特集 2013年9月5日

魚屋の主人の魚拓をとる

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魚屋の主人の魚拓をとりたい。
なぜそんなことになったかというと、
シャッター商店街と化している文の里商店街を、広告の力で応援しよう!
という企画を上司がしていたからだ。
参加者それぞれに担当のお店があるのだが、僕の場合はお魚屋さんだった。
そんなわけで、
店主の魚拓(人拓)をとってお店の広告ポスターにしたい!となったわけである。
父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:かっこいい捺印方法を考える


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しかし、思いついたはいいものの、
人拓を作るには、店主の方の全身に墨を塗りたくらなければいけない。
とても頼みづらい。
怒られそうな気しかしない。
刺身包丁でブスリと刺されても文句は言えない。
アスファルトにまっ赤な僕の人拓ができるかもしれない。
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困った。
しかし、他にやりたい企画も思いつかない。
重い足取りでお願いに行く。
今回ポスターを作らせてもらうのは、文の里商店街にある魚心さんである。
店主は、西尾三彦さんだ。
おそるおそる魚拓の話をはじめる。
いきなり全身に墨を塗らしてくださいとお願いすると怒られると思ったので、
妥協して、
感熱紙に寝そべってもらい感光させて体型をとる方法や、
全身の写真を撮ってから加工して魚拓っぽくする方法を伝えた。
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すると、
墨でやったほうがおもしろいやん!と
まさかのお返事を頂いた。
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驚いた。
この人は何だかよく分からない若僧2人に、
全身に墨を塗りたくられてもいい!
と言っているのだ。
何て器がでかいのだろう。
好きな食べ物はカレーらしい。
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店主の方からOKが頂けたので、後はもう実行するのみである。
しかし、よくよく考えると
人拓のノウハウが全くないことに気づいた。
店主の方にやってもらう前に自分たちで実験する必要がある。
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そんなわけで
とりあえず墨を買う。
どれぐらい必要なのか分からないので1.8リットル買った。
サラダ油のような容器に入っている。
結果からお伝えするとめちゃくちゃ余った。
最終的に4回人拓をとることになるのだが、それでも半分使わなかった。
700mlもあれば充分です。
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墨を塗り、拓をとる。
今回人拓をとるにあたり、
墨を塗った体に、上から紙を押し当てる方法(ふつうの魚拓をとる方法と同じやり方)と、
地面に敷いた紙に、墨を塗った体を上から押し当てる方法(ハンコと同じ要領)を試した。
人間の体は魚よりも立体的だからなのか、後者のほうが綺麗にとることができた。
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人拓とるのは簡単にできたのだが、墨を落とすのが大変だった。
石けん、食器用洗剤、クレンジングオイル、水糊などなど、
いろいろ試した結果、水糊がいちばんよく落ちるということが判明したが、
それでも30分ほどかかってしまった。
SIRENというゲームにこういう敵が出てきたような気がする。
いろいろあったが、準備は整った。
後は店主の方に人拓をとらせてもらうだけである。
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当日。
まずは、店主の方に新品のパンツをお渡しして、着替えてもらう。
「意外といい体してるやろ!」
と颯爽と登場するご主人。
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墨を塗らせてもらう。
「遠慮なくやってや!」
と言って下さっている。
どこまでいい人なのだろうか。
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足下から少しずつ人拓とらせてもらう。
ご主人のポージングがアイアンマン(飛行時)のようでかっこいい。
しかし、なぜか練習の時のように綺麗にとることができない。
どうやらご主人のお肌の撥水性が強過ぎるようだ。
自分たちでやった時は肌が墨を吸い込んでいたので、綺麗にとれていたようである。
ご主人のお肌がぴちぴちであることが裏目に出てしまった。
美肌の秘訣は毎日魚を食べることらしい。
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残念がっていると、
「もういっぺんやる?」
とご主人。
なんて大物なのだろうか。
お言葉に甘えて、もう一度チャレンジさせてもらう。
おかげさまで2回目は綺麗にとることができた。
最後にご主人のお名前とサイズを書き入れれば、完成である。
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こうしてできあがったのが、こちら!
釣り人として入っているお名前は
ご主人の奥さん、栄さんである。
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めちゃくちゃなお願いをしたにもかかわらず、
完成したポスターを見せたところ、
ありがとう、と笑顔で言ってくださった。
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ついでに、
人拓をとった時に撮っていた写真もポスターにさせてもらった。
ファンキーモンキーベイビーズのジャケットのようである。
本当に店主の方が大物でなければ完成できなかったと思う。
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今回、魚屋さんのポスターを作らせて頂いたわけだが、
とにかく西尾さんの大物ぶりとぴちぴちぶりを思い知ることになった。
「もうちょっと手を魚のヒレっぽくしたほうがいいんじゃない?」
などなど、
自分たちでは思いつかない素敵なアイデアをたくさん頂けた。
雨の日はなぜかイカがよく売れることも教えてもらった。(魚屋さんの中では常識らしい)
イタズラを一緒に企んでいる時のような不思議な一体感が店主の方との間に生まれたように思う。
広告としてちゃんと機能しているのかは疑問だが、
お客さんとの会話のきっかけが生まれたら心の底からうれしい。
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魚心さんの他にも、下村電気さんのポスターも作らせてもらった。
(写真のモデルは一緒にポスターを作った茗荷くんのおじいちゃんです)
商店街には僕たち以外のチームが作ったちゃんとしたポスターも200枚ほど並んでいますので、
よかったら足を運んでみてくださいね(12月31日まで掲示されております)
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僕たちは墨を落とすのに、いろんな溶剤を使ったにもかかわらず30分程かかったのだが、
西尾さんは15分後には汚れを綺麗さっぱり落とし、何事もなかったかのように仕事に戻られていた。
魚の美肌効果恐るべしである。(写真は夕方のニュースで特集された西尾さんです)
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