コラボ企画 2013年8月26日
 

カタ屋のおじさんになりたい

自分が子供の頃にやっていた、粘土に色をつける「カタ」という遊びを再現してみました。
自分が子供の頃にやっていた、粘土に色をつける「カタ」という遊びを再現してみました。
私が小学生の頃に一番夢中になった遊びが、「カタ」と呼ばれていた粘土遊びだった。

カタとは、素焼きの型(カタ)に粘土を詰めて取り出し、キラキラした色の粉で彩色して、その完成度を競う遊びだ。カタ屋のおじさんは、毎年冬休みの一時期だけ、近所の公園にやってきた。

この遊びを現代に蘇らせるため、自分がカタ屋のおじさんになることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

カタとは何ぞやという話から

ここでいうカタとは、粘土を詰めて型をとるための素焼きの道具であり、それを使った遊びの名前でもある。ボン・ジョヴィがボーカルの名前であると同時に、バンド名であるのと似ている。

私が小学生の頃は当たり前のように遊んでいたのだが、このカタというのは全国的なものではなく、どうやら東京の下町や埼玉の東部の一部でのみ流行っていたものらしい(私は埼玉東部出身)。

世代的なものもあるかもしれないが、当サイトのライターや友人の中には、やったことがあるという人がまったくいなかった。
実家の物置に残っていたカタ。ああ懐かしい。
実家の物置に残っていたカタ。ああ懐かしい。
カタ屋のおじさんはいろいろな地域を回っているらしく、私の住んでいたところでは冬休みに毎年来ていた。なので私にとって、カタは冬の遊びとなっている。

そんな感じで私にとっては思い出深いカタ遊びだが、さすがに現役のカタ屋さんはすでにいないだろうから、もうカタをやることは無理だと思っていた。

しかし、「あそびの学校」という集まりで、昔ながらの遊びを伝えている菅原さんという方が、今でもカタを不定期でやっているらしいことがわかり、東京芸術大学で行われたイベントへといってきた。
まさかカタをやるために東京芸大にくるとは思わなかった。
まさかカタをやるために東京芸大にくるとは思わなかった。
こちらがあそびの学校の菅原さん。
こちらがあそびの学校の菅原さん。

私が遊んでいたのは、最後のカタ屋だったらしい

菅原さんの話によると、昭和40年代前後にはカタ屋さんもたくさんいたそうだが、時代の流れと共に減っていき、最後に残ったのが埼玉の春日部市に住んでいた寺田さん。

そして、その人こそがまさに私が遊んでもらっていたカタ屋さんであることがわかってびっくりした。

そうか、あのおじさんは歴史上最後のカタ屋さんだったのか。
これらのカタにどれも見覚えがあるぞ。
これらのカタにどれも見覚えがあるぞ。
これが石膏でできたカタの原型で、原型師は寺田さんとは別の人らしい。
これが石膏でできたカタの原型で、原型師は寺田さんとは別の人らしい。
人気マンガの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」にカタ屋が登場したことがあるそうで、それで知ったという人も多いかも。
人気マンガの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」にカタ屋が登場したことがあるそうで、それで知ったという人も多いかも。
私にとってのカタ屋さんは、まさにこの寺田さん。一緒に写っている子供が私だったらおもしろいが、さすがに違った。
私にとってのカタ屋さんは、まさにこの寺田さん。一緒に写っている子供が私だったらおもしろいが、さすがに違った。
あのおじさん、寺田さんという名前だったのか。当時は「カタ屋のおじさん」という呼び方しかしたことがなかったので、名前を今日初めて知った。

寺田さんは1997年に引退され、今は釣り三昧の日々とのこと。そんな寺田さんからカタの元となる石膏の原型を引き継ぎ、不定期ながらも現代にカタという遊びを残しているのが菅原さんなのだ。

私にとっては、なんだかびっくりするくらいドラマチックな展開である。

カタの遊び方と思い出話

それにしても懐かしい。久しぶりのカタをやりながら思い出したことを全部書くとすごい文章量になってしまうので、控えめに思い出話を加えつつ、カタの遊び方を紹介したいと思う。
まずはカタに粘土をギュッと詰める。確か小さいカタで50円くらいから買えた気がする。
まずはカタに粘土をギュッと詰める。確か小さいカタで50円くらいから買えた気がする。
粘土を取り出し、カタの裏側に乗せる。当時の粘土は石ころとか入っていて、もっと泥っぽかった。
粘土を取り出し、カタの裏側に乗せる。当時の粘土は石ころとか入っていて、もっと泥っぽかった。
カタはまず小さいものを買ったり、この遊びの先輩からもらったりして、それを使ってコツコツと点を貯めていき、より大きなカタを点で買うというのが楽しく、どんなカタを持っているかがこの世界でのステータスシンボルだった(でかいのは80センチ四方くらいある)。

