特集 2013年7月9日

ペッツを悪徳商人にしてみる

これにて、よしなにお取り計らいを…。
これにて、よしなにお取り計らいを…。
夏は駄菓子の季節だ。夏休み=買い食い=近所の商店=駄菓子、という思い出の連鎖でもって、駄菓子の季節ということにさせていただく。

そしてこれは駄菓子と言っていいのかわからないが、子供のころよく買ってたのが「ペッツ」。夏ということで唐突にこの菓子を思い出したのだが、これ、非常に改造し甲斐があるのではないか。

清涼菓子の類であるペッツを、暑苦しくチューンナップしてみたい。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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12 Pezs

コンビニ、スーパー、袋菓子専門店。子供の頃とは出歩く範囲が違うからだろうか、普段自分が買い物にいく範囲では「ペッツ」を見つけられなかった。

そこは大人である。ネットでまとめ買いをするのである。そしてさすがネット、お店のサイトでは「1ダースより!(絵柄は選べません)」と来た。1ダースまとめ買い…かぁ。それでもいい、久々のペッツを堪能したい。
無慈悲な「ペッツ12個入り」が届く。
無慈悲な「ペッツ12個入り」が届く。
ヘッドが「頭」じゃないのもある!(日本語おかしい)
ヘッドが「頭」じゃないのもある!(日本語おかしい)
ペッツが街で見つけられなかったので、もうあれは過去のお菓子なのか、とあきらめるところだった。だが調べると、今もキャラクターものなどじゃんじゃんラインナップが増えており、コレクターも世界中に存在するようだ。失礼しました。

それにしても、ヘッド(ペッツキャンディが出てくるところ)が無生物のもの(上写真の下段、ハート型やトラックの)は、自分の現役ペッツ時代(つまり子供の頃)にはあまりみたことがなかった。

トラックやハートオブジェからキャンディがにゅっと出てくるとは、なんてシュールなんだ!と思いかけたが、キャラクターの顔=正確には頚部のど真ん中から繰り出してくるほうがよほどシュールなんじゃないか。
ここでペッツのおさらいです。胴体にキャンディを充填します(ホチキスの針の要領)。
ここでペッツのおさらいです。胴体にキャンディを充填します(ホチキスの針の要領)。
セットしたら、こうやってヘッドをのけぞらせるとキャンディがにゅっと出るぞ。
セットしたら、こうやってヘッドをのけぞらせるとキャンディがにゅっと出るぞ。
このキャンディが、ある日「小判」に見えたのだ。さあ改造である。小判といえば、そう、時代劇に出てくる悪徳商人だ。悪代官と密談の際、フトコロから「これは山吹色の菓子でございます」などと言いながら、わいろである小判の山を出してくるアレである。

では、なるべく悪徳商人に改造しやすそうなヘッドのものを選ぼう。
やあ、キミにはどいてもらうよ!
やあ、キミにはどいてもらうよ!
ひねったら意外とすんなりとれたミッキー。
ひねったら意外とすんなりとれたミッキー。
ここで、今回の改造の要点を列挙する。

・頭を悪徳商人に

・体には着物を着せる(可能なら羽織も)

・手を前に差し出せられると良い(「このように山吹色の…」と御代官様に差し出すときに)

さあ、書き出してはみたが、お先は真っ暗!全くわからぬ!少しづつ、おっかなびっくり進めていこうぞ。
手の動きの試験。厚紙でプロトタイプを作る。
手の動きの試験。厚紙でプロトタイプを作る。
「これは山吹色の菓子にて候…オホホ」時の角度を検証。
「これは山吹色の菓子にて候…オホホ」時の角度を検証。
彫塑・彫刻苦手なので、どうリスクを回避するか検討中。ピンポン玉で頭をおおかた作っちゃう、とか。
彫塑・彫刻苦手なので、どうリスクを回避するか検討中。ピンポン玉で頭をおおかた作っちゃう、とか。
検証した割にはいきなり大胆な箇所に刃を入れる私。
検証した割にはいきなり大胆な箇所に刃を入れる私。
ピンポン玉も勘頼みで切開。
ピンポン玉も勘頼みで切開。
うちにあったエポキシパテ登場。A剤(周辺の茶色部分)とB剤(白い中央部分)混ぜれば固まるお手軽さが魅力。
うちにあったエポキシパテ登場。A剤(周辺の茶色部分)とB剤(白い中央部分)混ぜれば固まるお手軽さが魅力。
ピンポン玉とボディ部分を、パテでどうつなげるか…。
ピンポン玉とボディ部分を、パテでどうつなげるか…。
こりゃいかん。

ピンポン玉みたいな中空な物体と、よりどころの少ないボディ部分をつなげるのに、パテを充填するだけではなんだか不安である。妙にヘッドが重くなりそうだし、だいいちパテの無駄遣いだ。

このパテも、家庭用に用途を限って売られているものなので、高いのだ。まあそれは置いといても、うまくいかない気がするのでピンポン玉案は捨てることにした。

パテだけで頭を作っていく。高い、とはいえ、使う分だけ切って練れば10分で固まるパテは大変便利なので、ここでは贅沢に使ってしまおう。
やはり中空にするが、少しづつ外堀を埋めていくので(固まれば木くらいの硬さになる)丈夫にはなるだろう。ハニワ作ってる気分だ。
やはり中空にするが、少しづつ外堀を埋めていくので(固まれば木くらいの硬さになる)丈夫にはなるだろう。ハニワ作ってる気分だ。
頭にパテを盛ってはヤスリで磨く。なぜか15年前に死んだおじいちゃんを思い出した。
頭にパテを盛ってはヤスリで磨く。なぜか15年前に死んだおじいちゃんを思い出した。
しかし「悪徳商人」のイメージとは、何か。

