はっけんの水曜日 2013年9月4日
 

砂防ダムだけめぐるバスツアー

砂防ダムを見る目が変わりますよ
砂防ダムを見る目が変わりますよ
長野県の北西の端に位置する小谷(おたり)村。周囲を山に囲まれ、冬になると多くのスキー客で賑わうこの村には、もうひとつ別の顔がある。

国内でも指折りの土砂災害多発地帯なのだ。

そんな村の生活を守るため、村内にはいたるところにいわゆる「砂防ダム」がある。そして、そんな砂防ダムをめぐるツアーが行われていた。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。 個人サイト:ダムサイト

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砂防ダムだけを観てまわるツアー

8月中旬の土曜日。朝8時前に大糸線南小谷駅近くの小谷村役場に着くと、そこにはいかにも「現場」へ人々を運ぶような、車高の高い四駆のマイクロバスが停まっていた。
朝8時の小谷村役場
朝8時の小谷村役場
このバスがもう本当にすごかった
このバスがもう本当にすごかった
受付時間の8時になると、どこからともなくわらわらと人が集まってきた。夏休みの1日、長野までやってきて砂防ダムを観に行く面々だ。その数11名。

物好きすぎるだろう。

自分のことは棚に上げて、最初はそう思っていた。しかし、あとでこの思いはひっくり返ることになる。

受付を済ませてバスに乗り込み、いよいよ出発。最初の砂防ダムに向かって走り出した。
砂防めぐりの1日がスタート
砂防めぐりの1日がスタート
バスには一般の参加者のほか、主催で引率の小谷観光連盟の方、そして、砂防の専門家として砂防事業に関わってこられた国交省OBの方が乗っていた。

引率の観光連盟の方は「砂防は専門じゃないので、私に質問されても答えられません!」と言っているが、聞けば「砂防ダムはひとつひとつ形が違って、見て面白いと思ったのでツアーを企画した」とのこと。
受付で配られたお手製の薄い本
受付で配られたお手製の薄い本
そうそう、お寺が多い地域は寺めぐりを見どころにすればいいし、うどん屋が多ければうどん屋めぐり、砂防ダムが多ければ砂防ダムめぐりをすればいい。テーマパークや博物館を作るのもいいけど、地域の特色を生かした見どころを開拓すれば投資も維持費も最小限で済む。

ちなみにこのツアーでは10ヶ所の砂防ダムをめぐる。砂防ダムだけ10ヶ所めぐるツアーなんて世界のどこにもないだろう。クールジャパンの最先端を行ってると思う。

村のメインストリートである川沿いの国道から山道へ入って十数分、本日最初の砂防ダムに到着。バスを降りて、正面に見える橋の上で説明を聞く。ここから見る限りごく普通の砂防ダムのようだけど...。
そういえばこの日の参加者は半分以上が女性だった。ク、クールジャパン!
そういえばこの日の参加者は半分以上が女性だった。ク、クールジャパン!

このツアーひと味違うぞ

最初に見に来たのは、目の前に見えている砂防ダムのうち、いちばん奥のダム。「コンクリートブロック堰堤」と言って、同じ形のブロックを4000個以上積み重ねて造られている。地盤が悪くても安定する、現場での土石流を気にしながらの工事が短くて済む、といったメリットがあるそうだけど、ここからだとほかの砂防ダムと違いがよく分からない。

と思っていたら「では行ってみましょう」と川の脇の細道を登りはじめた。え!まさかダムの元へ!?
ダムの工事用道路を登っていく
ダムの工事用道路を登っていく
手前の2つは以前からあった砂防ダム
手前の2つは以前からあった砂防ダム
列のいちばん後ろで登って行くと、先の方から興奮した声が聞こえてきた。
え、そこ入っていいの!?
え、そこ入っていいの!?
なんと、全員が手前にある砂防ダムの上に乗って見学していた。たいていこういう場所は立入禁止、勝手に入ってTwitterにでも載せたら確実に炎上である。でもこのイベントは村公認。この観光連盟、本気だ。
にぎわいを見せる砂防ダム
にぎわいを見せる砂防ダム
高さ10mくらいある
高さ10mくらいある
ふだん入れない砂防ダムの上に立つ興奮と、柵もない絶壁の上に立つ緊張とで背中にどっと汗が出る。でも、コンクリートブロック堰堤を見るにはこの砂防ダムの上がベストポジションだった。
今週のビックリドッキリダム
今週のビックリドッキリダム
ツアーがスタートして30分くらいで、いきなりいろいろな意味で非日常な体験。このツアーやばいかも知れない!

しかし忘れてはならないのは、これが現在進行形で自然とたたかう防災施設であるということ。ダムの前後には人の頭より大きな石がゴロゴロしているし、水が越える部分のブロックの削れ具合も見逃せない。
同じ形のブロックを積み上げてあるけど
同じ形のブロックを積み上げてあるけど
水が越える部分はこの削れよう
水が越える部分はこの削れよう
歴史的建築物や芸術作品などと並べても引けを取らない存在感。つまり見どころとして十分である。

砂防も種類いろいろ

ふたたびバスに乗り込み、次の砂防ダムへ。10分ほどで到着したのは高い橋の上だった。場所としては最初に見た砂防ダムの上流にあたるらしい。
冷静に考えるとこれがツアーの見どころのひとつ、って凄いよね
冷静に考えるとこれがツアーの見どころのひとつ、って凄いよね
橋の下を流れる細い沢に、ぽつんと砂防ダムが造られている。一見するとごくオーソドックスな砂防ダムに見えるけど、よく見ると縦にスリットが入っている。「コンクリートスリット堰堤」という型式らしい。
個人的にはこういう石垣風装飾はマイナス点である
個人的にはこういう石垣風装飾はマイナス点である
砂防ダムというと、流れてくる土砂をコンクリートの壁ですべてせき止める、というイメージがある。でもそうすると川の生物の生活圏が断ち切られてしまうし、土砂が流れてこなくなると下流の川底が掘られてしまったり、河口近くの海岸の砂浜が減ったりすることもあると言われている(これは貯水ダムでも同じ)。そこで最近は、下流に流しても安全な分は流そう、というのがトレンドらしい。

そこで考えられたのがこういった、ある程度はせき止めるけど一部はそのまま流す、という砂防ダム。これ、砂防という世界のシステムとしては画期的な発明なんじゃないか。

次の砂防ダムへは、スキー場の中を抜ける細い急坂を登って行く。
このバス以外じゃ登れない未舗装の急坂
このバス以外じゃ登れない未舗装の急坂
よく見るとスキー場の中!
よく見るとスキー場の中!
途中にあるいくつかの砂防ダムをスルーして進むと道は行き止まりに。その目の前にそびえ立っていたのがこれだった。
一同のテンションはここで最初のピークを迎える
一同のテンションはここで最初のピークを迎える
さっきのスリット型と同じように、細かい土砂はせき止めずに流してしまうタイプ。しかしここはスリットが大きく、そこにぶっとい鉄パイプが巨大なジャングルジムのように組まれていた。「鋼製フレーム構造堰堤」という。

これはかっこいい!砂防ダム界の花形に違いない!

全員が色めき立った次の瞬間、引率の方が言ったひと声で大人たちは我を忘れる。

「はい、自由に中に入っていただいていいですよ〜」

ま、まじ!?
うおおお
うおおお
すげえすげえ
すげえすげえ

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