いきなり大きなカタをお金で買うのは野暮なのだ。

粘土が一握り10円、色が一色10円だったので、カタさえあれば、1日100円くらいで十分遊べた。今考えると、カタ屋は全然商売になっていないと思う。
粘土に色を付けるのが、「色」と呼ばれていたキラキラした粉状のもの。これが風ですぐ飛ぶんだ。包んである新聞紙を10枚持っていくと、1色もらえた。
粘土に色を付けるのが、「色」と呼ばれていたキラキラした粉状のもの。これが風ですぐ飛ぶんだ。包んである新聞紙を10枚持っていくと、1色もらえた。
できあがった作品に応じて、カタ屋が独断で点をくれる。この点がカタ屋での通貨となり、カタ、色、粘土が買える。
できあがった作品に応じて、カタ屋が独断で点をくれる。この点がカタ屋での通貨となり、カタ、色、粘土が買える。
出来上がった作品はカタ屋のおじさんのところに持っていくと点数をくれるのだが、上手な作品はコンテスト用としてその場に残され、それが5つ集まると、おじさんが審査員となり順位が決められ、それに応じた点数をもらえる。

自分より大きなカタを使っている上級生に勝って一等をもらえると、本当にうれしかった。

先に絶対勝てなそうな作品がコンテストに出ると、その回はパスしたりといった駆け引きを覚えたりもした。
粘土に好きな色を付けていく。色の濃さや色分けの美しさが評価の対象となる。現実世界のカラーリングは無視して、ハデハデに塗ろう。
粘土に好きな色を付けていく。色の濃さや色分けの美しさが評価の対象となる。現実世界のカラーリングは無視して、ハデハデに塗ろう。
このように完成したら、おじさんのところへ持っていくと、完成度に応じた点数がもらえる。もちろん、ちびっこや女の子に甘かった。
このように完成したら、おじさんのところへ持っていくと、完成度に応じた点数がもらえる。もちろん、ちびっこや女の子に甘かった。
自分のお小遣いと点をうまく使い分けて材料を買い、魂を込めて作品を作って、順位や点という形で評価を得るというこの遊びは、幼かった私に経済の基本みたいなものを教えてくれたような気がする。

カタ屋のおじさんは、単純なお金のやりとり以上の関係を持つ、はじめての「他人の大人」だったのだ。
カタは駄菓子のパッケージと同じように、どっかでみたことがあるようなキャラクターのデザインが多かった。
カタは駄菓子のパッケージと同じように、どっかでみたことがあるようなキャラクターのデザインが多かった。
これは甘党であろうと思われる女の子のカタ。
これは甘党であろうと思われる女の子のカタ。
カタは毎日の最後にじゃんけん大会が行われ、上位5人くらいにカタがプレゼントされた。そしてそのシーズンの最後は大ジャンケン大会が開催され、豪華賞品が振る舞われたのだ。しかし、私はジャンケンが弱かった。

幼い弟や妹を連れて来て、ジャンケンにだけ参加させて、どうにか賞品をもらおうとする兄弟もいた。
23年振りくらいに本気で作ったカタは般若。このカタは兄が持っていたなあ。久しぶりで目や口の部分がイマイチ。
23年振りくらいに本気で作ったカタは般若。このカタは兄が持っていたなあ。久しぶりで目や口の部分がイマイチ。
このように毎年カタ屋がくるのをとても楽しみにしていたのだが、中学生になるとカタがうまくなりすぎて、コンテストでの連勝が当たり前となり、「ここはもう俺の遊ぶ場所じゃない」と引退を決意。隣の家のタカシ君に、持っていたカタや点をその場で全部あげてしまった。

実家に残っていたカタは、その時に持っていかなかったものなのだろう。
一度出した作品の再提出を封じるために、つぶされるのがお約束。カタの遊びはカタチに残らないのである。このつぶす時のおじさんは毎回とても楽しそうだった。
一度出した作品の再提出を封じるために、つぶされるのがお約束。カタの遊びはカタチに残らないのである。このつぶす時のおじさんは毎回とても楽しそうだった。
つぶされた般若がなんだかかっこよかった。つぶされた作品を無理矢理直して別の人に再提出させて、それがばれて怒られたりもしたような。
つぶされた般若がなんだかかっこよかった。つぶされた作品を無理矢理直して別の人に再提出させて、それがばれて怒られたりもしたような。
すみません、話が長くなりました。

菅原さんにお願いをすれば、今でもカタは手に入るそうだが、新しいデザインのカタが登場することは残念ながらもうない。

それなら私が21世紀にふさわしいデザインのカタを作成して、自分の子供やその友達に遊んでもおうじゃないか、というのが今回の話である。

時代は廻って、今度は私がカタ屋のおじさんになる番なのだ。

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