特集 2013年8月13日

近所のドブ川を源流まで遡る

そこら辺にあるドブ川の源流は、一体どうなっているのだろう
そこら辺にあるドブ川の源流は、一体どうなっているのだろう
ある日、散歩をしていてふと思った。近所を流れる川の水は、どこから流れてくるのだろう。

その川はどこにでもある小さな川で、ぶっちゃけて言えばドブ川である。水質は良いとは言えず、夏場には若干の臭気も漂ってくる。まぁ、そんな川だ。

それでも、川であるからには源流があるはずだ。それは一体どこなのか、見定めてみようと思った。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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大河の源流はなんとなく想像できる

私は以前、「河口から源流へ、四万十川を遡る」という記事を書かせて頂いた。タイトル通り、高知県を流れる四万十川を遡って源流を目指す、という記事である。

約196kmの長さを誇る四万十川の源流点は、不入山(いらずやま)の中腹から流れる清水であった。
雄大な流れを見せる四万十川
雄大な流れを見せる四万十川
その源流点は、豊かな自然によって囲まれている
その源流点は、豊かな自然によって囲まれている
四万十川に限らずとも、ほとんどの大河は、このような山の湧き水が源流だろう。

山に降り注いだ雨が地中から湧き出し、水を集めて流れとなる。それが川となり、支流と合流しつつ、大河となって海へと流れる。その様子は想像に難くない。

では、市街地を流れる小さな川はどうなのだろう。何が発端となって、水の流れを生み出しているのだろうか。

というワケで、そこら辺の川を遡ってみる

今回私が遡るのは、神奈川県綾瀬市を南北に流れる比留川(ひるかわ)である。

比留川の水は、同じく綾瀬市内を流れる蓼川(たてかわ)と合流し、さらに藤沢市内で引地川(ひきじがわ)と合流。江ノ島近くの鵠沼海岸から相模湾へと注いでいる。

二級河川である引地川の支流の支流という、言わば毛細血管のような位置付けの、普段は見向きもされないような川だ。
比留川(左)と蓼川(右)の合流点
比留川(左)と蓼川(右)の合流点
比留川という名前はなかなか気に入っている
比留川という名前はなかなか気に入っている
それでは、いざ源流に向かって出発!
それでは、いざ源流に向かって出発!
スタート地点は、比留川の名が消える蓼川との合流点に設定した。そこから自転車を走らせ、源流点を目指すのだ。

猛烈な暑さの中、目に入った汗の痛みに耐えつつ、なんの変哲も無い川を辿る。
市街地河川の例に漏れず、ガッチリ護岸されている
市街地河川の例に漏れず、ガッチリ護岸されている
川底はドロドロだが、鯉やザリガニが棲んでいたりもする
川底はドロドロだが、鯉やザリガニが棲んでいたりもする
川の種別は、二級河川の下の準用河川だ
川の種別は、二級河川の下の準用河川だ
流路延長6.4kmの小さな川ではあるが、台地を侵食する自然の力は偉大なもので、比留川沿いはちょっとした谷間となっている。

特に右岸は急な斜面となっており、そこを無理やりコンクリートで整地して家を建てているものだから、なんだかちょっと面白い事になっていたりもする。
コンクリートの壁がそそり立つ、河川風景
コンクリートの壁がそそり立つ、河川風景
途中で、東海道新幹線の線路を潜る
途中で、東海道新幹線の線路を潜る
この辺りには、ガマの穂がもしゃもしゃ生えていた
この辺りには、ガマの穂がもしゃもしゃ生えていた
東海道新幹線は比留川の上を跨いでいる。つまり、新横浜~小田原間の新幹線を利用した事のある人は、もれなく比留川を渡っているのである。

