特集 2013年7月30日

文房具を美術品的に飾る

チープなボールペンも一気に美術品っぽく。
チープなボールペンも一気に美術品っぽく。
先日、渋谷ヒカリエで個展を行った。
「ヒカリエで個展」とプロフィールに書くとハクがつくのでそう言っているが、ザックリ言えば「ヒカリエにあるデイリーポータル移動編集部が休日空いているので、間借りして自慢の変な文房具コレクションを並べた」だけである。
とはいえ、所詮は100円とか200円とかレベルの文房具である。そのまま飾っても安っぽくて格好悪い。
せっかくなので見た目の価格が10倍ぐらいにはなるように飾ってみることにした。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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飾ればなんとかなると気付いた

きっかけは、ヒカリエの近くにある額装屋さんの店頭セールだった。
額装屋というのは、絵を入れて飾るためのあの『額』を主に売っているお店である。
たまたま時間もあったので、店先に置かれた様々なサイズの額をぼーっと眺めていたのだが、一つ、すごくグッとくるのを見つけてしまった。サイズがちょうどいいような気がしたのだ。消しゴムに。
やっぱりちょうど良さそう。
やっぱりちょうど良さそう。
小さすぎて、とてもじゃないが絵など飾るふうには見えない。
額装屋さんに、この額は何を飾る用なんですか、と訊ねてみたが「さあ、なんでしょうね。額自体を置物として飾るとか…ですかねぇ?」という些かぼんやりしたお答え。
いや、これぜったい消しゴム飾る用だって。ぜったいそうだって。
ほら、ばっちり。
ほら、ばっちり。
思った通り、本当にちょうどぴったり額に納まった。
こうやって額装してしまえば、とてもコンビニで100円で買える普通の消しゴムには見えまい。チープな消しゴムも飾り方ひとつで一気に高級品だ。どんなに小ぶりに見積もっても1300円ぐらいのレアな消しゴムに感じられるだろう。
この額が1200円したので、最低限1200円+100円で1300円に見てもらえないと困るのだ。

ともあれ、飾り方で安い文房具でも高級品っぽく見せられることはわかった。
どうせ高級に見せかけるなら徹底的に、いっそ美術館や博物館の収蔵品レベルにまで盛り上げてやりたい。

安価に高級品を捏造する試み

しかし1000円以上する額なんかを大量に買い込むのはお財布事情で難しい。
こういう時、迷い人がたどり着くのがダイソーだ。必ず我々に安らぎと、そこそこの結果をもたらしてくれる。

今回もダイソーの大型店舗をうろうろすることで、なんとなく簡単に結果が出せそうな素材を見つけることができた。ありがとうダイソー。
食玩などを飾るコレクションケース。100円。
食玩などを飾るコレクションケース。100円。
このケースなら、ボールペンなんかを寝かせて飾れそうではないか。
これが100円で買えるんだから、日本の100均ショップというのはすごい。こんな使い道の少なそうな入れ物までちゃんと大量生産しているのがとにかく偉い。
しかし、透明部分がアクリルやガラスでなくプラ板なので透明度がいまひとつなのと、底板がテカテカしてて見た目が安っぽいのが難点だ。

透明部分は手をつけるのが難しそうなので、簡単に解決できそうな底板から改善してみよう。
美術館や博物館の展示ケースっぽい雰囲気にしたい。底板を布張りにすればそれっぽくなるような気がするのだが、どうだろう。
貼れるベルベット。こんなのも100円。
貼れるベルベット。こんなのも100円。
底板の形に合わせて切って貼るだけ。
底板の形に合わせて切って貼るだけ。
左が元、右がベルベット貼り。
左が元、右がベルベット貼り。
ベルベット素材の「高級な布」イメージ、すごい。ベルベットを貼ったことでテカりも解消され、あっという間に高級感アップだ。

