特集 2013年6月12日

マニアすぎる書店「のりもの倶楽部」で自分にピッタリの本を探す

飛行機、鉄道、マニアの聖地
飛行機、鉄道、マニアの聖地
市ヶ谷に「のりもの倶楽部」という書店がある。

実はこの書店、先日「シチューをかき回しながら市中引き回しルートをたどる」というチャレンジ(自分の中では)をやったときに、ぐうぜん見つけた。

そのときはちょっと立ち寄ったのみで終わってしまったが「のりもの」と銘打ってるだけあり、店内で販売している書籍やグッズなどはとても濃度の濃いものばかりで、いずれ正式に取材せねばなるまいと思ったので、このたび取材させてもらった。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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しかも漫画家さんと一緒だ

しかも今回のこの取材、漫画家カラスヤサトシさんが秋田書店の「もっと!」に連載中の「カラスヤポータルZ」との共同取材ということになった。
右から、秋田書店・駒林さん、カラスヤさん、西村、のりもの倶楽部店長・宇山さん、写真に写っていないが、秋田書店の滝川さん、デイリーポータルZ編集部古賀さんもいる
右から、秋田書店・駒林さん、カラスヤさん、西村、のりもの倶楽部店長・宇山さん、写真に写っていないが、秋田書店の滝川さん、デイリーポータルZ編集部古賀さんもいる
当日は、カラスヤさんのほか、秋田書店から駒林さん、滝川さん、そしてデイリーポータルZ編集部からは古賀さんが参加してくれた。

ちなみに、今回取材同行する人たちに、鉄道や旅客機がどの程度好きなのか? を事前に聞いてみた。
西村
愛情/知識
鉄道 90/40
飛行機70/1

古賀
愛情/知識
鉄道 30/20
飛行機60/20

カラスヤ
愛情/知識
鉄道 80/20
飛行機50/5





駒林さん
愛情/知識
鉄道 100/40
飛行機50/30

滝川さん
愛情/知識
鉄道 20/20
飛行機80/10
いずれも100点満点でいくらぐらいなのかを自己申告していただいた。

やはり「好きだけど、そんなに詳しくはない」というスタンスは共通している。そんな中、駒林さんの「鉄道への愛情100」というのはすごい。

鉄道のどんなところが好きなんですか? と聞いてみたところ「列車がすれ違うところが好きなんです」とのこと。
こう、すれ違うのがいいんですよ
こう、すれ違うのがいいんですよ
あ、分かります。上りの電車と下りの電車がぐぉーって行き交ってるときに島式ホームの端っこに立ってるとスリルあって面白いですよね、と返したら「それは怖いからダメです」という。

すれ違いといっても、そういうところじゃなくて、カーブしながらすれ違うところとか、総武線と中央線の立体交差などがグッとくるらしい。

細分化する鉄道趣味の一端を垣間見た思いがする。

ニッチすぎる品揃えにさっそく釘付け

店に到着するやいなや、一同、そのマニアックな品揃えに釘付けになってしまう。
!
なぜなら、入り口を入ったとろこにいきなり平積みにされていた本がこれだ。
農家の次男が兵役逃れに一気飲みしそうなぐらい濃い
農家の次男が兵役逃れに一気飲みしそうなぐらい濃い
どちらも「誰が読むんだろう」という疑問がわく。
とくに「買うべき航空機とは?」に関しては航空会社の社長ぐらいしか需要がないような気がする。
とすると、本当にこの本が必要なひとは日本に10人いるかいないかぐらいだろう。
これほどニッチな市場を狙った書籍はあまり見たことない。
わはー、中身は難しすぎて卒倒しそう
わはー、中身は難しすぎて卒倒しそう
ちなみに「のりもの勝席ガイド」の中身はこんな感じだ。
ただひたすら座席表が並ぶ
ただひたすら座席表が並ぶ
全ページ、旅客機、列車、バスの座席表がただひたすら掲載されており、どの席が景色よいとか足下が広いといったようなことが紹介されている。
こういう書籍が刊行されているという事自体が、日本の出版界の多様性であり奥深さでもある。実に素晴らしいと思う。

まだまだある、そうきたか~となる書籍

学研のひみつシリーズでありそう
学研のひみつシリーズでありそう
本棚に「自動改札のひみつ」という本があった。
最近の学研の「◯◯のひみつ」にずいぶん変わったものが多いというのは以前取材したことがあるのだけど(「学研の「◯◯のひみつ」が超進化してる」)さすがに自動改札は学研の方にはなかった。
こっそり教えてくれるというなら聞きたくなるのが人情ってもん
こっそり教えてくれるというなら聞きたくなるのが人情ってもん
えーと、それは切符を「受け取る」から?
えーと、それは切符を「受け取る」から?
第一章の冒頭でいきなり「自動改札は野球で言えばキャッチャー」ときた。こっそり教えてくれるといったひみつがこれ。……というわけではないと思うけど、若干分かりにくい見出しではある。

専門書の奥深い世界

ヒヤリハット事例
ヒヤリハット事例
続いて気になったのは「空中衝突の防止」。思わず「危ない!」と叫びそうになってしまう表紙がたまらない。
がっぷり四つで組み合うプロペラ機
がっぷり四つで組み合うプロペラ機
もちろん、パイロット向けの専門書であるため、内容はちんぷんかんぷんである。

