ロマンの木曜日 2013年10月3日
 

銀座でおしゃれなおばあさんを待つ 〜「L'idéal」に密着!

銀座で毎週末、スタイリッシュなシニア女性をスナップする2人組がいる
銀座で毎週末、スタイリッシュなシニア女性をスナップする2人組がいる
L'idéal」(以下 リデアル)というブログを最近知った。60歳以上の女性のストリートファッションブログだ。

おしゃれ、かっこいい、かわいらしい、美しい、そんなポジティブにしか形容できない年齢的には「おばあさん」と呼ばれる方々が、ページには満載である。

どんな人が作っているんだろう。どうやって撮影をお願いするのだろう。見れば見るほど気になる。

街頭でのスナップ活動に同行させてもらった。
1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてニフティ株式会社へ入社。趣味はEDMと先物取引。

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人気記事:「セレブが来た!」

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

おばあさん方に、しびれる

リデアルに掲載された女性の写真はどれも街頭で撮ったもの。みなさん一般の女性である。街行くところをお願いして撮らせてもらったのだそうだ。

原宿あたりによく素人の若い男女に声をかけてスナップを撮っているファッション雑誌のクルーらしき人々を見かけることがあるが、それと一緒である。
写真はすべてリデアルより
写真はすべてリデアルより
ブログには大きな写真や別アングルの写真も
ブログには大きな写真や別アングルの写真も
これがもう、とにかくしびれる。

服に着られるという言葉があるが、その隙が微塵もない。服ってこんなにも確実に中の人の力で制圧できるものなのか。

ファッションがメインだから歳をとることについてのメッセージも説教ぬきでじわじわ伝わってくる。
撮影時のエピソードやインタビューもある
撮影時のエピソードやインタビューもある
絶対みたほうがいいです
絶対みたほうがいいです
実をいうと、私はいまだに歳をとるのがちょっと怖い。加齢とは無条件で受け入れるものではなく「折り合いをつける」ものであると思っているところがどこかにある。

自信がないのだ。

リデアルに掲載されているのはみなさん30代の私にとっては人生の大先輩ともいえる60代〜80代の女性。

彼女たちの堂々たるファッションにふれ、だから急にパッカーンと「歳をとるのが楽しみになりましたー!」などいいだすほど単純なことではないが、ブログの更新を追うたびにほんのちょっとそういう気持ちになったところがあった。
というわけで、日曜日、撮影現場の銀座へやってきた
というわけで、日曜日、撮影現場の銀座へやってきた

運営は20代の男女お2人が

それにしても、スタイリッシュでエッジィな見知らぬ、しかも年長の女性に声をかけインタビューをしながら撮影させてらもう。かなりハードルの高い作業を街頭でこなさなければ成立しないコンテンツである。

どんな猛者が作っているのか。

読めばMASAさんとMARIさんというお2人が運営しているようだ。連絡をとってみると、仕事のかたわらこのブログを制作しているらしい。

スナップも仕事の合間をぬって週末に銀座を中心に行っているという。
左から、リデアル運営のMARIさん、MASAさん
左から、リデアル運営のMARIさん、MASAさん
このプロジェクトの発案者(言いだしっぺ、とご本人はいっていた)であり撮影を担当するのがMASAさん。撮影のお願いをしたりその後のやりとりをしつつ、写真のレタッチをするのがMARIさん。

会ってみると猛者というには笑顔がすてきすぎるお2人だった。

「普段は2人ともアパレルとは関係のない業種のサラリーマンで、リデアルは趣味です」という。

インターネットには古来から自らの趣味をしっかりとしたコンテンツにして公開するという文化が脈々とあるだろう。団地やダムやガスタンクや自動販売機などなど、天才コレクターがたくさんいる。

それを思えば「趣味です」といわれても驚くものではないかもしれないが、しかし、これ完全な趣味なのか(やっぱり驚いた)!
iPhone5S、5cが発売されたばかりで銀座のAppleストアには貸し出された大きな黒い日傘を持った人たちで行列が
iPhone5S、5cが発売されたばかりで銀座のAppleストアには貸し出された大きな黒い日傘を持った人たちで行列が

今あるものをずらしたものを作りたかった

それにしても、なぜ、60歳以上、なのだろう。2人とも、若い人たちのファッションスナップの経験は一切ないそうだ。

シニアのファッションスナップというとニューヨークの「Advanced Style」が有名だが、直接的に影響を受けたわけでもないらしい(サイトの運営をするうえで初めて知ったそうだ)。

「既にあるものをズラす、というのが好きなんだと思います。若い人のファッションスナップはある、でも60歳以上となるとあまりないから。やったら見てくれる人はたくさんいるだろうって、ニーズもあると思っていました」(MASAさん)

急に亡くなった、高級百貨店で長年スーツの職人をしていたご自身のおばあさんへのリスペクトの気持ちも大きいかったそう。

世に「おばあちゃんっ子」は数居れど、そのおばあちゃんっ子力をここまで目に見える形で発揮したのは彼らがはじめてなんじゃないか。
銀座の歩行者天国には「撮影」をしている人が本当にいっぱいいるのですな。テレビクルーが2組、ラジオなのかな? 録音機材を持っている人も
銀座の歩行者天国には「撮影」をしている人が本当にいっぱいいるのですな。テレビクルーが2組、ラジオなのかな? 録音機材を持っている人も
ブログがスタートしたのは今年2013年の3月。まだ1年経っていない段階だが国内はもちろん台湾で紹介されたのをきっかけに海外からのリアクションも増えているそうだ。書籍化のオファーも相次いでいるらしい。