ついでに厚紙を切ってボールペン用の土台を作れば、展示ケースの完成である。
黒い厚紙を切って折るだけ。
黒い厚紙を切って折るだけ。
あとはこのケースに収めるだけで、だいたいどんなボールペンでも美術品っぽくなるはずだ。
安っぽい雑貨テイストのボールペンも…
安っぽい雑貨テイストのボールペンも…
世界に一本だけの貴重なペンに。
世界に一本だけの貴重なペンに。
これなら、「大英博物館収蔵品」と札をつけたら信じる人もいるんじゃないか。
先割れスプーン型ペンも高級に。
先割れスプーン型ペンも高級に。
ペン先を出すためにノックボタンを押すとスプーンがぐにゃりと折れ曲がる、玩具だか文具だかわからないようなペンも、ケースに収めてしまえば遺跡からの発掘品か工芸品のようである。
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さらに展示方法を模索する

展示ケースメソッド以外にも高級感を演出する方法はないか考えながらダイソーをうろうろしてると、また良さげなものを見つけた。
写真立て、これも100円。
写真立て、これも100円。
美術館で小さい立体物の展示をするときに、底が鏡になったトレーのようなものに載せているのを見たことがある。
あれも、100円の写真立てを使えば手軽に作れるはずだ。
ほら、このとおりカメラが写りこむぐらいには鏡っぼい。
ほら、このとおりカメラが写りこむぐらいには鏡っぼい。
写真立てのガラス面の下に黒い画用紙を挟み込めば、ほどよくミラーになる。
これに文房具を載せれば、高級感とアートっぽさもグッとアップだ。(予定)
ものすごく折り畳める定規。
ものすごく折り畳める定規。
もともと「30cm定規が4cmにまで折り畳める定規」というくだらないものだったのに、写真立てに載せるだけですっかり現代アート風だ。カンタンだな、現代アート。
ロボット型ペン。
ロボット型ペン。
うつむき気味にゼンマイで走行するロボットペンも、鏡面に飾ることでロボ顔の表情がはっきり見える。そう、これこれ。この全方位から美術品を鑑賞する感じの展示がやりたかったのだ。

これなら、「ヒカリエで個展」というハードルの高いミッションもこなせるはず。よし、やるぜ。

『印象派文具展』開催さる

美術品風の展示で見せるぞ!という意気込みを表明するため、イベントのタイトルも美術館の企画展っぽく『キダテコレクション 至高の印象派文具展』とした。
イベント名の印象派文具というのは、印象に残る文房具、という意味だ。正味の話をすれば、まぁ軽い詐欺行為である。
会場入口。看板代わりに消しゴム額装も貼っておいた。
会場入口。看板代わりに消しゴム額装も貼っておいた。
普段は自宅玄関に飾っている額装文具。この額はちょっと高い。(5000円ぐらい)
普段は自宅玄関に飾っている額装文具。この額はちょっと高い。(5000円ぐらい)
鏡面トレーも格好良く並べてみた。
鏡面トレーも格好良く並べてみた。
ちなみに写真に写っているのは基本的に全部文房具だ。何一つ文房具に見えないだろうが、全部文房具。
個展にお越しのお客様にはひとつひとつ「これはこんな形をしているけど実はボールペンで…」「このハサミはレトルト食品専用のハサミで…」など口頭とパネルで説明したので、詳細は理解してもらえたはずだが、皆さんあまり納得した表情はしていなかった。
アクリル製の什器に、これまたベルベットを貼ったハサミ展示台。
アクリル製の什器に、これまたベルベットを貼ったハサミ展示台。
並べるとそれなりに壮観。
並べるとそれなりに壮観。
展示全容。
展示全容。

ハサミの説明をするキュレーター。
ハサミの説明をするキュレーター。

日曜日1日だけの展示であったが、最初から最後までほぼ途切れることなくお客さんに文房具と展示台を見ていただくことができた。
中には「展示台が立派なので、ただ並べただけよりも価値があったような気がします」という、まさに企画意図にばっちりハマった意見も頂戴できたし、大満足である。

ところで、今回展示したような文房具ばかりをスライドショーで大量に紹介するイベントを、8月17日(土)にお台場の東京カルチャーカルチャーでやることになりました。
駄目な文房具ナイト5
たぶん数百点の文房具を一挙に紹介することになるので、文房具の写真だけでおなかいっぱいになると思います。ぜひお越しください。
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