「越後屋」「悪代官」など関連するワードとともに画像検索してみるが、要は「商人」である。着物、プラス羽織くらいが妥当か。着物も派手な橙色なのか、あるいは質の高そうな織物だったり。頭は髷を大仰に結っている、そこはまあ共通かしら、など悩む悩む。結局は自分の記憶によるところが大きいのだ。じゃあ自由にやろう。
ちょんまげの構造にこんなに思いをはせたことは今までなかった。
ちょんまげの構造にこんなに思いをはせたことは今までなかった。
鼻にも能力の限界が。
鼻にも能力の限界が。
慣れない「悪徳商人」の造型は非常に苦労したが、盛る作業は面白かったのでまあよかった。一番苦しいところは越えたので、あとは楽しい服作りと着色だ。

しかしそこにも多少のワナが待っていたのである。この商人風に言えば「飛んで火に入る夏の虫」って奴ですな。
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ちょんまげペッツ

肌色から塗ります。やはり多少黒めにして、悪徳っぷりを出していったほうがいいかしら。
ここ武蔵野地区では悪徳商人作りが最盛期を迎え…。
ここ武蔵野地区では悪徳商人作りが最盛期を迎え…。
頭髪には、無駄に丁寧な筆使いで挑む。
頭髪には、無駄に丁寧な筆使いで挑む。
 お歳は召してたほうがいいかと。
お歳は召してたほうがいいかと。
しかし、未だに表情をどうするか決まってない。やりすぎてもダメだし、中途半端でもアレだしな…最後の最後にとっておこう。先に服を作ってしまおうか。

男性向けの織物のハギレでも買ってこようかと思ったが、加工のしやすさでフェルト布にしてしまった。色はノーブルな薄紫。笑点でいえば円楽カラーに近い。
フェルトを、もう両面テープでくっつけちゃう。
フェルトを、もう両面テープでくっつけちゃう。
服と同時に、腕の上げ下げの構造も考えないといけなかったんだった。だがこれがとても難しい。
まずこのようにやってみたが…。
腕にドリルで穴開け。
腕にドリルで穴開け。
爪楊枝を差し込んで接着。
爪楊枝を差し込んで接着。
商人のアゴに穴を開けて(!)、そこに腕を嵌め込む。
商人のアゴに穴を開けて(!)、そこに腕を嵌め込む。
羽織の袖で目隠し。
羽織の袖で目隠し。
なんだこの不自然な爪楊枝は、ってことになる。
なんだこの不自然な爪楊枝は、ってことになる。
いちおう、首をのけぞるのと同時に手を上に差し出す感じになるのだが、不自然な機構が隠しきれないので嫌だ。

まあ手を連動させなくても、小道具でなんとかそれらしい雰囲気を出せると考え、顔に差した腕を外して穴を埋めて、着物の袖にじかに貼り付けるだけとした。もう最後は両面テープ大活躍ですわ。
直接描くと失敗がこわいので、ラベルシールで目を。でもこれも後でやり直し、結局じかに描き込んだ。手間かけすぎだろう。
直接描くと失敗がこわいので、ラベルシールで目を。でもこれも後でやり直し、結局じかに描き込んだ。手間かけすぎだろう。
これが小道具。黒塗りのお盆である。
これが小道具。黒塗りのお盆である。
最重要小道具、黄金に輝く「小判」。黄色い食紅で着色。
最重要小道具、黄金に輝く「小判」。黄色い食紅で着色。
やっと商人の金策と支度も整ったようだ。明晩、戌の刻に参られよ。供の者は無しじゃ。
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別津(ペッツ)商人

悩んだ末、目は「困ったような、でも何か悪いことを考えていそうな小心者」な気配を目指した。
悩んだ末、目は「困ったような、でも何か悪いことを考えていそうな小心者」な気配を目指した。
後ろからだとからくり人形のごとくに見ゆる。
後ろからだとからくり人形のごとくに見ゆる。
無論、くだんのキャンディ繰り出し機構も生きておる。
用意…
用意…
撃て!
撃て!
乙守(おつのかみ)殿、これにてよしなに…。
乙守(おつのかみ)殿、これにてよしなに…。
んん?ちと重さが足りぬようじゃの…。
んん?ちと重さが足りぬようじゃの…。
…。(※1)
…。(※1)
カッ!(※2)
カッ!(※2)
おほおほ!これは気の利いたからくり。ほれ、もっと、もっとじゃ。
おほおほ!これは気の利いたからくり。ほれ、もっと、もっとじゃ。
…。(以下、※1と※2を繰り返し)
…。(以下、※1と※2を繰り返し)
こうして、悪代官乙守と別津商人の密談は、鶏の鳴く刻まで続いたそうな。
本日の舞台。
本日の舞台。

ペッツを改造する趣味はいろいろな人がやっていて、そちらのほうが緻密ですばらしいのでぜひ探してみてください。私にはこれが限界です。

あと残りの11本のペッツ、どう昇華させようか。いっそ全部時代劇にしてやろうか。黄金飛び交う、汚職まみれの内容になってしまうが。
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