需要ありとのもくろみ、当たりまくりである。
歩行者天国ではかわった動物を散歩させている人がいるとわっと人だかりができて撮影会がはじまったり。独特の空気
歩行者天国ではかわった動物を散歩させている人がいるとわっと人だかりができて撮影会がはじまったり。独特の空気

おばあちゃんっ子偏差値の高さが異常

おばあちゃんっ子といえばその偏差値の異常な高さに驚かされたのがMARIさんだ。

この日はじめてお会いしたのだが、「はじめてじゃないみたい!」という、なごやかな空気を作る力がすごい。

街頭でのスナップ活動をするようになって、最初は2人それぞれに街行く方に撮影をお願いする声かけをしていたという。

だが、MASAさんが急にぬっと現れると「みんな、明らかに驚いていましたね…」(MARIさん)という。確かに若くて背のあるパーマ頭の男子が急に登場したら年長の方々は驚くだろう。

そこから声かけは主にMARIさんが担当することになったそうだ。
撮影をお願いする際に見せるという作品集
撮影をお願いする際に見せるという作品集
にこやかに声をかけて、ときには粘って撮影の交渉をする。承諾をもらって撮影をする間も横から声をかけてなごませる。

さらにおばあちゃん子力が爆発するのはこの後である。

「掲載のご連絡はお手紙が多いですね。ご迷惑でないという方には電話で」メールを使えるという方にはメールをするそうだが、基本は手紙。そこまでは想像していなかった。
「趣味」とはいえ、挨拶用にサイトロゴの入った名刺も常備
「趣味」とはいえ、挨拶用にサイトロゴの入った名刺も常備
さらに「週末に銀座に来る機会があったらご連絡くださいってお願いしてるんです。やりとりも続けるようにしています」と。

文通するのだ。

リデアルでは同じ方がその後数回にわたって登場するということも多い。読者モデルならぬ文通モデルである。
子どもの英語サークルらしい一団が英語圏の方かなという人をつかまえてはインタビューしたりもしていた。なんかいいな、銀座
子どもの英語サークルらしい一団が英語圏の方かなという人をつかまえてはインタビューしたりもしていた。なんかいいな、銀座

1ヶ月に数人声をかけて、撮影できるのは2〜3割

そもそも、街で声をかけて断られることが多いのじゃないかと思っていたがまったくその通りだった。撮影させてもらえるのは2〜3割だという。

「私なんかが…」と恐縮されたり、驚いてさーっと通り過ぎていってしまったり。これは世代問わずだと思うが、顔が映った写真をインターネットに掲載させてもらうというのはやはりハードルが高い。

もともと声をかける母数もかなり少ないという。

声をかける条件については「服がおしゃれなだけじゃなくて……うーん、びびびときたら、としかいえないのですよね」(MARIさん)だそう。

一緒にいても片っ端から声をかけるのではなく、数少ない天才を待つ、という感じが伝わってきた。
基本的にじっと待つ。銀座にはよく来るようになったものの道にいるだけなので一向に街に詳しくならないそう。「昔GHQがあった場所とか、都電が通ってた場所とかは教えていただいて詳しくなりました」(MARIさん)なるほど……。
基本的にじっと待つ。銀座にはよく来るようになったものの道にいるだけなので一向に街に詳しくならないそう。「昔GHQがあった場所とか、都電が通ってた場所とかは教えていただいて詳しくなりました」(MARIさん)なるほど……。
たとえば、着物を着ていれば、サングラスをしていれば、ショートヘアなら、イッセイミヤケのプリーツの服を着ていればおしゃれ風おばあさんに見えるのではとも思ったのだがそうでもないのか。

結果、1ヶ月に1人でも2人でも新しい方が撮影できたらいい方、だそうだ。
ゲリラらしきモデルさんとカメラマンさんが一瞬座って撮影して去っていった
ゲリラらしきモデルさんとカメラマンさんが一瞬座って撮影して去っていった

「紘さん」からの電話

そうして3時間は待っただろうか。松屋の前に大道芸が来て「あの大道芸の人、6年くらい前は池袋にいたんですよね。そのときから一切芸が変っていなくて逆にすごい」なんて雑談が始まったころ、MARIさんの携帯に電話がきた。「紘さんだ」

以前撮影してからやりとり(文通!)をしていた方が銀座に来ているということで連絡をくれたらしい。

紘さん……偶然にも私がリデアルで一番気になっていた、この方である。
リデアルより。もうかっこいいとしかいえない
リデアルより。もうかっこいいとしかいえない

こわくないのか

はずしを効かせながらも隙のない装い、きゅっとまとめられた髪につるの色が赤いサングラス。スポーティーなのに若者には絶対に着こなせないスタイリングである。

天才だ。とにかくかっこいい。

憧れまじりに写真を拝見するだけで十分に満足していたのだが、お会いできるとは。というか、恐れながら言うと、怖くないのだろうか、この御仁。
電話で居場所を確認……
電話で居場所を確認……

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