特集 2013年8月22日

教科書で見たカルスト台地ってこれか

教科書で見た景色だ
教科書で見た景色だ
山口に行った。山口と言ったら地理の教科書でしか見ない「カルスト台地」があるところである。カルスト、カルデラ、リアス式、教科書で見た言葉にはロマンがある。
教科書に載っていたよねーカルストとかさー、というあるあるで終わらすのではなく、自分の目でしっかり見てからカルストってあったよねーと言いたい。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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石が売り

カルストとは石灰岩でできた土地が雨でとけておもしろい形になっている場所である(かなりざっくりした説明)。要は変わった形の石である。それは観光資源としてどうなんだろう。人体をスライスした標本や肉料理ばかり集めたテーマパーク、東洋一の電波塔などの観光地に比べると地味さは否めない。石だもん。

奇岩マニアとして岩の記事を書いたこともあるが、驚くほどアクセス数が悪かった。
でも書く。教科書に落とし前をつけるためにも見ておきたい。

インドみたいなタクシーに乗る

山口市内から秋吉まではバスで1時間ぐらい。バスを待っているとタクシーの運転手が声を掛けてきた、バスよりおれのタクシーのほうが安くするぜ、ということである。
聞くとトータルで500円ぐらい安い。インドやバンコクではこういうタクシーに会ったことがあるが国内でははじめてだ。運転手がぴっちりと七三に分けているのも身分証明書を見せて怪しくないことをアピールするのもインドと同じだ。
インドが好きなのでインドタクシーに乗る。

道中、インドタクシーの運転手情報。
山口のガードレールはオレンジ。夏みかんの色だから。
山口のガードレールはオレンジ。夏みかんの色だから。
高度が高いところの家は赤瓦。
高度が高いところの家は赤瓦。
赤瓦は滑りがよく、屋根の雪がよく落ちるそうだ。「値段が高いので見栄もあるね」とのこと。

・伊藤博文は女好きだった。40度の熱があるときも横に女を二人寝かせてた
・定食にたくあんが二切れついているのは一切れだと(人切れ)三切れだと(身を切れ)になるので二切れ
最後のひとつは山口とどう関係があるのか分からないがクイズ形式で教えられた。

そのほか、妾だ政治家だといった書きにくいことも多数聞く。

これがカルスト

こういう写真、教科書に載ってた
こういう写真、教科書に載ってた
石灰岩がぼこぼこと顔を出している。
運転手いわく「くぼみがドリーネ、大きいくぼみがウバーレ、ウバーレがさらに大きくなるとポリエやね」とのこと。さっきまでこれまで乗せた芸能人がたいしたことなかったとかそんな話をしていたのに急に地学の教師みたいになった。
山口ではあの教科書に載っていた言葉が日常なのか。ちょっと感激する。
どこかにゾエアとかメガロパを日常で話している地域があるのだろうか(生物の教科書に載ってたエビカニの幼生の名前)。

ドリーネって何語か聞くと「スロベキア語やね」と即答。
足元に石灰岩
足元に石灰岩
科学館に入るがそこも主に石だった。
20年ぶりに理科準備室のアトモスフィアを満喫
20年ぶりに理科準備室のアトモスフィアを満喫
かつて秋吉台にいたという大きいシカ
かつて秋吉台にいたという大きいシカ
の背景にいる動物がかわいい
の背景にいる動物がかわいい
洞窟のなかに棲む魚。目が退化している。
洞窟のなかに棲む魚。目が退化している。
科学館をまわり、大理石にもいろんな種類があること、鍾乳洞に棲む魚は目が退化していること、ドリーネは水はけがいいのでゴボウ畑に向いていること、タクシーの運転手は柏原崇を乗せたことがあることを学ぶ。

そして運転手おすすめの青い池を見る。
予想以上に青かった
予想以上に青かった
青い池ではどこかの子どもが帽子を池に落としてしまい、それを棒でとる様子をしばらく眺めていた。なんとなくこれがこの夏のクライマックスであるような気がした。

なんで池が青いのか聞くと「そんなの学者じゃないからよう知らん」と言われる。
水には興味がないようだ(この時点で水が青いことよりもタクシーの運転手に興味が移っている)。
とってもらった記念写真
とってもらった記念写真
どんどん先を急ぐ運転手
どんどん先を急ぐ運転手
インドのタクシーだとおみやげ屋に連れて行かれるパターンだがちゃんと鍾乳洞に連れて行ってくれた。ただ、タクシーがやたら古く、山を登るときに自転車なみのスピードになっていたのも楽しかった(あとから考えたら)。

移動中に見たベルトコンベア(思わずタクシー停めてもらって撮った)
移動中に見たベルトコンベア(思わずタクシー停めてもらって撮った)
石灰岩を工場に送るために山からひいてあるそうだ。「だからむこうの山がなくなりかけてる」とのこと。山が削られて日本のどこかにビルが立つ。石の移動だ。
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鍾乳洞は派手だ

カルストは地表の岩だけではなく、地中もでかく浸食して鍾乳洞を作る。
それが秋芳洞
それが秋芳洞
秋芳洞は「あきよしどう」というよりも「しゅうほうどう」と呼ぶほうが地元っぽいらしい。吉本隆明を「よしもとたかあき」と呼ぶより「よしもとりゅうめい(後ろイントネーションで)」と呼ぶほうが通っぽいのと同じである。
スカイツリーにも負けないほどの観光資源だ
スカイツリーにも負けないほどの観光資源だ
人生初の洞窟だったが、洞窟は派手だ。これはおもしろい。地学趣味の飛び道具的な存在である。物理学者にとってのロケットみたいなものではないだろうか。
大勢の観光客が奇岩を眺めている
大勢の観光客が奇岩を眺めている
しかしいつも控えめな石趣味が派手になってしまったような一抹の寂しさも感じる。いつも実直にニュースを読んでいるCS放送のアナウンサーがはしゃいでる動画をネットで見てしまったときのような気持ちだろうか。

いや、いまのはただの個人的な趣味の話だ。
中央に点々と続いてるのは探検コースに進む人の懐中電灯
中央に点々と続いてるのは探検コースに進む人の懐中電灯
夏休みの秋芳洞は混んでいて通路に人が連なっていた。薄暗くて細い道をみな黙々と歩いててなんだかおれ死んだみたいだなと思った。

鍾乳石50円

ドラえもんでジャイアンが鍾乳石をとってきて怒られる話がある。なぜなら鍾乳石は何万年もかけてその形に…
おみやげ屋で売ってた
おみやげ屋で売ってた
しかも安い。自分でとってはいけないがおみやげ屋でガリガリ君より安い値段で売っている。
化石150円
化石150円
オリジナルの絵を描いた石も
オリジナルの絵を描いた石も
アンモナイトは新しくても6500万年前らしいので、1円あたり43万年である。買わない理由はない。



修学旅行なのか

その変わった響きから気になっていたカルスト地形を満喫した。もう机上の知識ではない、カルスト、ドリーネ、ウバーレ。

これまでも教科書で見た墾田永年私財法六波羅探題も制覇した。
もしかしたら修学旅行というのがこういう知識を体験するためのものだったのかもしれないが、自由時間にずっとボーリングをしていたのが悔やまれる。
修学旅行みたいなおみやげ買った
修学旅行みたいなおみやげ買った
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