書籍だけではない

この「のりもの倶楽部」書籍だけではない。DVDやCDなどの映像や音の商品も取り扱っている。
ずらりと並ぶ映像商品
ずらりと並ぶ映像商品
こういう運転席展望モノはまあまだ分かると思う
こういう運転席展望モノはまあまだ分かると思う
もちろん旅客機の操縦席展望もある
もちろん旅客機の操縦席展望もある
景色ないよね、地下鉄って
景色ないよね、地下鉄って
展望モノの映像作品は、地下鉄まである。もちろん地下鉄の展望は、ほぼすべてトンネルの中の映像だ。鉄道趣味は底なし沼である。
過去、VHSで発売されていた展望ビデオシリーズのDVD復刻版
過去、VHSで発売されていた展望ビデオシリーズのDVD復刻版
裏に萌ポイントが書いてあった
裏に萌ポイントが書いてあった
過去に発売されたビデオシリーズの復刻版も売られている。

裏には「落ち葉で列車がスリップし急勾配を苦しんで登りきる映像です」と丁寧に萌ポイントが解説してあり、至れり尽くせりである。

かなりハードコアなCD

もちろんDVDだけではないCDも取り扱っている。
走行音がデカイ車両として有名な8500系のCD
走行音がデカイ車両として有名な8500系のCD
JR東日本の駅発車メロディ集
JR東日本の駅発車メロディ集
今「鉄道好きなひとは、電車の走行音や駅の発車メロディなんかをiPodできいてるんですね」と他人ごとみたいに紹介しようとしたが、白状すると、駅発車メロディのCDは発売されたときに買ったので持っている。
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グッズも充実

ところで「のりもの倶楽部」には旅客機関係のグッズが充実している。
店長の宇山さんの話では、鉄道グッズの店は都内にいくつもあるので「のりもの倶楽部」では航空機のグッズの充実に力を入れているそうだ。
飛行機の模型。高いものだと十数万もするものも
飛行機の模型。高いものだと十数万もするものも
機内食のトレイ
機内食のトレイ
航空自衛隊のワッペン
航空自衛隊のワッペン
JAL、ANAにならんで人気のあるパンナム
JAL、ANAにならんで人気のあるパンナム
この紙の山はなにか……
この紙の山はなにか……
飛行機の座席の前のポケットに入ってるやつ
飛行機の座席の前のポケットに入ってるやつ

飛行機のグッズを専門的に取り扱ってる店は少ないため、飛行機好きの有名人もけっこうくるらしい。

それぞれ選んだ本はなにか?

ここで、それぞれ誰が何を買ったのか見ていきたい。まずはカラスヤさん。
鉄道模型、バス、観覧車……観覧車?
鉄道模型、バス、観覧車……観覧車?
右の本、光の具合で見難いが、観覧車の本だ。
確かに「乗り物」だ
確かに「乗り物」だ
日本各地の観覧車を紹介した本。

観覧車、確かに「のりもの」ではある。ほう、なるほど、そういう解釈できたか。一休さんのとんちのようだ。
タイ航空のステッカー、新幹線のスプーンなど
タイ航空のステッカー、新幹線のスプーンなど
鉄道よりも飛行機のほうが好きだという秋田書店の滝川さんは、タイ航空のステッカーなどを購入。タイ航空のファンだそうだ。
離陸や着陸の音が鳴るフィギュアだった
離陸や着陸の音が鳴るフィギュアだった
滝川さんは店内を見学中、飛行機の模型にずいぶん執心していた。
しかし、フィギアや模型の類は、買い始めるときりが無いので自制して買わないことにしているのだそうだ。
こうなるとタバコやコーヒーのような常習性のある嗜好品に近くなってくる。

続いては列車のすれ違いがグッとくるという、秋田書店の駒林さん。
東急で決めてきた
東急で決めてきた
「東急電鉄の世界」と「東急電鉄のひみつ」というわかりやすいラインナップだ。もう、なにもいうことはない。

さて、デイリーポータルZ編集部、古賀さんの購入したものは……。
ボーイングのステッカー
ボーイングのステッカー
「ボーイングじゃなきゃ行かない!」
「ボーイングじゃなきゃ行かない!」
「ボーイングじゃなきゃ行かない!」という、ちょっとかわいらしい駄々。

そしてぼくが購入したものはこちら。
「ボーイング前から欲しかったんだよねー行かない!」
前から欲しかったんだよねー
日本全国の珍しい駅が掲載されている「珍駅巡礼」。満面の笑みでその様子を察していただければ幸いです。

コミュニケーションの潤滑油としての鉄道

カラスヤさんを含め、秋田書店の方々とは初対面であったにもかかわらず、のりものについて話が盛り上がった。

改めて考えてみると、他愛もない話の定番といえば天気の話か「電車はなにを使ってるの?」といったような話が多いのではないだろうか?

コミュニケーションの潤滑油としての鉄道。あんがいいけるのではないかと思う。


編集部より:この取材の様子はマンガ誌「もっと!」vol.3(2013年6月17日発売)の「カラスヤポータルZ」でもお伝えします。 vol.1の様子も試し読み配信中です!

取材協力
のりもの倶楽部
〒162-8616 東京都新宿区市ヶ谷本村町2-3 1F
http://www.norimono.cc/
営業時間11:00~20:00 年中無休(年末年始を除く)
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