だからどうしたという話ではあるが。
鴨の家族が悠々と泳いでいた
鴨の家族が悠々と泳いでいた
これは一体何だろう
これは一体何だろう
近くの工場で使う水を川から取っているようだ
近くの工場で使う水を川から取っているようだ
だいぶ川幅が狭くなってきた
だいぶ川幅が狭くなってきた
これまでは、川沿いに田畑が広がっていたり、川端に生える木々も多かったりと、それなりに自然の多い景観が続いていた。

しかし綾瀬市中心部にまで来ると景色は一変。商業施設が多く、なおかつ住宅地の整備が進められている事もあり、だいぶ町中っぽい感じになってきた。

上流に行けば行く程自然が少なくなる川というのも、面白い話である。
さらに行った所で川幅がぐっと狭まった
さらに行った所で川幅がぐっと狭まった
そしてついに、暗渠と化してしまった
そしてついに、暗渠と化してしまった
……と思いきや、再び開渠に戻った
……と思いきや、再び開渠に戻った
綾瀬市中心部を通り過ぎ、北部にまでやってくると、比留川はもはや水路というべき狭さである。

川の上に蓋をされて暗渠になっている箇所も多く、その扱いはかなりぞんざいな印象だ。
半分だけ塞いで歩道としてする、半渠な区間も
半分だけ塞いで歩道としてする、半渠な区間も
東名高速道路の高架を潜る部分は完全なる暗渠だ
東名高速道路の高架を潜る部分は完全なる暗渠だ
高架を越えると再び半渠として姿を現す
高架を越えると再び半渠として姿を現す
結構長い距離を走ったように思っていたが、まだ5.5kmか
結構長い距離を走ったように思っていたが、まだ5.5kmか
直角に曲がる、いかにも人工的な流れだ
直角に曲がる、いかにも人工的な流れだ
川の面影はすっかりなくなり、排水路に近い感じである
川の面影はすっかりなくなり、排水路に近い感じである
そして、比留川の流れは地中の下水管へと消えた
そして、比留川の流れは地中の下水管へと消えた
なんと、比留川の行き着く先は下水管であった。川としてはここで消滅、という事になるのだろう。

しかし、今でこそ下水道として地下に埋まってしまったものの、かつてはまだもう少し川が続いていたようである。その川の跡が道として残っており、もうしばらく追跡する事ができた。

とりあえず、辿れる所までは辿ってみよう。
川の延長線上を辿って行く
川の延長線上を辿って行く
マンホールから察するに、下水道はこの路地へと続いているのだろう
マンホールから察するに、下水道はこの路地へと続いているのだろう
いかにも川を埋めて作りました、という感じの細道だ
いかにも川を埋めて作りました、という感じの細道だ
さらに進むと普通の幅の道路となった。マンホールも続いている
さらに進むと普通の幅の道路となった。マンホールも続いている
そして、その先でT字路に。もはや川の痕跡は残っていない
そして、その先でT字路に。もはや川の痕跡は残っていない
このT字路で、完全に川の跡筋が消滅してしまった。これ以上の追跡はムリである。

とまぁ、結論を言えば、比留川の源流は下水道。この辺り一帯から集まる排水(たぶん雨水)が、水源という事になるのだろう。
というワケで、比留川の源流点はここに決定
というワケで、比留川の源流点はここに決定

身近な川を遡ってみるのも面白い

比留川の源流は下水であった。そう言ってしまうと何だかあんまりな感じがするが、その一方で、納得できたという思いもある。

もっとも、比留川は下水道が敷かれるずっと前からあった訳で、以前はこの辺りに湧水などがあり、それが水源となっていたのだろう。

まぁ、何にせよ、身近な川の源流を知る事ができてすっきりした。ちょうど夏休みの期間という事もあるので、小学生諸君、夏休みの自由研究として身近な川を遡ってみるのも良いのではないだろうか。
源流点近くにあったブラジル商店。綾瀬市北部には外国人居住者が多い
源流点近くにあったブラジル商店。綾瀬市北部には外国人居住者が多い
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