を活かした公園があった
その企業の横には、森の木々を活かした公園があった
この公園は、隣に敷地を構える企業が整備したもののようだ。森の木々をあえて伐採せずに公園とし、社会貢献の一つとして開放しているのである。これも現代における森の在り方の一つと言えるのだろう。

ようやく見つけた、秘密基地が作れそうな場所

かつては畏怖の対象でさえあった小学校裏の森も、今ではだいぶ様変わりした。しかし、森の南側は相変わらず手つかずのようで、なかなか良い感じだ。

そこは適度に人が踏み入れた形跡がありながら、植物が生命溢れんばかりに茂っていて死角も多い。気軽な散策もできるし、ちょっとマジな探検も楽しめる。まさに小学生の心鷲掴みな雑木林である。
この細い路地も昔から変わっていない
この細い路地も昔から変わっていない
この中がうかがえない感じが秘密基地に最適だろう
この中がうかがえない感じが秘密基地に最適だろう
森の内部へ、ちょっとした道が通じていた
森の内部へ、ちょっとした道が通じていた
この森はそれなりに立ち入る人がいるようで、踏み跡もしっかり残されていた。

しかし秘密基地を作るにはそれではダメだ。もっと奥へ、人目に付かない所へ進まなければならないだろう。
ここなら基地が作れそうだが――いや、かなり目立つか
ここなら基地が作れそうだが――いや、かなり目立つか
打ち捨てられたタイヤの中にはアレな雑誌が
打ち捨てられたタイヤの中にはアレな雑誌が
ふむ、基地が作られたという形跡は無いが、この森が子どもたちの探検の場になっている可能性はやはり高いと見る。

特にこの雑誌。わざわざタイヤの中にあるという事は、ある種の宝物として共有されているのではないだろうか。「森のタイヤにエロ本があるぜー」とか、語られているかもしれない。
さらに進むと、おや、焼却炉が
さらに進むと、おや、焼却炉が
森の中にやや開けた場所があり、そこにはトタン小屋と焼却炉があった。周囲には小さな畑が作られており、白髪のおじいさんが一人で農作業をしていた。

ふと、先程の噂話を思い出した。当時がおじさんなら、今ではおじいさんになっているだろう。つじつまが合う。おぉ、まさかあの話が本当だったとは。20年越しに知った真実である。

さて、引き続き秘密基地を作れそうな場所を探そう。今度は足跡がくっきりついた主要路ではなく、脇道に反れるのだ。
この奥とかはどうだろう
この奥とかはどうだろう
屈まないと通れない程に草木が茂り、良い感じだ
屈まないと通れない程に草木が茂り、良い感じだ
やや開けた場所に出た。ここなら秘密基地作りに最適だろう
やや開けた場所に出た。ここなら秘密基地作りに最適だろう
人が通る可能性のある主要路から大きく外れ、また四方を植物によって覆われた見通しの利かないこのスペースは、まさに基地作りの適地と言えるだろう。

しかしこの場所にも秘密基地が作られたような形跡は無く、少々残念であった。こんな素晴らしい場所をほったらかしにしているなんて、もったいないぞ。

そもそも、今の子は秘密基地を作らないのか

私が子どもの頃、秘密基地は憧れでありロマンであった。それを自分たちで築く事で憧れを成し遂げた達成感を持ち、また自立心の芽生えにも役立ったと思う。

現在は環境も変わったし、子どもたちの文化も変わった。秘密基地を作ろうと思う子どもは少ないか、あるいは皆無なのかもしれない。実際に意見を伺いたい所だが、私の周囲にそのくらいの子どもがいないのが残念だ。

しかしまぁ、草地の踏み跡が見られたように、子どもたちの探検ごっこは続いているようだし、秘密基地も形を変えただけで、同じような機能の文化は存続しているのかもしれないなぁと思う今日この頃である。
森の北側には前回特集した「ご近所廃道」も見られた
森の北側には前回特集した「ご近所廃道」も見られた
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